第1回環境回復検討会

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2 号機及び 3 号機 PCV - 分析内容 原子炉格納容器 (PCV) 内部調査 (2 号機平成 25 年 8 月 3 号機平成 27 年 10 月 ) にて採取された (LI-2RB5-1~2 LI-3RB5-1~2) を試料として 以下の核種を分析した 3 H, Co, 90 Sr, 94 N

降下物中の 放射性物質 セシウムとヨウ素の降下量 福島県の経時変化 単位 MBq/km2/月 福島県双葉郡 I-131 Cs Cs-137 3 8,000,000 環境モニタリング 6,000,000 4,000,000 2,000,000 0 震災の影響等により 測定時期が2011年7

中央環境審議会廃棄物・リサイクル部会(第49回)

福島原発事故はチェルノブイリ事故と比べて ほんとうに被害は小さいの?


福島県内の災害廃棄物の処理の方針

タイトル


学んで、考えてみよう 除染・放射線のこと 使い方

仮設焼却施設の運転状況(11月4日~12月26日)

1 海水 (1) 平成 30 年 2 月の放射性セシウム 海水の放射性セシウム濃度 (Cs )(BqL) 平成 30 年 平成 29 年 4 月 ~ 平成 30 年 1 月 平成 25 ~28 年度 ~0.073 ~ ~0.

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いて一市町村当たり2 箇所の計 18 箇所で それぞれ実施してきています これまでの調査の結果 環境放射線量 ( 空間線量率 ) は 調査開始時の平成 26 年度から平成 29 年度までの変化率の平均は 44.5% となっています 計算により求められる物理学的減衰による低減率 35.1% と比較する

福島第一発電所構内で採取した建屋内瓦礫の放射能分析

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(3)IAEAにおける安全基準作り等ア.IAEAでは IAEA 憲章に基づき 原子力施設 放射線防護 放射性廃棄物の管理及び放射性物質の輸送等に係るIAEA 安全基準文書 (IAEA Safety Standards Series) を作成し 加盟国における国際的に調和の取れた安全基準類の導入を支援

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資料 1-4 廃棄物対策に関わる対応状況について 資料 福島第一原子力発電所固体廃棄物の保管管理計画 ~2018 年度改訂について~ 2018 年 8 月 23 日 東京電力ホールディングス株式会社

技術等検討小委員会 ( 第 2 回 ) 資料第 1 号 原子力発電所の 事故リスクコスト試算の考え方 原子力発電 核燃料サイクル技術等検討小委員会 ( 第 2 回 ) 平成 23 年 10 月 13 日 内閣府原子力政策担当室

IAEA Report DOC

Commissariat à l’énergie atomique

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Microsoft Word - HP掲載資料 docx

目 次 はじめに 1 Ⅰ 福島第一原子力発電所における固体廃棄物貯蔵庫について 1 固体廃棄物貯蔵庫第 9 棟増設の目的と計画 2 (1) 固体廃棄物貯蔵庫第 9 棟増設の目的 (2) 固体廃棄物貯蔵庫第 9 棟増設の計画 2 固体廃棄物貯蔵庫第 9 棟増設に関する安全性 4 (1) 周辺地域への放

概 要 2015 年 4 月 液体及びダストを中心に敷地境界外に影響を与える可能性があるリスクを広く対象としたリスク総点検を実施し, リスク低減対策の取組みは, 環境変化等を反映し適宜見直しを行っている リスク低減対策未着手の項目 ( 下記 1) については, 月末時点で 10 項目であ

 

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管理区域の区域分け A 区域 B 区域 C 区域 D 区域 汚染区分表面汚染 空気中放射性 表面汚染 空気中放射性 表面汚染 空気中放射性 表面汚染 空気中放射性 密度 物質の濃度 密度 物質の濃度 密度 物質の濃度 密度 物質の濃度 (Bq/cm2) (Bq/cm3) (Bq/cm2) (Bq/c

氏名 ( 申請者 ) 除染対象所在地測定日 / 天候備考 除染前 除染後 放射線量測定記録 ( 事前 事後モニタリング ) 測定器型式等測定器型式等 管理番号 測定者 測定者 宅地内の測定値の平均 (at 1.0m)(μ Sv/h) 前後 対象除染前測定値 (μ Sv/h) 対象除染前測定値 (μ

