おいじたくあんしんネットレジュメ 不動産登記と相続 司法書士石川亮 1. 不動産登記法改正 1. オンライン申請の導入 ( 不登法 18 条 ) ( ア ) 不動産登記法が改正され 条文上原則オンライン申請となった ( イ ) オンライン申請促進のため登録免許税が軽減されている 2. 出頭主義の廃止 ( ア ) オンライン申請現実には半ライン申請 申請書とPDF 化した登記原因証明情報をオンラインで申請し 添付書類は後から郵送する ( イ ) 郵送申請特に相続登記 抵当権抹消登記においては郵送申請が利用できる 不動産売買では 決済後すぐに登記申請をする必要があるので オンライン 郵送ともに利用できないのが現状 3. 登記済証の廃止 登記済証 ( 権利証 ) に代わり登記識別情報が導入された ただし 従前の登記済 証はそのまま使用されるので 権利者がどちらをもっているか迷う場合がある 登記識別情報の特徴 ( ア )12 桁の暗証番号 ( 不登法規則 61 条 ) ( イ ) 不動産ごと登記名義人ごとに通知 ( ウ ) 不通知 制度( 不登法 21 条 ) と 失効 制度 ( 不登法規則 65 条 ) ( エ ) 申請人にのみ通知 ( 不登法 21 条 ) 4. 本人確認情提供報制度の導入 ( ア ) 本人確認情提供報制度 ( 不登法 23 条 不登法規則 72 条 ) 1
おいじたくあんしんネットレジュメ 登記済証もしくは登記識別情報が添付できない場合 資格者代理人 が 申請人が申請権限を有する登記義務者であることを確認 した情報を提供すれば 登記済証もしくは登記識別情報を省略できる ( イ ) 事前通知制度 ( 不登法 23 条 ) 登記済証もしくは登記識別情報を添付しなかった場合 法務局は登記義務者に対し 本人限定受取郵便 で通知し 登記義務者が登記申請及び申請内容が真実であると認める場合には2 週間以内に法務局に申し出ることによって当該申請が受理される 5. 登記原因証明情報の必須化 ( 不登法 61 条 ) ( ア ) 登記原因証明情報を添付することにより登記原因の真実性を確保 ( イ ) 要件事実の理解が必要 2. 相続登記の基礎 1. 単独申請 ( 不登法 62 条 ) 共同申請 ( 不登法 60 条 ) の例外 単独申請であることの帰結として 登記識別 情報または登記済証及び印鑑証明書が不要となる 2. 対抗要件 ( 民 177 条 ) 一般承継なので対抗要件とは無関係である では相続登記をする必要があるのか? 3. 添付書類 ( ア ) 登記原因証明情報 ( 不登法 61 条 ) 相続人のわかる戸籍 除籍謄本 遺産分割協議書 ( 印鑑証明書付 ) 相続放棄受理申述証明書 遺言書 ( 自筆証書 秘密証書の場合には検認が必要 ) 遺産分割調停調書 ( 正本 ) 遺産分割審判書( 正本 確定証明書 ) 相続分のないことの証明書 ( 民 903 条 ) など ( イ ) 住所証明書不動産の登記名義人になる相続人 2
おいじたくあんしんネットレジュメ ( ウ ) 固定資産税評価証明書 柏 松戸法務局では閲覧できる ( 司法書士のみ ) 4. 相続法の改正 ( ア ) 旧民法 ( 明治 31.7.16~ 昭和 22.5.2) 戸主の死亡による家督相続と家族の死亡による遺産相続家督相続の原因は死亡 隠居又は国籍喪失 ( イ ) 応急措置法 ( 昭和 22.5.3~ 昭和 22.12.31) 相続分に注意 1 直系卑属と配偶者配偶者 3 分の1 直系卑属 3 分の2 2 直系尊属と配偶者配偶者 2 分の1 直系尊属 2 分の1 3 兄弟姉妹と配偶者配偶者 3 分の2 兄弟姉妹 3 分の1 兄弟姉妹に代襲相続権なし ( ウ ) 現民法 ( 昭和 23.1.1~) 1 昭和 37 年改正 ( 昭和 37.7.1 施行 ) 解釈の明確化 特別縁故者 制度の創設直系卑属の代襲相続権 2 昭和 55 年改正 ( 昭和 56.1.1 施行 ) 配偶者の相続分引上げ 1 直系卑属と配偶者配偶者 2 分の1 直系卑属 2 分の1 2 直系尊属と配偶者配偶者 3 分の2 直系尊属 3 分の1 3 兄弟姉妹と配偶者配偶者 4 分の3 兄弟姉妹 4 分の1 寄与分 制度の創設代襲相続人 ( 兄弟姉妹 ) の制限 3 昭和 62 年改正 ( 昭和 63.1.1 施行 ) 特別養子縁組 の創設 3
