資料 2-4 科学技術 学術審議会先端研究基盤部会量子科学技術委員会量子ビーム利用推進小委員会 ( 第 2 回 ) 平成 28 年 11 月 29 日 2016 年 11 月 29 日第 2 回量子ビーム利用推進小委員会 産業的視点での 高輝度放射光光源への期待 住友ゴム工業会部式会社 岸本浩通
SPring-8 を例に産業利用の推移 稼働開始直後の課題 ( 一部企業は除く ) 放射光 X 線で応用 課題解決法が良く分からない ラボ装置で出来ない特徴ある手法なら分かる ( 例 :XAFS 等 ) 申請方法 実験 解析方法 も良く分からない 民間企業による共同利用研究実施課題の分野別推移 (http://support.spring8.or.jp/report_jsr/jsr_27b.html) 戦略活用プログラム 重点産業利用 トライアルユース 成果専有課題 2000 年後半以降 1 トライアルユース 戦略活用 P( 実験 + 議論の場 ) により企業の実験 解析レベルの向上 自社課題に対する 手法 と 解析ポイント の明確化 2 専有課題の定着 : 企業にとっては欠かせないツールへと進化 秘密保持 安定的なビームタイムの確保 ( 学術的アプローチ 定常的測定へ ) 1
放射光が開発に活かされた製品事例 白金フリー燃料電池 FC 凸 Deck/ ダイハツ 自動車用触媒インテリジェント触媒 / ダイハツ 虫歯予防製品 POs-Ca/ 江崎グリコ SPring-8 ホームページより引用 低燃費タイヤ ENASAVE/ 住友ゴム工業 ヘアケア製品ヘアセラム / ミルボン LED 蛍光体 CLMS/ 小糸製作所 リサイクル技術タングステンの高効率リサイクル / 住友電気工業 産業成果 物質に対する構造解析アプローチが多い 耐熱ポリイミドジェネスタ / クラレ 学術意義の高い成果につながった事例もある 激化する世界競争に打ち勝つ製品開発を行うには? 2
これまで 物質構造に加え機能に影響を与える 電子状態 ダイナミクス への拡張による統合的理解 どんな構造? 何が起こっている? 製品で起こる複雑現象の理解 これから 製品 材料の機能 性質どのようにして発現するのか? 企業 製品 動作環境下での研究 複雑系 ( 多体問題など ) 非平衡系 不均一系 不定形 ( アモルファス ) 高輝度放射光光源 先端的研究 ( 単純化されたモデル系 + 複雑系へのアプローチ ) 新発見 新理論 定式化 大学 研究機関 スパイラルアップによる加速的な潜在的な課題解決とイノベーション創出 3
タイヤゴム材料の場合 各素材構造 (10 数種類以上 ) は既知だが ゴムとして混ぜた内部構造は 複雑すぎて良く分からない 化学状態 4
タイヤゴムの潜在的課題に対する放射光応用 材料の平均情報 X 線プローブサイズ 数 µm 材料の構造 2000 年頃 材料構造 と ゴム物性 との相関解析から推定による素材開発 数 100 nm 材料の構造 2010 年頃 ダイナミクスを含めた機能発現の理解からの素材設計 開発 ( 計算科学との融合 ) ダイナミクス 数 10 nm 材料の構造 近い将来 機能発現と性能変化に関係する化学 ( 電子 ) 状態変化まで含めた複雑系理解からイノベーション ( 実製品 ) 化学状態 ダイナミクス 高空間分解能 ( ナノビーム )+ 高エネルギ分解能 + 大視野 ( 高強度 ) 5
潜在的な課題解決による国際競争力の向上 ( タイヤを例に ) タイヤゴムの3つの大きな謎の解明!? どんな構造 を形成? どのように機能 を生む? どんな変化 を起こす? 先進タイヤの開発 現象発現メカニズム ( 理論 定式化 ) 機能性材料創出 多様化する国際ニーズに対し目指すべき方向性の明確化 < 企業においては様々なリスクの回避にもつながる!?> 6
