金融商品適用指針12号案(最終_ doc

Similar documents
その他資本剰余金の処分による配当を受けた株主の

参考 企業会計基準第 25 号 ( 平成 22 年 6 月 ) からの改正点 平成 24 年 6 月 29 日 企業会計基準第 25 号 包括利益の表示に関する会計基準 の設例 企業会計基準第 25 号 包括利益の表示に関する会計基準 ( 平成 22 年 6 月 30 日 ) の設例を次のように改正

営業活動によるキャッシュ フロー の区分には 税引前当期純利益 減価償却費などの非資金損益項目 有価証券売却損益などの投資活動や財務活動の区分に含まれる損益項目 営業活動に係る資産 負債の増減 利息および配当金の受取額等が表示されます この中で 小計欄 ( 1) の上と下で性質が異なる取引が表示され

1FG短信表紙.XLS

- 有価証券等の時価情報 ( 一般勘定 )- 有価証券等の時価情報 (一般勘定) 有価証券の時価情報 ( 一般勘定 ) 1 売買目的有価証券の評価損益 [ 単位 : 百万円 ] 区分 2 有価証券の時価情報 ( 売買目的有価証券以外の有価証券のうち時価のあるもの ) [ 単位 : 百万円

2. 基準差調整表 当行は 日本基準に準拠した財務諸表に加えて IFRS 財務諸表を参考情報として開示しております 日本基準と IFRS では重要な会計方針が異なることから 以下のとおり当行の資産 負債及び資本に対する調整表並びに当期利益の調整表を記載しております (1) 資産 負債及び資本に対する

設例 [ 設例 1] 法定実効税率の算定方法 [ 設例 2] 改正地方税法等が決算日以前に成立し 当該改正地方税法等を受けた改正条例が当該決算日に成立していない場合の法定実効税率の算定 本適用指針の公表による他の会計基準等についての修正 -2-

162 有価証券等の情報(会社計 満期保有目的の債券 ( 単位 : 百万円 ) がを超えるもの がを超えないもの )合計 2,041,222 2,440, ,058 1,942,014 2,303, ,434 責任準備金対応債券 ( 単位 : 百万円 ) が貸借対照表 公社債

財務諸表に対する注記 1. 継続事業の前提に関する注記 継続事業の前提に重要な疑義を抱かせる事象又は状況はない 2. 重要な会計方針 (1) 有価証券の評価基準及び評価方法 満期保有目的の債券 償却原価法 ( 定額法 ) によっている なお 取得差額が少額であり重要性が乏しい銘柄については 償却原価

平成30年公認会計士試験

平均株価は 東証が公表する当該企業普通株式の終値の算術平均値を基準とした値とする 調整取引の結果 経済的には自社株を平均株価で取得したのと同様の結果となる 企業は株価上昇時の支払いのために 証券会社に新株予約権を割り当てる ステップ 3 : 株価上昇時は 新株予約権が権利行使され 差額分に相当する株

有価証券等の情報(会社計)162 満期保有目的の債券 がを超えるもの がを超えないもの 公社債 435, ,721 31, , ,565 29,336 外国証券 ( 公社債 ) 1,506,014 1,835, ,712 1,493,938 1,778

公開草案なお 重要性が乏しい場合には当該注記を省略できる 現行 適用時期等 平成 XX 年改正の本適用指針 ( 以下 平成 XX 年改正適用指針 という ) は 公表日以後適用する 適用時期等 結論の背景経緯 平成 24 年 1 月 31 日付で 厚生労働省通知 厚生年金基金

適用時期 5. 本実務対応報告は 公表日以後最初に終了する事業年度のみに適用する ただし 平成 28 年 4 月 1 日以後最初に終了する事業年度が本実務対応報告の公表日前に終了している場合には 当該事業年度に本実務対応報告を適用することができる 議決 6. 本実務対応報告は 第 338 回企業会計

改正法人税法により平成 24 年 4 月 1 日以後に開始する事業年度については法人税率が 30% から 25.5% に引き下げられ また 復興財源確保法により平成 24 年 4 月 1 日から平成 27 年 3 月 31 日までの間に開始する事業年度については基準法人税額の 10% が復興特別法人

満期保有目的の債券 貸借対照表計上額 貸借対照表計上額 が貸借対照表計上額を超えるもの 610, ,963 54, , ,797 91,076 公社債 519, ,895 48, , ,414 85,165 外国証券 - - -

財務諸表に対する注記 1. 継続事業の前提に関する注記 継続事業の前提に重要な疑義を抱かせる事象又は状況はない 2. 重要な会計方針 (1) 有価証券の評価基準及び評価方法 満期保有目的の債券 償却原価法 ( 定額法 ) によっている なお 取得差額が少額であり重要性が乏しい銘柄については 償却原価

Microsoft Word - 公開草案「中小企業の会計に関する指針」新旧対照表

Report

「中小企業の会計に関する指針《新旧対照表

第4期電子公告(東京)

本実務対応報告の概要 以下の概要は 本実務対応報告の内容を要約したものです 範囲 ( 本実務対応報告第 3 項 ) 本実務対応報告は 資金決済法に規定する仮想通貨を対象とする ただし 自己 ( 自己の関係会社を含む ) の発行した資金決済法に規定する仮想通貨は除く 仮想通貨交換業者又はが保有する仮想

Microsoft Word IFRSコラム原稿第6回_Final _1_.doc

ならないとされている (IFRS 第 15 号第 8 項 ) 4. 顧客との契約の一部が IFRS 第 15 号の範囲に含まれ 一部が他の基準の範囲に含まれる場合については 取引価格の測定に関する要求事項を設けている (IFRS 第 15 号第 7 項 ) ( 意見募集文書に寄せられた意見 ) 5.

