「これからの大学入学者選抜の意味を問い直す《

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3-1. 新学習指導要領実施後の変化 新学習指導要領の実施により で言語活動が増加 新学習指導要領の実施によるでの教育活動の変化についてたずねた 新学習指導要領で提唱されている活動の中でも 増えた ( かなり増えた + 少し増えた ) との回答が最も多かったのは 言語活動 の 64.8% であった

3. 一般入試における大学入試センター試験の利用教科 科目及び個別学力検査等の出題教科 科目について 教科 科目名等大学入試センター試験の利用教科 科目名個別学力検査等 ( 前期日程 ) 個別学力検査等 ( 後期日程 ) 学部 学科 課程等教科科目名等 注 教科科目名等教科科目名等国語 国語 人間形

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文科省・28年度『選抜実施要項』変更点等|旺文社教育情報センター

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生産動物医療推薦入学試験 志望で下記の条件を満たし 出身高等学校長が推薦する者 高等学校を 2017 年 3 月卒業および 2018 年 3 月卒業見込みの者で 全体の評定平均値が 3.5 以上の者 (1 浪まで ) 生産動物臨床獣医師を志望する者 動物病院後継者育成推薦入学試験 志望で下記の条件を

2021 年度入学者選抜 (2020 年度実施 ) について 静岡大学 本学は,2021 年度入学者選抜 (2020 年度実施 ) より [ 註に明記したものは, その前年度より ], 志願者のみなさんの能力をこれまで以上に多面的に評価することを目的として, 課す教科 科目等を以下のとおりに変更いた

平成 28 年度大分大学入学者選抜における実施教科 科目等について ( 予告 ) 平成 27 年 8 月大分大学 平成 28 年度入学者選抜 ( 一般入試 大学入試センター試験を課す推薦入試及びAO 入試 ) における大学入試センター試験の利用教科 科目及び個別学力検査等の出題教科 科目については,

平成33年度大学入学者選抜実施要項の見直しに係る予告

Comparative Study of College Students between the United States and Japan: An Analysis of JCSS

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Ⅰ 我が国の学制の変遷 ~ 戦前と戦後の学制 ~ 戦後の学制の特徴 教育基本法及び学校教育法を制定し 以下の改革を実施 義務教育期間の延長 ( 年 9 年 ) 制の単線型学校体系の導入 戦後の学校制度 ( 昭和 年 ) 戦前の学校制度 ( 大正 10 年 ) 明治 5 年に学制発布 明

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2021 年度青森県立保健大学入学者選抜に係る変更について ( 予告 ) 2021 年度青森県立保健大学入学者選抜 (2020 年度実施 ) を次のとおり変更する予定ですの で お知らせいたします なお この他の変更内容については 随時 本学ホームページ等で公表する予定です 1 定員 募集人員につい

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筑波大学の使命 筑波大学は その建学の理念に 変動する現代社会に不断に対応しつつ 国際性豊かにして かつ 多様性と柔軟性とを持った新しい教育 研究の機能及び運営の組織を開発 し 更に これらの諸活動を実施する責任ある管理体制を確立する と掲げ 我が国における大学改革の先導的役割を果たす 研究力開学以

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2021 年度入学者選抜について ~ ひとりひとりの個性と可能性を見つめる入試へ ~ 4 月 4 日 関西学院大学 関西学院の使命は キリスト教主義教育によって Mastery for Service を体現する世界市民 を育み 世に輩出することにあります 世界市民 とは 他者と対話し共感する能力を

l. 職業以外の幅広い知識 教養を身につけたいから m. 転職したいから n. 国際的な研究をしたかったから o. その他 ( 具体的に : ) 6.( 修士課程の学生への設問 ) 修士課程進学を決めた時期はいつですか a. 大学入学前 b. 学部 1 年 c. 学部 2 年 d. 学部 3 年 e

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資料1:地球温暖化対策基本法案(環境大臣案の概要)

