今からでも大丈夫!! MRI 入門 Part1 SE 法の基礎 横浜市立大学附属病院 平野恭正 2013.7.19
内容 スピンエコー法について 高速スピンエコー法について
スピンエコー法について
スピンエコー法のシーケンスチャート 190 度パルスを印加 21/2TE 時間後に 180 度パルスを印加 3TE 時間後 MR 信号 ( スピエコー信号 ) を取得 1/2TE RF 信号 90 度ハ ルス 180 度ハ ルス TE: エコー時間 傾斜磁場 Gz Gy Gx TR: 繰返し時間
スピンエコー法の特徴 1180 度パルスが介在するため 磁場の不均一を打ち消し 信号の高い綺麗な画像が得られる 2180 度パルスで再収束させるため時間がかかる 綺麗 だけど のろま なパルスシーケンス
なんで綺麗なのか? スピンエコーでは 物質の置かれている磁場の影響をキャンセルすることができ強い信号を得ることができる 信号強度 1 0.5 横緩和曲線 その物質の置かれた磁場により緩和が加速 物質のもつ固有の T2 のみを考慮した横緩和曲線 物質が置かれた磁場を加味した緩和曲線 0 0 50 100 150 200 TE: エコー時間 通常 横緩和は 物質のもつ固有の T2 値とその物質が置かれた磁場により加速される
90 度パルスを印加すると縦磁化が横に倒れる位相はそろってる 90 度パルスが切れると位相分散が始まる 180 度パルスを印加し反転 位相分散されていない強い信号 さらに再収束 再収束が始まる
スピンエコーは 磁場の不均一を打ち消し 信号の高い綺麗な画像が得られる 180 度パルスを印加する 再収束 位相分散されていない強い信号 1 強い信号が得られる! 0.5 物質のもつ固有の T2 緩和曲線 180 度 0 パルス 0 10 20 30 40 50 磁場を加味した横緩和曲線
スピンエコー法の信号強度 SE の信号強度 =ρ (1 -e -TR/T1 ) e -TE/T2 この式から TR と TE を決めると信号強度が決まる! ( コントラストを変化させられる ) ρ: プロトン密度 TR: 繰返し時間 T1: 物質固有の T1 値 TE: エコー時間 T2: 物質固有の T2 値 静止している組織時
SE 法の信号強度 SE の信号強度 =ρ (1 -e -TR/T1 ) e -TE/T2 プロトン密度の項 縦緩和の項 横緩和の項 プロトン密度を強調したい時 縦緩和の項の影響 横緩和の項の影響 T1 を強調したい時 縦緩和の項の影響 横緩和の項の影響 T2 を強調したい時 縦緩和の項の影響 横緩和の項の影響 縦緩和の項と横緩和の項の影響を大きくしたり 小さくしたりして 相対的に縦緩和 (T1) を強調したり 横緩和 (T2) を強調したりしてコントラルトを決める
縦緩和の項の影響 SE の信号強度 =ρ (1 -e -TR/T1 ) e -TE/T2 プロトン密度 T1 値 T2 値 白質 70 760 80 灰白質 85 1100 90 脳脊髄液 (CSF) 200 2000 200 縦緩和の影響を大きくするには信号差の多い 短い TR でデータ収集 信号強度 1 0.8 0.6 0.4 0.2 0 0 2000 4000 TR(ms) 白質灰白質 CSF 縦緩和の影響を小さくするには信号差の少ない長い TR でデータ収集
TR の変化に対する信号強度 11085 T1 値 1868 2620 3395 信号強度 2500 2000 1500 1000 500 0 T1 値 868 T1 値 620 T1 値 395 0 1000 2000 3000 TR(ms) 800 600 信 400 号強 200 度の 0 差 -200-400 TE は 11ms 固定 200 400 600 800 1000 1400 1800 2500 TR に対する信号強度の変化 各水溶液の信号差 0 1000 2000 TR(ms) 3-1 2-1 3-2 TR(ms)
TE11msec 固定で TR を変化させたときの画像 TR:100ms SN が低い TR:400ms 白質 / 灰白質のコントラストがより良い TR:800ms TR:2000ms T1 の影響が少ない画像プロトン密度強調像 頭部 T1 強調像としては TR400ms 程度が適切
横緩和の項の影響 SE の信号強度 =ρ (1 -e -TR/T1 ) e -TE/T2 プロトン密度 T1 値 T2 値 白質 70 760 80 灰白質 85 1100 90 脳脊髄液 (CSF) 200 2000 200 横緩和の影響を信小さくするには号信号差の少ない強短いTEでデータ収集度 信号強度 1 0.8 0.6 0.4 0.2 0 0 100 200 TE(ms) 白質の信号値 灰白質の信号値 CSF の信号値 横緩和の影響を大きくするには信号差の大きい長い TE でデータ収集
TE の変化に対する信号強度 T2 値 201 T2 値 91 T2 値 52 TE16 TE33 TE49 TE65 TE82 TE98 TE114 TE131 TE147(ms) 信号強度 2000 1500 1000 500 0 T2 値 =52 T2 値 =91 T2 値 =201 0 50 100 150 TE(ms) 信号強度の差 1200 1000 800 600 400 200 0 T2 値 91-52 T2 値 201-91 0 50 100 150 TE(ms)
TR3000msec 固定で TE を変化させた画像 TE=18ms TE=37ms TE=55ms 頭部 T2 強調像としては TE100ms 程度が適切 TE=92ms TE=182ms TE=275ms