包括利益の表示に関する会計基準第 1 回 : 包括利益の定義 目的 ( 更新 ) 新日本有限責任監査法人公認会計士七海健太郎 1. はじめに企業会計基準第 25 号 包括利益の表示に関する会計基準 ( 以下 会計基準 ) が平成 22 年 6 月 30 日に

日本基準基礎講座 資本会計

2018 年度 (2019 年 3 月 31 日現在 ) 貸借対照表 ( 単位 : 百万円 ) 科 目 金額 科 目 金額 ( 資産の部 ) ( 負債の部 ) 現金及び預貯金 1,197,998 保険契約準備金 908,017 預貯金 1,197,998 支払備金 2,473 有価証券 447,49

リース取引に関する会計基準

1. 国際財務報告基準に準拠した財務諸表 ( 抜粋 翻訳 ) 国際財務報告基準に準拠した財務諸表の作成方法について当行の国際財務報告基準に準拠した財務諸表 ( 以下 IFRS 財務諸表 という ) は 平成 27 年 3 月末時点で国際会計基準審議会 (IAS B) が公表している基準及び解釈指針に

リリース

IFRS基礎講座 IAS第21号 外貨換算

3. 基本財産及び特定資産の財源等の内訳 基本財産及び特定資産の財源等の内訳は 次のとおりです 科目当期末残高 ( うち指定正味財産からの充当額 ) ( うち一般正味財産からの充当額 ) ( うち負債に対応する額 ) 基本財産投資有価証券 800,000,000 (662,334,000) (137

有償ストック・オプションの会計処理が確定

第28期貸借対照表

第 298 回企業会計基準委員会 資料番号 日付 審議事項 (2)-4 DT 年 10 月 23 日 プロジェクト 項目 税効果会計 今後の検討の進め方 本資料の目的 1. 本資料は 繰延税金資産の回収可能性に関わるグループ 2 の検討状況を踏まえ 今 後の検討の進め方につ

日本基準基礎講座 有形固定資産

スライド 1

様式3

金融商品に関する会計基準

<4D F736F F D F816992F990B C B835E92F990B3816A E31328C8E8AFA208C888E5A925A904D816B93F

<4D F736F F D2081A F838D815B836F838B8F5A94CC81408C768E5A8F9197DE8B7982D1958D91AE96BE8DD78F F

計算書類等

平成 29 年度連結計算書類 計算書類 ( 平成 29 年 4 月 1 日から平成 30 年 3 月 31 日まで ) 連結計算書類 連結財政状態計算書 53 連結損益計算書 54 連結包括利益計算書 ( ご参考 ) 55 連結持分変動計算書 56 計算書類 貸借対照表 57 損益計算書 58 株主

<4D F736F F D2095BD90AC E31328C8E8AFA8C888E5A925A904D C8E86816A2E646F63>

日本基準基礎講座 退職給付

公開草案 (2) その他利益剰余金 積立金繰越利益剰余金利益剰余金合計 5 自己株式 5 自己株式 6 自己株式申込証拠金 6 自己株式申込証拠金株主資本合計株主資本合計 Ⅱ 評価 換算差額等 Ⅱその他の包括利益累計額 1 その他有価証券評価差額金 1 その他有価証券評価差額金 2 繰延ヘッジ損益

2 事業活動収支計算書 ( 旧消費収支計算書 ) 関係 (1) 従前の 消費収支計算書 の名称が 事業活動収支計算書 に変更され 収支を経常的収支及び臨時的収支に区分して それぞれの収支状況を把握できるようになりました 第 15 条関係 別添資料 p2 9 41~46 82 参照 消費収入 消費支出

2. 資産運用の実績 ( 一般勘定 ) (1) 資産の構成 ( 単位 : 百万円 %) 2019 年度 2018 年度末区分第 1 四半期会計期間末 金額 占率 金額 占率 現預金 コールローン 1,213, ,085, 買 現 先 勘 定 債券貸借取引支払保証金 買

第 14 期 ( 平成 30 年 3 月期 ) 決算公告 平成 30 年 6 月 21 日 東京都港区白金一丁目 17 番 3 号 NBF プラチナタワー サクサ株式会社 代表取締役社長 磯野文久

(3) 資産運用収益 平成 27 年度平成 28 年度第 3 四半期累計期間第 3 四半期累計期間 利息及び配当金等収入 500, ,799 預 貯 金 利 息 有価証券利息 配当金 397, ,636 貸 付 金 利 息 68,334 64,037 不 動 産

<4D F736F F D202895CA8E A91E632368AFA8E968BC695F18D9082A882E682D18C768E5A8F9197DE82C882E782D182C982B182EA82E782CC958D91AE96B

(訂正・数値データ訂正)「平成25年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」の一部訂正について

あいおいニッセイ同和損保の現状2015

科目 期別 損益計算書 平成 29 年 3 月期自平成 28 年 4 月 1 日至平成 29 年 3 月 31 日 平成 30 年 3 月期自平成 29 年 4 月 1 日至平成 30 年 3 月 31 日 ( 単位 : 百万円 ) 営業収益 35,918 39,599 収入保証料 35,765 3

営業報告書

Microsoft Word doc

03-08_会計監査(収益認識に関するインダストリー別③)小売業-ポイント制度、商品券

<4D F736F F D CA8E A81798DC58F4988C481458C888E5A8FB A814091E632358AFA8E968BC695F18D9082A882E682D18C768E5A8

国家公務員共済組合連合会 民間企業仮定貸借対照表 旧令長期経理 平成 26 年 3 月 31 日現在 ( 単位 : 円 ) 科目 金額 ( 資産の部 ) Ⅰ 流動資産 現金 預金 311,585,825 未収金 8,790,209 貸倒引当金 7,091,757 1,698,452 流動資産合計 3

評価 換算差額等 その他有価証券評価差額金 評価 換算差額等合計 純資産合計 平成 28 年 4 月 1 日残高 3,022 3,022 30,837,402 当期変動額 剰余金の配当 193,300 当期純利益 1,446,814 株主資本以外の項目の当期変動額 ( 純額 ) 2,239 2,23

第 16 回ビジネス会計検定試験より抜粋 ( 平成 27 年 3 月 8 日施行 ) 次の< 資料 1>から< 資料 5>により 問 1 から 問 11 の設問に答えなさい 分析にあたって 連結貸借対照表数値 従業員数 発行済株式数および株価は期末の数値を用いることとし 純資産を自己資本とみなす は

実務対応報告第 36 号従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する取扱い 目的 平成 30 年 1 月 12 日企業会計基準委員会 1. 本実務対応報告は 企業がその従業員等 1 に対して権利確定条件 2 が付されている新株予約権を付与する場合に 当該新株予約権の付与に伴い