文学部資格 成績証明書等, 推薦書, 自己推薦書, 諸活動の記録, 課題論文及び面接等の結果を総合して合格者を決定する 2 第 2 次選考第 1 次選考に合格した者に対して, 課題論文を課し, 面接を行う 課題論文 : 読解力, 論理的思考力, 問題発見能力, 表現力等を問う 面接 : 人間や人間の

高等教育段階における負担軽減方策に関する検討体制 < 検討内容 > 新しい経済政策パッケージ ( 平成 29 年 12 月 8 日閣議決定 ) に基づき 高等教育における授業料減免及び給付型奨学金の拡充を具体化し円滑かつ確実に実施するため 閣議決定で具体的に定まっていない以下の詳細事項について専門的

別表第 1 平成 30 年度首都大学東京入学者選抜の実施教科 科目等について 個別学力検査等 欄の科目名は 平成 21 年 3 月に告示された高等学校学習指導要領に対応しています 学部 学科名 学力検査等の区分 日程 教科 大学入試センター試験の利用教科 科目名 科目名等 教科等 個別学力検査等 科


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簿記教育における習熟度別クラス編成 簿記教育における習熟度別クラス編成 濱田峰子 要旨 近年 学生の多様化に伴い きめ細やかな個別対応や対話型授業が可能な少人数の習熟度別クラス編成の重要性が増している そのため 本学では入学時にプレイスメントテストを実施し 国語 数学 英語の 3 教科については習熟

4. 試験会場試験地会場名所在地 本学鈴鹿医療科学大学 千代崎キャンパス三重県鈴鹿市岸岡町 1001 番地 1 名古屋安保ホール愛知県名古屋市中村区名駅 大阪新梅田研修センター大阪府大阪市福島区福島 * 所在地の詳細図はP37 39をご覧ください 5. 出願書類 1 入

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5. 政治経済学部 ( 政治行政学科 経済経営学科 ) (1) 学部学科の特色政治経済学部は 政治 経済の各分野を広く俯瞰し 各分野における豊かな専門的知識 理論に裏打ちされた実学的 実践的視点を育成する ことを教育の目標としており 政治 経済の各分野を広く見渡す視点 そして 実践につながる知識理論

長期履修制度とは当研究科の全専攻 全課程に適用する制度です 通常 標準の修業年限内に行うべき授業履修や研究を 指導教員とともに事前に計画を立てたうえで 標準の修業年限を超えて一定の期間にわたり長期的に教育課程を履修することが認められる制度です 長期履修は最大で標準修了年限の2 倍の期間まで認められ

( その 1) 等の配点等 試験の区分国語地歴公民数学理科 外国語小論文実技面接配点合計 その他の選抜方法等 * * 1, 2 指定校推薦 社会人 計 * * 1, 2 1, 1, 2 計 1, 2 1, 1, 2 * * 指定校推薦 社会人 計 * * 1, 2 1, 1, 2 計 1, 2 1,

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2019 年度 コース履修の手引 教職コース 司書教諭コース 学芸員コース

一般入学試験A日程(特待生選抜)( ) 1. 一般入学試験 A 日程 ( 特待生選抜 ) 1. 一般入試 (A 日程 ) は 1つの学科のみを選択して受験する 1 学科の出願 となります 2. 一般入試 (A 日程 ) と一般入試 (B 日程 ) において 同一学部 学科 コースを同時に出願する場合

平成28年度「英語教育実施状況調査」の結果について

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5-1. 高大連携活動の実施状況 高校生のの通常授業の履修 聴講が入学後にの単位となる制度を 15% が実施 高大連携活動としてたずねた項目のうち 多く実施されているのは 高校への出張授業 93.5% 次いで オープンキャンパス以外の高校生向けの公開講座 授業 ( 高校での単位付与なし ) 69.0

