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の検討を意味する 2011 年 財務報告評議会 (FRC) はディスカッション ペーパー 会社の有効なスチュワードシップ -コーポレート レポーティング及びの強化 ( 以下 本 D P という ) を公表した 1 本 DPの目的は コーポレート レポーティングやを通じて 取締役会と委員会のスチュワードシップの役割の有効性を強化するための方法を検討することであった これは コーポレート ガバナンス及びレポーティングと の関連性を高めるための方法 以下は 本 D P に含まれる記述の抜粋であり コーポレート ガバナンス及びレポーティングとの関係を説明している また 広い意味での 会社に対する投資における スチュワードシップ の役割を述べている 会社の取締役は 最終投資家である資産保有者による会社の投資に対する 直接のスチュワードである また ファンドマネージャーも 多くの資産保有者に対して中間的なスチュワードシップの役割を担っている 英国のコーポレート ガバナンス コード及びスチュワードシップ コードは これらのスチュワードシップの役割について扱っている 28 会計 ジャーナル No.749 Dec. 2017

スチュワードシップとは何か? 投資家は 取締役会に管理 (control) を委託し 管理状況についての報告を受ける 投資家は 取締役会に対し 戦略的方向の決定 上級経営者による当該戦略の実施の確保 投資家が進捗状況を評価するためのオープンかつ誠実な報告を期待している 英国コーポレート ガバナンス コードの目的は 有効で 企業家精神にあふれ かつ慎重な経営を促し 会社の長期的成功を可能にすること であり 投資家の取締役会に対する信頼は 英国コーポレート ガバナンス コードに支えられている 投資家利益の主なスチュワード役を担うのは取締役会であるが 多くの個人投資家及び年金保持者は ( 受託された資金を運用する ) ファンドマネージャーに対しても代理人としての行動を期待し ファンドマネージャーによる投資家のスチュワード役としての積極的な行動を期待していることが多い 上記のシステムは 会社から投資家に対し適切 (robust) で信頼できる情報が提供されること また 当該情報に対するが行われることに依拠している FRC 会社の有効なスチュワードシップ -コーポレート レポーティングとの強化 (2011 年公表 )( 4 頁 ) コーポレート レポーティングは 取締役が 会社のリソースのガバナンスに関する投資家への説明責任 (accountability) を果たすためのメカニズムを提供する スチュワードシップの役割を担う取締役及びアセットマネージャーは 最終投資家と代理人の関係にある また 人も 投資家と代理人の関係にある 代理人関係の有効性の鍵となる要件は 依頼人が 代理人に対して正当な信頼 (justified trust and confidence) を有することである は 報告書において財務諸表に対する意見を表明することにより コーポレート レポーティングに対する投資家の信頼 ひいては取締役の説明責任に対する投資家の信頼を支える保証を提供することを目的としている コーポレート ガバナンス及びレポーティングに対する投資家の信頼と の価値に対する投資家の信頼の間には強い相関関係がある この信頼は壊れやすいが 重要である に対する信頼がなければ 想定受益者にとってのの価値の本質である ガバナンスとレポーティングに対する信頼をによって高めることはできない 金融危機を受け FRC 以外の他の多くの機関等 2 も コーポレート ガバナンス及びレポーティング 並びにに関するコンサルテーションを行っている時期に 本 D Pは公表された F R Cは 本 DPを公表後すぐに 継続企業及び流動性リスクに関するシャーマン調査委員会も立ち上げた ⅰ 本 D P 及びその他の多くのコンサルテーションにおける重要なテーマは コーポレート ガバナンス及びレポーティング並びにが 投資家の期待を満たしておらず 投資家から十分な信頼を得ていないことだった 財務諸表の作成及びの過程で行われる ことが必要だった 報告書は 単に財務諸表に対する 形式の意見が記載されるだけのものであることからあまり読まれておらず 投資家は 報告書の情報価値の向上を求めていた FRCは 金融危機により損なわれたコーポレート ガバナンス及びレポーティング並びにに対する信頼を回復するための施策の策定に際して 経営者及び人の主な こと に対する脅威を減らすこと 並びに を それぞれの相互依存性を認識した上で 向上させることに重点を置くことを目的とした F R Cは コーポレート ガバナンス及びレポーティング並びにの品質の強化に関して 2 つの戦略を設け 以下を促進する枠組みを策定することを目指した 取締役及び職業専門家による 及び投資家による有効な対話 (engagement) 十分な情報に基づく意思決定を支える の公表 FRC は 上記のいずれの戦略においても 高品質のが 重要な役割を担うことが可能であり また担うべきと考えた FRC は 報告書の情報価値が高まり投資家の関心が高くなれば が 高品質のコーポレート ガバナンス及びレポーティングを 支えるより強力かつ価値のある役割を担うことができると考えた No.749 Dec. 2017 会計 ジャーナル 29

