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【環境省】各行政機関における政策評価の結果及びこれらの政策への反映状況(個表)

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The Status of Sign Languages

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とを目指す必要がある このためには以下の10 領域における政策課題に取組む必要がある また 分類 Ⅳに分類される意見に基づく場合であっても 原子力施設の廃止措置やこれまで原子力発電の利用に伴い発生した放射性廃棄物の処分の取組に関するこれらの領域における政策課題に取組まなければならない (1) 福島第

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社会的責任に関する円卓会議の役割と協働プロジェクト 1. 役割 本円卓会議の役割は 安全 安心で持続可能な経済社会を実現するために 多様な担い手が様々な課題を 協働の力 で解決するための協働戦略を策定し その実現に向けて行動することにあります この役割を果たすために 現在 以下の担い手の代表等が参加

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JIS Q 27001:2014への移行に関する説明会 資料1

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基本的な考え方 羽田空港の機能強化は 首都圏だけでなく日本全体にとって不可欠であり 機能強化の必要性やその実現方策等について 関係自治体の協力も得ながら できる限り多くの方々に知って頂くように努める 基本的な考え方 1 羽田空港の機能強化の必要性やその実現方策等について できる限り多くの方々に知って

「東京電力株式会社福島第一、第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針第二次追補(政府による避難区域等の見直し等に係る損害について)」

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周南市版地域ケア会議 運用マニュアル 1 地域ケア会議の定義 地域ケア会議は 地域包括支援センターまたは市町村が主催し 設置 運営する 行政職員をはじめ 地域の関係者から構成される会議体 と定義されています 地域ケア会議の構成員は 会議の目的に応じ 行政職員 センター職員 介護支援専門員 介護サービ

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岐阜県手話言語の普及及び障害の特性に応じた意思疎通手段の利用の促進に関 する条例 目次前文第一章総則 ( 第一条 - 第八条 ) 第二章基本的施策の推進 ( 第九条 - 第十六条 ) 附則 ( 前文 ) 手話が言語であることは 障害者の権利に関する条約において世界的に認められており わが国においても

資料3

中間指針第四次追補に関するQ&A集

Transcription:

NE/NEFW/2013 原文 : 英語 2014 年 1 月 23 日 仮訳 最終報告書 ( 要旨部分のみ ) 福島第一原子力発電所外の広範囲に汚染された地域の環境回復に関する IAEA 国際フォローアップミッション 東京都および福島県 日本 2013 年 10 月 14~21 日 1

要旨 国際原子力機関 ( 以下 IAEA という ) は 2011 年 10 月 広範囲に汚染された東京電力福島第一原子力発電所外の地域の環境回復を支援するために 日本に対する国際ミッションを実施した 日本政府からの要請に応えて IAEA は 2013 年 10 月に 福島第一原子力発電所外の広範囲に汚染された地域の環境回復に関する IAEA 国際フォローアップミッション ( 以下 フォローアップミッション または ミッション という ) を編成した 今回は 2011 年 10 月に実施された前回のミッション以降に達成された継続的な環境回復活動の進捗を評価することを主な目的としている フォローアップミッションチームには 13 人の国際専門家が参画した さらに 東京電力福島第一原子力発電所事故に関する IAEA の報告書の作成に責任を負う第 5 ワーキンググループ ( サブグループ 5.2 環境回復 ) の 3 人の専門家が 上記の報告書向けの情報を直接得るためのオブザーバとしてミッションに同行した フォローアップミッションは 以下 3 つの目的を有していた 1. 除染特別地域 (2011 年の前回のミッションには含まれていない ) 及び汚染状況重点調査地域の除染の進捗に関する評価において 日本に支援を提供する 2. 発電所外の広範囲に汚染された地域の環境回復に関する前回のミッションから得た助言を考慮し 環境回復の戦略 計画及び作業をレビューする 3. 調査結果を教訓として国際社会と共有する ミッションは チームに提供された情報の評価 及び日本の関連機関 ( 国 県 地方の各機関 ) との専門的かつ率直な議論を通じて実施された 日本の当局は 環境回復プログラムについて包括的な情報を提供した ミッションチームはまた 除染活動が実施された複数の地域 放射能で汚染された廃棄物及び土壌の一時貯蔵サイト 並びに除染活動で発生した土壌及び廃棄物の中間貯蔵施設に関する調査地域 及び下水汚泥の焼却実証施設を含む被災地域を訪問した 概要 被災地域におけるすべての除染活動及び除染活動により発生する除去物質の管理に取り組むための主たる法律文書として 放射性物質汚染対処特別措置法 ( 以下 特別措置法 という ) が 2011 年 8 月に制定され 2012 年 1 月に施行された 上記の法律に基づく基本方針が 2011 年 11 月に定められたことにより 除染活動を実施するための制度的枠組みが構築された 被災地域は 特別措置法に従って 2 つのカテゴリーに再編成された 除染特別地域 この地域は 東京電力福島第一原子力発電所から半径 20 キロ圏内の 警戒区域 及び個人の年間積算被ばく線量が 20 msv を上回ると予想 2