2. 募集人員 学部学科 課程入学定員 国際教養学部 工学部 園芸学部 薬学部 国際教養学科 90 文学部 人文学科 170 法政経学部 法政経学科 370 教育学部 学校教員養成課程 390 数学 情報数理学科 44 物理学科 39 理学部 化学科 39 生物学科 39 地球科学科 39 計 20

特待生制度 KIU 特別クラス選考 みなし得点 ( 満点 ) 制度 あり経済学部あり インターネット出願のみ 一般入試 (A) 併願入試 Ⅰ. 募集人員経済学部経済経営学科 18 名 経済学部国際文化ビジネス 観光学科 12 名 リハビリテーション学部理学療法学科 20 名 経済学部 リハビリテーシ

2017 年 9 月 8 日 このリリースは文部科学記者会でも発表しています 報道関係各位 株式会社イーオンイーオン 中学 高校の英語教師を対象とした 中高における英語教育実態調査 2017 を実施 英会話教室を運営する株式会社イーオン ( 本社 : 東京都新宿区 代表取締役 : 三宅義和 以下 イ

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働き方の現状と今後の課題

補足説明資料_教員資格認定試験

目 次 平成 29 年度島根県公立高校入試の改善方針について 1 Ⅰ 改善方針の概要 2 1 基本的な考え方 2 改善方針の内容 3 実施の時期 Ⅱ 選抜制度の具体的内容 3 1 選抜の機会 2 検査の時期 3 選抜資料 学力検査 3-2 個人調査報告書 3-3 面接 3-4 その他の資

前ページ最後の画面で 栄東高等学校 をクリックし 高校詳細画面を表示させています 東京圏の主要私立高等学校については 弊社刊行の 東京圏私立中学校 高等学校受験年鑑 の該当記事をご覧になることができます 5 このタブをクリックすると 当該高校の大学別合格者数が表示されます ( 次ページ参照 ) 高校

平成 27 年度入学者選抜実施方法等 ( 歯学科 ) 学部 学科選抜方法の区分募集人員出願資格出願要件選抜方法出願期間試験日合格発表日 歯学部 AO 入試 17 名 次の各号のいずれかに該当する者 左記出願資格のいずれかに該当し かつ次の ア第 1 次選抜 第 1 次選抜 第 1 次選抜 第 1 次

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商業科 ( 情報類型 ) で学習する商業科目 学年 単位 科目名 ( 単位数 ) 1 11 ビジネス基礎 (2) 簿記(3) 情報処理(3) ビジネス情報(2) 長商デパート(1) 財務会計 Ⅰ(2) 原価計算(2) ビジネス情報(2) マーケティング(2) 9 2 長商デパート (1) 3 プログ

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国際商経学部推薦入試 ( グローバルビジネスコース ) 学科 募集人員国際商経学科 ( グローバルビジネスコース ) 20 名 出願期間平成 30 年 11 月 1 日 ( 木 )~ 平成 30 年 11 月 7 日 ( 水 ) 入学考査日平成 30 年 11 月 25 日 ( 日 ) 合格発表日平

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看護学部アドミッション ポリシー 求める学生像岩手県立大学の全学のアドミッション ポリシーのもと 看護学部では 次のような資質を備えた学生を求めています (1) 自ら学習を計画し 継続的に学ぶことができる人 ( 主体性 ) (2) 自分の考えを他者に伝わるように表現できる人 ( 思考力 判断力 表現

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1 岐阜薬科大学の理念 薬と健康についての高度な研究に支えられた教育により 有為な薬学専門職業人を育成し それらを通じて社会に貢献する 2 アドミッションポリシー ( 入学者受入れ方針 ) (1) 岐阜薬科大学が求める学生像本学は その理念に共感する次のような学生を求めています 1 医療機関 製薬企

回数テーマ学習内容学びのポイント 2 過去に行われた自閉症児の教育 2 感覚統合法によるアプローチ 認知発達を重視したアプローチ 感覚統合法における指導段階について学ぶ 自閉症児に対する感覚統合法の実際を学ぶ 感覚統合法の問題点について学ぶ 言語 認知障害説について学ぶ 自閉症児における認知障害につ

