リハビリテーション歩行訓練 片麻痺で歩行困難となった場合 麻痺側の足にしっかりと体重をかけて 適切な刺激を外から与えることで麻痺の回復を促進させていく必要があります 麻痺が重度の場合は体重をかけようとしても膝折れしてしまうため そのままでは適切な荷重訓練ができませんが 膝と足首を固定する長下肢装具を

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通所リハビリテーションとは 介護保険で認定を受けられた要支援 要介護の方を対象に機能訓練 歩行訓練や日常生活訓練 脳への刺激で認知症予防などを目的に リハビリテーション ( 以下 リハビリ ) を行う通いのサービスです 通所リハビリテーション ( 以下 通所リハビリ ) は 利用者様が可能な限り自宅

Clinical Indicator 2016 FUNABASHI MUNICIPAL REHABILITATION HOSPITAL

リハビリテーションマネジメント加算 計画の進捗状況を定期的に評価し 必要に応じ見直しを実施 ( 初回評価は約 2 週間以内 その後は約 3 月毎に実施 ) 介護支援専門員を通じ その他サービス事業者に 利用者の日常生活の留意点や介護の工夫等の情報を伝達 利用者の興味 関心 身体の状況 家屋の状況 家

Clinical Indicator 2017 FUNABASHI MUNICIPAL REHABILITATION HOSPITAL

脳卒中に関する留意事項 以下は 脳卒中等の脳血管疾患に罹患した労働者に対して治療と職業生活の両立支援を行うにあ たって ガイドラインの内容に加えて 特に留意すべき事項をまとめたものである 1. 脳卒中に関する基礎情報 (1) 脳卒中の発症状況と回復状況脳卒中とは脳の血管に障害がおきることで生じる疾患

Ⅰ 通所リハビリテーション業務基準 通所リハビリテーションのリハビリ部門に関わる介護報酬 1. 基本報酬 ( 通所リハビリテーション費 ) 別紙コード表参照 個別リハビリテーションに関して平成 27 年度の介護報酬改定において 個別リハビリテーション実施加算が本体報酬に包括化された趣旨を踏まえ 利用

2 片脚での体重支持 ( 立脚中期, 立脚終期 ) 60 3 下肢の振り出し ( 前遊脚期, 遊脚初期, 遊脚中期, 遊脚終期 ) 64 第 3 章ケーススタディ ❶ 変形性股関節症ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

平成 28 年度診療報酬改定情報リハビリテーション ここでは全病理に直接関連する項目を記載します Ⅰ. 疾患別リハビリ料の点数改定及び 維持期リハビリテーション (13 単位 ) の見直し 脳血管疾患等リハビリテーション料 1. 脳血管疾患等リハビリテーション料 (Ⅰ)(1 単位 ) 245 点 2

摂食嚥下訓練 排泄訓練等を開始します SCU で行うリハビリテーションの様子 ROM 訓練 ( 左 ) と端坐位訓練 ( 右 ) 急性期リハビリテーションプログラムの実際病棟訓練では 病棟において坐位 起立訓練を行い 坐位耐久性が30 分以上となればリハ訓練室へ移行します 訓練室訓練では訓練室におい

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クリニカルインディケーター 2017 の刊行にあたって 当院は開院以来 重症者にも対応できる医療 リハケア体制の整備 スタッフの量的および質的充実に向けた教育 研修体制の構築 チームアプローチの徹底や情報共有の強化 急性期病院および地域医療 介護との連携推進 生活 期リハの充実等 様々な取り組みを組

平成 28 年 10 月 17 日 平成 28 年度の認定看護師教育基準カリキュラムから排尿自立指導料の所定の研修として認めら れることとなりました 平成 28 年度研修生から 排泄自立指導料 算定要件 施設基準を満たすことができます 下部尿路機能障害を有する患者に対して 病棟でのケアや多職種チーム

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医療法人高幡会大西病院 日本慢性期医療協会統計 2016 年度

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リハビリテーションを受けること 以下 リハビリ 理想 病院でも自宅でも 自分が納得できる 期間や時間のリハビリを受けたい 現実: 現実: リ ビリが受けられる期間や時間は制度で リハビリが受けられる期間や時間は制度で 決 決められています いつ どこで どのように いつ どこで どのように リハビリ