平成29年度 財産勘定 重要な会計方針等

連結貸借対照表 ( 単位 : 百万円 ) 当連結会計年度 ( 平成 29 年 3 月 31 日 ) 資産の部 流動資産 現金及び預金 7,156 受取手形及び売掛金 11,478 商品及び製品 49,208 仕掛品 590 原材料及び貯蔵品 1,329 繰延税金資産 4,270 その他 8,476

営 業 報 告 書

株式会社神奈川銀行

Microsoft Word - # VIX短期先物指数 1305半期_決算短信.doc


(3) 資産運用収益 平成 28 年度平成 29 年度第 1 四半期累計期間第 1 四半期累計期間 利息及び配当金等収入 157, ,549 預 貯 金 利 息 6 2 有価証券利息 配当金 124, ,877 貸 付 金 利 息 21,582 20,066 不 動 産 賃

別注記、重要な会計方針

貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準等の適用指針(案)

Taro-class3(for.st).jtd

8/3営業報告書(BS,PL,利益処分)

第4期 決算報告書

有価証券管理規程 第 1 章総則 ( 目的 ) 第 1 条この規程は 株式会社 ( 以下 会社 という ) の有価証券の運用および管理を適正に行うため 会社の保有する有価証券に関する管理基準および管理手続を定めるとともに 余裕資金の有効運用ならびに経営効率の向上を図ることを目的とする ( 有価証券の

税効果会計シリーズ(7)_「個別財務諸表における繰延税金資産及び繰延税金負債の計上」

080310金融商品会計基準

わかりやすい解説シリーズ金融商品.docx

営 業 報 告 書

<4D F736F F D20834F838D815B836F838B8F5A94CC81408C768E5A8F9197DE E718CF68D90817A E36>

12 70, , , , , , , , , , , , , ,0

及び連結子会社連結貸借対照表 比較増減 資産投資 - 関係会社に対する投資を除く : 売却可能有価証券 : 債券 \ 3,193,503 \ 3,317,804 \ 124,301 株式 3,105,217 3,312, ,357 満期保有目的有価証券 : 債券 261, ,

Microsoft Word - 訂正短信提出2303.docx

第 30 期損益計算書 自 2017 年 4 月 1 日至 2018 年 3 月 31 日 科目金額 営業収益 受 取 保 証 料 2,385,318 受 取 手 数 料 194,068 その他の営業収益 26,092 営業費用 役 員 報 酬 40,470 給 与 手 当 258,100 賞与引当

IFRS基礎講座 IFRS第1号 初度適用

<4D F736F F D F4390B3816A91E6388D DD8ED891CE8FC6955C82CC8F838E918E5982CC959482CC955C8EA682C98AD682B782E989EF8C768AEE8F CC934B97708E77906A81762E646F63>

財務諸表に対する注記

Microsoft Word 【公表】HP_T-BS・PL-H30年度

平成 19年 10月 29日

貸 借 対 照 表 ( 平成 28 年 3 月 31 日現在 ) 科 目 金額 科 目 金 額 ( 資産の部 ) ( 負債の部 ) 流動資産 4,007 流動負債 4,646 現金及び預金 2,258 買掛金 358 売掛金 990 リース債務 2,842 有価証券 700 未払金 284 貯蔵品

第6期決算公告

1. のれんを資産として認識し その後の期間にわたり償却するという要求事項を設けるべきであることに同意するか 同意する場合 次のどの理由で償却を支持するのか (a) 取得日時点で存在しているのれんは 時の経過に応じて消費され 自己創設のれんに置き換わる したがって のれんは 企業を取得するコストの一

貸借対照表平成 30 年 3 月 31 日現在 ( 単位 : 千円 ) 科 目 金 額 科 目 金 額 ( 資産の部 ) ( 負債の部 ) 流動資産 6,646,807 流動負債 4,437,848 現金及び預金 4,424,351 1 年以内返済予定の長期借入金 1,753,120 未 収 運 賃

「資産除去債務に関する会計基準(案)」及び

【11】ゼロからわかる『債券・金利』_1704.indd

第62期_計算書類_ xdw

会社法施行規則及び会社計算規則による株式会社の各種書類のひな型(計算書類及び連結計算書類)新旧対照表

預金 譲渡性預金残高 ( 単位 : 百万円 ) 種 類 平成 26 年度末 平成 27 年度末 金額構成比 (%) 金額構成比 (%) 流動性預金 87, , 預 金 定期性預金 127, , うち固定金利定期預金 1

資産除去債務の会計処理(コンバージェンス)

PowerPoint プレゼンテーション

Transcription:

企業会計基準適用指針第 12 号その他の複合金融商品 ( 払込資本を増加させる可能性のある部分を含まない複合金融商品 ) に関する会計処理 平成 18 年 3 月 30 日企業会計基準委員会 本適用指針は 平成 20 年 3 月 10 日までに公表された次の会計基準等による修正が反映されている 企業会計基準第 10 号 金融商品に関する会計基準 ( 平成 20 年 3 月 10 日改正 ) 目次 項 目的 1 適用指針 2 範囲 2 組込デリバティブの区分処理 3 組込デリバティブのリスクが現物の金融資産又は金融負債に及ぶこと 5 組込デリバティブのリスクが現物の金融資産又は金融負債に及ぶ可能性がある例 6 損益を調整する複合金融商品の処理 7 区分処理した組込デリバティブの損益又は評価差額の表示 8 組込デリバティブを区分して測定することができない場合の会計処理 9 適用時期等 10 議決 13 結論の背景 14 経緯 14 組込デリバティブの区分処理 18 組込デリバティブのリスクが現物の金融資産又は金融負債に及ぶこと 18 組込デリバティブのリスクが現物の金融資産又は金融負債に及ぶ可能性がある例 19 損益を調整する複合金融商品の処理 29 適用時期等 30 設例 - 1 -