平成 30 年度入学者選抜実施方法等 ( 歯学科 ) 学部 学科選抜方法の区分募集人員出願資格出願要件選抜方法出願期間試験日合格発表日 歯学部 AO 入試 17 名 次の各号のいずれかに該当する者 左記出願資格のいずれかに該当し かつ次の要件 ア第 1 次選抜 第 1 次選抜 第 1 次選抜 第 1

7. 大学入試センター試験を課す推薦入試 実施学部教育学部 募集人員 10 名 出願資格 要件 次の各号のいずれかに該当する者で 当学部の アドミッション ポリシー にあるように 広い視野と深い洞察力 考察力 論理的思考力 表現力 実践力を有し 人間の成長発達と教育をめぐる課題に深い関心をいだき 教

(4) 自己評価書及び提出された根拠資料 データは 原則として公開します 公表された著作物等を根拠資料とするときには著作権に配慮してください 公表にふさわしくないものには その旨を記載してください (5) 上記 (1) から (4) に関する具体的な資料 データの示し方等については 当該年度の自己評

4 選抜方法 (1) 選抜の方法 本校の 期待する生徒像 に基づき, 学力検査の成績, 調査書, 面接の結果 等を総合的に判定して入学者の選抜を行う ア 下表のとおり合計点を算出する 学力検査 調査書 5 教科の 教科の学習の記録 出欠 行動 特別活動 部活動等 面接 得点合計 の記録 の記録 の記

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大学入試センター試験, そのどこが悪いのか?   ――センター試験批判の系譜と新テスト構想――

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Ⅰ 評価の基本的な考え方 1 学力のとらえ方 学力については 知識や技能だけでなく 自ら学ぶ意欲や思考力 判断力 表現力などの資質や能力などを含めて基礎 基本ととらえ その基礎 基本の確実な定着を前提に 自ら学び 自ら考える力などの 生きる力 がはぐくまれているかどうかを含めて学力ととらえる必要があ

大学教育の充実に向けた今後の取組 の方向性を示す 2 つの中教審答申 我が国の高等教育の将来像 ( 平成 17 年 1 月 28 日 ) 新時代の大学院教育 - 国際的に魅力ある大学院教育の構築に向けて - ( 平成 17 年 9 月 5 日 )

Transcription:

日本の大学入学者選抜 2010.06.19 天野郁夫 はじめに 問題の基本的な構造 世界的に入学者選抜が重要な問題に 入学者選抜問題の基本的な構造 ( アーティキュレーション ) 大学の選抜 (Selection) 学生の選択 (Choice) 公共的問題 臨教審答申 (1984) 大学入学者選抜制度の改革は わが国の社会にとって重要 な公共的問題である 配分 (Allocation) の問題 知的能力 ( 学力 ) の高さ あるいは Excellence という指標 質 公平 平等 効率 4つの E の問題質 Excellence 公平 Equity 平等 Equality 効率 Efficiency マス ユニバーサル化のディレンマ 多様性と独自性 1. 日本の入学者選抜の独自性 入学試験への高い依存度 歴史的経緯の産物 基本は中等学校の卒業資格 国立セクターの限られた規模