加算 栄養改善加算 ( 月 2 回を限度 ) 栄養スクリーニング加算 口腔機能向上加算 ( 月 2 回を限度 ) 5 円 重度療養管理加算 要介護 であって 別に厚生労働大が定める状態である者に対して 医学的管理のもと 通所リハビリテーションを行った場合 100 円 中重度者ケア体制加算

地域包括ケア病棟 緩和ケア病棟 これから迎える超高齢社会において需要が高まる 高齢者救急に重点を置き 地域包括ケア病棟と 緩和ケア病棟を開設いたしました! 社会福祉法人 恩賜財団済生会福岡県済生会八幡総合病院

選考会実施種目 強化指定標準記録 ( 女子 / 肢体不自由 視覚障がい ) 選考会実施種目 ( 選考会参加標準記録あり ) トラック 100m 200m 400m 800m 1500m T T T T33/34 24

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点検項目 点検事項 点検結果 リハビリテーションマネジメント加算 Ⅰ 計画の定期的評価 見直し 約 3 月毎に実施 リハビリテーションマネジメント加算 Ⅱ ( リハビリテーションマネジメント加算 Ⅰ の要件に加え ) 居宅介護支援事業者を通じて他のサービス事業者への情報伝達 利用者の興味 関心 身体

このような現状を踏まえると これからの介護予防は 機能回復訓練などの高齢者本人へのアプローチだけではなく 生活環境の調整や 地域の中に生きがい 役割を持って生活できるような居場所と出番づくりなど 高齢者本人を取り巻く環境へのアプローチも含めた バランスのとれたアプローチが重要である このような効果的

短期集中リハビリ入所ご案内 介護老人保健施設ウエルハウス西宮

患者学講座第1講「医療と社会」

認知症医療従事者等向け研修事業要領

Taro-1.ゆす 機能訓練プログラム

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表紙@C

7 時間以上 8 時間未満 922 単位 / 回 介護予防通所リハビリテーション 変更前 変更後 要支援 Ⅰ 1812 単位 / 月 1712 単位 / 月 要支援 Ⅱ 3715 単位 / 月 3615 単位 / 月 リハビリテーションマネジメント加算 (Ⅰ) の見直し リハビリテーションマネジメン

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「手術看護を知り術前・術後の看護につなげる」

グループ紹介 上尾中央医科グループ 上尾中央医科グループは 関東圏を中心とする病院 老健 学校 研究所などからなる関東有数の医療機関グループです * 理念 : 愛し愛される病院 施設 * 施設 : 病院 27 老健 20 学校 3 等 * 総病床数 :9,167 床 * 総職員数 :15,534 詳

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目次 1. 本指針の目的 1 2. 患者の問題点 障害の捉え方 対応の原則 2 3. あり方の全体像 ~ 業務プロセス オーバービュー ~ 1) オーバービューとは 3 2) オーバービューの構成 3 4. 多職種協働のポイント 5 1) 入院判定 5 2) 入院初日の流れ 5 3) カンファレンス

正誤表 正誤箇所 誤 正 医科 - 基本診療料 -35/47 注 3 診療に係る費用 ( 注 2 及び注 4に規定する加算 注 3 診療に係る費用 ( 注 2 及び注 4に規定する加算 注の見直し 当該患者に対して行った第 2 章第 1 部医学管理等の 当該患者に対して行った第 2 章第 1 部医学

訪問リハビリテーションに関する調査の概要

2 経口移行加算の充実 経口移行加算については 経管栄養により食事を摂取している入所者の摂食 嚥 下機能を踏まえた経口移行支援を充実させる 経口移行加算 (1 日につき ) 28 単位 (1 日につき ) 28 単位 算定要件等 ( 変更点のみ ) 経口移行計画に従い 医師の指示を受けた管理栄養士又

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高齢化率が上昇する中 認定看護師は患者への直接的な看護だけでなく看護職への指導 看護体制づくりなどのさまざまな場面におけるキーパーソンとして 今後もさらなる活躍が期待されます 高齢者の生活を支える主な分野と所属状況は 以下の通りです 脳卒中リハビリテーション看護認定看護師 脳卒中発症直後から 患者の


