産業トピックス

Similar documents
[000]目次.indd

【No

スライド 1

Microsoft Word - 20_2

平成24年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度(閣議了解)

エコノミスト便り

untitled

untitled

Microsoft Word - 18_2

エコノミスト便り【欧州経済】ユーロ圏はどのように財政を再建したか

ロシア 3節 第 第3節 ロシア 1 マクロ経済動向 ロシア経済は 緩やかな回復基調にある 2014 年 7 以下 輸出 個人消費 消費者物価 金融市場の動 月以降のウクライナ危機発生及びクリミア併合に伴う 向を中心に概観する 欧米からの経済制裁に加え 2015 年以降 原油価格 の下落を主因として

[ 参考 ] 先月からの主要変更点 基調判断 3 月月例 4 月月例 景気は 急速な悪化が続いており 厳しい状況にある 輸出 生産は 極めて大幅に減少している 企業収益は 極めて大幅に減少している 設備投資は 減少している 雇用情勢は 急速に悪化しつつある 個人消費は 緩やかに減少している 景気は

今回の金融政策報告書では 米国内の投資活動が弱いために輸出が想定ほど伸びていないとしながらも 金融業などサービス関連の好調さを示す分析や 商品価格下落がカナダ企業の投資活動を抑制する動きは底打ちしたとの指摘など カナダ景気に前向きな材料も散見されます 当面は 政策金利の据え置きを続けると見通します

Microsoft Word ECB利下げ.doc

Currency201207

(Microsoft Word \214\216\215\206_\203g\203s\203b\203N1\201i2010\224N\223x\214o\215\317\214\251\222\312\202\265\201j.doc)

3_2

現代資本主義論

長と一億総活躍社会の着実な実現につなげていく 一億総活躍社会の実現に向け アベノミクス 新 三本の矢 に沿った施策を実施する 戦後最大の名目 GDP600 兆円 に向けては 地方創生 国土強靱化 女性の活躍も含め あらゆる政策を総動員することにより デフレ脱却を確実なものとしつつ 経済の好循環をより

PowerPoint プレゼンテーション

1. 30 第 1 運用環境 各市場の動き ( 4 月 ~ 6 月 ) 国内債券 :10 年国債利回りは狭いレンジでの取引が続きました 海外金利の上昇により 国内金利が若干上昇する場面もありましたが 日銀による緩和的な金融政策の継続により 上昇幅は限定的となりました : 東証株価指数 (TOPIX)

各資産のリスク 相関の検証 分析に使用した期間 現行のポートフォリオ策定時 :1973 年 ~2003 年 (31 年間 ) 今回 :1973 年 ~2006 年 (34 年間 ) 使用データ 短期資産 : コールレート ( 有担保翌日 ) 年次リターン 国内債券 : NOMURA-BPI 総合指数

Microsoft Word - 49_2

<4D F736F F D20819A819A8DC58F49835A C C8E816A2E646F63>

スライド タイトルなし

別紙2

【ロシア最新経済金融週報】

日本経済の現状と見通し ( インフレーションを中心に ) 2017 年 2 月 17 日 関根敏隆日本銀行調査統計局

金融政策決定会合における主な意見

Microsoft Word - 15_2

経済・物価情勢の展望(2016年10月)

経済・物価情勢の展望(2017年7月)

経済・物価情勢の展望(2018年1月)

< 豪州債券市場の市況および今後の見通し > 2016 年の豪州債券市場では 金利が低下しました 年初から 2 月にかけては 中国株をはじめ世界の株式市場が下落するなど市場のリスク回避姿勢が強まる中 金利低下が進みました 1 月末に日銀のマイナス金利導入発表を受け 欧州など他国でもさらなる金融緩和期

【東南アジア経済】ASEANの貿易統計(5月号)~輸出は好調も、旧正月の影響を均せば増勢鈍化

低インフレ 乏しい利上げ観測労働市場に目を向けると 8 月の失業率は約 年ぶりの低水準となる5.3% に低下した 雇用者数も伸びており 一部では技術者不足の声も聞かれる RBAは今後数年 失業率は自然失業率とされる5.% を目指して低下が続くとの見方を示している ただ 賃金の上昇率は ~ 月期が前年

