宇宙物理学 ( 概論 ) 6/6/ 大阪大学大学院理学研究科林田清
ポリトロープ関係式 1+(1/) 圧力と密度の間にP=Kρ という関係が成り立っていると仮定する K とは定数でをポリトロープ指数と呼ぶ 5 = : 非相対論的ガス dlnp 3 断熱変化の場合 断熱指数 γ, と dlnρ 4 = : 相対論的ガス 3 1 = の関係にある γ 1 等温変化の場合は= に相当 一様密度の球は=に相当 静水圧平衡と自己重力の式より d r dp dm ( < r ) = G = 4 π G ρ ( r ) r dr ρ ( r ) dr dr これにポリトロープの関係式を代入すると 1 d θ ( ξ ) d ξ = θ ( ξ ) ξ dξ dξ + 1 P ここでρ = ρ ( θ ( ξ )), r = αξ, α = 4 π G ρ ρ は中心密度であるから 境界条件として ρ ( r = ) = ρ よりθ = 1 dp ( ) ( ) / dr( r = ) = よりθ ' = 1/ ポリトロープ関係を仮定することで静水圧平衡と自己重力の式だけから星の構造 ( 密度分布 圧力分布 ) を導くことができる Lane-Emden 方程式 : この方程式の解を Emden 解という
http://164.8.13.169/eniklopedija/math/math/l/l77.htm より Emden 解 Lane-Emden 方程式は一般には数値的 にしか解けない ( 図参照 ) θ ( ξ ) =,1,,3,4 ( ) 星の半径はθ ξ = となるξ を使って 1 P 1/ R = αξ = ( +1) ξ として表せる 4π G ρ 星の質量 Mは M= R γ 1/ 1/ 3 3 d 1 P dr = ( ) = ξ 3 4 d π ρ ξ = ξ 4 G 4π ρ r 4πα ξ θ ξ ϕ 1/ ( ) ξ +1 ϕ ρ / ρ 6/5 5 5.46 4/3 3 13.79 16.15 54. 5/3 1.5 5.777 1.73 5.99 6 6 1 ξ =3 の解をつかって 太陽の中心密度を求めると 75g/m 3
量子 : 離散的なエネルギー 古典物理学では記述できずエネルギー量子化の根拠になった事項 原子からの線スペクトル 低温での固体の比熱 黒体輻射 ある振動モード ( 振動数 ) の光が連続的なエネルギー Eをもてる場合 Eexp(- E/ kt) de エネルギーの期待値 EはE = = kt exp(- E/ kt) de ν hν B(T)= ν exp(h ν /kt)-1 hν ν ktで kt hν ν ktで hν exp( h ν/kt) ある振動数の光があるエネルギー εの整数倍のエネルギー E = nεしかとれない場合 β =1/kTとして βnε nεe βε n= βnε εe = = ln( = = ) βε βnε β n= e ε / kt E e kt 1 exp( ε / kt) 1 e n=
ポリトロープ関係式は近似式 ; より正確に解くにはエネルギーの流れを考慮した式を導入する必要がある 恒星の内部構造 エネルギー流束 ( 熱平衡の条件 ) L( r ) を rを横切るエネルギーの流れとすると dl( r ) = 4 π r ρε dr ここでε は単位質量あたりのエネルギー発生率 温度勾配とエネルギーの流れ ( 熱輸送の条件 ) エネルギーの流れが輻射による場合注 ) 圧力にはガス圧以外に輻 dt 3 κσρ L( r ) = 射の圧力 (a/3)t 4 も効く 3 dr 16T 4π r a= ここでσ は Stefan Boltzmann定数 κは吸収係数 エネルギーの流れが対流による場合 dt d lnt T dp = dr d ln P P dr ここで ( d ln T / d ln P ) は断熱係数の逆数