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放射性物質を含む

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った 3 ヶ国の政府からの情報をもとに更新し チェルノブイリ事故の健康影響および特別ヘルスケア プログラム (Health Effects of the Chernobyl Accident and Special Health Care Programmes) と題する WHO 報告書をまとめた

森林の放射性セシウム分布の現状と今後の見通し 国立研究開発法人森林研究 整備機構 森林総合研究所三浦覚 平成 30 年 11 月 17 日平成 30 年度 福島の森林 林業再生に向けたシンポジウム 1 本日の内容 放射性セシウム分布の現状 1) 7 年間の推移と現状 2) 木材の汚染 3) 野生の山

目次 1 1. はじめに 2. フクシマエコテッククリーンセンターの概要 (1) 施設概要 (2) 遮水工 3. 埋立処分計画 (1) 埋立対象廃棄物 (2) 埋立処分期間 搬入方法 (3) 埋立方法 (4) 安全評価 4. 維持管理 モニタリング (1) 施設の点検 モニタリング (2) 環境省の

事故の推移と SPEEDI 放射能拡散予測 19:35~~ 3 号機自衛隊放水車車放水 (5 回 ) 14:00~~ 3 号機自衛隊放水車車放水 (7 回 ) μsv/h 100,000 7:13 JAEA サイクル 10:59 オフサイトセンター 7:13 JAEA サイクル工学研 5 μsv/h

第 2 回保障措置実施に係る連絡会 ( 原子力規制庁 ) 資料 3 廃止措置施設における保障措置 ( 規制庁及び IAEA との協力 ) 平成 31 年 4 月 24 日 日本原子力研究開発機構安全 核セキュリティ統括部 中村仁宣

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はじめに 2011 年 3 月 11 日に起きた東北地方太平洋沖地震及びこれに伴う東京電力 ( 株 ) 福島第一原子力発電所事故により福島県は甚大な被害を受け この前例のない原子力災害からの環境の回復と県民が将来にわたり安心して暮らせる環境を創造することが喫緊の課題となった この課題を克服するために

農産物から人への放射性物質の移行を理解するための基礎知識 農産物から人への放射性物質の移行を理解するための基礎知識 福島第一原子力発電所事故 ( 以下, 福島原発事故 とする ) による放射性核種の放出と分布, その挙動や農産物への汚染については, 科学的な理解とそれに基づく対策が強く求められている


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何が起こっているかを知ろう!

ha ha km2 15cm 5 8ha 30km2 8ha 30km2 4 14

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資料 3 前回の小委員会の振り返りについて 多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会 事務局

森林・河川等の環境中における 放射性セシウムの動き

放射能汚染の推移図

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182 No. 61 RDF m 13 RDF RDF 中国の石油精製工場で爆発 m 中国の染料用化学製品工場で爆発 t km


新旧対照表

資料第10-1-1号 :文部科学省によるプルトニウム、ストロンチウムの核種分析の結果について

放射性廃棄物の発生 Q 放射性廃棄物 ってなに? 放射性廃棄物の発生場所 使用済燃料のリサイクルに伴って発生する廃棄物 放射性廃棄物 は 原子力発電や 使用済燃料のリサイクルなどに伴って発生する ( 放射線を出す ) 放射性物質を含む廃棄物 です 原子力発電所の運転に伴って発生する放射性廃棄物 ラン

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2011 年 11 月 25 日 - 低線量被ばく WG 資料 低線量被ばくの健康リスクとその対応 大分県立看護科学大学 人間科学講座環境保健学研究室 甲斐倫明

橡核の軍事利用と商業利用(2).PDF

愛する飯舘村を還せプロジェクト 負げねど飯舘!! 活動支援金ご協力のお願い これまで 子どもたちのために と 皆さまからお預かりしている支援金は 避難 ( 計画的避難の早期完了 ) や健康管理を含め 未来ある子どもたちを守るための活動に大切に使わせていただきます 今後計画的避難が進むにつれて 私たち

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大谷周辺地区 及び 役場周辺地区 地区計画について 木原市街地 国道 125 号バイパス 役場周辺地区 (43.7ha) 美駒市街地 大谷周辺地区 (11.8ha) 地区計画の概要 地区計画とは住民の身近な生活空間である地区や街区を対象とする都市計画で, 道路や公園などの公共施設の配置や, 建築物の