中国におけるインフレの行方 中国経済は減速しているものの 過熱の解消にはまだ至っていない 年 9 月のリーマン ショックを受けて 中国は輸出が大幅に落ち込み 景気後退を余儀なくされたが 兆元に上る内需拡大策や 金利と預金準備率の大幅な引き下げをはじめとする拡張的財政 金融政策が実施されたことを受けて

(2) 資産構成割合の推移 ( 給付確保事業 ) 1 資産配分実績の基本ポートフォリオからの乖離の推移 2 実践ポートフォリオと資産配分実績の推移 3. 運用受託機関 平成 29 年 3 月末現在 2

中国:なぜ経常収支は赤字に転落したのか

1.ASEAN 概要 (1) 現在の ASEAN(217 年 ) 加盟国 (1カ国: ブルネイ カンボジア インドネシア ラオス マレーシア ミャンマー フィリピン シンガポール タイ ベトナム ) 面積 449 万 km2 日本 (37.8 万 km2 ) の11.9 倍 世界 (1 億 3,43

Economic Trends    マクロ経済分析レポート

中国:PMI が示唆する生産・輸出の底打ち時期

【東南アジア経済】ASEANの貿易統計(10月号)~輸出はスマホ用電子部品を中心に高水準を維持

社団法人日本生産技能労務協会

( 億円 ) ( 億円 ) 営業利益 経常利益 当期純利益 金 25, 2, 15, 12, 営業利益率 経常利益率 額 15, 9, 当期純利益率 6. 1, 6, 4. 5, 3, 2.. 2IFRS 適用企業 8 社 214 年度 215 年度前年度差 ( 単位 : 億円 ) 前年

経済・物価情勢の展望(2017年10月)

<4D F736F F F696E74202D E835A838B94C5817A837D815B B834A E738FEA816A2E >

FOMC 2018年のドットはわずかに上方修正

【16】ゼロからわかる「世界経済の動き」_1704.indd

第45回中期経済予測 要旨

( 億円 ) ( 億円 ) 営業利益 経常利益 当期純利益 2, 15, 1. 金 16, 額 12, 12, 9, 営業利益率 経常利益率 当期純利益率 , 6, 4. 4, 3, 2.. 2IFRS 適用企業 1 社 ( 単位 : 億円 ) 215 年度 216 年度前年度差前年度

1.ASEAN 概要 (1) 現在の ASEAN(216 年 ) 加盟国 (1カ国: ブルネイ カンボジア インドネシア ラオス マレーシア ミャンマー フィリピン シンガポール タイ ベトナム ) 面積 449 万 km2 日本 (37.8 万 km2 ) の11.9 倍 世界 (1 億 3,43

サマリー 1 市場の関心は米大統領選の行方に集まっています 世論調査においてドナルド トランプ氏の優勢が報じられると 市場の更なる丌確実性が懸念され リスク資産からの資金流出が記録されました 10 月の MSCI 世界株価指数はマイナス 2.01% MSCI 新興国株価指数は 0.18% と新興国が

第1章

【東南アジア経済】ASEANの貿易統計(1月号)~輸出の好調続くも新型スマホ関連がピークアウトへ

01Newsletterむさしの6月.indd

2018 年は激動の年 年初来 トルコ株式指数はトルコリラベースで最大で約 24% 下落し トルコリラは日本円に対して最大で約 45% 下落しました トルコ株式 * の推移 ( トルコリラベース ) /12 18/03 18/06 18

グローバル株式市場を俯瞰する~2015年8月末データで見る市場動向~

untitled

○ユーロ

2019 年 3 月期決算説明会 2019 年 3 月期連結業績概要 2019 年 5 月 13 日 太陽誘電株式会社経営企画本部長増山津二 TAIYO YUDEN 2017

IMF世界経済見通し 2015 年 4月 第 章 要旨

ブラジル中国インド インドネシア ロシア 図表 新興国の消費者物価上昇率 ( 単位 :%)( 資料 :IMF 世界経済見通し ) 通常であれば 成長率が低下すれば 国内の需給バランスが緩和し むしろ物価は低下するのが自然である しかし 中国以外の カ国は逆に物価上