高輝度放射光光源に期待するキーワード 光源性能 光学系実験 高輝度コヒーレンスナノビーム軟 X 線安定運転応用面 高精度 高速計測 高スループット CDI タイコブラフィーによる不定形物質の実空間的理解 XPCS などのダイナミクス計測 局所計測 ( 複雑系 不均一系 界面など ) 電子状態 ( ダイナミクス スピン 時間 ) 化学状態 時間的制約により産業界での応用が不十分 先端研究の加速 ( 研究遅れ 機会損失 実験離れを防ぐ ) 100% の情報でなくてもラボ装置で測定できるならば企業にとってはリスクが低いという考えも 光学系調整 実験環境の制限 ( 特に軟 X 線実験 ) 外場 準大気圧下 ( 実製品 ) オペランド計測 利用 運用 継続的利用 施設間連携 産学連携 複雑系の理解には系統的な実験が重要 人材育成 企業内における技術的地位の確立 最適な実験施設への振り替えによる成果の最大化 複雑 / 多体問題 分光学的理解に重要 人材育成 / オープンサイエンス? 7
光源性能への期待 ( ゴムを例に ) 高輝度 コヒーレンス タイコグラフィー ( 高空間分解能観察 ) Y. Takahashi et al., Appl. Phys. Lett. 108, 071103 (2016) 電子顕微鏡 X 線エネルギー ( 元素 ( 電子 ) 密度選択性 ) ゴムを用いたと仮定 200 nm ソフトマターでは軟 X 線が有効 + XAFS による化学状態解析!? も有効 フィラー ポリマー 架橋剤添加材 A 添加材 B X 線光子相関分光法 ( ダイナミクス ) インコヒーレントな領域 広角側のコヒーレンスが向上すれば より速いダイナミクスが観測可能 安定運転 ( 安定性 ) コヒーレントな領域 X 線ビーム / 装置の振動低減 安定性が実験結果に大きく左右するので重要 8
光源性能への期待 ( ゴムを例に ) ナノビーム 軟 X 線 高輝度放射光光源 NEXAFS@BL12, SAGA-LS( 劣化のバルク解析 ) ナノビーム 平均情報 局所で発生し物性に大きく影響する部分の情報が埋もれる オゾン劣化 酸素劣化 新品 過去の推定曲線 実際の製品 局所情報 ( 高空間分解能 ) 複雑系の材料解析に有効 高分解能 + 大スケール測定は複雑系おける統計的な正しさの検証に有効 C-K O-K 想像しなかったイベント発生 市場でどのように劣化しているか因子の特定が可能に!! XPEEM@BL17SU, SPring-8( 劣化の局所解析 ) STXM@BL4U, UVSOR( 添加剤の可視化 ) 劣化大 電子顕微鏡 STXM 像 ( 黒 : 添加剤 ) 内部はポリマー B が選択的に劣化されている新事実 改善 劣化小 高輝度放射光では 10nm 以下で高精度スペクトル解析から信頼性の高い製品作りへ 9
光学系 実験での期待 応用面 光学系 光学系調整のオートメーション化 ( ユーザーでも調整可能に ) 高精度実験は光学系のドリフトなどを常に調整することが重要 特にナノビームにおいては調整如何で実験の質が変わる 試料環境 外場 in-situ / オペランド実験が可能な試料周りの自由度 特に軟 X 線は超高真空での実験であり制限が多い ( 専用セルの開発が難しい 実製品の試料導入が困難な場合も ) 準大気圧実験 ( 高輝度だからこそできるようになる ) 検出器 二次元 時間分解能は重要な因子 ビームライン 施設間のデータフォーマットの統一化 ( 様々な施設を使う上で重要な因子 ) その場でデータチェックが可能なソフト整備 10
利用 運用面での期待 継続的利用 特に軟 X 線はビームライン不足により利用機会が少ない 経験不足 有償利用の場合 : 成果占有 ( 機密性 ) 成果公開 ( 時間確保 ) 学術成果にはなりにくいが産業的に重要テーマが実施できる環境の整備 施設間連携 経験のあるビームライン ( ユーザーにとっては使いやすい ) で困難な実験を行うより他施設で高精度な実験ができるならば課題の振り分けなどのシステム 極論 全施設で課題を一度に審査する? ( 現実的には困難 ) 産学連携 軟 X 線利用に遅れている産業界は スペクトロスコピーの理解 実験デザインの点でハードルが高い 協調領域 と 競争領域 の形成で本格的な産学連携が重要 SPring-8 FSBL では産学連携から産 産学連携へ進展 11