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Transcription:

別紙 : 参考資料 従来の深紫外 LED に比べ 1/5 以下の低コストでの製造を可能に 新縦型深紫外 LED Ref-V DUV LED の開発に成功 立命館大学総合科学技術研究機構の黒瀬範子研究員並びに青柳克信上席研究員は従来 の 1/5 以下のコストで製造を可能にする新しいタイプの縦型深紫外 LED(Ref-V DUV LED) の開発に成功した 1. コスト1/5 以下の深紫外 LED 1) LED の種類と深紫外光の活用 LEDには発光する波長の範囲によって 可視光 紫外光を発光する通常の LED と深紫外光を発光する深紫外 LEDがある ( 図 1) 通常の LED は安価で長寿命な光源として確立された技術を持っており一般に広く利用されている しかし 深紫外光が水や空気の殺菌をはじめアトピーの治療等にも利用されており その重要性が増しているにもかかわらず 深紫外領域の LEDは 作製が難しくまだまだ高価であるため実用には結びつきにくい状況である よって現在のところ深紫外光源としては水銀ランプ ( 発光波長 254nm) が使われている ところが水銀の使用は水俣条約で制限されているので もし深紫外 LEDが安価に作れるようになれば この水銀ランプの代替え品として大きな市場を得ることになる また深紫外 LEDは LED の特長である発光波長可変性によって必要な波長を得ることができるため 今まで光源が無いために使われてこなかった未踏波長領域の光を使った新たな産業が生まれる たとえば 深紫外光を使った光硬化を例に挙げて考えると 現在は光源の水銀ランプが発光する254nm 付近の光で硬化できる材料のみを選択して使っているが 深紫外 LEDを使った場合は 用途に適した材料に対して必要な波長の深紫外光を選択することができるようになり 新たな用途が発生し 新市場や新産業が生まれる可能性を持っている 図 1 光の波長と光源の活用

2) 従来のLED の構造とコスト1/5 以下の安価な新縦型 LED の開発深紫外 LEDは まず有機金属結晶成長装置 (MOCVD 装置 ) を用いてサファイアやシリコン基板の上に 6~7 時間 ( 当研究室 ) かけて窒化物半導体結晶をエピタキシャル成長させる そして作ったエピタキシャル結晶にp 型とn 型の電極を付けるプロセス作業を行って LEDができる 図 2 横型 LED と縦型 LED の構造 赤線は電流の流れる経路である 横型 LED では横方 向に電流を流すために電流経路が大変長くなる LEDの構造には図 2のように横方向に電流を流す 横型 と縦方向に電流を流す 縦型 がある 縦型ではp 電極からn 電極までの距離が 2~4μm 横型では 50μm あり 縦型の方が電流を流す距離が短いために抵抗のロスが少なく 横型よりも発光効率を上げることができる また 図 3に一般的な横型 LED( 図 3 左 ) と縦型深紫外 LED( 図 3 中 ) および 新縦型 LED( 図 3 右 ) のプロセスを説明している 横型 LED のプロセスの問題点は 行程の中にレジストプロセスが複数回あり この行程によってコストが高くなる たとえば 当研究室でこの全行程を行うとおよそ5 日間かかる 一方 従来構造の縦型深紫外 LEDは基板から AlN 層までをレーザーリフトオフ法を用い剥離を行うが その剥離が難しいこと 並びにレーザーによる LEDの損傷がおこる事によって 発光効率が下がる事が問題である そこでこれらの問題を解決するために 私たちは 剥離なし新縦型深紫外 LED(Removal Free DEEP UV LED: 以降 Ref-V DUV LED) を開発した この LEDは 横型 LED のレジストプロセスや従来の縦型 LED の剥離プロセスを必要としない 図 4 に横型 LED 縦型 LED 新縦型 LED の行程時間比較を示す 新縦型 LEDの特長は 結晶成長の時間が短いこと ( 約 3 時間 ) プロセスが簡単なこと(1 日 ) である. 横型 LEDと比較すると結晶成長で 1/2 プロセス時間で1/5 全体としての生産プロセスコストが 1/5 以下で LEDを作ることができる