PowerPoint プレゼンテーション

Microsoft Word - A_200810XX_インドネシア経済事情.doc

平成14年1月20日

RW ppt

マーケット フォーカス経済 : 中国 2019/ 5/9 投資情報部シニアエコノミスト呂福明 4 月製造業 PMI は 2 ヵ月連続 50 を超えたが やや低下 4 月 30 日 中国政府が発表した4 月製造業購買担当者指数 (PMI) は前月比 0.4ポイントの 50.1となり 伸び率がやや鈍化し

nichigingaiyo

Economic Indicators   定例経済指標レポート

物価の動向 輸入物価は 2 年に入り 為替レートの円安方向への動きがあったものの 原油や石炭 等の国際価格が下落したことなどから横ばいとなった後 2 年 1 月期をピークとし て下落している このような輸入物価の動きもあり 緩やかに上昇していた国内企業物価は 2 年 1 月期より下落した 年平均でみ

Newsletterむさしのvol_9.indd

リンギ安進むマレーシア~原油安による経済への影響~

PowerPoint プレゼンテーション

資料1

経済学でわかる金融・証券市場の話③

CW6_A3657D14.indd

PowerPoint プレゼンテーション

Newsletterむさしの11.indd

Microsoft PowerPoint - MXN120417

01Newsletterむさしの7.indd

Invesco Premia Plus Fund

けた この間 生産指数は 上昇傾向で推移した (2) リーマン ショックによる大きな落ち込みとその後の回復局面平成 20 年年初から年央にかけては 米国を中心とする金融不安 景気の減速 原油 原材料価格の高騰などから 景気改善の動きに足踏みが見られたが 生産指数は 高水準で推移していた しかし 平成

ファンダの鬼・柳澤 浩と小杉 篤諭の「ファンダメンタルズの学び方、活かし方セミナー!」

GSS1505_P indd

Microsoft PowerPoint - 3rdQuarterPresentations2013_J03.ppt

<92868D918C6F8DCF D E786C7378>

平成 23 年 3 月期 決算説明資料 平成 23 年 6 月 27 日 Copyright(C)2011SHOWA SYSTEM ENGINEERING Corporation, All Rights Reserved

ecuador

平成23年11月1日

個人消費の回復を後押しする政策以外の要因~所得の減少に歯止め、節約志向も一段落

Economic Trends    マクロ経済分析レポート

2. 利益剰余金 ( 内部留保 ) 中部の 1 企業当たりの利益剰余金を見ると 製造業 非製造業ともに平成 24 年度以降増加傾向となっており 平成 27 年度は 過去 10 年間で最高額となっている 全国と比較すると 全産業及び製造業は 過去 10 年間全国を上回った状況が続いているものの 非製造

1. 30 第 2 運用環境 各市場の動き ( 7 月 ~ 9 月 ) 国内債券 :10 年国債利回りは上昇しました 7 月末の日銀金融政策決定会合のなかで 長期金利の変動幅を経済 物価情勢などに応じて上下にある程度変動するものとしたことが 金利の上昇要因となりました 一方で 当分の間 極めて低い長


Newsletterむさしの12.indd

Microsoft PowerPoint - 15kiso-macro10.pptx

Newsletterむさしの_2.indd

株式市場 米国株 トランプ氏の政策への期待感後退で調整も MSCI 米国 2, % 先月の回顧 米国株式市場は上昇しました 11 月 8 日 ( 現地 ) に行われた大統領選挙でトランプ氏が当選し 減税やインフラ投資の拡大などの同氏の政策に注目が集まりました 債券市場では金利が上

月例経済報告

Transcription:

