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l. 職業以外の幅広い知識 教養を身につけたいから m. 転職したいから n. 国際的な研究をしたかったから o. その他 ( 具体的に : ) 6.( 修士課程の学生への設問 ) 修士課程進学を決めた時期はいつですか a. 大学入学前 b. 学部 1 年 c. 学部 2 年 d. 学部 3 年 e

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3 昨年度の校内研究の成果を基に本校では 平成 24 年度の校内研究で 授業における 手立て と 評価 のつながりを意識した授業づくりについて 指導評価シート を基に検討した 平成 24 年度北海道鷹栖養護学校研究紀要 また 平成 25 年度から 2 カ年計画で 般化 を目的とした指導方法について研

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修士論文要旨 2011 年 1 月 キャリア アダプタビリティが大学生の就職活動に与える影響 指導種市康太郎准教授 心理学研究科臨床心理学専攻 209J4009 藤原智佳子

目次 Ⅰ. 問題の背景と所在 3 1. 若年労働者のキャリアに関する問題 3 2. 企業が求める人材 3 2-1. 高度成長期以降に望まれた人材像 3 2-2. 今日望まれている人材像 4 3. 若年労働者へのキャリア支援の変遷 4 3-1. 職業指導の時代 4 3-2. キャリア形成支援の時代 5 4. ライフサイクルからみたキャリア 5 5. 大学におけるキャリア支援プログラム 6 6. キャリア アダプタビリティ 6 6-1. キャリア アダプタビリティの概念 7 6-2. キャリア アダプタビリティの次元 7 6-3. キャリア アダプタビリティの利用 8 Ⅱ. 目的 8 Ⅲ. 方法 9 1. 調査対象および手続き 9 2. 使用した尺度 10 3. 仮説 11 4. データの分析 11 Ⅳ. 結果 11 1. キャリア アダプタビリティ尺度の因子分析 11 1-1. キャリア アダプタビリティ尺度の因子分析結果 11 1-2. 強みに関するキャリア アダプタビリティの因子分析結果 13 2. キャリア支援の講義の出欠とキャリア アダプタビリティ尺度 就職活動尺度との比較 14 2-1.t 検定の結果 14 2-2. 講義内容と学生の出欠との関連について 21 3. キャリア アダプタビリティと就職活動尺度との相関 22 4. 就職活動尺度の妥当性の検証 23 Ⅴ. 考察 23 1. データの分析 23 1-1. キャリア アダプタビリティ尺度の因子分析結果について 23 1-2. 講義の出欠とキャリア アダプタビリティ尺度 就職活動尺度との比較について 24 1

1-2-1.t 検定の結果について 24 1-2-2. 講義内容と学生の出欠率の比較について 25 1-3. キャリア アダプタビリティ尺度と就職活動尺度との相関について 26 1-4. 就職活動尺度 ( 浦上,1996) を5 件法に修正した影響について 27 2. 総合考察 27 2-1. 仮説について 27 2-2. 問題点 27 2-3. 今後の課題 28 Ⅵ. 結論 28 引用文献 30 2

論文要旨 Ⅰ. 問題の背景背景と所在近年 若年労働者のキャリアに関する問題として ニートやフリー アルバイターの増加が挙げられる また 新卒労働者の早期離転職の発生も大きな問題となっている ( 青谷 三宅,2005) このような問題の背景として 1 不況時には採用が得られないという社会的問題性と 2 教育システムにおける問題性が存在する 一方 若年労働者のキャリア発達を支援の変遷は 1960 年代前半から 1980 年代後半までの 職業指導 の時代と 1990 年代前半からの 個別性に合わせた キャリア形成支援 の時代に大別される ( 居神 三宅 遠藤 松本 中山 畑,2005) 若年労働者のキャリアに関する問題を防ぐために着目されているのが キャリア アダプタビリティ という概念である ( 益田,2010) 現在の そして将来予想される職業発達課題に対する個人のレディネスおよび対処能力を示す心理社会的構成概念 (Savickas,2005) と定義され 学生自身の能力開発を中心とした 個別性が高く 多様なキャリア意思決定 または 未決定の課題を抱える人のキャリア発達支援の一助となると考えられる Ⅱ. 目的キャリア アダプタビリティに関する質問紙を使用し その有効性を確かめることとした また キャリア支援の講義への出席者と欠席者との間で キャリア アダプタビリティに違いがみられるか ということについてもあわせて調査するため 以下の2 点を仮説とした 1キャリア支援の講義に出席している学生は 欠席者よりテストの得点が高い 2キャリア アダプタビリティが高ければ就職活動の実行度合いが高い Ⅲ. 手続きおよびきおよび方法都内私立大学の学部 3 年生で キャリア支援の講義の履修者を調査の対象とした 調査に当たっては A 大学キャリア支援室およびキャリア開発事業を担当している ( 株 ) リアセック社に調査の協力を依頼し 調査実施の許可を得た 2010 年 6 月に キャリア支援の講義の履修者 1039 名に キャリア アダプタビリティ尺度 ( 未発表 ) と就職準備尺度 ( 浦上,1996) の質問紙を配布し 7 月末に 941 部を回収した 回答不備は欠損値として処理し 676 名を分析対象とした ( 男性 :175 名, 女性 :501 名, 平均年齢 20.3 歳,SD=0.71, 有効回答率 65.1%) 得られたデータは 以下の4 点について検証を行った 1キャリア アダプタビリティ尺度について因子分析を行い 因子の概念の抽出と 尺度の妥当性を検討する 2キャリア支援の講義に出席している学生は 欠席者よりテストの得点が高いということを仮説として キャリア支援の講義への出欠を独立変数 キャリア アダプタビリティ尺度の各因子得点 就職 3