熱の輸送として輻射と対流の寄与 対流が無視できる場合 熱の輸送は主に輻射による 対流が効いてくるのは温度変化が大きい場合 ある質量要素が z 方向に変位した場合を考える この間に常に圧力は周囲と平衡を保つが 熱伝導は遅く断熱的に変化したとみなす dp f = dp T lnt T dt = dp = dp P ln P P f f f ( T P ) ( γ ) ここで ln / ln = -1 / γ もし dt f dt f > dt なら質量要素は周囲より低温 圧力は等しいので密度大 重力により -z 方向に戻される 逆に < dt なら質量要素はさらに上昇する 温度勾配が断熱変化のそれに比べて大きい場合 dz P+dP f T+dT f P T P+dP T+dT P T dt dt > dz dz の場合 変位は不安定で対流が発生する 対流が起これば熱輸送は大きくなり 結局温度勾配は dt lnt T dp 断熱変化の場合の = に落ち着く dz ln P P dz
時間尺度 (Time Sale)1 自由落下時間 ( τ ): 運動方程式をr/ τ τ ff 1 1/ 3 3 = 1 /1 se (( 4 π / 3) G ρ ) 膨張時間 ( τ ): これよりτ s ex = ex = r ff ff 1/ dp 静水圧平衡の式より dr 音速は /( P / ρ ) 半径 r を伝わる時間 GM/r と近似して 1/ ( ρ gm ) GM d r = ρ = r dt dp / d ρ P / ρ であるから音速で ρ 圧力がゼロなら数千秒でつぶれる 静水圧平衡にある場合 膨張時間 ~ 自由落下時間 光の拡散時間 (t ): 平均自由行程 l (=1/n σ ) で 回のランダムウォークで 進む距離は r= t = l / = r / l = nσ r d d 1/ l 道のりはL / ( ρ )( σ σ Th )( ) 3 3 1 /1 gm / r / R year 太陽の内側から光がでるのに数千年かかる
時間尺度 (Time Sale) ケルビン時間 (t K ): 星が収縮してその重力エネルギーの開放分を 光として放出していると仮定する この場合の収縮の時間尺度 GM 7 1 1 tk = / L = 1.5 1 ( M / M ) ( R / R ) ( L / L ) year R 進化の時間 (t e ): 星の内部で起こっている反応によって質量エネルギー の f 倍が光として放出されるとすると ( 全質量のうち q だけの割合が反応に使われるとすると ) fqm 1 f q = = ( )( ) 1 te 1x1 3 M / M L / L year L 7 1.1
太陽 ( 恒星 ) のエネルギー源は何か? 重力収縮だとすると寿命 = ケルビン時間 ~15 万年 化学反応 ( 燃焼 ) によると H 1kg あたり 1.4x1 6 J つまり f= 1.6x1-9 これから寿命 = 進化の時間 ~3 年 核融合反応だとすると f= 7x1-3 これから寿命 = 進化の時間 ~1 億年 地球の年齢は数十億年 太陽の年齢が地球の年齢と同程度だと思うと太陽のエネルギー源は核融合反応しか考えられない
熱核融合反応 高温のガス ( プラズマ ) 中で起こる核融合反応 衝突確率 断面積を σ 相対速度をvとすると 1 個の粒子が単位時間あたりにもう1 個の粒子に衝突する確率は σ v ( 相方の粒子の数密度 ) 密度 n n の二つの粒子の衝突確率は nn 1 1 σ v 断面積 クーロン障壁の高さ ZZ 1 e R 1.4ZZ R 1 m トンネル効果による透過率 P oul πη πη μ ここでE = v η =Z Z e / h v = Z Z e / E / μ h 1 σ ~ πλ = π p E クーロン障壁を考慮した断面積はおよそ σ e = 1 13 e 1 1 / E 1 MeV 断面積は原子核のドブロイ波長から ポテンシャル ZZ 1 e r トンネル効果 R E 原子核中心からの距離 r
熱核反応の反応率とガモフピーク ( ) vσ E e E e E πη 1/ a / E 1/ / = / 一方粒子の速度分布 1/ ( E ) de E exp( E / kt ) de すると反応率 r は r=nn ( ) ~ 1/ Maxwell分布なので 1/ vσ E ( E ) de nn exp( E / kt )exp( a / E ) de 1 1 exp( E / kt ) ガモフピーク Gamov Peak 1/ exp( a/ E ) 例 ) 温度が 1 万度のガス粒子の平均エネルギーは約 1keV 陽子陽子反応に対するガモフピークの中心は約 16keV Maxwell 分布の すそ にある少数の粒子が熱核反応に寄与している E