平成 7 年 (1 年 ) 月 11 日 ~1 年はブラジルがマイナス成長 中南米全体でもゼロ成長に減速 ~ 1. 中南米経済の概況 中南米主要 7 ヵ国の 1 年の実質 GDP 成長率は 前年比 +.% へ減速 1 年はゼロ成長 1 年も 1% 台の成長に止まる公算 中南米主要 7 ヵ国 ( ブラジル アルゼンチン メキシコ コロンビア チリ ベネズエラ ペルー ) の景気は 一次産品価格の下落の影響もあり総じて低迷している 特に原油への依存度が高いベネズエラの 1 年の実質 GDP 成長率は前年比.% と低迷 ブラジルも同 +.1% とゼロ近傍まで減速した アルゼンチンについては政府統計では同 +.% と辛うじてプラス成長を維持したが 民間推計ではマイナス成長に陥ったとみられている これら ヵ国とは対照的に 太平洋同盟諸国 ( メキシコ コロンビア チリ ペルー ) の景気は 相対的に堅調を維持している もっとも 一次産品価格下落の影響を完全には避けられず 1 年の実質 GDP 成長率はメキシコ ( 前年比 +.1%) チリ( 同 +1.9%) ペルー( 同 +.%) 共に同 +% 前後に止まった コロンビア ( 同 +.%) は 治安改善とインフラ投資拡大により 唯一高めの成長率を維持した この結果 1 年の中南米主要 7 ヵ国の実質 GDP 成長率は同 +.% と前年 ( 同 +.7%) から減速した ( 第 1 表 第 1 図 ) 太平洋同盟諸国が景気を下支えした一方 ブラジル アルゼンチン ベネズエラがマイナス寄与となった 景気が相対的に堅調な太平洋同盟諸国と景気が低調な ヵ国 ( ブラジル アルゼンチン ベネズエラ ) との差をもたらした一因は インフレ抑制の成否であると考えられる 1 年の太平洋同盟諸国のインフレ率は前年比 +% 台で安定推移した一方 ブラジルは同 +.% アルゼンチンは同 +.9%( 政府統計の 1 月末値 ) ベネズエラは同 +7.% に達している ( 第 図 ) 1 年の中南米主要 7 ヵ国の成長率はゼロ近傍に止まる見通しである 1 年は資源価格の緩やかな持ち直しが期待できるものの 米国の利上げの影響等もあり成長ペースは抑制されよう 1 年の成長率は前年比 +1.7% と低位に止まるとみられる 1

第 1 表中南米経済の見通し 実質 GDP 成長率 (%) 消費者物価上昇率 (%) 経常収支 ( 億ドル ) 1 年 1 年 1 年 1 年 1 年 1 年 1 年 1 年 1 年 ブラジル.1 1..... 1, 9 メキシコ.1..... アルゼンチン. 1...9.. 1 中南米全体 ( 注 ).. 1.7 11. 1.. 1,7 1, 1, ( 注 ) 全体の数値は主要 7ヵ国の統計に基づく 各国の比重は1 年ドル建て名目 GDP による 7 ヵ国とは ブラジル アルゼンチン メキシコ コロンビア チリ ベネズエラ ペルー.... 1. 1... -. -1. -1. 第 1 図 : 中南米 7 ヵ国の実質 GDP 成長率と寄与度 アルゼンチン ベネズエラブラジル太平洋同盟諸国 7 ヵ国計予測 予測 1 1 1 1 1 ( 注 ) 太平洋同盟諸国はメキシコ コロンビア チリ ペルー 9 7 第 図 : 中南米諸国の消費者物価上昇率 太平洋同盟諸国 ブラジル アルセ ンチン ( 右 ) ヘ ネス エラ ( 右 ) 1 1 1 1 1 1 予測 予測 ( 注 ) 太平洋同盟はメキシコ コロンビア チリ ペルー. ブラジル (1) 景気の現状 景気は再び悪化 1 年は辛うじてプラス成長輸出は年明け後も減速が続く ブラジルの景気は悪化している 四半期毎の成長率の推移をみると 1 年 - 月期に前期比 1.% と大きく落ち込んだ後 7-9 月期は同 +.% -1 月期は同 +.% と緩やかに回復したが 1 年 1- 月期は同.% と再びマイナスに転じた ( 第 図 ) 民間消費が同 1.% と低迷したほか 固定資本形成も同 1.% と 7 四半期連続でマイナスとなった 景気悪化の原因は 1 外需の悪化 財政引き締め インフレ高進による実質所得の減少などである まず 外需をみると 1 月 ~ 月の輸出は前年比 1.% と大幅に減少した 輸出の不振は一次産品輸出が振るわないことが主因だが 工業品の輸出先であるアルゼンチンやベネズエラの景気悪化も影を落としている アルゼンチン向け輸出は同 1.% ベネズエラ向けは同.% と減少が続いている ( 第 図 ) また 財政引き締めも景気の下押し材料となっている 政府は外貨建て国債の投資適格級維持のため 財政引き締めに転じている この結果 1- 月期の政府消費は前期比 1.% と 四半期連続で減少した これは リーマンショックがあった 年 -1 月期以来 最大の減少幅である