信号強度とコントラストのまとめ TE: 短い (10~20ms) TE: 長い (100ms) TR: 短い (500ms) T1 強調像 / TR: 長い (3000ms) プロトン密度強調像 T2 強調像 一般的な各強調像の TR と TE T1 強調像 TR<500ms TE<20ms T2 強調像 1500ms<TR<3000ms 60ms<TE<120ms プロトン密度強調像 1500ms<TR<3000ms 20ms<TE<40ms 決定版 MRI 完全解説荒木力より
スピンエコー法の撮像時間 スピンエコー法の撮像時間 =TR 位相エンコード数 加算回数 256 行 RF 256 個データを埋める signal
スピンエコー法の撮像時間 ( 具体的に ) T2 強調像を撮像するとき たとえば TR=2000ms 位相エンコード数 =256 加算回数 =2 2000ms 256 行 1 回 =1024000ms=1024 秒 =17 分 4 秒
スピンエコー法の撮像時間 ( 具体的に ) T1 強調像を撮像するとき たとえば TR=500ms 位相エンコード数 =256 加算回数 =2 500ms 256 行 1 回 =256000ms=256 秒 =4 分 16 秒
高速スピンエコー法について
高速スピンエコー法について スピンエコー法 RF signal TE TR 高速スピンエコー法 RF Es: エコースペース signal TR ETL: エコー数
高速スピンエコー法について ky K-space 全部違う TE で埋まっていてどのエコーを TE と言えばいいのか? kx 実効 TE RF signal K スペースの中央を埋めたエコー 高速スピンエコーでは k スペースの中央を埋めるエコーを代表のエコー時間とし実効 TE と言う
高速スピンエコー法について ky K-space kx 実効 TE RF signal K スペースの中央を埋めたエコー
スピンエコー法と高速スピンエコー法の違い 1 撮像時間の短縮 2 コントラストの変化 3 ぼけ効果
撮像時間の短縮 スピンエコー法で T2 強調像を撮像するとき TR=2000ms 位相エンコード数 =256 加算回数 =2 2000ms 256 行 2 回 =1024 秒 =17 分 4 秒
撮像時間の短縮 エコー数 8 の高速スピンエコー法で T2 強調像を撮像するとき TR=2000ms 位相エンコード数 =256 加算回数 =2 エコー数 =8 1 回の TR で 8 個のエコーが収集できるので 撮像時間は 1/8 になる 高速スピンエコーの撮像時間 = TR 位相エンコード数 加算回数エコー数 エコー数 撮像時間 =2 分 8 秒 これでもう のろまとはいわせない!
コントラストの変化 1 脂肪信号の高信号化 2 軟部組織のコントラストの低下 コントラストの変化の原因は Jcoupling, 磁化移動 MT 効果,stimulated echoes, 複数の傾斜磁場を印加したことにより生じる位相分散などさまざまな影響が存在していると言われている
脂肪信号の高信号化 スピンエコー法 :T2 強調像 高速スピンエコー法エコースペース長い 高速スピンエコー法エコースペース短い 180 度パルスの間隔が長い 180 度パルスの間隔が短い 180 度パルスを当てる間隔が短くなると脂肪は高信号になる
軟部組織のコントラストの低下 ( 頭部 ) スピンエコー法 :T1 強調像 高速スピンエコー法 :T1 強調像 (ETL=3) 撮像時間 2 分 22 秒 撮像時間 48 秒
軟部組織のコントラストの低下 ( 大腿部 ) スピンエコー法 :T1 強調像 高速スピンエコー法 :T1 強調像 (ETL=3) 撮像時間 1 分 45 秒 撮像時間 34 秒
ボケの効果 スピンエコーでは 同じTEでデータを収集し k-spaceを埋めるため 信号強度がそろう ky K-space kx RF signal
ボケの効果 高速スピンエコーでは 複数の違うTEでデータを収集し k-spaceを埋めるため 信号強度が異なる ky 高速スピンエコーでは 信号強度の異なるデータで画像作られるため画像がボケる K-space kx RF signal データ収集中にもに T2 減衰するため信号が弱くなる
エコー数 (ETL) とボケの関係 ETL=1 ETL=3 ETL=5 ETL=9 ETL=15 ETL=25 ETL=50 RF signal エコー数を増加させると 画像がボケる
エコースペースとボケの関係 RF signal エコースペースを短くすると RF 信号が残ってる内にデータ収集を終える signal
エコースペースとボケの関係 ETL=1 ETL=3 ETL=5 ETL=9 ETL=15 ETL=25 ETL=50 エコースペース 21.2ms エコースペース 12.1ms エコースペース 6.6ms
T2 値の影響によるボケの違い 後半のエコーでも信号が残ってる T2 値の長い物質 ( 水 ) RF signal T2 値の短い物質 ( 軟部組織 ) RF signal 後半のエコーでは信号が小さい
T2 値の影響によるボケの違い T2 値の長い物質 T2 値の短い物質 ETL=1 ETL=7 ETL=14 ETL=21
スピンエコーのまとめ 1 信号の高い綺麗な画像が得られる 2 時間がかかる 3TR と TE でコントラストが決まる
高速スピンエコーのまとめ 1スピンエコー法の高速バージョンです 2 軟部組織のコントラストが低下する 3 脂肪が高信号になる 4 画像がボケる
参考文献 MRI の基礎パワーテキスト基礎理論から最新撮像法まで監訳 : 荒木力 決定版 MRI 完全解説 著 : 荒木力 MRI 自由自在著者 : 高原太郎 改訂版 MRI 応用自在監修 : 蜂屋順一