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ころにも初期の避難地域と同程度に汚染されている地域が存在することが明らかになり 政府に対する住民の不信と非難の声が高まった その頃 他国のメディアや市民が汚染現地を訪ねることができるようになってきた 化学物質による世界の環境汚染の現場を訪れ 独自の視点で調査研究していたサイエンスライターの綿貫礼子が


水質

日本原子力学会 バックエンド部会週末基礎セミナー 2011/10/29 福島環境汚染の状況と修復見通しについて 放射能で汚染された地域の状況 修復基準 修復の手順と修復オプション 修復計画の作成 今後の問題点 原子力安全研究協会処分システム安全研究所 杤山修 1

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福島第一原子力発電所における高濃度の放射性物質を含むたまり水の貯蔵及び処理の状況について(第276 報)

東京電力株式会社福島第一原子力発電所の事故直後の平成 23 年 3 月 17 日には 原子力安全委員会の示した指標値を暫定規制値として設定し 対応を行ってきました 平成 24 年 4 月 1 日からは 厚生労働省薬事 食品衛生審議会などでの議論を踏まえて設定した基準値に基づき対応を行っています 食品

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目 的 GM計数管式 サーベイメータ 汚染の検出 線量率 参考 程度 β線を効率よく検出し 汚染の検出に適している 電離箱型 サーベイメータ ガンマ線 空間線量率 最も正確であるが シン チレーション式ほど低い 線量率は計れない NaI Tl シンチレー ション式サーベイメータ ガンマ線 空間線量率

福島第一原子力発電所における高濃度の放射性物質を含むたまり水の貯蔵及び処理の状況について(第227報)

1 調査概要調査手法 : 各県 300 票インターネットによるモニター調査調査時期 :2018 年 12 月 7 日 ~10 日調査対象 : 300 票宮城県 茨城県 東京都 大阪府各 300 票調査方法 : 合計 1500 票の調査を実施抽出方法 : 年層 (20 代 ~60 代 ) 男女割当法

2 及び 3 号機 PCV - 試料の性状 分析内容 PCV 内部調査 (2 号機 2013 年 8 月 3 号機 2015 年 10 月 ) にて採取された (LI- 2RB5-1~2 LI-3RB5-1~2) を試料として 以下の核種を分析した ICP-AES を用いた元素分析も実施した 3 H

生じた排水を放流する場合にあって 当該放流水の排水口において 当該放流水中の事故由来放射性物質の濃度を 環境大臣が定める方法により測定する費用 4 特定一般廃棄物処理施設及び特定産業廃棄物処理施設において 埋立地からの浸出液による最終処分場の周縁の地下水の水質への影響の有無を判断するため 当該地下水

平成 27 年 9 月埼玉県東松山環境管理事務所 東松山工業団地における土壌 地下水汚染 平成 23~25 年度地下水モニタリングの結果について 要旨県が平成 20 年度から 23 年度まで東松山工業団地 ( 新郷公園及びその周辺 ) で実施した調査で確認された土壌 地下水汚染 ( 揮発性有機化合物

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福島第一原子力発電所における高濃度の放射性物質を含むたまり水の貯蔵及び処理の状況について(第350 報)

第 4 章特定産業廃棄物に起因する支障除去等の内容に関する事項 4.1 特定支障除去等事業の実施に関する計画 (1) 廃棄物の飛散流出防止ア廃棄物の飛散流出防止対策当該地内への雨水浸透を抑制し 処分場からの汚染地下水の拡散防止を図るとともに 露出廃棄物の飛散流出防止を図るため 覆土工対策を実施する

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実用発電用原子炉の設置 運転等に関する規則 ( 抜粋 ) ( 昭和 53 年 最終改正 : 平成 25 年 )( 通商産業省令 ) ( 工場又は事業所において行われる廃棄 ) 第九十条法第四十三条の三の二十二第一項の規定により 発電用原子炉設置者は 発電用原子炉施設を設置した工場又は事業所において行

都民の健康と安全を確保する環境に関する条例 ( 平成十二年東京都条例第二百十五号 ) 新旧対照表 ( 抄 ) 改正案現行目次 ( 現行のとおり ) 目次 ( 略 ) 第一条から第百十二条まで ( 現行のとおり ) 第一条から第百十二条まで ( 略 ) ( 土壌汚染対策指針の作成等 ) 第百十三条知事

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リスクコミュニケーションのための化学物質ファクトシート 2012年版