第 図 : 実質 GDP 経済活動指数. ( 前期比 %). 実質 GDP 1. 経済活動指数 1... -. -1. -1. -. 11 1 1 1 1 ( 億ドル ) 1 1 第 図 : 品目別輸出 一次産品 半製品 製品 11 1 1 1 1 ( 注 )1ヵ月累計額 景気悪化による歳入減を受けて 政府は歳出削減方針を発表公共料金の引き上げやレアル安でインフレ率は前年比 % 台へ上昇 政府は 1 年に名目 GDP 比.% とマイナスとなったプライマリー バランス ( 基礎的収支 ) を 1 年は同 1.1% の黒字とすることを目標に当初予算を組んだ しかし 最近になって景気の悪化から 歳入が 7 億レアル減少する見通しとなったため 投資支出を中心に同額の歳出削減を行う方針を発表した ルセフ大統領の看板政策であった経済活性化計画 (PAC) は 7 億レアルの大幅削減が計画されている 他には 住宅政策や保健 教育などでも 億レアル超の歳出削減が予定されている 財政再建のために 増税や公共料金の引き上げが始まっており インフレ率は年明け後 急上昇している 政府が価格を決める規制品目の物価上昇率は 昨年 1 月は前年比 +.% であったが 1 月は同 +7.% 月には同 +1.% に跳ね上がっている ( 第 図 ) 加えて レアル安による輸入物価の上昇や名目成長率に連動した最低賃金引き上げ制度による持続的な賃金上昇もあり 月の消費者物価上昇率は同 +.% と 中央銀行のインフレ目標レンジ上限 ( 同 +.%) を大きく超えている ( 第 図 ) 第 図 : 消費者物価内訳 第 図 : 消費者物価 1 1 1 規制品目 市場決定品目 9 7 1 1 1 11 1 1 1 1

インフレによる実質所得の目減りにより 消費も低迷している 1- 月期の自動車登録台数は 前年比 17.1% と大きく落ち込んだ 耐久消費財生産も同 1.% と落ち込んでいる 雇用環境も悪化が目立つ 月の失業率は.% と昨年の.9% から 1. ポイント上昇している また 内外景気の不透明感が強いことから 企業 内外景気の不透明 感から 企業は設備 投資に慎重 は設備投資に慎重になっている 1- 月期の資本財生産は前年比 1.1% と大幅に落ち込んだ こうした状況下 企業と消費者のマインドは共に低迷している ( 第 図 ) 中央銀行は昨年 月の大統領選挙直後から利上げを実施しており 政策金利は現在 1.7% と 9 年 1 月以来の高水準に達している 消費者への調査によると 今後 1 ヵ月の期待インフレ率は 月時点で.9% に上昇している 更に 1% を超えると予想する消費者が全体の 1% に増加している (1 年 1 月時点では.9%) 第 7 図 : 財別鉱工業生産 第 図 : センチメント指標 1 1 1 9 7 資本財 耐久消費財 1 1 1 9 7 消費者センチメント 企業センチメント 9 11 1 1 1 1 9 11 1 1 1 1 () 見通し 19 年代からのブラジル経済を振り返ると 景気は一次産品価格の動向に左右されてきたことがわかる 一次産品価格が上昇し交易条件が改善する局面では高成長となりやすく 逆に一次産品価格が下落し交易条件が悪化する局面では 景気後退に陥りやすい ( 第 9 図 ) これまで好況時に構造改革を先送りしたことで インフレ体質が温存 好況時に構造改革を先送りし 消費拡大がインフレをもたらす体質が温存された結果 高インフレと双子の赤字 ( 経常赤字と財政赤字の並存 ) の問題を抱えている ただし 年代や 9 年代と異なり 外貨借入が大幅には累積しておらず 近年では債務危機を免れている

