日本酒をめぐる状況 平成 3 年 1 月農林水産省政策統括官
1 酒類別の出荷量の推移 アルコール飲料全体の出荷量は 消費者志向の変化等により 酒類間での移動はあるが 全体ではやや減少傾向で推移 近年では 日本酒 ビールなどが減少する一方で チューハイなどのリキュール 果実酒 ( ワイン ) ウイスキーなどは増加 ( 千kl ) 1, 酒類別の出荷量の推移 1, 8, その他 果実酒 6, リキュール 4, 発泡酒 ビール, 45 年 5 年 55 年 6 年元年 年 3 年 4 年 5 年 6 年 7 年 8 年 9 年 1 年 11 年 1 年 13 年 14 年 15 年 16 年 17 年 18 年 19 年 年 1 年 年 3 年 4 年 5 年 6 年 7 年 8 年昭和平成 資料 : 酒のしおり ( 国税庁 ) 注 : 焼酎は連続式蒸留焼酎及び単式蒸留焼酎の合計 果実酒には甘味果実酒を含む その他は合成清酒 みりん スピリッツ その他醸造酒等の合計 焼酎 日本酒 1
日本酒の出荷状況 日本酒の国内出荷量は ピーク時 ( 昭和 48 年 ) には17 万klを超えていたが 他のアルコール飲料との競合などにより 近年は5 万kl台前半の水準まで減少 一方 日本酒全体の国内出荷量が減少傾向で推移する中で 消費者の志向が量から質へと変化してきており 特定名称酒 ( 吟醸酒 純米酒等 ) の出荷量は増加傾向で推移 日本酒の国内出荷量の推移 特定名称酒の種類別出荷量の推移 ( 千kl ) ( 千kl ) 1, 1,133 35 1, 8 6 4 91 871 1 659 634 日本酒全体 593 599 59 58 566 555 54 533 特定名称酒 ( 日本酒全体の内数 ) 174 165 159 159 161 164 167 173 178 179 3 5 15 1 5 91 34 5 6 169 1 3 6 54 111 174 165 159 159 161 164 167 173 178 179 18 4 18 17 19 1 4 5 4 4 3 3 5 7 9 3 37 4 45 57 56 54 55 56 58 59 6 65 67 吟醸酒純米吟醸酒純米酒 1 年 15 年 年 1 年 年 3 年 4 年 5 年 6 年 7 年 8 年 9 年 73 68 64 61 6 56 5 49 46 43 1 年 15 年 年 1 年 年 3 年 4 年 5 年 6 年 7 年 8 年 9 年 本醸造酒 資料 : 日本酒造組合中央会調べ 年度は暦年 注 1:9 年は概数 注 : 清酒は 一般酒のほか 原料米及び製造方法などの諸条件 ( 原料 精米歩留 ) により 吟醸酒 純米酒等 8 種類に分類され これらを総称して 特定名称酒 という 資料 : 日本酒造組合中央会調べ 年は暦年 注 : 清酒は 一般酒のほか 原料米及び製造方法などの諸条件 ( 使用原料 精米歩合など ) により 吟醸酒 純米酒等 8 種類に分類され これらを総称して 特定名称酒 という
3 コメ コメ加工品の輸出戦略 農林水産物 食品の国別 品目別輸出戦略 ( 平成 5 年 8 月農林水産省決定 ) において 日本酒を含むコメ コメ加工品の輸出額を 年 ( 平成 3 年 ) までに6 億円とする目標を決定 その後 未来への投資を実現する経済対策 ( 平成 8 年 8 月閣議決定 ) において 輸出額目標を平成 31 年に1 年前倒しすることとされ オールジャパンで輸出拡大を推進 更に 農林水産省では コメ海外市場拡大戦略プロジェクト ( 平成 9 年 9 月公表 ) において 平成 31 年に輸出数量の目標を1 万トンと設定 17 年 ( 平成 9 年 ) の輸出額は61 億円 ( 前年比 18% 増 ) ( 億円 ) 7 6 5 17 年の輸出額は 61 億円 ( 前年比 18% 増 ) コメ コメ加工品の輸出状況 目標 6 4 3 1 15 1 35 169 14 39 15 115 1 39 1 7 38 14 156 61 3 4 187 (161) 7 115 (189) 3 8 138 13 14 15 16 17 17 18 19 (1-8 月 ) (1-8 月 ) コメ 米菓 日本酒 資料 : 財務省 貿易統計 ( 政府による食糧援助を除く ) 注 : 数量 1 トン未満 金額 万円未満は計上されていない コメ米菓日本酒 ( 年 ) 3
