武蔵 狭山台工業団地周辺大気 環境調査結果について 埼玉県環境科学国際センター 化学物質担当 1

武蔵 狭山台工業団地周辺大気 環境調査結果について 埼玉県環境科学国際センター 化学物質担当 1

調査目的 PRTR 制度が施行され 事業所における化学物質の使用量及び排出量が明らかになってきた 埼玉県において環境への排出量が多い化学物質を中心に 工業団地周辺環境の濃度実態を明らかにするともに排出量との関連を把握する 2

平成 23 年度武蔵 狭山台工業 団地届出大気排出量 (t) 3% 排出量合計 78.4 t 7% 85% 3

調査対象物質 1 調査物質 6 物質当該工業団地で大気への排出量が多い化学物質トルエン キシレン エチルベンゼン ジクロロメタン スチレン 1- ブロモプロパン 2 参照物質 3 物質移動発生源の影響の把握ベンゼン 1,3- ブタジエン試料採取の確実性の確認四塩化炭素 4

調査物質の特徴 (1) トルエン CH 3 キシレン CH 3 用途 : 化学物質の合成原料 油性塗料 接着剤 用途 : 化学物質の合成原料 油性塗料 接着剤 性質 : 揮発性 大気中半減期は 1~3 日 シンナー中毒の原因物質 性質 : 揮発性 大気中半減期は.6~1.2 日 o,m,p 異性体 CH 3 エチルベンゼン C 2 H 5 用途 : スチレンモノマーの原料 混合キシレンの成分 性質 : 揮発性 大気中半減期は 1~2 日 5

調査物質の特徴 (2) スチレン CH=CH 2 ジクロロメタン Cl 用途 : 合成樹脂の原料 合成ゴムの原料 用途 : 洗浄剤 ( 油の除去 ) 不燃化剤 塗装はく離剤 H C H Cl 性質 : 揮発性 大気中半減期は 4~7 時間 性質 : 揮発性 大気中半減期は 2~4 ヵ月 地下水汚染 変異原性 1- ブロモプロパン 用途 : 工業用洗浄剤 染料 香料 医薬品等 CH 3 (CH 2 ) 2 Br 性質 : 揮発性 大気中半減期は 4.5~ 45 日 引火性 6

参照物質の特徴 ベンゼン 用途 : 化学物質の原料 合成ゴムの原料 1,3- ブタジエン H H 用途 : 合成ゴムの原料 ABS 樹脂の原料 C C H H C C H H 性質 : 揮発性 大気中半減期は 7~ 1 日 自動車排ガスやタバコの煙にも含まれる 四塩化炭素 性質 : 常温で気体 大気中半減期は 3~5 時間 自動車排ガスやタバコの煙にも含まれる Cl Cl 用途 : 試薬 化学物質原料 過去 : フロン類原料 洗浄剤 C Cl Cl 性質 : 揮発性 大気中半減期は33 年以上 地下水汚染 劇物 1996 年から原則製造禁止 7

調査地点 平成 24 年度年間風配図 狭山台工業団地 武蔵工業団地 N 2m 化学物質排出地点 トルエン キシレンエチルベンゼン スチレンジクロロメタン 1-ブロモプロパン 対照 : 入間市金子公民館工業団地中心部から約 3.1km 8 8

調査方法 工業団地を取り囲む八方位の地点及び対照地点の 9 地点で年 4 回 ( 春夏秋冬 ) 大気中の調査対象物質濃度を調査 調査期間の気象データ ( 気温 風向 風速 降水量等 ) を 1 地点 ( 地点 ) で測定 有害大気汚染物質測定方法マニュアル ( 環境省 ) 大気中のベンゼン等揮発性有機化合物 (VOC) の測定方法 採取時間 :24 時間 72 時間 (3 日間 ) に変更 採気速度と採気量 :1mL/ 分 4.32L/72 時間 9