第 9 図 : 交易条件と実質 GDP 成長率 第 図 :1- 月期の基礎的収支 (=) 1 1 1 1 9 - 実質 GDP( 左 ) - 交易条件指数 ( 右 ) 7-191 1991 1 11 ( 億レアル ) 1 11 1 1 1 1 財政再建に着手したことは朗報 1 年の成長率は前年比 1.% 1 年も同 +.% に止まる公算 財政規律重視派のレヴィ財務相は 財政支出の削減を進めており 内外の投資家の信認を得ている だが 1- 月期の基礎的収支 ( 統合予算ベース ) は 19 億レアルの黒字と 年並みの水準に止まった ( 第 図 ) GDP 比 1.1% の黒字目標に向けた進捗率は 9% であるが 支出が年後半にかさみやすい傾向を考えると達成へのハードルは高いといえる 1 年のブラジル経済は低迷が続き 実質 GDP 成長率は前年比 1.% とマイナスに陥る見込みである 中央銀行が集計する現地エコノミストの予想によると 年初は前年比 +.% であったが足元では同 1.% まで低下している ( 第 11 図 ) 1 年も緊縮財政が続く見込みであり 成長率は同 +.% と低位に止まるだろう 第 11 図 : 実質 GDP 成長率の民間予想 ( 平均 ) 第 1 図 : 消費者物価上昇率の民間予想 ( 平均 ).... 1. 1... -. 1 年 -1. 1 年 -1. 1 1 9 7 1 年 1 年 1 1

インフレは 1 年にかけて低下の見込み政権の求心力低下による緊縮策の頓挫がリスク インフレ率は景気後退と財政金融政策の引き締め 公共料金引き上げの一巡で 今後は鈍化しよう 1 年の消費者物価上昇率は 1 年の前年比 +.% から同 +.% へ低下する見込みである インフレがピークアウトする見込みであることから 利上げの最終局面に近づいているとみられる 今後のリスクは ルセフ政権の求心力が低下し 財政緊縮策が頓挫することが考えられる 現在下院では定数 1 議席に対して与党が 議席を占めるが 大統領の所属する労働者党は 議席に過ぎない ( 与党第一党は 7 議席を有する民主運動党 ) 上院では定数 1 議席に対して与党が 議席を占めるが 労働者党は 1 議席に過ぎない ( 与党第一党は民主運動党で 1 議席 ) 政権の国会内基盤は弱く 財政調整法案への投票では 連立相手の他党だけでなく労働者党からも造反議員が出ている ルセフ政権への支持率は 1% 不支持率が %( 月 ) となっており 痛みを強いる緊縮策をやり遂げることは決して容易ではないことに留意が必要だろう. アルゼンチン (1) 景気の現状 民間推計では 1 年の実質 GDP 成長 率はマイナス 1 年のアルゼンチン経済は同年 7 月に発生したテクニカルデフォルトの影響もあり 大幅に悪化した 外貨の調達が一層困難になったことで 生産に必要な中間財輸入が減少し 国内生産に悪影響が広がった 1 年の実質 GDP 成長率は政府発表ベースでは前年比 +.% と辛うじてプラス成長となったが 民間推計 ( 各機関の平均値 ) では同.% と過去 年間で 回目のマイナス成長に陥ったとされている ( 第 1 図 ) もっとも 足元の景気は持ち直しの兆しがみられる 1 年 1 月の為替急落のショックが和らぎ 前年比 +% 近くに達した生産者物価の上昇が一巡し低下してきたこと ( 第 1 図 ) 今年 月の大統領選挙を控え政府が消費喚起策を開始したこと などから消費者マインドが上向いており ( 第 1 図 ) 製造業生産にも底打ちの兆しが見られる( 第 1 図 )

第 1 図 :GDP 成長率 ( 政府発表ベース ) 1 GDP 成長率 同民間推計 - - - 9 11 1 1 1 第 1 図 : 生産者物価 1 11 1 1 1 1 第 1 図 : 消費者信頼感 第 1 図 : 製造業生産 7 17 17 1 1 1 1 1 (199=) 11 1 1 1 1 1 11 1 1 1 1 消費者物価は % 前後の高い上昇率が続く外貨準備高は小幅増加 消費者物価上昇率は 政府統計では 月には前年比 +1.% まで低下してきた 民間コンサルタントが独自に集計した消費者物価上昇率の平均値は 昨年のペソ切り下げ直後の同 +% 台からは低下したものの 依然として同 +9.%( 月 ) と高止まっている 外貨不足が深刻化しているアルゼンチンであるが 足元では外貨準備が増加している ( 第 17 図 ) 昨年のテクニカルデフォルトで 起債は事実上 不可能になっていたが アルゼンチン国内法に基づく外国通貨建て債券の起債に成功した また 南半球の収穫期が到来し 農産物の輸出シーズンが始まったことも重なり 同国の外貨準備高は年末から 億ドル増加し 月末時点で 9 億ドルに回復した 7