情報価値の高い報告書は ( 人が実施の過程で得た ) 会社に関する洞察 (i n s i g h t) 及び自体に関する洞察の双方を提供できる可能性がある 投資家を含む様々な利害関係者から 長文化した報告によって 人が会社に関する一義的な情報源になるべきではないという懸念が示された そこで FRCは 全ての場合において 特定の事項に関する取締役及び委員会の責任を強化し それに平行する形で ( 二次的なものとして ) 人の役割及び責任を強化することにより 当該事項に関する人と会社の関係に更なるダイナミズムを生じさせるアプローチを採用した したがって 人の責任の強化は 会社の責任を支えるものであり 会社の責任を損なうものではない 人は もし会社が報告しない場合には報告書において報告を行うことが想定されているが 報告の一義的責任は会社が有する 以下に記載する F R Cが講じた主な施策の概要については 付録に記載している コード及び基準の原文は FRCのウェブサイト 3 から閲覧可能である 人の役割の本質は に対する意見の表明である 利害関係者からは これが 引き続き人の主たる役割であるべきという強い要望があった 実際 高品質なが より一貫して行われること ( すなわち 人による信頼に値する行動がより一貫して行われること ) を求める声がある FRCは 報告書におけるの透明性が高まることにより 人による実施したに関する投資家への説明責任が強化されれば それによって 及びに対する投資家の期待についての投資家と人の対話の機会を増やすことができると考えた また 人と委員会による品質に関するコミュニケーションが強化される可能性があると考えた 投資家及び委員会からより注視され フィードバックを受けることによって 高品質ののより一貫した実施が促進される可能性がある 高品質なが一貫して行われることの強化に関しては FRCは FRC 及び他の独立監督機関により品質が低いことが共通して識別されている様々な領域について の基 準及び品質管理基準の強化のため 国際 保証基準審議会 (IAASB) と引き続き連携を行っていく また FRCは の検査結果に関する F R Cと委員会とのコミュニケーションを強化し さらに 委員会向けに 委員会による品質の評価の際に役立つガイダンスを策定した 長文化した報告の要求事項の導入によって 人の選任及びの有効性の監視を行う委員会の役割が損なわれないようにすることが重要である そこで FRCは 高品質のの実施の確保に関する委員会の責任を強化し 委員会に対し 外部に関連する領域において委員会が行った作業について年次報告書で報告することを求め また FTSE350 社に対し 少なくとも 10 年に 1 回 の入札を行うことを求めた ( コンプライ オア エクスプレイン方式 ) 品質は 意見の基礎となる職業専門家としての判断の質に最も直接的に依存する 当該判断は 計画からの完了までののあらゆる過程で行われる しかしながら の受益者として想定されている者は 通常 外部の利害関係者であり これらの判断を知ることはできない したがって 品質は 外部の利害関係者にとってその大部分が不透明である そこで FRCの長文化した報告書の取組みでは の範囲の決定及びの実施の際に人が行う主な判断の一部についての透明性を 被企業に特有な形で高めることに重点を置いた 加えて FRCは 以下を行った 委員会に対し 以下を含め 財務諸表に関連して検討した事項について年次報告書において報告することを要求した 人が委員会に指摘した事項 人の独立性並びに選任及び再任 ( 入札を含む ) の監視に関する事項 人による委員会への報告に関する現行の要求事項を強化した 人に対し 人が委員会に指摘した事項が委員会の報告書において適切に記載されていなかった場合には 当該状況について報告書において記載することを要求した また FRCは 取締役による報告も強化した 年次報告書が 公正であり バランスがとれ かつ理解可能であること (f a i r, balanced and understandable) に関する要求事項や 会社のビジネスモデル リスク管理及び内部統制並びに会社の主要なリスク ( ビジネスモデル 将来の業績見通し 支払能力 流動性を脅かすものを含む ) の評価の報告に関する新しい要求事 30 会計 ジャーナル No.749 Dec. 2017