図表 リハビリテーション評価 患 者 年 齢 性 別 病 名 A 9 消化管出血 B C 9 脳梗塞 D D' E 外傷性くも幕下出血 E' 外傷性くも幕下出血 F 左中大脳動脈基始部閉塞 排尿 昼夜 コミュニ ケーション 会話困難 自立 自立 理解困難 理解困難 階段昇降 廊下歩行 トイレ歩行 病

ポートフォリオ分析レポート 2018/1/12 調査名 患者満足度調査 ( 病院 - 入院 ) KPI 7. 家族や知人に当院を紹介したいと思いますか 対象集団 施設名大阪みなと中央病院 分析対象 入院環境について (1) 人数 77 名男性 37 名女性 30 名 A B C D E F G H

事業内容

都におけるリハビリテーション医療推進の方向性 ( 東京都保健医療計画 ) < 計画期間 : 平成 5 年 月 日から平成 年 月 日まで > 地域リハビリテーション支援体制の充実 今後の更なる高齢化の進展に伴う地域リハビリテーションの重要性を踏まえ 平成 年度から各地域リハビリテーション支援センター

7 対 1 10 対 1 入院基本料の対応について 2(ⅲ) 7 対 1 10 対 1 入院基本料の課題 将来の入院医療ニーズは 人口構造の変化に伴う疾病構成の変化等により より高い医療資源の投入が必要となる医療ニーズは横ばいから減少 中程度の医療資源の投入が必要となる医療ニーズは増加から横ばいにな

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課題名

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事業案内 障害のある方や高齢者の自立生活や社会参加を支援します 自分らしい生活を送るために必要な福祉用具や住宅改修などの相談 支援を行います 具体的な技術支援を必要とされる方には リハビリテーションセンターの専門職が医療 保健 福祉関係機関と連携して相談 支援に対応します 相談内容 身体状況の確認日

NAGOYA EKISAIKAI HOSPITAL 名古屋掖済会病院

名介護老人保健施設野洲すみれ苑デイケア 住所野洲市小篠原 TEL FAX :30 ~ 16:00 月 火 水 木 金 定員 30 人 1~2 名 5~7 名 5 名 0 名可可可可可可 1 日の生活の中で リハビリ 入浴をメインに行っ

介護老人保健施設 契約書

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一般会計負担の考え方

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届出書 体制等状況一覧表 ( 別紙 1-3) の添付書類一覧 定期巡回 随時対応型訪問介護看護 中山間地域等における小規模事業所加算 11 月当たりの平均延訪問回算定表 前年度の 4 月 ~2 月分 緊急時訪問看護加算 特別管理体制 ターミナルケア体制 サービス提供体制強化加算 (Ⅰ) サービス提供

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27 年度調査結果 ( 入院部門 ) 表 1 入院されている診療科についてお教えください 度数パーセント有効パーセント累積パーセント 有効 内科 循環器内科 神経内科 緩和ケア内科

2 保険者協議会からの意見 ( 医療法第 30 条の 4 第 14 項の規定に基づく意見聴取 ) (1) 照会日平成 28 年 3 月 3 日 ( 同日開催の保険者協議会において説明も実施 ) (2) 期限平成 28 年 3 月 30 日 (3) 意見数 25 件 ( 総論 3 件 各論 22 件

4 研修について考慮する事項 1. 研修の対象者 a. 職種横断的な研修か 限定した職種への研修か b. 部署 部門を横断する研修か 部署及び部門別か c. 職種別の研修か 2. 研修内容とプログラム a. 研修の企画においては 対象者や研修内容に応じて開催時刻を考慮する b. 全員への周知が必要な

体制強化加算の施設基準にて 社会福祉士については 退院調整に関する 3 年以上の経験を有する者 であること とあるが この経験は 一般病棟等での退院調整の経験でもよいのか ( 疑義解釈その 1 問 49: 平成 26 年 3 月 31 日 ) ( 答 ) よい 体制強化加算の施設基準にて 当該病棟に

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個別機能訓練加算Ⅰ・Ⅱについて

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A5 定刻に評価するためには その時刻に責任をもって特定の担当者が評価を行うことが必要 となる Q6 正看護師 准看護師 保健師 助産師以外に医師 セラピストなどが評価してもよいか A6 よい ただし 医療職に限られ 評価者は所定の研修を修了した者 あるいはその者が実施した院内研修を受けた者であるこ