第 17 図 : 外貨準備高 第 1 図 : 対外取引 ( 億ドル ) 11 1 1 1 1 9 ( 億ドル ) 7 貿易収支 輸出 輸入 1 1 1 1 () 見通し 消費刺激策により 短期的には景気を下支えするも インフレの加速が成長を抑制 政府が打ち出した消費喚起策は 今年 月の大統領選挙に向けた選挙対策の色合いも濃い 具体的には白物家電購入を促進するためのクーポン (1 割引き相当 ) を発行するほか % 近い賃上げを容認し 実質所得を維持する方針などが打ち出されている また 雇用確保のため公務員を増員することで対応している ラテンアメリカ経済研究所 (FIEL) の調査によると 過去 年の雇用増加率は 民間が年平均ゼロ % であるのに対し 公務員は同 +.% と高い こうした政策は財政負担を伴うものであり FIEL の推計によると 1 年の財政赤字は GDP 比 7.%(1 年 : 同.7%) に膨らむ見通しである 財政赤字のファイナンスは中央銀行がまかなっており 一時 伸びが鈍化していたマネタリーベースは 昨年終盤から再加速し 足元で前年比 +% 台の伸びとなっている ( 第 19 図 ) こうした刺激策により 景気は短期的には下支えされるとみるが 通貨の増発がインフレを加速させ 結果として 成長を抑制することになろう 対外取引面でも懸念が残る 外貨準備は増加しているが 外貨獲得能力はむしろ悪化している 通貨当局は 年間 1% 程度のペソ下落を容認しているが 同国の高いインフレ率を相殺するには十分ではない この結果 実質為替レートは上昇しており 1 年 1 月の通貨切り下げ効果は既に大方が失われている ( 第 図 ) このように現在のアルゼンチンの経済政策は持続可能とは言い難い状況であり 今年 月の大統領選挙後に誕生する新政権は政策の修正を迫られる可能性もあろう

第 19 図 : マネタリーベース 1 11 1 1 1 1 第 図 : 為替レート ( ペソ / ドル ) 9 7 実質実効為替レート ( 左 ) 対ドルレート ( 右 ) 11 1 1 1 1 今年 月の大統領選挙後も 不安定な経済状態が続く可能性も アルゼンチンでは 大統領の 選は認められておらず 現職のフェルナンデス大統領は出馬できない 大統領派は 後継者としてシオリ ブエノスアイレス州知事を擁立するとみられる 有力な対抗馬として マクリ ブエノスアイレス市長 マサ下院議員の名前が浮上している 最近の世論調査によると シオリ氏への支持率が.% と最も高く 以下 マクリ氏が 7.% マサ氏が.1% となっている 決選投票で野党が候補者を一本化すれば逆転は可能であるとみられるが 今後 政府の狙い通り短期とはいえ景気回復が実現すると シオリ氏に票が更に流れる可能性もある 一方 マクリ氏は政策の大胆な転換を主張しているが ポピュリスト政策に慣れた国民が緊縮政策をどこまで受け入れるかは不透明である 大統領選後も アルゼンチンの経済政策が抜本的に転換される保証はなく 不安定な経済状態が続くリスクが残っている. メキシコ (1) 景気の現状 1- 月期の実質 GDP 成長率は前 期比 +.% へ減速 メキシコ経済は足踏みしている 1- 月期の実質 GDP 成長率 ( 速報 ) は前期比 +.% と -1 月期の同 +.7% から小幅減速した 産業別にみると 製造業 鉱業 ( 石油 ) が全体の成長率を.1% ポイント押し下げた ( 第 1 図 ) 製造業の不振は 悪天候や港湾ストライキなどの一時的な要因もあり マイナス成長に止まった米国経済の影響が大きいとみられる 実際 1- 月期の製品輸出額は前期比.1% と振るわなかった ( 第 図 ) また 鉱業部門の減速は原油価格下落の影響が大きい 9