私立セクターの生成と発展 2 国際的な評価 日本は国際的にどう見えているか 入学試験は 社会的出生 (OECD 日本の教育政策 1971) 日本は学歴主義の社会 生物的出生 のあとに 社会的出生 が起こる 入学試験に合格することはうまれかわることである (249) 日本の青年やその家族にはかり知れない社会的圧力をおよぼし 大学進学前に学ぶ学校 大学それ自体 そして一般社会に対して 重大なゆがみをもたらしている (90) OECD 報告書の改革案 1. 高校内申書の活用 2. 全国学力テスト ( 大学 高校の合同組織が文部省の協力のもとに 複数の組織により三 四種類作成されること ) 3. 進学適性テスト ( 能力開発研究所テストが失敗 民間受験企業の信頼性が高い 現在の民間企業の一部を テスト業務を行う新しい公共企業体の設立発展の過程で吸収していくことも (100) 大学入試の功罪( 相互に見た日米教育の課題 1987) アメリカ側の報告書 大学入学試験は大多数の日本の高校生の将来と日常生活に影響を与えている 日本ではどの大学に進学するかが その人の将来の地位と職業を大きく決定してしまう 有名企業に就職する為の大学間の序列 があり この序列のトップにいる大学を卒業しないと 公務員や大企業のサラリーマンとしての高い地位を得ることは不可能 (219) 否定的な側面ばかりが強調されるが 大学入学試験は日本の教育制度全体に対し何らかの積極的な貢献も行っていることも忘れてはならない 入学試験のおかげで大学前教育の全般にわたって 知的水準が強化され 生徒の学力も育っているのである この入学試験制度が本質的に生徒の適性ではなく 知識の度合いを測るものであるから 日本の青少年は実に多様な領域において多くの知識を有している 入学試験の準備にはたゆまぬ努力と勤勉さが必要である このようにして日本の子供たちは 比較的年少の頃にから 社会人となり大人となっていくにつれて役立つものを学んでしまう 大学受験の準備のために周囲のものも犠牲を強いられるが 同時に子供と両親の間に 共通の目的意識を植え付けることにも役立つ (235)

昔ながらの選別機能(OECD 日本の大学改革 2009) 数字の上から言えば日本の高等教育は マス 段階のシステムであるが 文化的にはあらゆる エリート モデルの特徴を保持しているといえる したがって 国公立 私立を問わず有名大学に入学するには熾烈な競争を経なければならない いわゆる トップ レベルの大学の入試勉強をさせるための ありとあらゆる私的な教育の機会が用意されている このため大学には今でも 昔ながらの学生の選別機能が期待されている 日本社会が人材を自給自足し かつ企業主導であるうちは 此の選別過程はかなりうまく機能する しかし経済がグローバル化し 競争が激しくなると この機能にも調整が必要になってくる (36) 学生の出身高等教育機関がどれくらい有名か あるいは入学試験がどのくらい難しいかということを極端に重視する雇用の様式は 今後も変わらないだろう したがって 日本の大学入試は熾烈であり続けるし 入学後の学生には学習への意欲が生まれないままであるだろう (86) 入学者選抜の日本的特質 1 大学入学試験中心の入学者選抜システム 2 進学機会における需給バランス ( 供給不足 ) 3 国公立 私立の2セクターと入学者選抜のバイナリーシステム 4 マス 段階にあるにも関らず エリート モデルの特徴を保持 5 大学間の序列構造 6 卒業後の雇用機会の階層構造 ( 新卒一括採用と終身雇用 年功序列 ) 7 社会的地位の決定要因としての出身校 8 努力と勤勉さの源泉 初中等教育の質の高さ もう一つの重要な特徴 3. エリートからマス ユニバーサルへ マス化 ユニバーサル化がもたらすもの トロウの発展段階論と入学者選抜 ( 高学歴社会の大学 1976) 入学者の選抜の方法と原理は 高等教育と社会構造が最も密接な関係を持つ 重 要な問題点である (90) 入学者選抜のエリート段階 程度の差こそあれきびしい能力主義原則に立って 入学の 有資格者 だけを入れ るという 単純な原理 (87) 進学機会は一握りの大学進学準備校によって事実上