される 計画的避難区域 と一致する 同地域の除染は日本政府が進めている 汚染状況重点調査地域 この地域には 個人の追加積算線量が 1~20 msv になると推定される いわゆる除染実施区域が含まれている 同地域の除染活動は自治体が実施している この地域全体の平均空間線量率は 0.23µSv/h を上回った 除染プログラムの実際的なアプローチでは 図 2 に示されているように除染特別地域が以下の 3 つのカテゴリーに分類される エリア 1( 緑色 ) 推定年間線量は 20 msv 未満である ( および 1mSv 以上 ) エリア 2( 黄色 ) 推定年間線量は 20~50 msv である エリア 3( 赤色 ) 推定年間線量は 50 msv を上回る地域及び年間積算線量が 5 年後でも 20mSv を超える事が予想される地域 今回のミッションは すべての被災地における環境回復の計画立案と実施を強化するために 前回のミッションの範囲外となった特別除染地域の除染及び前回のミッションで提供された助言に関する進捗のフォローアップに重点を置いている 3

Soma City Date City Iitate Village Kawamata Minamisoma City Nihonmatsu City Katsurao Village Namie Futaba Tamura City Okuma Legend Measurement by car (msv/yr) 150 or more 100-150 50-100 20-50 10-20 5-10 1-5 Aerial measurement (msv/yr) 150 or more 100-150 50-100 20-50 10-20 5-10 1-5 Areas Areas affected by tsunami Deliberate evacuation areas Restricted areas Iwaki City Kawauchi Village Naraha Hirono Tomioka 図 1: 東京電力福島第一原子力発電所周辺の警戒区域および避難勧告が出された地域の再編成 4

図 2: 避難勧告がされた地域の現在の編成 (2013 年 8 月 7 日時点 ) 5

主要な調査結果 本報告書は ミッションの主な結果および結論を示すものである ミッションチームは 広範囲に汚染された地域の環境回復は多くの努力を伴うものであり 日本が原子力事故による被災者の生活環境を向上させる ( 被災者の帰還を可能にすることを含む ) という目標の達成に向かって 戦略および計画を策定するとともに環境回復活動を実施するために多くの資源を割り当てていることを認識している ミッションチームはまた これらの取り組みの結果として 日本は環境回復活動において十分な進捗を達成しており 2011 年の前回ミッションによって提示された助言を十分に考慮してきた と考えている チームは 復旧及び復興と調整して実施される環境回復活動が 良好に進捗していることを確認した 本報告書はまた 前回ミッションが改善のための助言を提示した 12 の点を含めて 環境回復プログラムの特定テーマを評価した結論も示している 本報告書では これまでに様々な分野において進捗があった重要な事項を明らかにするとともに 国際基準と他国における環境回復プログラムの経験の双方を考慮に入れ さらに改善することにより住民の信頼向上に役立つであろうとミッションチームが感じた点について助言を提供する 日本は現在の環境回復の取組を継続すると同時に 環境回復活動のさらなる最適化に向けた本ミッションの助言を考慮に入れることが推奨される 重要な進展があった事項 事項 1: チームは 東京電力福島第一発電所の事故による被災地域で求められる環境回復に関する取組を進めるための制度 組織を確認した チームは 被災地の人々の被ばくを低減するため 及び事故後に避難した人々の帰還を可能にし 促進し 支援するため また 被災地域の自治体が経済的 社会的な問題に対処するのを支援するため 日本が環境回復計画を実施するために多大の努力をなしていることを評価する レビューチームは 環境回復を支援するため 財源 技術ガイダンス及び制度 組織上の援助を提供することにおいて 幅広い省庁と市町村の組織が関与していることを確認している 事項 2: 全体的に チームは 国 県および市町村レベルで コミュニケーションと参画のプロセスがうまく採用されているという実証可能な証拠とともに 利害関係者の参画に関する多くの良好事例を見てきた いくつかの例において 主要な地元コミュニティの人々は 彼ら自身のコミュニティの信頼を得て 参画の課題について主導するよう心がけてきたことが明らかになった 政府は 地方当局が地元コミュニティと広範囲な調整をするように促すとともに その結論を尊重している 事項 3: チームは 事故以来 意思決定プロセスを進めるために手助けとなる多くの非常に重要な情報 ( 特に 線量率との関係 ) が形成されている事を確認した 情報自体の正確さと 特に安全性の受け止め方を含めて情報の解釈のされ方の双方に 6