図 3 横型深紫外 LED, 従来型縦型深紫外 LED 並びに本研究で開発した新縦型深紫外 LED のプロセス並びに構造比較 横型構造ではn 電極を形成するために試料の一部をエッチングして n-algan 面を出す必要がる 縦型構造ではレーザーリフトオフ法で基板を剥離する必要がある 新縦型深紫外 LED では直接 p 電極からn 基板に電流を流すことができる 横型深紫外 LED 縦型深紫外 LED 新縦型深紫外 LED 結晶成長時間 6 時間 6 時間 3 時間 プロセス時間 ( 当研究室 ) 5 日 4 日 1 日 図 4 横型深紫外 LED, 従来型縦型深紫外 LED 並びに本研究で開発した新縦型深紫外 LED の行程時間比較

2.Ref-V DUV LED について 1) 構造と発光の様子 図 5 Ref-V DUV LED の構造 ( 左 ) と発光の様子 ( 右 ) 図 5のように Ref-V DUV LED は低抵抗の n 型 Si 基板を用い MOCVD 装置で結晶成長させる n + -Si 基板がn 側の電極であり 電流は p 電極から n + -Si 基板に向かって直接流れる 電流が流れる距離は 2.4μmで 一般の縦型 LEDと同じである この LEDが発光した時の様子が図 5( 右 ) である 電極のパターンに発光しているのがわかる 2) 絶縁体 (AlN) の導電化 自然形成ビアホール結晶成長法 - の成功 1) の構造でみられるおり 今回 AlN 層に電流を流すために新たな手法を開発した 通常 AlNは絶縁体である 一方 完全な縦型 LEDを作るためには低抵抗 n 型 Si 基板の上に結晶成長させる AlN を導電性にする必要があった これを実現させたのが 自然形成ビアホール結晶成長法 である 図 6 自然形成ビアホール結晶成長法での n-aln 層の表面 自然形成ビアホールは 結晶成長時に大きさや数を制御しながら成長させることが可能である 図 6にビアホールの画像を示す ビアホールは Si 基板まで通じている貫通穴で 直径 1~2μmで10μm 四方に30 個ほど存在する このビアホールを通して導電体のn-AlGaN 層まで電流を流すことに成功した

3) 自然形成ビアホールの活用自然形成ビアホール結晶成長法は 結晶成長で作成できるほとんどの物質について適用できると考えている たとえば BN SiC サファイアなどである 今後研究が進めば ビアホールを選択形成させることにより 絶縁体のなかに導電体部分を部分的に結晶成長させ 安価なデバイスを作成することもできる また AlN が持つ性質で絶縁性と熱放電性が高いことに加えて 選択成長による部分的導電性を活用することによって ヒートシンクでありながら部分的に大電流を流す事が可能である もちろん縦型深紫外 LED のコストを下げることが可能で 大量生産に向いている 今後は より短波長の発光と電極の最適化 大面積化を計っていくことで 深紫外 LED の実用化に向けて研究を進める 用語説明 深紫外光: 波長が200~350nm の光を指し 水銀ランプの波長は254nmで現在殺菌などによく使われている AlGaN MQW( 量子井戸 ): 組成の違う AlGaN 結晶 ( アルミとガリウムと窒素からなる結晶 ) を数 nmごとに数層積層させた構造の結晶 (AlxGa1-xN/AlyGa1-yN) で AlGaN 結晶の上に堆積させたものである 電子と正孔をこの量子井戸に閉じ込めることができ 効率よく発光させることができる MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition): 有機金属気相成長法 深紫外 LED を結晶成長させる時には有機金属 (TMAl TMGa TESi 等 ) とガス (NH 3 N 2 H) を用いる TMAl:( トリメチルアルミニウム ),tri-methyl-aluminum TMGa:( トリメチルガリウム ), tri-methyl-gallium 低抵抗 Si 基板 : 抵抗値が 0.01Ω の伝導性の高い Si 基板 p 型 AlGaN: 半導体には電子がたくさんいるn 型半導体と正孔がたくさんいるp 型半導体がある AlGaNは深紫外を発光させることができる半導体の一種で LEDを作製するためにはn 型半導体とp 型半導体が必要だが AlGaNの場合は正孔濃度が高いp 型半導体が作りにくい ビアホール : 導電性を持った穴