調査地点 ( ) 気象計 ( 地点 ) 調査地点 ( ) 1

調査期間と気象データ 単位 第 1 回 ( 春 ) 第 2 回 ( 夏 ) 第 3 回 ( 秋 ) 第 4 回 ( 冬 ) 平均気温 21.8 28.4 7.5 -.4 平均湿度 % 55.6 74.4 65.5 - 平均風速 m/s.9 1..8 1.9 主風向 - 静穏率 % 51.9 11.5 41.8. 降雨量 mm... 1. 平均気圧 hpa 99. 993.9 12.4 - 第 1 回 : 平成 25 年 5 月 21 日 ( 火 )~24 日 ( 金 ) 第 2 回 : 平成 25 年 8 月 2 日 ( 火 )~23 日 ( 金 ) 第 3 回 : 平成 25 年 11 月 12 日 ( 火 )~15 日 ( 金 ) 第 4 回 : 平成 26 年 2 月 4 日 ( 火 )~7 日 ( 金 ) 11

結果 1. 物質濃度 2. 風向の影響 3. 排出量との比較 12

結果 1 調査物質濃度 (1) トルエン キシレン エチルベンゼン 工業団地 対照地点 7.1 8.8 トルエン 1.2 倍 排出量 :66.9t 1 2 3 4 室内濃度指針値 :26μg/m 3 μ g/m 3 工業団地 対照地点 キシレン 1.4 1.5.9 倍 排出量 :.2t 1 2 3 4 5 室内濃度指針値 :87μg/m 3 μ g/m 3 工業団地 対照地点 エチルベンゼン 1.6 1.4 1.1 倍 排出量 :.2t 2 4 6 室内濃度指針値 :38μg/m 3 μ g/m 3 工業団地周辺 8 地点 (n=32) 対照地点 (n=4) 最小値平均値最大値 13

結果 1 調査物質濃度 (2) スチレン ジクロロメタン 1- ブロモプロパン 工業団地 対照地点 排出量 :.2t スチレンジクロロメタン.34 1.9 工業団地 1.4 倍 1.4 倍.19 対照地点 1.4.5 1 1.5 室内濃度指針値 :22μg/m 3 μ g/m 3 排出量 :2.5t 1 2 3 4 大気環境基準 :15μg/m 3 μ g/m 3 工業団地 対照地点 1- ブロモプロパン.26 2.2 倍.12 排出量 :5.7t 工業団地周辺 8 地点 (n=32) 対照地点 (n=4) 最小値平均値最大値.5 1 1.5 2 μ g/m 3 14

結果 1 参照物質濃度 (3) ベンゼン 1,3- ブタジエン 四塩化炭素 工業団地 対照地点 工業団地 対照地点 1,3- ブタジエン.5 1 1.5.5.1.15.2 大気環境基準 :3μg/m 3 μ g/m 3 有害大気指針値 :25μg/m 3 μ g/m 3 工業団地 対照地点 ベンゼン 四塩化炭素.93.85 1. 倍 1.2 倍.91.72.5.51 1. 倍 工業団地周辺 8 地点 (n=32) 対照地点 (n=4) 最小値平均値最大値.2.4.6.8 労安衛法管理濃度 :31µg/m 3 μ g/m 3 15

濃度 (μg/m 3 ) 結果 1 調査時期別八方位平均物質濃度 16 14 12 1 8 6 4 2 降雨量 :mm 平均風速 :.8m/s 1 日目 : 雨 ~ 雪降雨量 :1mm 平均風速 :1.9m/s 春夏秋冬 トルエンキシレンエチルヘ ンセ ンスチレンシ クロロメタン 1-フ ロモフ ロハ ンヘ ンセ ン 1,3-フ タシ エン四塩化炭素 単位 :µg/m 3 調査時期 トルエン キシレン エチルヘ ンセ ン スチレン シ クロロメタン 1-フ ロモフ ロハ ン ヘ ンセ ン 1,3-フ タシ エン四塩化炭素 春 6.7 1.4 1.6.38 2.2.22 1..7.52 夏 11 1.5 1.7.42 2.1.29.93.7.53 秋 14 2.4 2.4.46 2.1.39 1..13.48 冬 3.5.43.54.1 1.2.15.77.7.48 減少率 ( 秋 冬 ) 76% 82% 78% 78% 44% 61% 25% 46% -1% 16