項を導入した これらの主要なリスクの内容及び当該リスクをどのように管理 低減しているかについての報告を要求した 加えて 継続企業に関する報告についてのより明確な要求事項 及び 会社が適切な長期間にわたって持続する可能性に関する取締役の合理的な期待について記載する 持続可能性に関するステートメント (viability statement) についての新しい要求事項を導入した についても ( 非財務情報に関するガバナンスの強化のため ) 人の責任の強化を求める要望があった ただし 年次報告書に対する完全な 又は 保証業務 まで求める要望はなかった むしろ 利害関係者は I S A 7 2 0に基づく その他の記載内容 に関する人の責任を強化できると考えていた 特に 現行の要求事項では 人は済み財務諸表との相違を識別し 年次報告書を通読する際にその他の明らかな重要な虚偽記載を見つけた場合には それに対応することのみが求められていた FRCは 人が の過程で得た会社に関する全ての知識を考慮し 当該知識と年次報告書の間に相違がないか検討することを確保したいと考えた そこで 関連する人の責任を強化し 報告書において その他の記載内容に関する人の責任及び作業の結果について記載することを求めた また FRCは 上記の強化を利用して 取締役の新しい責任である 年次報告書が 公正であり バランスがとれ かつ理解可能 であること それについて年次報告書で述べること 並びに リスク文化 リスク管理 会社のビジネスモデル 主要なリスク 継続企業の前提に基づく会計の基礎の採用 及び持続可能性ステートメントに関する取締役の責任の強化及び報告責任について 人が検討することを確保した 改訂された ISA720に基づく年次報告書に関する人の責任の強化の一環として 監 査人に対し ( の過程で得た知識に基づき ) これらの事項に関して取締役が報告責任を果たしていないことを識別したかを報告書に記載することを要求した FRCは このような形で 非財務情報に関する人の責任を取締役の責任とより整合させることにより 人は 取締役が責任を果たす上でより有効な役割を担うことができ また FRCが促進している取締役の信頼に値する行動を支えることができると考えた これは 取締役による報告の強化を通じて 取締役の新しい及び強化された責任の結果を透明化することによって生じる便益から派生する便益であると考えた 英国における長文化した報告の導入後の最初の 2 年間の経験について記載した FRCの報告書 ( 長文化した報告書 : 適用初年度の経験のレビュー (2015 年 3 月公表 ) 4 及び 長文化した報告書: 更なる経験のレビュー (2016 年 1 月公表 ) 5 ) を参照いただきたい 直近の動向については の動向 :2016/2017 年 (2017 年 7 月公表 ) 6 に記載している FRCは これらの施策の導入の直接的な結果として 人と委員会の間 及び人と投資家の間での に関する対話が高まったと確信している 投資家との対話に関しては 主に 個々の業務に関する対話ではなく より一般的な投資家の期待に関する対話が高まった 長文化した報告の導入後の最初の 2 年間の経験に関する FRCの報告書では 投資家からのインプット ( 投資家による 優れた報告書の実例を表彰する取組み ⅱ を含む ) に対応した報告の改善について記載している ( 2 0 1 7 年 9 月 ) 以下は FRC が講じた コーポレート ガバナンス及びレポーティングに関する主な施策並びに関連するに関する施策の要約である ( UKCGC X.n.n は 英国コーポレート ガバナンス コードの関連規定を示す ) 英国政府は 説明的報告 (narrative reporting) に関する要求事項を変更し 会社に対して の公表を要求した FRCは を 戦略報告書は 英国における I S A 7 2 0に基づく その他の記載内容 に該当する 人の責任を強化し の過程で人が得た知識に照らした相違に対処することを要求した 英国に No.749 Dec. 2017 会計 ジャーナル 31

公表し また を設置し 今日におけるレポーティングに対するニーズへの実務的な解決策を 投資家と会社が連携して考える環境を提供した FRCは 取締役に対し 年次報告書及び財務諸表が 全体として であること 及び 会社の業績 ビジネスモデル及び戦略を株主が評価するために必要な情報を提供していることについて 年次報告書に記載することを要求した (UKCGC C.1.1) FRCは 取締役に対して以下を要求した 会社のビジネスモデルを開示すること (UKCGC C.1.2) 継続企業の前提に基づく会計の基礎を採用することが適切と考えているかどうか 及び最低 1 2か月間に関する重要な不確実性を識別したかどうかについて記載すること (UKCGC C.1.3) 会社の主要なリスク ( ビジネスモデル 将来の業績見通し 支払能力又は流動性を脅かすものを含む ) に関する適切な (robust) 評価を実施した旨を確認すること 当該リスクの内容及び当該リスクをどのように管理 低減しているか説明すること (UKCGC C.2.1) 会社の展望をどのように評価したか 評価対象とした期間及び当該期間が適切と考える理由について説明すること 並びに 評価対象とした期間における事業の継続及び債務の履行 ( 会社の持続 (viable)) が合理的に期待できると考えているかどうかについて 条件や仮定を示して記載すること (UKCGC C.2.2) おけるISA700を変更し ISA720に基づく人の責任に関する報告を要求した これらの変更は 英国の基準を I A A S Bの基準に整合させるために行われたその後の変更に組み込まれている ⅲ 人は 報告書において 左記の取締役による記述がの過程で得た人の知識と相違するかどうか考慮する責任を有することを記載し 当該考慮の結果について報告することが求められる UKCGC C.1.2に従った開示は 英国の ISA720における