活動尺度の各因子得点を従属変数として t 検定を行う 3キャリア アダプタビリティが高ければ就職活動の実行度合いが高いということを仮説として キャリア アダプタビリティ尺度と就職活動尺度との相関を分析する 4 調査実施の都合上 就職活動尺度 ( 浦上,1996) を 4 件法から5 件法に修正した際の影響について検討する Ⅳ. 結果 1キャリア アダプタビリティ尺度の因子分析を行った結果 行動 に関するキャリア アダプタビリティは 職業の探求と決定 就職活動の計画と実行 自己概念の明確化 の3 因子が抽出された 強み に関するキャリア アダプタビリティは 協調性 計画性 希望と関心 挑戦と努力 自尊心 の5 因子が抽出された また 信頼性の高さや 各因子間の相関も高く 大学生のキャリア アダプタビリティを計測する尺度として 十分に有効性を示した しかし 質問項目に類似のものが複数存在したため 質問内容を再検討する必要もあるといえる 2キャリア支援の講義の出欠とキャリア アダプタビリティ尺度 就職準備尺度でt 検定を行った結果 第 2 7 11 13 回目の講義における出席者と欠席者との間で尺度間に有意差が認められた 3キャリア アダプタビリティ尺度と就職活動尺度との相関を分析した結果 キャリア アダプタビリティ尺度の各因子と 就職活動尺度の各因子間には有意な正の相関がみられた 4 就職活動尺度は 調査実施の都合上 4 件法から5 件法に修正したが 信頼性係数は高いままであった 尺度内容の内的信頼性は保たれていたと考えられる Ⅴ. 結論本調査では キャリア支援の講義に出席している学生は 欠席者よりテストの得点が高いということ キャリア アダプタビリティが高ければ就職活動の実行度合いが高い という仮説の検証を行ったが どちらも可能性があるということが示唆されたものの 仮説を強く支持する結果を得ることができなかった しかし 本調査で用いた キャリア アダプタビリティ尺度が 社会人基礎力 ( 経済産業省,2006) や キャリア発達にかかわる諸能力 ( 文部科学省,2002) といった 一般に求められる社会人像と一致していたことや 講義に出席した学生のキャリア アダプタビリティが高まっていた回もあったことから キャリア支援の講義が 学生にとって有益であることは明確である 4

引用文献 青谷法子 三宅章介 2005 企業と若年者の仕事に関するミスマッチとキャリア形成についての一考察 - 特に コミュニケーションの果たす役割を中心にして- 東海学園大学研究紀要 10(A),1-24 居神浩 三宅義和 遠藤竜馬 松本恵美 中山一郎 畑秀和 2005 大卒フリーター問題を考えるミネルヴァ書房経済産業省 2006 社会人基礎力に関する研究会 2006 年 7 月発表益田勉 2008 キャリア アダプタビリティと転職の意志生活科学研究 32,13-25 pp.215-238 文部科学省 2002 児童生徒の職業観 勤労観を育む教育の推進について 2002 年 11 月発表 Savickas,M.L. 2005 The Thery and Practice of Career Construction. In S.D. Brown & R. W. Lent (Eds.), Career development and counseling: Putting theory and research to work pp.42-70 Savickas,M.L. 2008 Life-design International Research Group: Career Adaptability Project Meeting Berlin July 19, 2009 at the Humboldt Universität (The proceedings) 浦上昌則 1996 就職活動を通しての自己成長 : 女子大生の場合教育心理学研究 44(4), 400-409 5