4 予測結果では 海側で少し環境目標値を超えているのですけれども 対岸の東海市のところは 新日鐵住金の工場等でしょうか 東海市側も臨港地区になりまして ご指摘の通り新日鐵住金等があるエリアです なお 対岸までの距離は約 1km ですが 住宅地までは約 3.5km です 5 煙源が地面に近く 施工区域

チェルノブイリ原発事故の調査を通じて学んだこと

福島原発とつくばの放射線量計測

参考資料 1 中間貯蔵施設の安全確保について 1. 安全確保対策の基本的な考え方 中間貯蔵施設については 万全な安全確保対策を講じ 放射性物質の影響 地震や津波といった災害発生リスクを勘案することとします そのためには まずは 施設の構造上の対策や建設から運営までの過程の中での対策について 中間貯蔵

チェルノブイリ原発事故による環境への影響とその修復:20年の記録(1~2章)_カラー

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水質

環境保全に関する協定書 ( 基準協定 ) 旭川市 ( 以下 甲 という ) と ( 以下 乙 という ) は, 乙が旭川市内で施工する事業 ( 以下 事業 という ) について, 次のとおり協定を締結する ( 法令等の厳守 ) 第 1 条 乙は, 事業実施に当り, 森林法, 北海道自然環境等保全条例

平成 19 年 7 月 20 日付, 経済産業大臣からの指示文書 平成 19 年新潟県中越沖地震を踏まえた対応について ( 指示 ) ( 平成 原第 1 号 ) に基づき, 浜岡原子力発電所 ( 以下, 発電所 という ) における自衛消防体制の強化ならびに迅速かつ厳格な事故報告体

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3. 市街化調整区域における土地利用の調整に関し必要な事項 区域毎の面積 ( 単位 : m2 ) 区域名 市街化区域 市街化調整区域 合計 ( 別紙 ) 用途区分別面積は 市町村の農業振興地域整備計画で定められている用途区分別の面積を記入すること 土地利用調整区域毎に市街化区域と市街化調整区域それぞ

目次 総括 3 チェルノブイリの経験 : 健康 環境 経済的影響 4 チェルノブイリフォーラム研究の流れ 4 序論 : チェルノブイリ事故 4 フォーラムの専門家による報告 : 健康への影響 5 フォーラムの専門家グループによる報告 : 環境への影響 11 チェルノブイリ原子力発電所事故の社会経済的

新技術説明会 様式例

Transcription:

資料 5 ( 未定稿 ) チェルノブイリ原子力発電所事故時の除染等について 1 1 汚染の概要 1986 年 4 月 26 日に 旧ソ連ウクライナ共和国キエフ市北方約 130kmの地点で発生したチェルノブイリ原子力発電所事故においては 合計で 1,400 万テラベクレル の放射性物質 ( うち大半が希ガス成分 ) が大気中に放出された ( このうち 半減期等の観点から問題となるセシウムは 180 万テラベクレル ) 福島原子力発電所における大気への放射性物質放出量は 全体で 77 万テラベクレル ヨウ素 131 について 16 万テラベクレル セシウム 137 について 1.5 万テラベクレルとされている ( 原子力保安院 6 月 6 日公表 ) 最初の数年はセシウム 134 による汚染も重要であったが その後 半減期の長いセシウム 137 による汚染が主要なものとなった セシウム 137( 半減期 30 年 ) で汚染された地域は以下の表の とおりである 表 1 セシウム 137 で汚染された地域 汚染状況 (kbq/m 2 ) 37~185 185~555 555~1480 1480~ 汚染状況 (μsv/h) 0.078~0.39 0.39~1.2 1.2~3.1 3.2~ 避難等の指示 汚染地面積 (km 2 ) 管理必要区域 移住奨励強制移住強制避難 合計 ロシア 49,800 5,700 2,100 300 57,900 ベラルーシ 29,900 10,200 4,200 2,200 46,500 ウクライナ 37,200 3,200 900 600 41,900 合計 116,900 19,100 7,200 3,100 146,300 IAEA-TECDOC-1162 を基に 1kBq/m 2 当たり 2.1 10-6 msv/h として計算 ( 参考資料 :IAEA-TECDOC-1240 Present and future environmental impact of the Chernobyl accident) 事故後 直ぐに原子力発電所から半径 30km 以内が立ち入り禁止区域として設定され 11 万 6 千人が避難もしくは移転した 1989 年には移住に関する基準が見直され ベラルーシ ロシア ウクライナ政府はそれぞれに移住に関する取り組みを進めることとなった 強制移住以上の対象となる区域には 640 の集落が存在し 23 万人が住んでいた 2001 年現在 ベラルーシでは 移住奨励ゾーンと強制移住ゾーンからの移住はほぼ完了し 415 の集落が移転している ロシアでは 4 万 7 千人以上が移住している ( 土地の利用状態毎の汚染状況 ) 都市部 汚染は 乾性沈着 ( 放射性物質が風等により運ばれたことによる汚染 主に木 茂み 芝生及び屋根が汚染されやすい ) と 湿性沈着( 放射性物質が雤に混じって落下したことによる汚染 土壌 芝生等が汚染されやすい ) に分類され 1 本資料は参考資料に基づいて取りまとめたものであり 事務局の見解を示すものではない 1