第 1 図 : 実質 GDP 産業別寄与度. ( 前期比 % 寄与度) 1. 1... -. -1. -1. 1 1 1 1 誤差第 次第 次第 1 次実質 GDP 第 図 : メキシコの輸出 ( 億ドル ) 1, 9 7 製造業製品 ウチ自動車 石油 11 1 1 1 1 良好な雇用環境が 消費を下支え 設備 投資も堅調維持 もっとも 景気の回復基調は崩れていないとみられる 小売売上高も自動車販売も好調が続いている ( 第 図 ) 消費を支えているのは 良好な雇用環境である 月の失業率は.% と リーマンショック後で最も低い水準にある ( 第 図 ) また フルタイムの雇用者数が増加するなど 雇用の質も改善している ( 第 図 ) 更に 実質賃金(1- 月期 : 前年比 +.9%) も上昇している 第 図 : 小売売上 ( 数量 ) (=) 11 1 9 9 11 1 1 1 1 1 - - -1 第 図 : 自動車販売台数 単月 ヵ月平均 1 1 1

第 図 : 失業率 第 図 : 正規雇用増減 (%) ( 前年差 万人 ).... 1 1 - パートタイム - フルタイム - - 9 11 1 1 1 1 インフレ率は原油価格下落に加え 電話料金の引き下げなどを受け低下 インフレ率は足元で低下傾向が顕著になっている ( 第 7 図 ) ガソリン価格の低下に加え 今年 1 月の長距離電話料金の引き下げなどが背景にある 一方 川上の物価動向を示す生産者物価は 前年比ゼロ近辺まで持ち直している ( 第 図 ) 第 7 図 : 消費者物価 消費者物価 1 同コア 1 1 1 1 第 図 : 生産者物価 9 7 1-1 - 1 1 1 1 11

() 見通し 米景気の回復が景気回復を下支え構造改革により 今後 年間で潜在成長率を 1% 押し上げる可能性も メキシコは北米の生産拠点としての地位を固めており 米国 カナダ向けの製品輸出の比率が高い - 月期以降 米国経済が成長ペースを回復するにつれ 輸出増加と それに伴う内需拡大に支えられ 1 年の成長率は緩やかながら加速する見込みである 昨年来のペソ安で価格競争力が回復していることも追い風となろう ( 第 9 図 ) 1 年の実質 GDP 成長率は前年比 +.% 1 年には同 +.% へ緩やかに持ち直すとみる 物価は安定基調が続くと考えられるが ペソ安傾向が続いていることから 年後半から 1 年にかけては 徐々にインフレ圧力が高まっていくことが予想される 中長期的には構造改革が潜在成長率を押し上げることが期待される 1 年 月にはエネルギー部門改革関連法案が成立し 外資導入による生産能力の拡大や効率化が見込まれている エネルギーの他にも 金融や通信分野でも改革が進んでおり 経済協力開発機構 (OECD) は こうした一連の構造改革が今後 年間の潜在成長率を年間 1% 押し上げると試算している 第 9 図 : ドル建て単位労働コスト 1 - - -1-1 1 1 1 今後のメキシコの課題は 米国の利上げへの対応である メキシコ経済は 過去の米国の利上げ局面で資本流出に見舞われ 金融市場の波乱を経験している 最近公開された中央銀行の金融政策委員会議事録によると 人の委員のうち 名は米利上げの前に利上げを実施することを主張 一方 他の 名は景気の現状を鑑み 早期利上げに反対しており 委員会の意見は割れていた 今後 中央銀行からのメッセージに注意する必要があるが 米国の利上げとほぼ同時に利上げに着手する可能性が高いとみておくべきであろう 1

照会先 : 三菱東京 UFJ 銀行経済調査室竹島慎吾 shingo_takeshima@mufg.jp 森川央 morikawa@iima.or.jp 当資料は情報提供のみを目的として作成されたものであり 金融商品の販売や投資など何らかの行動を勧誘するものではありません ご利用に関しては すべてお客様御自身でご判断下さいますよう 宜しくお願い申し上げます 当資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成されていますが 当室はその正確性を保証するものではありません 内容は予告なしに変更することがありますので 予めご了承下さい また 当資料は著作物であり 著作権法により保護されております 全文または一部を転載する場合は出所を明記してください また 当資料全文は 弊行ホームページでもご覧いただけます 1