韓国 KERIS の ILL について 2012 年 3 月 7 日図書館連携 協力室実務研修生 ( 大阪大学附属図書館 ) 藤江雄太郎
韓国出張概要 11 月 24 日 ( 木 ) 出国 15:00 15:30 国立デジタル図書館見学 15:30 16:00 国立中央図書館見学 16:00 17:00 国立図書館の KORMARC 担当者との情報交換 11 月 25 日 ( 金 ) 10:00 11:40 KERIS の ILL/UNICAT 担当者との情報交換 13:30 16:45 KERIS2011 年度大学図書館実務者セミナー (ILL) への参加 11 月 26 日 ( 土 ) 帰国 KERIS の ILL について, ここで得た知見および HP 出版物からの情報を基にご報告します
KERIS とは? 韓国教育学術情報院 (Korea Education & Research Information Service) NII と同様に大学図書館向けに 多様なサービスを提供している 日本の NACSIS CAT/ILL に当たる, UNICAT と WILL というサービスを 提供している
1. 利用者の ILL 依頼方法の違い
利用者RISS と WILL~ILL の 2 つの仕組み RISS: 利用者向けポータル WILL: 図書館員向け業務用システム RISS 図書館 図書館が承認 WILL 依頼
RISS について RISS = Research Information Service System RISSはCiNiiのようなポータル 登録利用者数 :207 万人 (2011 年 12 月時点 ) RISS 収録コンテンツ 総合目録 学術誌論文 ( 国内 ) 海外はメタのみ 学位論文 ( 国内 海外 ) 海外の電子資料
RISS からの ILL 申請 1 RISS トップページ 検索語を入力
RISS からの ILL 申請 2 RISS 検索結果一覧 学位論文 国内学術誌論文 など資料カテゴリーごとに結果が表示
RISS からの ILL 申請 3 ILL の申請 (ID/PW 画面へ ) RISS 検索結果詳細画面
RISS からの ILL 申請 4 原文の直接入手へ (ID/PW) 原文入手できるときは ILL の選択肢はない ( 原文が優先されるようです ) RISS 検索結果詳細画面
日本では 1 ex.cinii からの ILL リンクリゾルバをクリック まず, リンクリゾルバのようなツールが必要
日本では 2 ex.cinii からの ILL リンクリゾルバのようなツールから ILL へ遷移する機能が必要 文献複写申込み画面へ
2. 図書館員向け業務用システム の違い
WILL システムについて WILL = Web Interlibrary Loan System NACSIS ILL と同様, 図書館員向けのシステム 複写 貸借の依頼 受付 精算処理 (KERIS が毎月料金相殺で精算 ) 利用者情報 参加館情報管理 統計出力 WILL システムの中に登録利用者 DB がある 2012 年 2 月 WILL システムがリニューアル
WILL システムと NACSIS ILL の違い WILL システム ( 韓国 ) NACSIS ILL( 日本 ) 利用者情報を持っている 図書館システムとは独立して WILL システムを利用している模様 利用者情報は持っていない ( 各参加機関がローカルに持っている ) 多くの機関が図書館システムの ILL モジュールと接続して使用 (WebUIP を直接使っている参加機関はほとんどない ) E DDS との連携がある ( 次ページ参照 )
E DDS サービス サービス内容 KERIS と Infotrieve 社との契約 5,000 万件以上の学術文献 世界 140 以上の学術出版社との契約 + カナダの NRC CISTI などの所蔵資料から提供 教員と大学院生には KERIS からの費用サポートあり ( ただし, 年間回数制限あり ) 費用は平均 46.43USD 申請方法 RISS から利用者が依頼, もしくは図書館員が代行申請 RISS 内にコンテンツがなく, 国内未所蔵の場合,E DDS に振り分ける仕組みがある模様
KERIS のサービスについて ( 小括 ) 幾重にもわたるセーフティネット 1 各大学内で利用可能なコンテンツの拡充 ex. 国内学術誌論文 学位論文の収集, コンソーシアムとして海外出版社と交渉 2ILL の利便性向上 ex. RISS からのシームレスな申請, 国際 ILL の整備 3E DDS の契約と費用補助
3.DDS についての違い
韓国の大学図書館員からの要望 日本は DDS で文献を送ってくれないのか? (= 時間がかかりすぎる ) CALIS( 中国 ):E Mail での送付 ソウル大学の事例 :OCLC やドイツの SUBITO は電子配送に対応 早ければ 1~2 日 NII:Air Mail は 12~13 日,EMS( 国際スピード郵便 ) は 7~8 日
日本と韓国における国内の DDS 普及 DDS(Document Delivery Service) とは, 電子ファイルにて ILL を行うこと 日本 (NACIS ILL) と ILL 依頼において DDS の占める割合を見てみる 全依頼件数 DDS 依頼件数 DDS の占める割合 日本 (NACSIS ILL) 957,645 件 9,167 件 0.96% 日本は平成 22 年度 1 年分の集計 ( 平成 23 年 3 月末日にカレントファイルにあったもの ) 韓国は日本の外国雑誌センター館にあたるところが無料 DDS サービスをしている
日本における DDS 数字から見てもわかるとおり, そもそも国内でも普及していないようである 考えられ得る理由 対応していない図書館がある程度存在? 依頼するための事前確認が手間? 遠慮?( 速達よりも早く到着するのに安い )
冊子体資料からの DDS 国公私立大学図書館協力委員会と著作権管理団体の合意 or 契約に基づき, 次の 2 つの著作権管理団体の管理著作物は DDS 可能 JCOPY( 出版社著作権管理機構 ) JAACC( 学術著作権協会 ) FAX, インターネット送信 ( メール添付含む )OK ただし, 紙面に再生して利用者に渡すこと 依頼館が HP で確認してから依頼 確認の手間がかかる
電子ジャーナルの DDS ILL 及び DDS の可否は大学ー出版社間のライセンス アグリーメントの内容による 依頼館 :DDS 以前に ILL の可否すら, 頼んでみないと分からない 受付館 : アグリーメントをチェック そのまま電子ファイルを送ることは許されず, プリントアウトしてそれをスキャンしたものなら DDS を許可 のケースがほとんど 手間がかかる
DDS の送付時 NACSIS ILL では, 電子ファイルを一緒に送ることはできない レコードを SEND するのみ メール添付で送るか, 依頼館が用意しているサーバへのアップロード 容量オーバーで, はじかれることもある
依頼館業務受付館業務冊子からEJ から電子ファイルを用意スキャン 完了 まとめ図 日本の DDS の現状 NACSIS CAT で所蔵確認 著作管理物の HP を確認 レコードの SEND 何らかの手段で所蔵館を確認 or 推定 アグリーメントのチェック DL したファイルそのまま プリントアウト & スキャン メールor サーバ upload
雑感 韓国 KERIS と日本 NII が提供しているサービスは非常に似ている ベースが同じ中で, それぞれ創意工夫してサービスを発展させてきた 継続的に情報交換をしていくことで, お互いにいい刺激を与えていけるのではないか 日本は日本語コンテンツ, 韓国は韓国語コンテンツとそれぞれ多くの独自資料をもっているので, 電子化が両国ともまだ途上である現時点において, 相互利用の促進は有益
ありがとうございました