[ 設例 1] 複合金融商品 ( 通貨オプション付定期預金 ) の会計処理 ( 区分処理 ) [ 設例 2] 物価連動国債における償却原価法の適用 - 2 -

目的 1. 本適用指針は 企業会計基準第 10 号 金融商品に関する会計基準 ( 以下 金融商品会計基準 という ) における Ⅶ. 複合金融商品 のうち 2. その他の複合金融商品 を適用する際の指針を定める 適用指針 範囲 2. 本適用指針は 金融商品会計基準が適用される場合において その他の複合金融商品 ( 払込資本を増加させる可能性のある部分を含まない複合金融商品 ) に適用する 組込デリバティブの区分処理 3. 複合金融商品に組み込まれたデリバティブは 次のすべての要件を満たした場合 組込対象である金融資産又は金融負債とは区分して時価評価し 評価差額を当期の損益として処理する なお 組込デリバティブの対象である現物の金融資産又は金融負債は 金融商品会計基準に従って処理する [ 設例 1] (1) 組込デリバティブのリスクが現物の金融資産又は金融負債に及ぶ可能性があること (2) 組込デリバティブと同一条件の独立したデリバティブが デリバティブの特徴を満たすこと (3) 当該複合金融商品について 時価の変動による評価差額が当期の損益に反映されないこと 4. 第 3 項の要件 (1) 又は (3) を満たさない場合でも 管理上 組込デリバティブを区分しているときは 区分処理することができる 組込デリバティブのリスクが現物の金融資産又は金融負債に及ぶこと 5. 第 3 項 (1) の組込デリバティブのリスクが現物の金融資産又は金融負債に及ぶとは 利付金融資産又は金融負債の場合 原則として 組込デリバティブのリスクにより現物の金融資産の当初元本が減少又は金融負債の当初元本が増加若しくは当該金融負債の金利が債務者にとって契約当初の市場金利の 2 倍以上になる可能性があることをいう 金利が契約当初の市場金利の 2 倍以上になるとは 例えば 固定金利の場合 その当初金利の 5% に対して実際の支払金利が 10% 以上となり 変動金利の場合 その当初計算式 LIBOR+0.5 に対して実際の支払金利が当初計算式に 2 を乗じたもの (LIBOR+0.5) 2 を適用して計算される金額以上となる場合をいう - 3 -

組込デリバティブのリスクが現物の金融資産又は金融負債に及ぶ可能性がある例 6. 次のような場合 組込デリバティブのリスクが現物の金融資産又は金融負債に及ぶ可能性がある (1) 預金 債券 貸付金 借入金及びこれらに類する契約の中に 以下のようなデリバティブ ( その経済的性格及びリスクが 組み込まれた現物の金融資産又は金融負債の経済的性格及びリスクと緊密な関係にないもの ) が組み込まれたもの 1 元本又は金利が株式相場又は株価指数に係るデリバティブ 2 元本又は金利が現物商品相場又は現物商品指数に係るデリバティブ 3 元本又は金利が外国為替相場に係るデリバティブ 4 元本又は金利が気象条件に関する指標に係るデリバティブ ( ウェザー デリバティブ ) 5 元本又は金利が第三者の信用リスクに係るデリバティブ ( クレジット デリバティブ )( ただし (3) また書きの場合を除く ) ただし 当初元本が円建てで確定し 金利のみが為替相場に連動しかつマイナスとならない逆デュアル カレンシー債など 金融資産の受取利息の範囲で上記各デリバティブに係るオプションを購入する場合又は受取利息がマイナスとならないフロアーが付いている場合の複合金融商品については 契約上 当初元本を毀損しないため 組込デリバティブのリスクが現物の金融資産又は金融負債に及ぶ可能性はない (2) 他社株転換社債 (3) 預金 債券 貸付金 借入金及びこれらに類する契約の中に 以下のようなデリバティブ ( その経済的性格及びリスクが 組み込まれた現物の金融資産又は金融負債の経済的性格及びリスクと緊密な関係にあるもの ) が組み込まれ 契約上 フロアーが付いていないため受取利息がマイナスとなる可能性があるもの 又は オプションを売却しているもの等が組み込まれ当初元本を毀損する可能性があるもの 1 当該契約と同一通貨である金利に係るデリバティブ 2 当該契約と同一通貨である物価指数に係るデリバティブ 3 当該契約と同一通貨である債務者自身の信用リスクに係るデリバティブただし 契約上 当初元本を毀損する可能性があっても 組込デリバティブのリスクが現物の金融資産又は金融負債の当初元本に及ぶ可能性が低いといえるものについては 組込デリバティブのリスクが現物の金融資産又は金融負債に及ぶ可能性はないものとして取り扱う また 第三者の信用リスクに係るデリバティブが組み込まれている複合金融商品が 実質的に参照先である第三者の信用リスクを反映した利付金融資産と考えることができる場合において 当該組込デリバティブのリスクが現物の金融資産の当初元本に及ぶ可能性が低いといえるものについては 組込デリバティブのリスクが現 - 4 -

物の金融資産に及ぶ可能性はないものとして取り扱う (4) 重要な損失をもたらす行使価格の付いた期前償還権付債券 貸付金 借入金及びこれらに類する契約 損益を調整する複合金融商品の処理 7. デリバティブで得た収益を毎期の利払いに含めず 後で一括して授受するスキーム又は複数年に 1 回しか利払いがないスキーム等 損益を調整する複合金融商品については 区分処理する 区分処理した組込デリバティブの損益又は評価差額の表示 8. 区分処理した組込デリバティブの損益又は評価差額は 組み込まれた金融資産又は金融負債から生じた損益とは区分して表示する 組込デリバティブを区分して測定することができない場合の会計処理 9. 第 3 項により区分処理を行うべき複合金融商品について 当該複合金融商品の時価は測定できるが 組込デリバティブを合理的に区分して測定することができない場合には 当該複合金融商品全体を時価評価し 評価差額を当期の損益に計上する 適用時期等 10. 本適用指針は 平成 18 年 4 月 1 日以後開始する事業年度から適用する ただし 平成 18 年 3 月 31 日以後終了する事業年度から適用することができる 11. 本適用指針を適用することにより これまでの会計処理を変更することとなる場合には 次のように取り扱うものとする (1) 組込デリバティブを 組込対象である金融資産又は金融負債とは区分して時価評価し 評価差額を当期の損益とする処理 ( 第 3 項に示す会計処理 ) を行っていたが 本適用指針を適用することにより 区分せず一体として処理することとなる場合 直近の事業年度末におけるそれぞれの貸借対照表価額の合計額を当該複合金融商品の取得原価として 金融商品会計基準及び日本公認会計士協会会計制度委員会報告第 14 号 金融商品会計に関する実務指針 ( 以下 金融商品会計実務指針 という ) により処理する (2) 複合金融商品全体を時価評価し 評価差額を当期の損益とする処理 ( 第 9 項に示す会計処理 ) を行っていたが 本適用指針を適用することにより 区分せず一体として処理することとなる場合 直近の事業年度末における貸借対照表価額を当該複合金融商品の取得原価として 金融商品会計基準及び金融商品会計実務指針により処理する なお この場合には 本適用指針が適用される時点において 売買目的有価証券 ( 金融商品会計実務指針第 269 項にいう売買目的有価証券に準じて取り扱うものを含む ) - 5 -