4 日本酒の輸出の状況 日本酒の国内出荷量が減少傾向にある中 輸出量は 日本食ブーム等を背景に近年増加傾向にあり 平成 9 年の輸出数量は3,48klと この1 年で倍増 また 日本酒の全出荷量のうち輸出量が占める割合は 4.% となっている 日本酒の輸出金額については 平成 5 年に初めて1 億円を突破して 平成 9 年には187 億円となり この1 年で約 3 倍の伸び率となっている 平成 9 年における日本酒の輸出先国は 67ヶ国 全体数量及び金額のうち アメリカ 韓国 台湾 中国 香港の5ヶ国 地域で約 8 割を占めている 平均輸出単価は 1l 当たり795 円となっている 国別では 1l 当たり香港 1,549 円 アメリカ1,45 円と平均を上回る水準であるのに対し 台湾 韓国は平均を下回る水準 ( 単位 : kl ) 5,, 15, 1, 5, 日本酒の輸出量の推移 19,737 5,771 その他 18,18 16, 16,316 5,51 1,87 香港 4,6 13,77 14, 14,131 3,853 1,985 1,745 1,877 台湾 4,3 1,151 11,949 3,775 3,49 3,51 3,341 1,716,96 中国 1,613 3,458 3,46,11 8,89 8,7 1,436 1,66 1,49 1,747 1,74 1,91 896 1,576 1,13 1,38 1,74 4,798 1,66 1,381 1,639 1,68 1,63 韓国 1,77,41 65 375 666 1,59 1,954,59,88,94 3,5 3,1 3,367 3,695 734 1,6 48 485 4,1,191 1,491,4 3,843 3,575 3,75 4,71 3,95 4,489 4,341 4,78 5,18 5,78 アメリカ 1 年 15 年 年 1 年 年 3 年 4 年 5 年 6 年 7 年 8 年 9 年 資料 : 貿易統計 ( 財務省 ) 年は暦年 日本酒の全出荷量のうち輸出量が占める割合 注 : 年は暦年 3,48 1 年 15 年 年 1 年 年 3 年 4 年 5 年 6 年 7 年 8 年 9 年.7%.9% 1.8% 1.9%.3%.3%.3%.7%.8% 3.% 3.5% 4.% 日本酒の輸出金額の推移 ( 億円 ) 187 18 16 156 44 その他 14 14 38 8 1 115 33 香港 15 9 6 台湾 1 9 85 88 89 4 3 7 9 中国 8 77 7 1 1 9 17 18 14 17 1 19 6 6 韓国 6 17 9 13 15 15 5 7 14 16 5 1 4 5 5 5 39 4 14 13 4 34 1 7 8 1 1 1 8 5 35 3 3 3 3 39 41 5 5 6 アメリカ 6 13 9 17 1 年 15 年 年 1 年 年 3 年 4 年 5 年 6 年 7 年 8 年 9 年 資料 : 貿易統計 ( 財務省 ) 年は暦年 輸出先国別平均輸出単価 ( 単位 : 円 /l) 平均 香港 アメリカ 中国 台湾 韓国 9 年 795 1,549 1,45 796 478 389 資料 : 貿易統計 ( 財務省 ) 年は暦年 4
5 日本酒原料米の使用状況 日本酒の原料米は 一般的に流通している米のほか 酒造りのために作られた特別な米 酒造好適米 ( 山田錦 五百万石など ) が使用されており 酒造好適米については 契約栽培を中心に取引されている 平成 8 年産における日本酒原料米の使用量は約 4 万トン 近年 日本酒の出荷量は減少傾向であるものの 製品当たりの米の使用量が多い特定名称酒が増加傾向にあるため 日本酒原料米の使用量は堅調に推移 日本酒メーカーの総売上高は 国内出荷量の減少とともに減少していたが 近年の輸出や特定名称酒の国内出荷の増加傾向に伴って 平成 4 年度以降増加傾向にある ( 千kl ) 1, 1,133 日本酒の国内出荷量の推移 4,7 ( 億円 ) 日本酒メーカーの総売上高推移 1, 8 6 4 91 871 1 659 634 日本酒全体 593 599 59 58 566 