その他の記載内容 に該当する 人は ISA(UK)720 に従って 報告書において UKCGC C.1.3 C.2.1 及びC.2.2に基づき報告が求められるそれぞれの事項が の過程で得た人の知識と相違するか否かを考慮する責任を有することを記載し 当該考慮の結果について報告することが求められる また 人は UKCGC C.1.3 C.2.1 及びC.2.2で求められる記述に関して 報告書で強調又は説明すべき重要な事項があるかどうか報告することが求められる FRCは 委員会に対する要求事項を強化し 委員会に対し 取締役会から要請があった場合には 年次報告書と財務 FRCは 人に対し に関連しから生じた以下の事項に関する報告を要求した 諸表が公正で バランスがとれ かつ理解可能なものであるかど 上最も重要な影響を与えた重要な虚偽表示リスク うか取締役会に助言を提供することを要求した また 以下を含 人が重要性の概念をどのように適用したのかの説明 めた 委員会が行った作業について 年次報告書において報告することを要求した 委員会が重要と判断した財務諸表に関連する事項 ( 委員会向けのガイダンスにおいて これには 人が指摘した事項を含めなければならないことが記載されている ) (UKCGC C.3.4) 外部の有効性の評価方法 外部人の選任 再任のアプローチ 並びに人の在任期間及び入札の情報に関するその他の特定の事項 (UKCGC C.3.8) の範囲の概要 ( のリスクにどう対処したか及び によりどのような影響を受けたのかを含む ) FRCは 委員会による財務報告プロセスの監視に関連する事項について 外部人による委員会に対する報告を強化した FRCは 委員会の作業に関する報告 (UKCGC C.3.8) において 人が委員会に対してコミュニケーションを行った事項が適切に対処されていない場合には 人に対し ISA (UK)720 に従って報告することを要求した 32 会計 ジャーナル No.749 Dec. 2017

また FRCは 取締役会向けに リスク管理 内部統制 継続企業に関する事項 長期的な持続可能性の評価及び報告に関するガイダンスを改訂 統合して公表し また 委員会向けのガイダンスを強化し 公表した 1 https://www.frc.org.uk/our-work/publications/frc- Board/Effective-Company-Stewardship-Enhancing- Corporate-File.pdf 2 欧州委員会による コーポレート ガバナンス及びに関するグリーン ペーパーの公表 英国政府による 説明的報告の将来 (The Future of Narrative Reporting) に関するコンサルテーション ペーパーの公表 英国財務省特別委員会及び英国上院経済問題委員会による提言 米国公開企業会計監視委員会 (PCAOB) 及びIAASBによる報告書の変更の可能性についてのコンサルテーション ペーパー等の公表が含まれる 3 www.frc.org.uk 4 https://www.frc.org.uk/getattachment/561627cc- facb-431b-beda-ead81948604e/extended-auditor- Reports-March-2015.pdf 5 https://www.frc.org.uk/getattachment/76641d68- c739-45ac-a251-cabbfd2397e0/report-on-the-second- Year-Experience-of-Extended-Auditors-Reports- Jan-2016.pdf 6 https://www.frc.org.uk/getattachment/915c15a4- dbc7-4223-b8ae-cad53dbcca17/developments-in- Audit-2016-17-Full-report.pdf ⅰ FRCは 2011 年 3 月 継続企業及び流動性リスクへの企業及び人の対応について調査する委員会 ( シャーマン調査委員会 ) を立ち上げた シャーマン調査委員会は 2012 年 6 月に最終報告書と提言を公表している ⅱ 英国投資協会 (The Investment Association) は 投資家に有益と評価された報告書を表彰する 報告大賞 (Auditor Reporting Awards) を設け これまでに 2014 年 11 月及び 2015 年 11 月の 2 回公表している ⅲ FRCは 本 DPによるコンサルテーションの結果 2012 年に英国の基準を改訂し その他の記載内容に関する人の責任を強化した 当該変更は その後 2 016 年に行われた基準の改訂に組み込まれている 2016 年の基準の改訂は 関連する IAASBの国際基準 (2015 年にISA720( 改訂 ) を公表 ) の採用 欧州改正法定指令及び社会的影響度の高い事業体 (PIE) 法定規則の取込みのために行われた * 必須研修科目 の品質及び不正リスク対応 研修教材教材コード J 0 3 0 4 2 4 研修コード 3 0 0 1 履修単位 1 単位 No.749 Dec. 2017 会計 ジャーナル 33