エチルベンゼン濃度 (µg/m 3 ) 結果 1 調査物質濃度の相関 6 キシレンとエチルヘ ンセ ン濃度の関係 5 4 y = 1.26x +.776 R² =.9515 3 2 1 1 2 3 4 5 キシレン濃度 (µg/m 3 ) n=36 これらの成分を含む溶剤中の比率が一定と考えられる 17

結果 2 風向の影響 グラフ中の数字は濃度 (μg/m 3 ) (1) 風向と調査物質濃度の関係 ( 春 ) 春 H25. 5.21~ H25. 5.24 平均気温 : 21.8 平均湿度 : 55.6 % 平均風速 :.9 m/s トルエンキシレンエチルベンゼン 1 8 6 4 2 2 1.5 1.5 2 1.5 1.5 静穏率 : 51.9 % 降雨量 : mm 平均気圧 : 99 hpa スチレン ジクロロメタン 1- ブロモプロパン NNW15% N NNE NW 1% NE WNW W WSW 5% % ENE E ESE 1.5 1.5 4 3 2 1.5.4.3.2.1 SW SSW S SE SSE 武蔵 ( 第 1 回 : 春 ) 18

NNW15% N NNE NW 1% NE WNW 5% ENE W WSW % E ESE SW SE SSW SSE 平成 24 年度年間風配図 S 武蔵 ( 第 1 回 : 春 ) 狭山台工業団地 武蔵工業団地 N 2m 化学物質排出地点 トルエン キシレンエチルベンゼン スチレン ジクロロメタン 1-ブロモプロパン 19 19

結果 2 風向の影響 グラフ中の数字は濃度 (μg/m 3 ) (2) 風向と調査物質濃度の関係 ( 夏 ) 夏 H25. 8.2~ H25. 8.23 平均気温 : 28.4 平均湿度 : 74.4 % 平均風速 : 1. m/s トルエンキシレンエチルベンゼン 15 1 5 2. 1.5 1..5. 2.5 2. 1.5 1..5. 静穏率 : 11.5 % 降雨量 : mm 平均気圧 : 994 hpa スチレン ジクロロメタン 1- ブロモプロパン NNW15% N NNE NW 1% NE WNW W WSW 5% % ENE E ESE 1.5 1..5. 2.4 2.2 2 1.8.4.3.2.1 SW SSW S SE SSE 武蔵 ( 第 2 回 : 夏 ) 2

NNW15% N NNE NW 1% NE WNW 5% ENE W WSW % E ESE SW SE SSW SSE 平成 24 年度年間風配図 S 武蔵 ( 第 2 回 : 夏 ) 狭山台工業団地 武蔵工業団地 N 2m 化学物質排出地点 トルエン キシレンエチルベンゼン スチレン ジクロロメタン 1-ブロモプロパン 21 21

秋 結果 2 風向の影響 (3) 風向と調査物質濃度の関係 ( 秋 ) H25.11.12~ H25.11.15 平均気温 : 7.5 平均湿度 : 65.5 % 平均風速 :.8 m/s 静穏率 : 41.8 % 降雨量 : mm 平均気圧 : 12 hpa トルエンキシレンエチルベンゼン 4 3 2 1 スチレン 5. 4. 3. 2. 1.. ジクロロメタン グラフ中の数字は濃度 (μg/m 3 ) 6. 4. 2.. 1- ブロモプロパン WNW W WSW NNW NW 8% N NNE 6% NE 4% 2% % ENE E ESE 1.5 1..5. 4 3 2 1 2 1.5 1.5 SW SSW S SE SSE 武蔵 ( 第 3 回 : 秋 ) 22

WNW W NNW NW 8% N NNE 6% NE 4% 2% % ENE E WSW ESE SW SE SSW SSE 平成 24 年度年間風配図 S 武蔵 ( 第 3 回 : 秋 ) 狭山台工業団地 武蔵工業団地 N 2m 化学物質排出地点 トルエン キシレンエチルベンゼン スチレン ジクロロメタン 1-ブロモプロパン 23 23