おいじたくあんしんネットレジュメ 3. 法定相続による不動産登記 1. 遺産の共有 ( 合有か共有か ) 相続財産の共有は 民法改正の前後を通じ 民法 249 条に規定する 共有 とその性質を異にするものではないと解すべきである 従って その分割に関しては 民法 256 条以下の規定が適用され 現物分割を原則とし 分割によって著しくその価額を損する虞があるときは 競売を命じて価格分割を行うことになる ( 最判昭和 30.5.31 最判昭和 50.11.7) 2. 不動産の共有 書式例 3 ( ア ) 各共同相続人は 不動産全部を使用 収益することができる ( 民 249 条 ) ( イ ) 保存行為は各自単独ですることができる ( 民 252 条但書 ) 共有者は 単独で共有者全員のために所有権移転の登記をすることができる ( ウ ) 共同相続人の一部の者が 自己の相続分のみについて 相続による所有権移転登記を申請した場合 又は共同相続人全員が各自己の相続分のみについて個々の別件として同時に右登記の申請をした場合には いずれも不動産登記法 49 条第 2 号により却下するべきである ( 昭和 30.10.15 民事局長回答 ) 3. 代位による登記 書式例 6 ( ア ) 民法 423 条 1 項 債権者は 自己の債権を保全するため 債務者に属する権利を行使することができる ただし 債務者の一身に専属する権利は この限りでない ( イ ) 債務者が相続登記をしていない場合 債権者は債権者代位権を行使して 法定相続の登記申請をすることができる 実務上 抵当権者が不動産を競売にかける場合に 債権者代位権を行使して法定相続の登記を経由していることが多い 4
おいじたくあんしんネットレジュメ 4. 数次相続の登記 1. 意義 第 1 の相続が発生した後 第 1 の相続の相続登記未了のうちに 当該相続人に対 して第 2 の相続さらには第 3 の相続が開始すること 2. 登記手続 書式例 7 書式例 8 ( ア ) 物権変動を正確に公示する必要性から 相続があるごとに順次それぞれ登記をするのが基本原則である ただし 中間相続人の相続登記を省略しても中間者を害するおそれがないことから 中間の相続が単独である場合にのみ中間の相続登記を省略することができる (33.3.7 民刑局長回答 ) ( イ ) 中間の相続登記を省略するための方法として 遺産分割協議書 特別受益 相続放棄などで中間の相続を単独にすることが考えられる 5. 遺産分割 相続放棄 遺贈による不動産登記 1. 遺産分割による登記 ( ア ) 遺産分割の意義被相続人が死亡時に有していた財産を 各相続人に分配して共有状態を解消すること ( イ ) 法定相続登記がされていない場合 書式例 4 不動産を取得する相続人からの単独申請することができる 登記原因は 相続 となる ( 昭和 19.10.19 民事局長通達 ) 遺産の分割は 相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる ただし 第三者の権利を害することはできない ( 民 909 条 ) ( ウ ) 法定相続登記がされている場合 書式例 5 既になされた法定相続登記を抹消 更正せずに 取得した権利が増加する相続人 ( 登記権利者 ) と 権利が減少した相続人 ( 登記義務者 ) との共同申請で持分移転の登記をする 登記原因は 遺産分割 登記義務者の登記済証または登記識別情報及び印鑑証明書が必要になる ( 昭和 28.8.10 民事局 5
