平成 29 年度介護サービス事故発生状況報告 ( まとめ ) 本報告は 平成 29 年度中 (H29.4.1~H30.3.31) に介護保険の事業者において 介護サービスの利用中に発生した利用者等の事故について 事業者から鹿児島市に提出のあった 指定介護サービス事業者事故報告書 ( 以下 事故報告書 という ) の内容に関して集計を行ったものです 事故報告書は 事故が発生した場合に医療機関の受診を要したものなどを 介護サービス事業者から保険者である鹿児島市へ報告するものです したがって 本報告の集計値が介護サービス事業者において発生した事故のすべてに関するものではないことをご了承願います 1 平成 29 年度事故報告書受付件数計 1,204 件 (H29.4.1~H30.3.31 受付分 ) 2 サービス事業者ごとの事故報告件数 < 表 1> サービス事業者 ( サービス種別 ) 件数割合 訪問介護 7 0.6% 通所介護 ( デイサービス ) 139 11.5% 通所リハビリテーション 40 3.3% ショートステイ ( 特養 老健 療養型 ) 56 4.7% 特定施設入居者生活介護 59 4.9% 介護老人福祉施設 336 27.9% 介護老人保健施設 156 13.0% 介護療養型医療施設 5 0.4% 小規模多機能型居宅介護 34 2.8% 認知症対応型共同生活介護 ( グループホーム ) 335 27.8% 地域密着型特定施設入居者生活介護 7 0.6% その他 30 2.5% 表 1 は サービス事業者ごとに事故報告書の提出があった件数を集計したものです 集計結果によると 介護老人福祉施設 ( 特別養護老人ホーム ) が 336 件 (27.9%) と最も多く 次いでグループホームからの報告が 335 件 (27.8%) となっており 入所や入居して常時利用者を介護している施設や居住系サービス事業者からの報告を合計すると 898 件 (74.6%) となっています これらの事業者においては 複数の利用者を限られた職員数で 24 時間 365 日介護しているため 事故発生のリスクが多いものと考えられます - 1 -
3 事故発生時間帯別件数 < 表 2> 事故発生時間帯件数割合 0:00~3:00 73 6.1% 3:00~6:00 91 7.6% 6:00~9:00 167 13.9% 9:00~12:00 239 19.9% 12:00~15:00 178 14.8% 15:00~18:00 172 14.3% 18:00~21:00 134 11.1% 21:00~24:00 70 5.8% 時間帯が不明なもの 80 6.5% 発生時間帯の集計は 3 時間単位で集計を行っています 表 2 は 事故の発生状況を時間帯別に集計したものです 事故の発生時間帯別の件数を見ますと 9 時 ~ 12 時が 239 件 (19.9%) と最も多く 次に 12 時 ~15 時が 178 件 (14.8%) となっています 事故報告書の集計からは早朝から深夜帯までどの時間帯でも事故発生のリスクがあることがわかります なお 実際に事故が発生した時間が不明なものや単に時間帯の記載がないものは 時間帯が不明なもの として分類しています 4 事故発生場所別件数 < 表 3> 事故発生場所 件数 割合 (%) 居室 病室 542 45.0% 廊下 72 6.0% 食堂 69 5.7% 浴室 脱衣所 84 7.0% トイレ 84 7.0% ホール フロア リビング 166 13.8% その他施設内 69 5.8% 施設外 18 1.5% 乗降 乗車中 27 2.2% 自宅 22 1.8% 不明 48 4.0% その他 3 0.2% 表 3 は 事故の発生場所別に件数を集計したものです 事故発生場所の 45% が居室 病室となっています 自室内で ベッドからトイレ ( ポータブルトイレを含む ) への移動や車椅子等への乗り移りのときなどの転倒による事故や ベッド上での寝返りやベッドからの移動時の転落事故が多数報告されています 次に 施設内のリビングルームや大広間 ( ホール ) 等 レクレーションや休憩時間 移動中に足元がふらつき転倒したケースの報告が多くなっています また インフルエンザ感染など 発生場所を特定できない事例については その他 として 発生場所が不明な事例については 不明 として分類してあります - 2 -
5 事故発生場所と発生時間帯 ( クロス集計 ) < 表 4> 発生時間帯 発生場所 居室 病室 廊下 食堂 浴室 脱衣所 トイレ ホール リビ ング 0:00 ~ 3:00 54 10 0 0 5 2 0 0 0 2 0 0 73 3:00 ~ 6:00 71 5 0 0 9 3 3 0 0 0 0 0 91 6:00 ~ 9:00 88 10 20 1 16 16 9 1 1 0 3 2 167 9:00 ~ 12:00 52 14 10 62 13 45 11 3 14 8 7 0 239 12:00 ~ 15:00 41 14 20 11 21 35 24 4 3 0 5 0 178 15:00 ~ 18:00 52 10 13 10 8 39 14 5 9 10 2 0 172 18:00 ~ 21:00 82 6 6 0 7 22 6 2 0 1 2 0 134 21:00 ~ 24:00 56 3 0 0 5 3 2 0 0 0 0 1 70 時間帯不明 46 0 0 0 0 1 0 3 0 1 29 0 80 合計 542 72 69 84 84 166 69 18 27 22 48 3 1,204 表 4 は 事故の発生時間帯 < 表 2> と発生場所 < 表 3> をクロス集計したものです