ついて 信頼を促進する事が明らかに重要である 医師やその他の独立した専門家のような 信頼できる仲介者が活用されることが特に有効である 事項 4: チームは 福島市にある除染情報プラザと その関連するアウトリーチ活動が 利害関係者の参画プロセスの全体において 価値ある活動であると確信する 事項 5: チームは 原子力規制委員会が 帰還に向けた安全 安心対策 の検討を行うためにチームを立ち上げたことを確認した 福島県民の個人の外部被ばく線量の測定を継続することは 助言のポイント 4 に指摘されていように 線量低減傾向を確認し環境回復の決定を正当化することにおいて有益である 除染に加え 例えば生活様式や日々の業務の調整のような他の施策も個人の被ばく線量の低減及び放射線防護の最適化をもたらしうるものである 事項 6: チームは 除染方法の適用において 除染の様々な方法による汚染物質の除去の効率と線量率低減とを比較した事について 重要なツールであるということを認識し評価する さらに チームは 除染の進め方について 表面汚染の低減ではなく 空間線量の低減としたことを歓迎する これは いくつかの市町村において 追加線量 1mSv/y が長期の線量低減目標として適用可能であると結論づけることにつながる 事項 7: ミッションチームは 環境の汚染状況を評価するために 原子力規制委員会によって調整されている総合的なモニタリング及びデータの管理を評価する 事項 8: 汚染状況重点調査地域において被災した農地の環境回復が進捗している さらに 食品の徹底したモニタリングによって 多くの土地で 許容可能な放射能の参考レベルを下回る食料の生産が可能であること 及びカリウム肥料のような環境回復措置が効果的であることが示されている この結果は 汚染状況重点調査地域において 表土のはぎ取りが 食品安全措置のために必ずしも最適な解決策であるとは限らないことを示唆している 事項 9: 食品安全対策の包括的な実施は 消費者を保護するとともに 農産物の価格の上昇に反映されているように 農場で生産した作物に対する消費者の信頼を改善している 事項 10: 森林の環境回復は 人々の懸念に対応して 居住地 農地及び公共用地に隣接する森林境界から 20m にある木々の下の物質の除去により実施されている ミッションチームは 日本の当局が森林地域の環境回復について 実用的な進め方で実施していることを確認した 事項 11: 包括的なモニタリング計画が継続されている これは 水 堆積物及び 懸濁した堆積物の濃度や 淡水魚 ( 野生と養殖 ) の広範な食品のモニタリングを含んでいる 2011 年以降 全般的に濃度は減少している 7