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平成 24 年度診療報酬説明会リハビリテーション関連 平成 24 年 4 月 21 日 公益社団法人 高知県理学療法士協会 医療部

基本料金明細 金額 基本利用料 ( 利用者負担金 ) 訪問看護基本療養費 (Ⅰ) 週 3 日まで (1 日 1 回につき ) 週 4 日目以降緩和 褥瘡ケアの専門看護師 ( 同一日に共同の訪問看護 ) 1 割負担 2 割負担 3 割負担 5, ,110 1,665 6,

Microsoft Word - 体裁修正 【登録後修正版】説明資料(案)

もくじ 目的 目標 支援体制図 4 運用規準 ) 運用地域 ) 運用開始時期 ) 実施方法 4) 実施手順 5) 個人情報の取扱い 6) 運用に関する留意事項 5 資料 精神障害者の治療中断 4 精神障害者の治療中断の アセスメント項目 適用例 考え方 6

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点検項目点検事項点検結果 リハビリテーションマネジメント加算 (Ⅰ) 計画の進捗状況を定期的に評価し 必要に応じ見直しを実施 ( 初回評価は約 2 週間以内 その後は約 3 月毎に実施 ) 介護支援専門員を通じ その他サービス事業者に 利用者の日常生活の留意点や介護の工夫等の情報を伝達 利用者の興味

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保監第   号 

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介護における尊厳の保持 自立支援 9 時間 介護職が 利用者の尊厳のある暮らしを支える専門職であることを自覚し 自立支援 介 護予防という介護 福祉サービスを提供するにあたっての基本的視点及びやってはいけ ない行動例を理解している 1 人権と尊厳を支える介護 人権と尊厳の保持 ICF QOL ノーマ

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平成 27 年 1 月から難病医療費助成制度が変わりました! (H26 年 12 月末までに旧制度の医療費助成を受けている人は 3 年間の経過措置 を受けられます ) 分かり難い場合は協会又は自治体の窓口へお問い合わせください H27 年 1 月からの新制度 1. 難病医療費助成の対象は ALS 重

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厚生労働省による 平成 30 年度介護報酬改定に関する Q&A(Vol.1) に対する 八王子介護支援専門員連絡協議会からの質問内容と八王子市からの回答 Q1 訪問看護ステーションによるリハビリのみの提供の場合の考え方について厚労省 Q&A(Vol.1) での該当項目問 21 問 22 問 23 A

第1回 障害者グループホームと医療との連携体制構築のための検討会

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統合失調症患者の状態と退院可能性 (2) 自傷他害奇妙な姿勢 0% 20% 40% 60% 80% 100% ないない 0% 20% 40% 60% 80% 100% 尐ない 中程度 高い 時々 毎日 症状なし 幻覚 0% 20% 40% 60% 80% 100% 症状

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医療機能分化連携推進事業 1 対象事業者 病床を有する医療機関 2 支援対象 既存病床を回復期病床に転換する際に必要となる施設 設備整備費 設備整備 H27~ 継続対象リハビリを行うための治療機器や訓練機器等の導入経費 物理療法を実施するための 超音波治療器や温浴療法用装置の導入事業例 運動療法を実

居宅介護支援事業者向け説明会

通所型サービスの例 ( 典型例として整理したもの ) 現行の通所介護相当 市場 ( 地域支援事業の外 ) で提供されるサービス Ⅰ 通所介護 Ⅱ 通所介護 Ⅲ 通所型サービス A ( 緩和したによるサービス ) Ⅳ 通所型サービス B ( 住民主体による支援 ) Ⅴ 通所型サービス C ( 短期集中

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Transcription:

歩行訓練 片麻痺で歩行困難となった場合 麻痺側の足にしっかりと体重をかけて 適切な刺激を外から与えることで麻痺の回復を促進させていく必要があります 麻痺が重度の場合は体重をかけようとしても膝折れしてしまうため そのままでは適切な荷重訓練ができませんが 膝と足首を固定する長下肢装具を使用することで適切な荷重訓練を行うことができます ( 図 13) 図 14は重度の右片麻痺を患った患者さんの荷重訓練をしている時の麻痺側下肢の筋活動 ( 表面筋電図 ) を経時的に示したものです 入院時 ( 図 14: 写真上 ) 膝と足首を固定する長下肢装具を使用して麻痺側への荷重訓練をしていますが 体重を支える筋肉 ( 大殿筋 大腿直筋 ) の活動はまったく認められていません この時点では 患者さんは自分の足の力ではなく 装具の固定力と理学療法士の支えによって体重を支えています しかし このような練習を繰り返し続けていくことで 2 週間後 ( 図 14: 写真中 ) には大殿筋 大腿直筋にわずかながら筋活動が見られるようになっています 5 週間後 ( 図 14: 写真下 ) には筋肉の活動がさらに大きくなり 装具での膝の固定力を必要としなくなり 膝から下だけの短い下肢装具でも体重を支えられるようになっています 麻痺の重症度に応じて早期から適切な下肢装具を使用し 理学療法のなかで適切な歩行パターンを獲得した後は 日常生活の中でも歩行する機会を設け 歩行距離を段階的に延長しながら歩行の実用性を高めていきます 屋内だけでなく 屋外の凸凹や坂道や階段なども練習して外出能力を高めることも重要です 図 13< 長下肢装具を使用した歩行訓練 > 図 14 8

上肢機能訓練 片麻痺の上肢や手指の機能回復には 麻痺の重症度や回復状況に適した難易度の課題を反復して行うことが重要です 課題の難易度が高すぎたり 逆に易しすぎるとリハビリの効率は落ちてしまいます 個々の患者さんに最適な難易度の課題を提供していくためには作業療法士の力量に加えて 課題難易度をきめ細かく調節できる訓練機器や自助具 ( 図 15: 左上 ) を過不足なく取り揃え 必要に応じていつでも提供できるよう体制を整えておく必要があります 当院では上肢機能訓練ロボットのReo Go-J( 図 15: 右上 ) 機能的電気刺激のIVESやMURO Solution スパイダースプリント( 図 15: 左下 ) やポータブルスプリングバランサー等を揃え 重症度に合わせた訓練を提供できる体制を構築しています 図 15 <ポータブルスプリングバランサー > < 上肢機能訓練ロボットのReo Go-J> < スパイダースプリント > <HANDS 療法 > HANDS 療法について当院では片麻痺で入院されている患者さんのうち一定の条件を満たす方を対象にHANDS 療法を施行しています ( 図 15: 右下 / HANDS 療法 ) HANDS 療法とは 機能的電気刺激装置と上肢装具を1 日 8 時間装着し 作業療法士が作成した自主訓練を通して日常生活で積極的に麻痺側上肢を使用するという治療法です 適応のあるケースでは通常の作業療法よりも効果があり 脳卒中治療ガイドラインでも推奨されています HANDS 療法の適応 1. 脳卒中後遺症による片麻痺 (SIASのKM 2 以上かつFF 1B 以上 : 肘の屈曲が可能で手指のわずかな伸展が可能な状態 ) 2. 麻痺側上肢に著名な関節拘縮がない 3. 階段昇降 歩行 入浴以外のADL 自立している, もしくは自立の見込みがある 4. 治療の実施に影響を及ぼす認知症 高次脳機能障害 コミュニケーション障害がない 5. 12 歳以上 80 歳未満 9