る 放射性物質は フォールアウトによって旧ソ連諸国及び欧州諸国を汚染した チェルノブイリの近くの小さい集落が 放射能雲 に伴う乾性沈着によって重度に汚染された また チェルノブイリから離れた地域でも 湿性沈着により重度の汚染が生じた ( 最も重度の汚染されたのは原子力発電所から3km 離れたプリピアチ市 (Pripyat) という町であり その住民は事故後 1 日半以内に移住させられた ) 主に 芝 公園 道 屋根や壁が汚染された 雤によって屋根から放射性物質が流れ 流入した下水等で特に高い放射性物質が検出された 農用地 事故後 牛乳から放射性物質が検出された 植物の汚染に関しては 当初は植物の表面に直接放射性物質が付着することが懸念されたが 数ヶ月後は 植物が根から吸収した放射性物質が重要な問題となり 食物の汚染に関しては降りかかった放射性物質の量よりも土壌の質により影響を受けることが分かった 長期的には 野菜ではなく食肉や牛乳中のセシウム 137 が体内被曝の最たる原因となった 森林 乾性沈着によって汚染された葉から 雤によって放射性物質が地面に流れ落ち 土壌が汚染された 事故から1 年後には 土壌が一番の汚染源となっていた 森林での生態系の中でセシウムが循環するため 高濃度の汚染状態が続いた ( 雲母鉱石にセシウムが固着することから 水系経由でセシウムが森林から出ることも少なかった ) 特にキノコ ベリー及び動物の肉に高い汚染が確認された また 汚染された森林の木は燃料として消費すると灰にセシウムが元の50~100 倍に濃縮されることから 家の中や庭での木材使用により被曝量が増加した 水質 水面に降り注いだ放射性物質はすぐに拡散し かつ 川底の堆積物がセシウムを多く吸収したため すぐに放射性物質の濃度は下がった ただ その後 汚染された土壌や川底からの放射性物質が流出したことで 現在も低レベルながら汚染が続いている 閉鎖性の水系では 放射性物質の濃度が下がりにくく チェルノブイリの近くの池では事故から 15 年程度経った 2000 年前後でも 10Bq/L のセシウム 137 が観測されている ( なお ロシアの飲料水中のセシウム 137 の基準は 11Bq/L である ) 2 除染対策 1986 年には 立ち入り禁止区域外の 412 の集落の除染が行われた 1987 年には 132 の集落と 27,000km の道路の除染が行われた 1988 年には人口の密集した比較的低レベルの汚染地域での除染が開始され 643 の集落の除染が行われた 1989 年には 430 箇所の人口密集地域の除染が行われ 人口が密集した地域のフル除染はほぼ終了した ベラルーシでは 汚染範囲が広大であり資金が不足しているため 現在も除染作業は 2