冬 結果 2 風向の影響 (4) 風向と調査物質濃度の関係 ( 冬 ) H26. 2. 4~ H26. 2. 7 平均気温 : -.4 平均湿度 : 欠測 平均風速 : 1.9 m/s 静穏率 : % 降雨量 : 1 mm 平均気圧 : 欠測 トルエンキシレンエチルベンゼン 8 6 4 2 スチレン 1.5 1.5 ジクロロメタン グラフ中の数字は濃度 (μg/m 3 ) 1.5 1.5 1- ブロモプロパン NNW4% N NNE NW 3% NE WNW W WSW 2% 1% % ENE E ESE.5.4.3.2.1 2 1.5 1.5.3.2.1 SW SSW S SE SSE 武蔵 ( 第 4 回 : 冬 ) 24

NNW4% N NNE NW 3% NE WNW W 2% 1% % ENE E WSW ESE SW SE SSW SSE S 平成 24 年度年間風配図武蔵 ( 第 4 回 : 冬 ) 狭山台工業団地 武蔵工業団地 N 2m 化学物質排出地点トルエンキシレンエチルベンゼンスチレンジクロロメタン 1-ブロモプロパン 25

大気排出量 (t) 結果 3 排出量との比較 (1) 大気排出量の推移 18 16 14 12 1 8 6 4 2 H17 H18 H19 H2 H21 H22 H23 H24 年度 その他スチレンエチルベンゼンキシレンジクロロメタン 1-ブロモプロパントルエン H22 から把握 26

結果 3 排出量との比較 (2) 排出量と年平均濃度の関係 調査地点 トルエン キシレン * エチルヘ ンセ ン スチレン シ クロロメタン 1-フ ロモフ ロハ ン 対照 7.1 1.5 1.4.19 1.4.12 6.3 1. 1.2.13 1.5.16 7.6 1.2 1.3.12 1.5.19 年平均 7.3 1.3 1.3.16 1.7.67 濃度 1. 1.4 1.5.21 1.7.3 (μ g/m3) 15.5 1.8 2.1.23 1.9.24 8.2 1.2 1.4.38 2.4.21 8.8 2.3 2.6.69 2.4.15 6.3 1.1 1.3.79 2..17 工業団地由来濃度 平均 ( 八方位 ) 8.8 1.4 1.6.34 1.9.26 濃度比 ( 工業団地 / 対照 ) 1.2.9 1.1 1.8 1.4 2.2 濃度差 ( 工業団地 - 対照 ) 1.66 -.8.2.15.52.14 平成 24 年度大気排出量 (t) 75.2.3.2.2 1.4 7.1 * キシレンは m,p- キシレンと o- キシレンの合量 排出源に近い地点で濃度が高くなると推察される 27

平成 25 年度工業団地由来濃度 (μ g/m3) 結果 3 排出量との比較 (3) 排出量と工業団地由来濃度の 関係 1.8 1.6 1.4 1.2 1.8.6.4.2 -.2 大気中半減期 2-4 ヵ月 1-2 日 4-7 時間.6-1.2 日 4.5-45 日 2 4 6 8 平成 24 年度排出量 (t) トルエンキシレンエチルヘ ンセ ンスチレンシ クロロメタン 1- フ ロモフ ロハ ン 1-3 日 28

まとめ トルエン キシレン エチルベンゼン スチレンの濃度は室内濃度指針値を ジクロロメタン ベンゼンの年平均濃度は大気環境基準を 1,3- ブタジエンの年平均濃度は有害大気汚染物質指針値をいずれも下回った 工業団地周辺 8 地点の 6 調査物質平均濃度は 対照地点の.9~2.2 倍であった 工業団地周辺における調査物質の濃度は 排出源の位置や風向などの影響を受けて増減すると考えられる 調査物質の排出量と工業団地由来濃度はキシレンを除き正の関係を示した 29