555 54 533 特定名称酒 ( 日本酒全体の内数 ) 174 165 159 159 161 164 167 173 178 179 1 年 15 年 年 1 年 年 3 年 4 年 5 年 6 年 7 年 8 年 9 年資料 : 日本酒造組合中央会調べ 年は暦年 日本酒原料米の使用状況 ( 単位 : 千トン ) 1 年産 15 年産 年産 1 年産 年産 3 年産 4 年産 5 年産 6 年産 7 年産 8 年産 日本酒原料米 45 315 61 46 3 38 41 43 48 51 41 酒造好適米 (4) (7) (7) 99 75 77 71 65 65 68 76 9 99 97 主食用米 165 9 6 54 43 5 57 34 7 3 加工用米 86 89 74 7 77 71 79 95 15 94 93 その他 55 59 5 49 47 5 37 38 6 8 9 資料 : 日本酒造組合中央会による推計値 注 : 酒造好適米の ( ) 書きは生産数量目標の枠外で生産された数量で内数 5 4,6 4,5 4,4 4,3 4, 4,1 4, 4,587 4,47 4,313 4,53 4,74 4,35 4,33 4,389 4,416 年度 1 年度 年度 3 年度 4 年度 5 年度 6 年度 7 年度 8 年度 資料 : 清酒メーカーの経営実態調査 (( 株 ) 帝国データバンク ) 注 : 集計対象は 主業が 清酒製造 の清酒メーカー 1,77 社
6 酒造好適米の生産状況 平成 9 年産酒造好適米の生産量は約 1 万トンで そのうち 兵庫 新潟 長野 岡山 秋田の5 県で約 6 割を占めている 酒造好適米の中でも 特に 山田錦 五百万石 は 全国の酒造メーカーからのニーズが多く この 銘柄だけで酒造好適米全生産量の約 6 割を占めている 酒造好適米の産地別生産量の推移 5 年産 6 年産 7 年産 8 年産 9 年産 シェア 全国計 75,813 9,185 18,797 16,618 1,17 1% 兵庫,19 6,199 3,484 8,17 6,645 7% 新潟 11,878 13,167 15,943 15,3 1,313 1% 長野 5,49 7,144 6,689 6,497 6,94 6% 岡山 3,158 4,56 5,93 5,69 6,83 6% 秋田 3,371 4,9 4,957 5,11 4,81 5% その他 9,888 35,84 44,794 45,8 43,814 44% 資料 : 農産物検査結果 ( 農林水産省 ) 注 :9 年産は 平成 3 年 3 月 31 日現在の速報値 8 年産の平成 9 年 3 月 31 日時点の速報値は確定値に対して 97% の数値 酒造好適米の銘柄別生産量の推移 5 年産 6 年産 7 年産 8 年産 9 年産 ( 単位 : トン ) ( 単位 : トン ) シェア 全国計 75,813 9,185 18,797 16,618 1,17 1% 山田錦 3,81 9,81 39,58 37,57 38,3 38% 五百万石,6,596 7,78 6,3,7 % 美山錦 6,46 7,786 7,838 7,513 7,18 7% 雄町 1,7,31,886,481,873 3% その他 4,4 7,679 31,467 33,337 31,75 3% 資料 : 農産物検査結果 ( 農林水産省 ) 注 :9 年産は 平成 3 年 3 月 31 日現在の速報値 8 年産の平成 9 年 3 月 31 日時点の速報値は確定値に対して 97% の数値 山田錦 山口 1,39,41 五百万石 9 年産酒造好適米の主要銘柄の生産状況 岡山 その他 3,541 その他 4,657 福井 3,96 富山 3,67 兵庫,9 新潟 9,7 9 年産 9 年産 ( 単位 : トン ) シェア 兵庫,9 58% 岡山 3,541 9% 山口,41 6% その他 1,39 7% ( 単位 : トン ) シェア 新潟 9,7 46% 富山 3,67 16% 福井 3,96 15% その他 4,657 3% 資料 : 農産物検査結果 ( 農林水産省 ) 注 : 平成 3 年 3 月 31 日現在の速報値 8 年産の平成 9 年 3 月 31 日時点の速報値は確定値に対して 97% の数値 6