完了していない 広域の汚染された農耕地や牧草地の汚染の復旧対策はほとんど実施されていない 土壌表層部を除去すれば改善効果は高いが 除去した汚染土壌の処理 処分を考え合わせると非常に広域の土地に適用させることは不可能に近い このため農耕地では 表層の汚染土壌を根の届かない 30~40cm の深さに持っていく土壌の入れ替えや セシウムの吸収をおさえる肥料の散布が一部実施されている 2-1 都市部対策 (1) 除染の規模 内容等除染は 合計で 1,000 程度の集落 ( 数千の建物と 1,000 以上の農場を含む ) に対して行われ 特に幼稚園 小学校 病院及び多くの人が訪れる公共用施設に留意して行われた 除染作業は USSR 軍の化学部隊と市民自衛隊 (defence force) が中心となって 水や特殊な溶液を用いた建物の洗浄 居住区の洗浄 屋根の交換 汚染土壌の除去 道路の洗浄 アスファルトによる舗装や水源の除染等の対策を行った 事故直後は土壌や核燃料から巻き上げられた放射性物質が内部被曝の主要な原因であった ため 汚染土壌対策として有機剤が散布された ( 散布された有機剤はポリマーの見えない膜を 作る ) また 粉じんの発生を防ぎ かつ放射性核種を除去するため 道路は水で洗浄された 対策に加え 放射性物質により汚染された葉が落葉となって取り除かれ また アスファルトに降り積もった放射性物質が雤等で流される等 天候や人為活動によって 一定量の放射性物質は時間の経過と共に除去された ( 事故から 14 年後の 雤等による放射性物質の除去率は 屋根で 50~70% 壁で 60~95% であった また アスファルト上の放射性物質の除去率は 90% 以上であった ただし これらの自然発生的な除染により 逆に下水系が汚染され 除染が必要となった ) (2) 対策の効果等 ( 乾性沈着対策 ) 道路の洗浄 木の除去及び庭の汚染土壌の除去や天地返しは 低コストで効果的な手段であった その一方で 被曝量の多い屋根の洗浄はコストが高かった また 壁は 被曝量は多くはなく かつコストが高かった ( 湿性沈着対策 ) 庭や芝地対策は 低コストかつ 効果が高かった ( 空間線量率が最大で 60% 減 ) 実際に適用された技術の空間線量の削減効率は 全体平均で年間 10-20% 幼稚園や学 校では 30% 戸外での労働者については 10% 未満程度となった ある研究 (Los and Likhtarev) によると チェルノブイリ時の応急処置によって 300 万人に 3

ついて 一人当たり 1mSv の被曝 ( 合計 3,000 人 Sv) を低減できたとされている さらに 学 校及びその地域における洗浄が 600 人 Sv の被曝を低減したとされている ( 推奨される除染技術 ) チェルノブイリの経験から 特に効果的と考えられる技術は以下のとおりである また いくつかの技術については 削減効率を表に示す また これらの対策の結果得られた放射性廃棄物については 放射性物質が再び環境中に放出されることがないよう 定められた一定の基準の下で処理されるべきである 住居 公共施設 学校及び幼稚園の周囲の庭や建物内の道路脇の表層土壌 (5~ 10cm) の除去 ( 最も汚染されている土壌の層は敷地内に穴を掘って埋めること 穴を掘った際にでてくるきれいな土は 除染をした場所の覆土として使用すること ) 私有の果樹園における表層土壌のすき込み及び除去 庭の汚染部分への覆土 ( きれいな砂か可能であれば砂利を用いること ) 屋根の洗浄もしくは交換 除染対策技術 表 2 除染対策技術と削減効率 削減効率 窓の洗浄 10 壁のサンドブラスティング ( 砂を吹き付けて洗浄 ) 10-100 屋根の水洗 (and/or サンドブラスティング ) 1-100 庭の掘削 6 庭の表面の剥取 4-10 木の枝の削減 ~10 道の清掃及び真空洗浄 1-50 アスファルトのライニング >100 ( 参考資料 :IAEA Report of the Chernobyl Forum Expert Group Environment, Environmental Consequences of the Chernobyl Accident and their Remediation: Twenty Years of Experience) (3) 除染の際の基準被災した三カ国では 1986 年に除染の達成状況を判断するため 汚染状況に関する基準 ( 許容される汚染レベルを示す値 ) を設定し 順次改訂してきた ( 表 3) 当該基準は 身体全体及び肌の被曝の限度量を元に算出されたものである 除染の実施の有無については 汚染地の周囲の放射能汚染状況 及び 汚染値の社会 経済的重要性 を考慮した上で判断された ( 場合によっては 基準値を下回る汚染であっても除染が実施された ) 4