に変更することにより 従前同様 評価差額を当期の損益に計上することができる 12. 本適用指針を公表するにあたり 金融商品会計実務指針第 188 項から第 194 項 第 354 項から第 356 項及び設例 27 の削除を検討することが適当である 議決 13. 本適用指針は 第 101 回企業会計基準委員会に出席した委員 12 名全員の賛成により承認された - 6 -

結論の背景 経緯 14. 金融商品会計基準では 複合金融商品について 払込資本を増加させる可能性のある部分を含む複合金融商品とその他の複合金融商品に区分して それぞれ処理方法を定めている このうち 後者 すなわち 契約の一方の当事者の払込資本を増加させる可能性のある部分を含まない複合金融商品は 原則として それを構成する個々の金融資産又は金融負債とに区分せず一体として処理するとしている ( 金融商品会計基準第 40 項 ) これは このような複合金融商品を構成する複数種類の金融資産又は金融負債は それぞれ独立して存在し得るが 複合金融商品からもたらされるキャッシュ フローは正味で発生することによる このため 資金の運用 調達の実態を財務諸表に適切に反映させるという観点から 一体として処理するとしている ( 金融商品会計基準第 117 項 ) 15. ただし 金融商品会計基準では 通貨オプションが組み合わされた円建て借入金のように 現物の金融資産又は金融負債にリスクが及ぶ可能性がある場合に 当該複合金融商品の評価差額が損益に反映されないときには 当該複合金融商品を構成する個々の金融資産又は金融負債を区分して処理することが必要であるとしている 16. 金融商品会計基準の考え方を受けて これまでの金融商品会計実務指針では 決済期日に金融資産の当初元本が減少又は金融負債の当初元本が増加する場合 ( 当該金融負債の金利が契約当初の市場金利の 2 倍以上になる場合を含む ) に 当該金融資産又は金融負債にリスクが及ぶものと解し それは 組込デリバティブのリスクが 契約内容に照らして当初元本に及ぶ可能性の有無を判断することを意味し 可能性の程度を評価するものではないこととしていた 17. このような取扱いは 金融商品会計基準を実務に適用する場合の具体的な指針として その役割を果たしてきたものと考えられるが 物価連動国債など 公表時には想定されていなかったその他の複合金融商品に対しては 必ずしも適切な会計処理を示しているとはいえないのではないかという意見も多い このため 当委員会では 金融商品専門委員会における討議を含め その他の複合金融商品の会計処理に関する審議を行い 当該会計処理に関する適用指針をとりまとめた 組込デリバティブの区分処理組込デリバティブのリスクが現物の金融資産又は金融負債に及ぶこと 18. 組込デリバティブのリスクが現物の金融資産又は金融負債に及ぶこととは 利付金融資産又は金融負債の場合 デリバティブを組み込むことによって 利付金融資産の場合には実際のキャッシュ フローが組込デリバティブを除いた現物の金融資産のそれよりも減少するとき また 利付金融負債の場合には実際のキャッシュ フローが増加するときに 決済期日に当初元本が減少又は増加していなくとも当該金融資産又は金融負債 - 7 -

にリスクが及ぶという考え方がある また 利付金融資産の場合には 当該金融資産の存続期間にわたる割引前のネット キャッシュ イン フローが 当該金融資産の当初投資額より小さくなるときにリスクが及ぶという考え方もある これらの考え方に対して これまでの金融商品会計実務指針では 決済期日に金融資産の当初元本が減少又は金融負債の当初元本が増加する場合 ( 当該金融負債の金利が契約当初の市場金利の 2 倍以上になる場合を含む ) にはじめて 当該金融資産又は金融負債にリスクが及ぶものと解することとされており 本適用指針では これまでの金融商品会計実務指針の考え方を引き継ぐものとした ( 第 5 項参照 ) 組込デリバティブのリスクが現物の金融資産又は金融負債に及ぶ可能性がある例 ( 組込デリバティブの経済的性格及びリスクが 組み込まれた現物の金融資産又は金融負債の経済的性格及びリスクと緊密な関係にない場合 ) 19. 利付金融資産又は金融負債に 株式相場や外国為替相場などに係るデリバティブが組み込まれた場合 当該組込デリバティブの経済的性格及びリスクと現物の金融資産又は金融負債の経済的性格及びリスクとは緊密な関係にないため 組込デリバティブのリスクが現物の金融資産又は金融負債に及ぶ可能性がある ただし これらのデリバティブであっても当初元本が確保されるような性格のデリバティブ取引を組み込む場合には 現物の金融資産又は金融負債にリスクが及ぶ可能性はない したがって これまでの金融商品会計実務指針では 組込デリバティブと現物の金融資産又は金融負債の経済的性格及びリスクの緊密な関係の有無をもって組込デリバティブの区分処理を行う判断規準とはしていなかった むしろ 第 18 項に示したとおり 複合金融商品の契約内容が契約上の当初元本の回収又は返済に影響を与えるか否かをもって区分処理の判断規準としていた また 当該判断規準は 契約内容に照らした組込デリバティブのリスクが当初元本に及ぶ可能性の有無を意味し 可能性の程度を評価するものではないこととされていた ( 第 16 項参照 ) 20. 本適用指針では 契約上の当初元本の回収又は返済に影響を与えるか否かをもって区分処理を判断するというこれまでの金融商品会計実務指針の基本的な考え方を引き継ぐものとした また 組込デリバティブと現物の金融資産又は金融負債の経済的性格及びリスクとが緊密な関係にない場合には これまでと同様に 組込デリバティブのリスクが 契約上 当初元本に及ぶかどうかをもって判断し 可能性の程度を評価するものとはしていない ( 第 6 項 (1) 参照 ) ( 他社株転換社債 ) 21. 他社株転換社債は 第三者の発行する株式 ( 上場株式又は店頭公開株 ) に転換する権利を付した社債であり その典型例は 転換期日又は転換期間に株価が転換価格を上回った場合 社債発行者は社債金額を社債権者に現金で支払い 株価が転換価格を下回った場合 当該第三者の株式を給付する契約内容となっている したがって 当該社債の - 8 -