摂食嚥下訓練 摂食嚥下では 口腔ケア 栄養管理 摂食嚥下評価および訓練を包括的にバランスよく行う必要があり どれかひとつの要素が欠けていても最善の結果は得られません 医師 看護師 ケアワーカー 言語療法士 管理栄養士 歯科医 歯科衛生士等のプロフェッショナルとしての質の高さとチームワークの融合が成功の鍵となります 当院では 48 床の病棟に対して医師 3 名 看護師 20 名 ケアワーカー 14 名 理学療法士 18 名 作業療法士 14 名 言語聴覚士 6 名 管理栄養士 1 名 薬剤師 1 名を病棟専従で配置しています 病棟専従体制の最大のメリットは 多職種が病棟内で顔を合わせる機会が多くなるために職種の壁が出来にくく コミュニケーションが密になり チーム医療の質が向上することにあります これは摂食嚥下を進める上でも大きなアドバンテージとなります また 当院では胃瘻以外の経管栄養は原則として全例間欠的経管栄養法で行っており これも経口摂取獲得の可能性をさらに引き上げています ( 詳細は4ページの 経管栄養の管理 : 間欠的経管栄養法の取り組み を参照ください ) 以上の取り組みにより 嚥下障害により経管栄養の状態で当院に入院された患者さんの58.6% は退院までに3 食経口摂取可能となり 経管栄養を離脱することが出来ました ( 図 16) 図 16< 摂食嚥下の実績 > 高次脳機能障害 大脳の損傷によって引き起こされる高次脳機能障害には 注意障害 記銘力障害 見当識障害 発動性低下 遂行機能障害 半側空間無視 構成障害 失行 失認等 様々なものがあります 高次脳機能障害のでは どのような症状がどの程度あり それが日常生活や家事動作や職業活動にどのような影響を及ぼすのかをしっかりと評価し 問題点を克服するための対策をたてていきます 高次脳機能障害は半年から長い場合では数年間かけて改善していくことがよくあります 多くの場合 入院期間内にすべての問題を解決することには至らず 退院後も外来に通いながらリハビリを継続し 回復を長い目で見ていく必要があります 外来のリハビリの他に 自立支援施設での高次脳機能障害グループ訓練や就労支援や職業訓練等 より難易度の高いリハビリを併用することで さらに高いゴールを目指せる方もいます 当院は 外来にも高次脳機能障害の治療を行える療法士を十分に配置し ソーシャルワーカーを窓口として地域のの資源ともしっかりと連携を取りながら包括的に治療を進めていく体制を構築しています 10

痙縮の治療 筋肉の過剰な収縮いわゆる 筋痙縮 は脳卒中や脊髄損傷の患者さんの20 ~ 30% に生じ 活動量が高まる回復期の時期に症状が悪化しやすいと言われています 痙縮は悪化すると本来の運動を妨げ 関節の疼痛や変形を来し の進行に大きく影響するため 早期から予防や治療を行う必要があります 筋痙縮の予防 治療として 以下 A ~ Fが推奨されています ( 脳卒中治療ガイドライン ) 痙縮の程度や疼痛 日常生活への影響を医師と療法士が共同で評価し 適切な治療法を選択します A ~ Eは当院で実施することができ 物理療法ではパワープレート 等の振動療法を多く実施しています モーターポイントブロック ボツリヌス療法は医師の技量で治療の成否が大きく左右されるため 科専門医の指導のもと実施しています 外科的治療が必要となった場合は連携病院と協議しながら治療を進めます A) 関節可動域訓練 自己ストレッチ 図 17< 当院のボツリヌス療法の実績 > B) 装具療法 C) 物理療法 D) 内服薬 ( 筋弛緩薬等 ) E) モーターポイントブロック ボツリヌス療法 ( 図 17 18) F) 外科的治療 ( アキレス腱延長術 バクロフェン髄腔内投与療法など ) 図 18< ボツリヌス治療前後の比較 > 11

生活訓練 リハビリの訓練の時だけでなく 麻痺した手を日常生活の活動のなかでも使用するように心がけると 動かす機会が増えてさらに回復するという好循環が生まれます 調理や洗濯ものたたみ等の家事動作は両手を使うことが多く 手の訓練として大変良い課題となります また 成し遂げた時の達成感もあるため 精神的な自立にもつながります 麻痺が重度で手が使えない場合でも器具の工夫によって片手で調理できるようになる方もいます 入院中から家事動作や屋外歩行や公共交通機関の利用 あるいは復職 復学等 生活をどこまで広げられるかを訓練しながら見極め 退院後に患者さんが自分なりの役割を持って生活していくことはとても重要です ( 図 19 20) 入院中には生活訓練が十分に行えなかった場合でも 退院後に外来リハビリや訪問リハビリを継続することで残された課題を解決できることもあります 当院には外来リハビリや訪問リハビリ部門があり 退院後も切れ目なく生活期のリハビリを継続していくことが出来ます 図 19< 家事動作訓練 > 図 20< 階段昇降訓練 屋外歩行訓練 > 12