独占 優秀さと社会的不平等 マス段階の入学者選抜改善努力は はじめは選抜と選抜基準の能力主義化 やがて 大学進学資格を与える中等学校やコースの増加 による平等化 不平等を取り除く努力が 中等教育の構造の修正 とりわけ総合制への移行 ないしは少なくとも大学進学につながる教育コースの拡大 公平性と平等化 ユニバーサル段階への移行平等主義の圧力 高等教育における選抜原理そのものに挑戦 大学への無選抜入学 ( オープンアクセス ) や 大学と同等の入学資格を必要としない高等教育機関の一層の拡充を要求 質と効率という課題 4. 改革への試み マス化への日本的対応( 四六答申 1971) 入学者選抜制度 の改善 1 高校の調査書を選抜の基礎資料に 2 広域的な共通テストの開発 個人の学習の到達度を弁別するというよりは 高等教育を受けるに必要な基礎的な能力 適正を検出するためのもの 3 選抜方法の改革は 大学と高等学校の自主的な協力によって着実に 4 私立大学にとっては財政上の問題とも深い関係にあるので その面に対する適切な配慮なしには問題は解決しないことに注意 (165) 5 大学が専門分野の必要に応じて 特定能力のテスト 6これらを総合して判断 大学入学試験 からの脱皮へ 改革の実現 共通テスト制度の発足( 共通第一次学力試験 1979) 国立大学の入学試験の一部共同化 一次 二次 ( 一次で学習の到達度 二次で独自の工夫 ) 5 教科 7 科目から5 教科 5 科目へ アラカルトへ そして再び5 教科 7 科目へ受験機会の複数化へ A B グループ分けから前期 後期日程へ 後期日程の廃止二次試験の多様化へ ( 入試科目の多様化 ) 個性化 多様化へ ( 臨時教育審議会第一次答申 1984) 偏差値偏重の受験競争の弊害を是正するために 各大学はそれぞれ自由にして個性

的な入学者選抜を行うよう入試改革に取り組むことを要請する また 現行の国公立大学共通一次試験に代えて 新しく国公私立を通じて各大学が自由に利用できる 共通テスト を創設する この共通テストの実施のため 国公私立の各大学が対等の立場において利用でき 高等学校関係者が参画し得るよう 大学入試センターの設置形態や機能について検討し その改革を進める 共通テストは良質の試験問題を確保し それにより高等学校教育の内容を尊重し 高等学校レベルにおける生徒の着実な学習の到達度を生かすとともに 各大学での多様で個性的な選抜の実現に資することを目的とするものである 共通テストを利用するか否か 利用するとしてもどのような利用方法をとるかは 国公私立を通じた各大学の自主的な判断にゆだねることとする 大学入試センター試験への移行(1990) 共通一次試験からセンター試験へ私立大学の利用 短期大学の利用基本的な理念 性格の変化 大学入学試験の共同化ではない共通テストでもない利用の如何 利用の方法は自由 アラカルトしかし試験そのものの技術的な性格は不変到達度をはかる学力テストか 入学者の選抜手段か学力偏差値の資料提供大学 学部間の序列構造の裏付け 自由な利用で 多様で個性的な選抜の実現? 5. 行き過ぎた多様化 選抜の自由と選抜の多様化 選抜方法選抜手段選抜単位選抜人数選抜時期選抜対象 選択の自由と多様性 ユニバーサル化の中の多様化 個性化 ユニバーサル化の先達 アメリカ クーリングアウト機能をビルトインした高等教育システム

自由と多様性が日本にもたらしたもの 6. 改革への課題 選抜の自由の制限 高等教育システムの構造改革 日本の高等教育システム 4 年制大学への収斂 入り口でのクーリングアウト機能への依存 入試センター試験 受験の義務付け 入試センター試験の複数化 高校の教育課程の再構築 高校での履修科目指定 ( リクワイアメント ) の導入 専門職業教育の大学院段階への移行 企業の人事 採用政策の転換 高大接続テスト を超えて 高校段階での学力を客観的に把握する方法の一つとして 高校の指導改善や大学の初年次教育 大学入試などに高校 大学が任意に活用できる学力検査 ( 高大接続テスト ( 仮称 ) ) に関し 高校 大学の関係者が十分に協議 研究するように促す ( 学士教育課程の構築に向けて 答申 2008)