発行者が他社株への転換権をもつことから 社債権者にとって当該他社株転換権のリスクが当初元本に及ぶ可能性がある なお 契約により 社債権者にのみ他社株への転換権がある場合 社債発行者にとって当該リスクが当初元本 ( 社債金額 ) に及ぶ可能性がある さらに 社債発行者にも社債権者にも他社株への転換権がある場合には 両者にとって当該リスクが当初元本に及ぶ可能性がある 本適用指針では 他社株転換社債については これまでの金融商品会計実務指針の取扱いを引き継いでいる ( 第 6 項 (2) 参照 ) ( 組込デリバティブの経済的性格及びリスクが 組み込まれた現物の金融資産又は金融負債の経済的性格及びリスクと緊密な関係にある場合 ) 22. 利付金融資産又は金融負債に 金利に係るデリバティブが組み込まれた場合 当該組込デリバティブの経済的性格及びリスクと現物の金融資産又は金融負債の経済的性格及びリスクとは緊密な関係にあり 通常 組込デリバティブのリスクが現物の金融資産又は金融負債に及ぶ可能性はない ただし これまでの金融商品会計実務指針では 当初元本を減少させるオプションを売却しているような場合など 組込デリバティブのリスクが現物の金融資産又は金融負債の当初元本に及ぶ可能性があるものについては 区分処理を行う必要がある要件の 1 つに該当するものとされていた また 当該組込デリバティブのリスクが契約上の当初元本の回収又は返済に影響を与えるか否かについては 契約内容に照らした組込デリバティブのリスクが当初元本に及ぶ可能性の有無を意味し 可能性の程度を評価するものではないこととされていた ( 第 16 項参照 ) 23. 前述したように 金融商品会計基準では その他の複合金融商品からもたらされるキャッシュ フローは正味で発生するため 資金の運用 調達の実態を財務諸表に適切に反映させるという観点から 原則として 当該複合金融商品を一体として処理することとしているが 現物の金融資産又は金融負債にリスクが及ぶ可能性がある場合には 当該複合金融商品を構成する個々の金融資産又は金融負債を区分処理するものとしている これは 相場変動等による組込デリバティブの損失の可能性を当期の損益に適切に反映するためと考えられる 24. このような理解に基づけば これまでの金融商品会計実務指針のように 組込デリバティブの経済的性格及びリスクと現物の金融資産又は金融負債の経済的性格及びリスクとが緊密な関係にあり 通常 組込デリバティブのリスクが現物の金融資産又は金融負債に及ぶ可能性はないとしながら 組込デリバティブのリスクが当初元本に及ぶ可能性の有無を契約内容に照らして判断することは 必要以上に区分処理を行うこととなるのではないかという指摘がある 25. これまでの金融商品会計実務指針は これまで一定の役割を果たしてきたと考えられるものの 物価連動国債など金融商品会計実務指針の公表時には想定されていなかったその他の複合金融商品の属性等を考慮し 本適用指針では 組込デリバティブの経済的性格及びリスクと現物の金融資産又は金融負債の経済的性格及びリスクとが緊密な関係 - 9 -

にある場合で 過去の実績や合理的な見通しなどから 組込デリバティブのリスクが当初元本に及ぶ可能性が低いといえるものについては 現物の金融資産又は金融負債にリスクが及ぶ可能性はないものとして取り扱うこととした ( 第 6 項 (3) 参照 ) 26. さらに 本適用指針では その他の複合金融商品において 利付金融資産又は金融負債である預金 債券 貸付金 借入金及びこれらに類する契約の中に組み込まれた金利スワップなどの金利に係るデリバティブの他 その経済的性格及びリスクと現物の金融資産又は金融負債の経済的性格及びリスクとが緊密な関係にある組込デリバティブについて検討し 物価指数や一定の信用リスクに係るデリバティブもそれに含むものとした ( 第 6 項 (3) 参照 ) (1) 物価指数に係るデリバティブ区分処理を必要としない変動利付金融資産又は金融負債においては 一般に 変動金利部分に物価水準の変動も含まれていることから 利付金融資産又は金融負債に物価指数に係るデリバティブが組み込まれている場合 これらの経済的性格及びリスクは緊密な関係にあると考えられる (2) 一定の信用リスクに係るデリバティブ利付金融資産又は金融負債には 債務者の信用リスクが含まれているため 当該債務者自身の信用リスクに係るデリバティブが組み込まれている場合 これらの経済的性格及びリスクは緊密な関係にあると考えられる また 第三者の信用リスクに係るデリバティブが組み込まれている場合 これらの経済的性格及びリスクは緊密な関係にないが 特別目的会社が高い信用力を有する利付金融資産を裏付けにして当該特別目的会社以外の参照先の信用リスクに係るデリバティブを組み込んだ複合金融商品を発行している場合のように 当該複合金融商品が実質的に当該参照先の信用リスクを反映した利付金融資産と考えることができるときには 債務者自身の信用リスクに係るデリバティブが組み込まれている場合に準じて取り扱うものとした 27. このように 本適用指針では 利付金融資産又は金融負債に金利 物価指数又は一定の信用リスクに係るデリバティブが組み込まれた場合には これらの経済的性格及びリスクは緊密な関係にあるものとし ( 第 26 項参照 ) この場合には 現物の金融資産又は金融負債にリスクが及ぶ可能性があるかどうかについて 組込デリバティブのリスクが当初元本に及ぶ可能性の程度を評価して判断するものとした ( 第 25 項参照 ) この際 政府によって平成 16 年から発行されている物価連動国債 (10 年債 ) は これまでの消費者物価指数の動向等を踏まえると 一般に 組込デリバティブのリスクが当初元本に及ぶ可能性は低いと考えられる また 特別目的会社が高い信用力を有する利付金融資産を裏付けにして当該特別目的会社以外の参照先の信用リスクに係るデリバティブを組み込むことによって組成された複合金融商品 ( 例えば クレジット リンク債やシンセティック債務担保証券 ) につ - 10 -

