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から (3) までの具体的な予定については添付 2 の図のとおりですので申し添 えます

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ことを 医師への遠慮から避ける傾向があります しかし複数の薬を一緒に服用す ると効果を上下したり さらには体に有害な作用を及ぼす場合もあります 薬の飲 み合わせを確認して その危険を回避できるのも薬剤師です ちなみに この複数の医療機関からもらった薬をチェックできるシステムを 香川薬学部が中心となっ

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づけられますが 最大の特徴は 緒言の中の 基本姿勢 でも述べられていますように 欧米のガイドラインを踏襲したものでなく 日本の臨床現場に則して 活用しやすい実際的な勧告が行われていることにあります 特に予防抗菌薬の投与期間に関しては 細かい術式に分類し さらに宿主側の感染リスクも考慮した上で きめ細

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Transcription:

助成研究演題 - 平成 27 年度国内共同研究 (39 歳以下 ) 改良型 STOPP を用いた戦略的ポリファーマシー解消法 木村丈司神戸大学医学部附属病院薬剤部主任 スライド 1 スライド 2 スライド1, 2 ポリファーマシーは 言葉の意味だけを捉えると 薬の数が多いというところで注目されがちですけれども それに加えて 潜在的に不適切な処方が含まれていることが問題として取り上げられるようになっています スライド 3 ポリファーマシーによる問題点として 薬物有害反応の増大 薬物 - 薬物間や薬物 - 疾患間の相互作用の増大 服薬アドヒアランスの低下 医療費の増大 ひいては死亡率の上昇といった問題が取り上げられていますが これに対して有用な介入方法は 少なくとも本邦では確立されていないというのが現状であるかと思います スライド 3 スライド 4 ポリファーマシーを是正するための基準として 海外ではSTOPP criteriaが用いられています STOPP criteriaについては 2014 年に改定版のバージョン2が発表されています - 150 -

セッション 4 / ホールセッション 今回の研究は 薬剤師がこの STOPP Ver. 2を用いて 新規入院患者の持参薬について不適切処方 つまり PIMs(Potentially Inappropriate Medications) のスクリーニング 介入を実施いたしました スライド 4 スライド 5 方法です スライド 6 まず 薬剤師による PIMs のスクリーニング 介入の方法について説明いたします 対象患者さんが入院された際に持参薬を確認しますけれども その際に 各薬剤の処方経緯や既往歴 転倒歴 検査値などについても確認をいたします 次いで STOPP Ver. 2を参照して PIMs のスクリーニングを実施いたします スクリーニングを実施した後 該当する不適切な処方があった場合には 処方変更によるメリットと病態悪化のリスクを評価いたします 次いで 代替薬への変更など 薬剤調整が入院期間中に可能かどうかについて検討いたします 担当医師と処方中止 変更につき協議し 可能であれば処方の中止 変更をいたします 処方変更後は 病態悪化がないかどうかについて慎重にフォローいたします スライド 5 スライド 6 スライド 7 今回の研究の評価です 研究のデザインは前向きの観察研究で 対象患者さんは持参薬を有する 65 歳以上の新規の入院患者さんです - 151 -

スライド 7 スライド 8 対象病棟診療科はスライドに示すとおりで 介入を実施した薬剤師の実務経験年数は 1 ~ 2 年目の薬剤師が 2 名 3 ~ 5 年目が 4 名 6~8 年目が2 名 9 年以上が 1 名といったように 比較的若い薬剤師で構成されています 調査期間は2015 年 4 月 1 日から2016 年 3 月 31 日までの1 年間で行いました スライド 8 結果です スライド 9 まず STOPP criteria Ver. 2 該当患者さんの割合ですけれども 対象患者さん822 名のうち該当患者は42.1% 346 名でした スライド 10 次いで STOPP Ver. 2 に該当した PIMs, 不適切処方の処方変更率ですけれども 項目の合計として651 件あり うち 変更になったものが44.9% 全体で292 件でした スライド 9 スライド 10-152 -

セッション 4 / ホールセッション スライド 11 患者背景です 詳細は省略いたしますが 男性と比較して女性は STOPP criteria Ver. 2 に該当する患者さんが有意に多い結果となりました 年齢は 75.7 歳と 75.0 歳で 有意な差は見られませんでした 服用薬剤数は Ver. 2 該当患者さんでは 10 剤 非該当患者さんでは 6 剤という結果で 該当患者で有意に多い結果となりました スクリーニングに要した時間の平均は 1 人当たり平均 6.2 分でした スライド 11 スライド 12 スライド 12 対象患者の診療科別の STOPP Ver. 2 該当割合ですけれども 整形外科や神経内科で 他の診療科に比べて該当割合が多い結果となりましたが どの診療科でも 30% を超えるような該当率で どの診療科でも不適切処方が処方されているという結果になりました スライド 13 PIMs の薬剤別内訳ですけれども ベンゾジアゼピン系の薬剤が最多で 50% 次いで NSAIDs SU 剤 PPI 抗コリン薬といった結果になっていました スライド 13 スライド 14 では ここから 各項目別の該当数 処方変更率をお示しします まず PIMs として最も該当が多かったベンゾジアゼピン系薬剤に関連する項目の該当数および処方変更率です PIMs 合計が 651 件 処方変更率としては 44.9% ですが ベンゾジアゼピン系に関しては - 153 -