汚染地の種類 表 3 汚染状況に関する基準値 ( 地表面から 1m における放射線量率 ugy/h=usv/h) 時間 1986 年 6 月 1986 年 10 月 1987 年 7 月 1988 年 7 月 1990 年 5 月 道路 15 2 2 1 - 建物内 3 1 0.4-0.1 外及び建物の表面 7 5 5 2 - ( 参考資料 :IAEA-TECDOC-1240 Present and future environmental impact of the Chernobyl accident) 2-2 森林対策 (1) 除染の範囲等ロシアの一部の地域では 汚染が 1,480 kbq/m 2 を超える森林へは 森林の保護消火活動及び疾病や災害対策を除いて立ち入り禁止とされ 森林内での活動や一般人の進入 ( 植物の採取を含む ) は禁止された 555kBq/m 2 から 1,480 kbq/m 2 の地域では 同様に森林の植物の採取は禁止されたが 森林内での活動は限定的に認められた ベリーやキノコ等の採取が認められたのは汚染が 74 kbq/m 2 を下回った場合のみであった (2) 効果があった対策森林対策には 大きく分けて 管理による対策 と 技術による対策 があるが 技術による対策は森林の生態系を乱すおそれがあることや コストが高いため 実際には使われなかった ( 管理 ) 汚染された森林への進入制限 と 汚染された森林由来の製品の使用制限 に分けられ 以下の項目が挙げられる 一般人及び森林作業従事者の進入の制限 ( 地域でのモニタリングに関する情報提供や教育 ) 一般人による食物 ( キノコ ベリー及び動物の肉 ) の採取の制限 ( 特にキノコ類の汚染がひどかった ) 一般人による薪の採取の制限 ( 薪の採取をする人々の被曝防止だけでなく 薪が燃やされる際の人々の被曝の防止のためでもあった ) 狩猟の習慣の変更 ( 森林の動物がキノコを摂取できない季節に限定して動物の肉を食べることとされた ) 山火事の防止 ( 放射性物質が山火事によって再飛散するのを防ぐことが目的 ) ( 技術 ) 対策技術の行使による対策には 葉の除去 土壌の除去 皆伐 及び カルシウムやカリウムを含む栄養剤の散布 等が挙げられる ( これらの対策は 森林の生態系を乱すおそれがあることや コストが高いため 実際には使われていない ) 5

3 除染で発生した廃棄物対策 事故炉近傍で とくに汚染の著しかった 375ha は土壌改善として 表層 10~15cm の土壌が除去され 伐採された木々とともに深いトレンチに埋設された ( 全埋設量 : 約 10 万 m 3 ) これらの行為により放射能濃度は 1/10 に減少したと評価されている 立ち入り禁止区域外の除染に関する廃棄物については以下の通り (1) ロシア 土壌の除染に係る廃棄物が 1986 年に 9,000m 3 1988 年に 147,900m 3 発生し 埋設処理された 農産物についてはコンポストとして長期間保存された 可燃物を焼却した灰についても埋設処分された 埋設に当たっては 低地で地下水レベルが深い地域の粘土質の土地に専用のトレンチ ( 管理型処分場の類の処理施設 ) を造ることが推奨された 1992 年から 1995 年の間に 新たに放射性物質の一時埋設場が建設され 農林業からの廃棄物を処分した (2) ベラルーシ 26,000t の固体放射性廃棄物と 20,000t の液体放射性廃棄物が発生した 放射性廃棄物と除染時に発生した廃棄物の処分のため 1986 年から 1988 年までの間に 69 の一時保管場所が設置された 強制避難 強制移住区域内に 7 箇所 120,000m 3 の埋設場所が設置された 2000 年までにさらに 120,000m 3 増設予定 (2001 年現在 ) 汚染された木材の利用により 除染が必要とされた建築物が 1,500 戸あるが 技術と資金の不足のため除染は行われていない 汚染された建物が火事になることを防ぐため 1991 年から 1994 年の間に 51 の集落が廃棄され 2,480 戸が埋設された さらに 11,000 戸についても埋設される予定 (3) ウクライナ 強制避難区域内に 800 の埋設場があり 150 テラベクレル 100 万 m3 の廃棄物が埋設さ れているとされている < 参考 > IAEA-TECDOC-1240 Present and future environmental impact of the Chernobyl accident IAEA Report of the Chernobyl Forum Expert Group Environment, Environmental Consequences of the Chernobyl Accident and their Remediation: Twenty Years of Experience UNDP, UNICEF with support of UN-OCHA and WHO, The Human Consequences of the Chernobyl Nuclear Accident ( 財 ) 高度情報科学技術研究機構 http://www.rist.or.jp/ 6