いては 当該複合金融商品全体の信用リスクが高くない場合 ( これには 例えば 格付機関による格付けに基づいて満期保有目的の債券として設定した適格要件を満たしている場合や これと同等程度の客観的な信頼性を確保し得る方法により判断されている場合を含む ) 組込デリバティブのリスクが現物の金融資産の当初元本に及ぶ可能性は低いと考えられる このため 当該複合金融商品も区分して処理する必要はないこととなる なお 当該複合金融商品を 満期保有目的の債券やその他有価証券として処理した場合において もはや信用リスクが高くないとはいえなくなったときには その時点の時価を新たな取得原価として第 3 項又は第 9 項に示す会計処理を適用する この場合 当該時点における評価差額については その全額を当期の損益とするが 本適用指針適用後 第 3 項を適用することとなる場合には 信用リスクに起因する評価差額のみを当期の損益とすることができる 28. 前項で示した物価連動国債について 組込デリバティブのリスクが現物の金融資産の当初元本に及ぶ可能性が低いといえるものとして区分処理せず その他有価証券とした場合には 他の債券と同様に まず償却原価法を適用し その上で償却原価と時価との差額を評価差額として処理する ( 金融商品会計実務指針第 74 項 ) こととなる 償却原価法を適用する際 物価連動国債の元本及びクーポン受取額を合理的に予測することが必要となり これには 例えば 期末時点における残存期間が同程度の通常の国債の利回りと物価連動国債の予想利回りとの差額に基づいて見積られた想定元金額及び償還金額を用いて償却原価法 ( 利息法又は定額法 ) を行い 同じ手法によって想定元金額及び償還金額を毎期見直す方法 ( 見積りの変更であるため 当該年度以降の再計算に含める ) の他 取得価額が取得時の想定元金額と一致している場合において期末時点における想定元金額を当期末の償却原価とみなす方法なども含まれると考えられる [ 設例 2] なお 物価連動国債は 償還金額及び総受取利息金額のいずれも確定していないため 満期保有目的の債券として計上することはできない 損益を調整する複合金融商品の処理 29. これまでの金融商品会計実務指針では 損益を調整する複合金融商品については 組込デリバティブのリスクが現物の金融資産又は金融負債に及ぶ可能性がない場合であっても 区分処理することとされており 本適用指針では これまでの金融商品会計実務指針の考え方を引き継ぐものとした すなわち 利付金融資産又は金融負債の中に金利 物価指数又は一定の信用リスクに係るデリバティブが組み込まれている場合には これらの経済的性格及びリスクは緊密な関係にあるため 通常 償却原価法などを通じて毎期の損益は適切に計上されることとなるが 組込デリバティブ ( 現物の利付金融資産又は金融負債の経済的性格及びリスクと緊密な関係にあるものを含む ) にレバレッジがかかっていることなどにより損益を調整する複合金融商品は 区分処理することとなる ( 第 7 項参照 ) - 11 -

適用時期等 30. 本適用指針は 平成 18 年 4 月 1 日以後開始する事業年度から適用する このため 例えば 本適用指針を平成 18 年 4 月 1 日に開始する事業年度から適用し これまでの会計処理が変更される場合には 直近の貸借対照表日である平成 18 年 3 月 31 日の貸借対照表価額に基づいて処理することとなる ( 第 11 項参照 ) なお これまで第 9 項に示す会計処理を行っていた場合において 本適用指針が適用される時点において売買目的有価証券に変更することとしたとき ( 第 11 項 (2) なお書き参照 ) を除き 本適用指針の適用を理由として 有価証券の保有目的区分を変更することはできない また これまで第 3 項に示す会計処理を行っていた場合において 管理上 組込デリバティブを区分しているときは 引き続き区分処理することができる ( 第 4 項参照 ) 31. 本適用指針は 平成 18 年 3 月 31 日以後終了する事業年度から適用することができる この場合でも 正当な理由による会計方針の変更に該当するため 所定の注記が必要となることに留意する この早期適用により 例えば 本適用指針を平成 18 年 3 月 31 日に終了する事業年度から適用し これまでの会計処理が変更される場合には 直近の貸借対照表日である平成 17 年 3 月 31 日の貸借対照表価額に基づいて処理することとなる ( 第 11 項参照 ) - 12 -

設例 以下の設例は 本適用指針で示された内容について理解を深めるためのものであり 仮定として示された前提条件の記載内容は 経済環境や各企業の実情等に応じて異なることに留意する必要がある [ 設例 1] 複合金融商品 ( 通貨オプション付定期預金 ) の会計処理 ( 区分処理 ) 1 前提条件 (1) A 社 (3 月決算 ) は X0 年 10 月 1 日に 次の条件で通貨オプション付定期預金を設定した 1 預入金額 :10,000 2 利率 : 年 4%( 年 1 回後払い 売建オプション プレミアムが含まれているので通常の預金金利より高くなっている オプション プレミアム相当額は 1 年間で 200 と仮定する ) 3 期間 :X0 年 10 月 1 日から X1 年 9 月 30 日 (1 年間 ) 4 満期日における払戻金額 : ( ア ) 米国ドル為替レートが 100 以上の場合 :10,000 ( イ ) 米国ドル為替レートが 100 未満の場合 : 10,000-10,000 (100- 満期日における米国ドル為替レート )/100 上記の前提条件より 当該通貨オプションの価値の変動によって 当初元本の返済額が設定額より下回る可能性 すなわち 組込デリバティブのリスクが現物の金融資産に及ぶ可能性がある (2) 通貨オプションの価値及び為替レート 1 X0 年 10 月 1 日における通貨オプションの価値 : 200 2 X1 年 3 月 31 日における通貨オプションの価値 :1,000 3 X1 年 9 月 30 日における為替レート :US$1=80 2 会計処理 (1) X0 年 10 月 1 日 : 定期預金の開始 定期預金 10,000 現金預金 10,000 未収入金 200 売建通貨オプション 200 通貨オプションの価値は 厳密には1 年後における200の現在価値であるが ここでは簡便的に200とした - 13 -