7 酒造好適米の需給 価格状況 酒造好適米は 堅調な需要がある一方で 生産面においては主食用品種に比べて栽培が難しく 収量が低いこと等から 日本酒原料用として販売される酒造好適米の取引価格は主食用米に比べて高値で取引される傾向にある しかしながら 平成 7 年産においては 平成 6 年産主食用米 ( うるち米 ) の取引価格が大幅に低下したこと等により 酒造好適米の作付けが急増したことや 作柄が良好であったこと等から供給量が増加し 産地品種銘柄によっては安値で取引されたケースもあるとみられる このため 酒造好適米の需要 価格の安定のためには 的確な需要情報等の共有 需要に応じた生産が必要 ( 円 /6kg) 5,, 15, 1, 5,,1,6 3,6 3,6 3,6 3,6 3,6 16,6 16,8 16,6 16, 16,1 16,1 16,1 14,49 15,715 原料米の販売価格の推移 13,55 11,8 1,198 13,47 14,435 3 年産 4 年産 5 年産 6 年産 7 年産 8 年産 9 年産 山田錦 ( 兵庫 ) 五百万石 ( 新潟 ) 主食用米 ( 相対取引価格 ) 注 1: 酒造好適米 ( 日本酒造組合中央会からの聞き取り ) は 1 等米の販売注 : 主食用米 ( 相対取引価格 ) は 出回りから翌年 1 月 (9 年産は 3 年 8 月 ) までの 1 等米の通年平均価格であり 包装代 運賃を含み 消費税相当額を含まない ( 千トン ) 1 1 8 6 4 65 68 1 1 5 6 19 19 76 4 6 1 1 3 酒造好適米の生産状況 9 8 8 3 3 19 17 31 3 8 7 33 8 1 3 3 7 6 4 37 38 3 年産 4 年産 5 年産 6 年産 7 年産 8 年産 9 年産 その他 雄町 美山錦 五百万石 山田錦 資料 : 農産物検査結果 ( 農林水産省 ) 注 :9 年産は 3 年 3 月 31 日現在の速報値 8 年産の平成 9 年 3 月 31 日時点の速報値は確定値に対して 97% の数値 7
8 酒造好適米の需要に応じた生産について 酒造好適米の需要に応じた生産に向けて 生産及び実需の関係者による 日本酒原料米の安定取引に向けた情報交換会 を開催し 平成 8 年 6 月に関係者が取り組むべき3つの方策として 1 複数年契約の拡大に向けた対応 作柄変動等に対応する仕組みの構築 3 需要情報の提供体制の構築についてとりまとめた また 毎年 日本酒原料米の安定取引に向けた情報交換会 を開催するとともに 需要に応じた生産を行うための指標として 平成 8 年度から全酒造メーカーを対象とした酒造好適米の需要量調査を実施し 調査結果等を公表しているところ 酒造好適米の需要量については 平成 3 年度の需要量調査により 平成 3 年産及び平成 31 年産は9~ 94 千トン程度の需要量が見込まれ ほぼ同水準で推移 平成 31 年産については 平成 9 年産と比べて 8% 程度の生産とすれば 平成 31 年産の全体需給は均衡すると考えられる 酒造好適米の需要量調査の実施状況酒造好適米の全体需給状況見通し ( 推計 ) 平成 9 年度 平成 3 年度 調査期間平成 9 年 7 月平成 3 年 7 月 11 1 ( 単位 : 千トン ) 今後 生産量 ( 検査数量 ) が明らかとなった段階で検証するが 9 年産生産量と比較して 8% 程度の生産であれば需給均衡 供給過不足数量 +7~9 千トン程度 ( 推計値 ) 9 年産生産量の 8% 程度の生産で需給均衡 9 年産生産量の 8% 程度の生産で需給均衡 調査対象メーカー数 1,44 社 1,461 社 9 1 93~95 9~94 9~94 回答酒造メーカー数 811 社 716 社 8 推計 推計 推計 回答率 ( 数量ベース ) 83~85% 8~83% 7 9 年産検査数量 ( 推計値 ) 今回調査結果 77 今回調査結果 77 今回調査結果 77 9 年産 3 年産 31 年産 供給量全体需要量 ( 今回推計値 ) 注 : 各年産の 全体需要量 ( 今回推計値 ) は 回答のあった酒造メーカーの需要量が全体需要量の約 8~83% と推計されるため 今回調査した各年産の需要量を当該割合で除することにより推計 8