この表によると 居室内での深夜から朝方 (21 時 ~9 時 ) の時間帯で 269 件 ( 全体の約 22%) の事故が発生していることがわかります この時間帯は夜勤時間帯で職員数が少ない中で 利用者が夜中就寝の途中で目を覚ましトイレ等へ行こうとして転倒するケースや 職員が他利用者の介助中に ひとりで離床しようとして転倒するケースが多く報告されています ( 自室内のトイレ ポータブルトイレは 居室 病室 でカウントしています ) その他施設内 施設外 乗降 乗車中 自宅 不明 その他 計 6 事故の原因 < 表 5> 事故の原因件数割合 転倒 627 52.1% 転落 120 10.0% 誤飲 誤嚥 38 3.0% 交通事故 20 1.7% 感染 88 7.3% 介助時 107 8.9% 不明 94 7.8% その他 110 9.2% 表 5 は 事故の原因を集計したものです 夜間に利用者がひとりでトイレに行こうとして転倒するケースが最も多く報告されています 加齢により身体的機能が低下していることに加えて そのことを自覚していない場合に転倒の危険性が高まってくるようです 利用者一人ひとりの行動パターンについての情報をなるべく多く収集し できるだけ多くの職員間でその情報を共有することが必要であると思われます 次いで 転落事故が 120 件 (10.0%) あり ベッドや車イスからの転落が主なものになっていますが 事故報告書の内容から転倒にカウントしているものもあります また 原因が不明なものが 94 件 (7.8%) となっていますが 入浴時やオムツ交換のときに 身体の腫脹等に気付き 骨折の発見につながるケースなどがあります - 3 -
7 けが等の状況 < 表 6> けが等の状況件数割合 (%) 骨折 415 34.5% 打撲 捻挫 脱臼 186 15.4% 切り傷 裂傷 擦過傷 155 12.9% 皮膚剥離 43 3.6% やけど 6 0.5% 誤嚥 17 1.4% 行方不明 9 0.7% 内出血 53 4.4% 怪我 異常なし 107 8.9% 経過観察 58 4.8% その他 155 12.9% 表 6 は けが等の状況を集計したものです けが等の状況で最も多かったものは 骨折 で 415 件 (34.5%) となっています 骨折には至らなかったが 打撲や擦り傷 裂傷等受傷したものが合計で 341 件 (28.3%) となっており事故報告の約 7 割が何らかのけがに至っていることがうかがえます また 怪我 異常なし (107 件 (8.9%)) とあるのは 転倒 転落等により骨折や後遺症等が疑われるため医療機関を受診したが 精密検査の結果 医師から異常がない旨の診断を受けたものなどになります 8 けがの原因及びその状況 ( クロス集計 ) < 表 7> けがの原因 けが等の状況 骨 折 打撲 捻挫 脱臼 擦過傷 切傷 裂傷 皮 膚 剥 離 や け ど 転倒 277 129 97 8 0 0 0 25 49 23 19 627 転落 31 21 27 6 0 0 0 3 17 12 3 120 誤飲 誤嚥 0 0 0 0 0 16 0 0 3 11 8 38 交通事故 1 1 0 0 0 0 0 0 17 1 0 20 感染 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 88 88 介助時 39 15 12 14 1 0 0 10 5 2 9 107 不明 47 10 10 4 0 0 0 14 1 3 5 94 その他 20 10 9 11 5 1 9 1 15 6 23 109 合計 415 186 155 43 6 17 9 53 107 58 155 1,204 誤 嚥 行 方 不 明 内 出 血 怪我 異常なし 経 過 観 察 そ の 他 計 表 7 は 事故の原因 < 表 5> 及びけが等の状況 < 表 6> をクロス集計したものです この表から 高齢の利用者が転倒した場合 骨折の危険性が非常に高いことが伺えます ( 転倒の件数 627 件に対し 骨折が 277 件 (44.2%)) さらに 転倒した場合 打撲や裂傷等 何らかのけが等に至るケースが多い (627 件中 536 件 ) ことがわかります - 4 -
また けが等の原因自体が不明なものの 94 件中 47 件が骨折事故として報告されています 逆に 転倒や転落等何らかの原因で病院を受診したが 診断の結果 異常がなかったケースも 107 件ありました 事故発生時には 結果的に大事に至らなかった場合でも 病院受診を行い医師の診断を仰ぐなど日頃からのリスクマネジメントの徹底が重要なことがわかります 本市の事業者においては 事故発生時における適切な対応に対する意識の高さを感じることができました ( まとめ ) 事故報告書による平成 29 年度中の介護サービス事業者におけるサービス利用中の事故の発生状況としては 施設等利用者の居室内における転倒を原因とした骨折事故が最も多く報告されています これらの施設や居住系サービス事業所においては 365 日 24 時間にわたって常に事故発生のリスクが潜んでいることから 利用者の行動パターンをどのように把握し 転倒などの事故のリスクをどのように軽減するか 日頃から職員間で情報を共有することが重要であると思われます 事故報告書は 事業者の責任を追及するものではなく 事故が発生した際の対応やその後の同様の事故に対する事業所内での未然防止対策の検討 見直しを喚起することが最大の目的と考えます よって この 介護サービス事故発生状況報告 ( まとめ ) の結果を参考に 今後の事業者内におけるサービス提供の際の事故発生に係る未然防止対策となることを期待します - 5 -