スライド 14 スライド 15 処方変更による退薬症状のリスクなどもあり 処方変更率が 40% 前後と 全体と比べると低い結果となっています スライド 15 次いで NSAIDs に関連する項目の該当数 処方変更率ですけれども NSAIDs に関してはアセトアミノフェンなど代替薬への変更が比較的容易であり 処方変更率は 60%~ 70% 前後と 他の項目に比べて変更率が多い結果となっていました スライド 16 その他の項目の該当数 処方変更率ですけれども SU 剤に関しては 特に短期間の入院の患者さんでは薬剤調整が難しく 処方変更率は20% と 低めの結果となっていました また エビデンスに基づいた臨床的な適応のない薬剤としては ビタミン欠乏がない患者におけるビタミン剤投与であったりとか上気道症状に対する抗菌薬等で 病歴を確認の上 可能であれば処方を中止いたしました スライド 17 考察です スライド 16 スライド 17-154 -

セッション 4 / ホールセッション スライド 18 今回 9 名の薬剤師が STOPP Ver. 2 スライド 18 を用いて 3 病棟 計 20 診療科で 1 年間で延べ 822 名の患者さんに対して 患者 1 人当たり平均 6.2 分で系統的な PIMs のスクリーニング 介入が可能でした また STOPP Ver. 2の該当患者の割合としては42.1% で STOPP Ver. 2 を用いたこのような不適切処方の調査 介入の研究は まだ世界的にも少ないです STOPP Ver. 1を用いた 以前のわれわれの調査における該当患者の割合は26.9% となっていました 海外の STOPP Ver. 1 を用いたシステマティックレビューにおける該当患者の割合としては21~79% と かなり幅が見られました 複数の診療科で PIMs は明らかに存在するため 診療科横断的に介入できる薬剤師の活動が重要と考えられました 以上のことから 今回の手法の有用性が示唆されました スライド 19 スライド 19 また STOPP Ver. 2 に該当した PIMs の処方変更率としては 44.9% でした 以前にわれわれが行った STOPP Ver. 1 を用いた調査における処方変更率は28.0% でした これについては criteria 改定の影響によって 妥当性の低い criteria の項目が削除され 処方変更率が高まったものと考えられました また PIMs の中には 必ずしも criteria のとおり処方変更することが適切ではないケースもあり 各症例で適切な臨床判断が必要と考えられました このことから 症例ごとに薬剤師による評価を行う必要性が示唆されました スライド 20 STOPP criteria Ver. 2を用いた 薬剤師によるPIMsのスクリーニング 介入は ポリファーマシーの是正に有用な手法であることが示唆されました 現在 当院でポリファーマシーに介入した患者の情報を地域の医療機関 保険薬局と共 - 155 -

有する取り組みと STOPP criteria Ver. 2 を容易に活用するためのシステムの運用開始を検討中であります スライド 20 質疑応答 会場 : 見落としたのですが 最初のスライドで ポリファーマシーの是正の理由として 高齢者がものが飲み込みにくいから大量の薬を飲むのが大変な労苦であるというような項目はありましたっけ 木村 : 今回の分の中には含めていないです 会場 : 分かりました 現実には 今言ったようなことで 入れていただいてもいいのではないかと思うほど 高齢者は薬を飲むのが大変なのです しかも それを飲まなければ死ぬと思っている人もたくさんいます それから 家族が飲ませるわけですけれども 大変な苦労をしている現実を ぜひ配慮していただきたいと思います 木村 : ありがとうございます 座長 : 私のほうから 今日のご発表は 基本的には持参薬を対象とされていますね 木村 : そうです 座長 : 持参薬のほうの処方内容については 多分 高齢者ガイドラインに出ている 望ましくない医薬品リスト を対照して それからですね - 156 -

セッション 4 / ホールセッション 木村 : 持参薬対照として 高齢者のガイドラインではなく STOPP criteria というヨー ロッパの基準を用いています 当院は大学病院なので 近隣の医療機関で処方されている薬がかなり多く含まれています 座長 : ただ 入院された後に 当然 持参薬だけで治療するわけでないので 新たな処方も出るわけですよね そういうところが全く触れられていないのですが そことの重複もさらに増えるわけですね 木村 : そうですね 今回の取り組みに関しては調査 研究という目的で行っていますので 対象をある程度限定して というところで持参薬を対象にしています ただ 入院中 入院後に処方された薬剤に関しても 当然 薬剤師は評価 介入を行っていますので 同様に不適切な処方があれば 介入したりとか処方提案とかということは行っています 座長 : 処方変更 ということが出されていましたけれども 具体的に持参薬というのは既に他の所で処方されている薬ですよね それを処方変更というのは どのようにされるのですか 木村 : 内容が不適切なものがあれば 入院時に切り替えの処方として 例えば減量したり 中止したり 他のより望ましい薬に変更したり ということをしています 座長 : 院内のほうでの処方変更ですね 木村 : そうです 入院患者さんです - 157 -