おいじたくあんしんネットレジュメ 長回答 ) 2. 相続放棄による登記 ( ア ) 相続放棄の意義初めから相続人でなかったことになる 絶対的効力 ( 民 939 条 ) ( イ ) 法定相続登記がされていない場合 書式例 4 相続放棄者ははじめから相続人でないものとみなされる 法定相続登記 遺産分割による登記ともに不動産を取得する者の単独申請で 登記原因は 相続 ( 明治 44.10.30 民刑局長回答 ) ( ウ ) 法定相続登記がされている場合 ( 昭和 37 年改正後 ) 書式例 9 取得した権利が増加する相続人 ( 登記権利者 ) と 権利が減少した相続人 ( 登記義務者 ) との共同申請で更正登記をする 登記原因は 錯誤 による 登記義務者の登記済証または登記識別情報及び印鑑証明書が必要になる 3. 遺贈の登記 ( ア ) 登記手続包括遺贈 特定遺贈ともに 受遺者 ( 登記権利者 ) と遺言執行者または相続人全員 ( 登記義務者 ) との共同申請による 登記義務者の登記済証または登記識別情報及び印鑑証明書が必要になる ( 昭和 33.4.28 民事局長通達 ) ( イ ) 秘密証書遺言 自筆証書遺言は検認が必要 ( 平成 7.12.4 民事局長通達 ) 6
おいじたくあんしんネット資料 例 1 表題部 ( 土地の表示 ) 調製平成 8 年 2 月 8 日 地図番号 余白 不動産番号 0303222311123 所在 柏市柏 余白 1 地番 2 地目 3 地積 m2 原因及びその日付 登記の日付 458 番 ため池 82 余白 余白 余白 雑種地 余白 2 年月日不詳変更 昭和 56 年 3 月 10 日 余白 余白 102 3 錯誤 昭和 61 年 9 月 17 日 余白 宅地 102 18 23 昭和 61 年 3 月 3 日地目変更 昭和 61 年 12 月 16 日 余白 余白 余白 余白 昭和 63 年法務省令第 37 附則第 2 条第 2 項の規定により移記平成 8 年 2 月 8 日 1
おいじたくあんしんネット資料 例 2 1 所有権移転昭和 47 年 5 月 12 日 第 11234 号 例 3 2 所有権移転 平成 18 年 5 月 18 日 第 22234 号 平成 18 年 5 月 18 日相続 持分 2 分の1 B 4 分の1 C 4 分の1 D 2
おいじたくあんしんネット資料 例 4 2 所有権移転 平成 18 年 4 月 18 日 第 33434 号 平成 18 年 5 月 18 日相続 B 例 5 2 所有権移転 平成 18 年 5 月 18 日 第 22234 号 3 CD 持分全部移転 平成 20 年 3 月 3 日 第 12442 号 平成 18 年 5 月 18 日相続平成 20 年 3 月 1 日遺産分割 持分 2 分の1 B 4 分の1 C 4 分の1 D 持分 2 分の1 B 3
おいじたくあんしんネット資料 例 6 2 所有権移転 平成 18 年 5 月 18 日 平成 18 年 5 月 18 日相続 第 22234 号 3 D 持分差押 平成 18 年 6 月 2 日 平成 18 年 5 月 20 日千葉 地方裁判所松戸支部強制 競売開始決定 持分 2 分の1 B 4 分の1 C 4 分の1 D 代位者松戸市松戸 3-3-3 X 代位原因平成 17 年 2 月 5 日金銭消費貸借の強制執行債権者松戸市松戸 3-3-3 X 4
おいじたくあんしんネット資料 例 7 2 所有権移転 平成 18 年 4 月 18 日 第 33434 号 平成 18 年 5 月 18 日 B 相続平成 20 年 3 月 3 日相続 C 例 8 2 所有権移転 平成 20 年 3 月 5 日 第 22234 号 3 B 持分全部移転 平成 20 年 3 月 5 日 第 22235 号 平成 18 年 5 月 18 日相続 平成 20 年 3 月 3 日相続 持分 2 分の1 亡 B 2 分の1 C 持分 2 分の1 D 5
おいじたくあんしんネット資料 例 9 2 所有権移転 平成 18 年 5 月 18 日 第 22234 号 付記 1 号 2 番所有権更正 平成 20 年 3 月 3 日 第 12442 号 平成 18 年 5 月 18 日相続 錯誤 持分 2 分の1 B 4 分の1 C 4 分の1 D 持分 2 分の1 B 2 分の1 C 6