(2) X1 年 3 月 31 日 : 決算日 1 通貨オプションの時価評価為替差損 800 売建通貨オプション 800 通貨オプションの損益計上額 =1,000( 期末時オプション時価 )-200( 当初オプ ション料 )=800 2 未収利息の計上 未収利息 100 受取利息 100 未収利息 =(10,000 4%-200( 売建オプション料未収計上額 )) 6/12=100 (3) X1 年 9 月 30 日 : 定期預金の満期日 現金預金 8,400 定期預金 10,000 売建通貨オプション 1,000 未収利息 100 為替差損 1,000 未収入金 200 受取利息 100 定期預金の払戻金額 =10,000-10,000 (100-80)/100=8,000 満期日における約定利息( 実質受取利息 + 売建オプション料相当額 ) に係る入金額 =10,000 4%=400 受取利息 =400-200( 売建オプション料未収計上額 )-100(X1 年 3 月 31 日未収利息計上額 )=100-14 -

[ 設例 2] 物価連動国債における償却原価法の適用 1 前提条件 (1) B 社 (3 月末決算 ) は X0 年 4 月 1 日に 次の条件で物価連動国債を購入し その他有価証券として計上した 償却原価法は 定額法を採用している 1 取得価額 :100,000( 額面金額 ) 2 クーポン利子率 : 年 4% 3 利払日 : 毎年 3 月末 年 1 回後払い 4 満期日 :X10 年 3 月 31 日 (10 年満期 ) 5 償還金額 : 償還日の想定元金額 ( 額面金額 償還日における消費者物価指数 (CPI) に基づく連動係数 ) (2) X1 年 3 月 31 日及び X2 年 3 月 31 日において 次の状況となった X1 年 3 月 31 日 X2 年 3 月 31 日 1 物価連動国債の時価 105,000 120,000 2 物価連動国債の予想利回り 4% 5% 3 同じ残存期間の通常の国債の利回り 5% 8% 2 想定元金額及び各期末の受取利息額の算定 (1 年後 ) 償却原価法を適用するにあたり 本設例においては 期末時点における残存期間が同様の通常の国債の利回りと物価連動国債の予想利回りとの差額に基づいて見積られた想定元金額及び償還金額を用いることとする 年次 CPI 償還金額 / 想定元金額 (*1) 発行時 100.0 100,000 受取利息額 ( 想定元金額 4%) キャッシュ フロー 摘要 1 年後 101.0 101,000 4,040 4,040 実績値 2 年後 102.0 102,010 4,080 4,080 予測値 ( 省略 ) 10 年後 110.5 110,462 4,418 114,880 予測値 (*1) N 年後の想定元金額 = 額面金額 {100 (1+CPI 1 ) (1+CPI 2 ) (1+CPI N )}/100 CPI N とは N 年後の CPI 上昇率 (%) のことである 2 年目以降は 見込まれる CPI 上昇率 1%(=5%-4%) から各年次の想定元金額を決定する 1 年後の想定元金額 101,000=100,000 (100 1.01)/100 2 年後の想定元金額 102,010=100,000 {(100 1.01) 1.01}/100 10 年後の想定元金額 110,462=100,000 {(100 1.01) 1.01 9 }/100-15 -

3 想定元金額及び各期末の受取利息額の見直し (2 年後 ) 年次 CPI 償還金額 / 想定元金額 (*2) 発行時 100.0 100,000 受取利息額 ( 想定元金額 4%) キャッシュ フロー 摘要 1 年後 101.0 101,000 4,040 4,040 実績値 2 年後 104.0 104,030 4,161 4,161 実績値 3 年後 107.2 107,151 4,286 4,286 予測値 ( 省略 ) 10 年後 131.8 131,782 5,271 137,053 予測値 (*2) 3 年目以降は 見込まれる CPI 上昇率 3%(=8%-5%) から各年次の想定元金額を決定する 3 年後の想定元金額 107,151=100,000 {(100 1.01 1.03) 1.03}/100 10 年後の想定元金額 131,782=100,000 {(100 1.01 1.03) 1.03 8 }/100 4 会計処理 (1) X1 年 3 月 31 日 ( 決算日 ) その他有価証券 1,046 有価証券利息 (*3) 1,046 その他有価証券 3,954 その他有価証券評価差額金 (*4) 3,954 (*3) 金利調整差額の償却額 1,046(=(110,462-100,000)/10 年 ) (*4) その他有価証券評価差額金 3,954(=105,000-101,046) なお 利息法による場合 金利調整差額の償却額は1,000(=100,000(1 年目期首の想定元金額 ) 5.04%(1 年目の実績値に基づくキャッシュ フローの予測による実効利子率 )-4,040( 受取利息額 )) その他有価証券評価差額金は4,000(=105,000-101,000) となる また 取得価額が取得時の想定元金額と一致している場合において期末時点における想定元金額を当期末の償却原価とみなす方法によるときには 金利調整差額の償却額は1,000(=101,000(1 年目末の想定元金額 )-100,000) その他有価証券評価差額金は4,000(=105,000-101,000) となる ( 取得価額が取得時の想定元金額と一致していない場合には 期末時点における想定元金額に 取得価額と取得時の想定元金額との差額を利息法 ( 継続適用を条件として定額法も可 ) により加減した金額を当期末の償却原価とみなす方法によることなども認められると考えられる ) - 16 -

(2) X2 年 3 月 31 日 ( 決算日 ) その他有価証券 3,415 有価証券利息 (*5) 3,415 その他有価証券 15,539 その他有価証券評価差額金 (*6)15,539 (*5) 金利調整差額の償却額 3,415(=(131,782-101,046)/9 年 )(2 年目以降は 実績値に基づき予測値を修正した上で再計算を行う その場合に 予測値と実績値との差額については 当該期間の見積りの修正であるため 過年度に遡及して修正せずに 当該年度以降の再計算に含める ) (*6) その他有価証券評価差額金 15,539(=120,000-(101,046+3,415)) なお 利息法による場合 金利調整差額の償却額は3,030(=101,000(2 年目期首の想定元金額 ) 7.12%(2 年目の実績値に基づくキャッシュ フローの予測による実効利子率 )-4,161( 受取利息額 )) その他有価証券評価差額金は15,970(=120,000 -(101,000+3,030)) となる また 取得価額が取得時の想定元金額と一致している場合において期末時点における想定元金額を当期末の償却原価とみなす方法によるときには 金利調整差額の償却額は3,030(=104,030(2 年目末の想定元金額 )- 101,000) その他有価証券評価差額金は15,970(=120,000-104,030) となる 以上 - 17 -