事項 12: ミッションチームは 現在行われている除染活動から発生する汚染物の仮置き場について 確保と管理が市町村及び政府によって大幅に進展していることを確認した 加えて ミッションチームは 市町村及び地域コミュニティとの協力を得て 政府による中間貯蔵施設の設置に向けた取組が進展している 事項 13: ミッションチームは 公衆の被ばくを制限するための排出基準を満たす対策を採用しつつ汚染物を減容化する効果的な技術として焼却が用いられていることを確認した 助言 ポイント 1: 制度 組織の有効性 及びこれらに対する人々の信頼をさらに高めるために 日本の関連機関は 関連する放射線学的除染基準の定義 長期的な活動のために必要とされるものを含む安全評価のレビューを特に考慮して 環境回復活動のレビューにおける原子力規制委員会 (NRA) のより積極的な関与から得られうる便益を評価することが推奨される ミッションチームは 仮置き場の確保と管理の経験から教訓を学び 自治体間および自治体と中央政府の間で共有するための機構やプラットフォームを確立することも推奨する ポイント 2: 除染を実施している状況において 1~20 msv/y という範囲内のいかなるレベルの個人放射線量も許容しうるものであり 国際基準および関連する国際組織 例えば ICRP IAEA UNSCEAR 及び WHO の勧告等に整合したものであるということについて コミュニケーションの取組を強化することが日本の諸機関に推奨される 環境回復の戦略およびその実施における最適化の原則の適切な実施にあたっては 被災者の健康および安全に関して最大の便益を得ることを目的とし 状況に影響を及ぼすあらゆる事項のバランスをとることが必要とされる 住民が放射線および関連リスクについてより現実的な受け止めができるように コミュニケーションにおいて これらの事実が考慮されなければならない 政府は 人々に 1mSv/y の追加個人線量が長期の目標であり 例えば除染活動のみによって 短期間に達成しうるものではないことを説明する更なる努力をなすべきである 段階的なアプローチが この長期的な目標の達成に向けてとられるべきである この戦略の便益については 生活環境の向上のために不可欠なインフラの復旧のために資源の再配分を可能としうるものであり 人々に入念に情報伝達されるべきである IAEA- そして おそらく国際科学コミュニティも - は この難しい課題において日本を支援する用意がある 8

ポイント 3: チームは 環境回復と復興の全体的なプログラム 様々な構成要素がどのように関係するか ( たとえば 被ばくの低減と廃棄物量の増加のトレードオフ ) を伝えることで 不確実性を低減し 意思決定への信頼をより高めることができると確信している 全体的な見通しを掲げることは 重要な利害関係者の参画を事前に計画する機会を提供し 事後に対応するよりも前もって対応するプロセスを可能にする このような活動を実施できるように 自治体の間でこのような活動を共有するためのプロセスを設定することが有益である このようなアプローチは 人々の信用を高め より多くの人々が警戒区域の外部から各自の自宅に帰還できることに寄与するだろう ポイント 4: 環境回復の決定を支援するために 個人線量計で測定されるような 個人線量の活用に向けて引き続き活動することが必要である 原子力規制委員会が個人線量に重点を置く検討の調整を計画しており その検討にバックグラウンドの集団を含めること またモニタリングされる個人の住宅での除染活動と個人線量測定を関連させることも推奨される ポイント 5: チームは 作物が吸収し得る放射性セシウムの減少につながる自然プロセスを考慮の上 安全な食品を生産しながら 環境回復手段の適用をさらに最適化できる可能性があることに注目する このことは土壌に含まれている栄養素を維持し 処分される必要がある除去土壌の量を減少させるという追加の便益ももたらすだろう ポイント 6: チームは 森林地域の環境回復については 住民の線量低減に最大の便益をもたらし 可能な場合には森林の生態学的機能を損なうことがない場所に取組を集中することにより 住宅地域 農地および公共の場所の周囲にある森林地域の環境回復の最適化を継続すること推奨する 線量率および住民の懸念の面での便益と 環境回復作業者の職業上の危険について考量する必要がある 土壌流出と放射性物質の挙動の影響について 森林における放射性セシウムのモデルを使用し 評価すべきである 日本の研究機関による現在の研究活動をこの評価に含めることが推奨される ポイント 7: チームは 淡水および海洋環境のモニタリングを継続することを推奨し 水 堆積物および生物圏における放射性セシウムの濃度に影響することが知られているプロ 9

セスにおいて これらのデータが解釈されることを提案する モニタリングデータ及び 一層の研究は 被災地域におけるサイト別の環境回復を考慮するための基礎となるであろう ポイント 8: ミッションチームは 責任を有する組織が 特に長期間にわたる活動において 汚染物を管理するための施設および活動の安全性について適切に示し 独立した評価を考慮に入れることを推奨する ( 了 ) 10