米国経済見通し 個人消費の加速と不透明感

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中国:PMI が示唆する生産・輸出の底打ち時期

○ユーロ

2019年度はマクロ経済スライド実施見込み

4月CPI~物価は横ばいの推移 耐久財の特殊要因を背景に、市場予想を上回る3 ヶ月連続の上昇

金融市場2018年12月号

米国経済見通し 悪天候からの回復に格差

米労働市場は直近の回復基調に変化なし ~FRB出口政策への影響は限定的~

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12月CPI

米国の利上げ見送りと日本の長期化した金融緩和

1. トピック : 米国金融政策と通商政策は 次の ステージへ 6 月 FOMC は 0.25% 利上げ フォワードガイダンスを大幅変更漸進的とは言え 利上げ一直線のみの方針に長期水準を超えるタイミングが 2020 年から 2019 年に 2019 年からは 毎回記者会見を実施今後の焦点は緩和的スタ

サマリー 1 市場の関心は米大統領選の行方に集まっています 世論調査においてドナルド トランプ氏の優勢が報じられると 市場の更なる丌確実性が懸念され リスク資産からの資金流出が記録されました 10 月の MSCI 世界株価指数はマイナス 2.01% MSCI 新興国株価指数は 0.18% と新興国が

今回の金融政策報告書では 米国内の投資活動が弱いために輸出が想定ほど伸びていないとしながらも 金融業などサービス関連の好調さを示す分析や 商品価格下落がカナダ企業の投資活動を抑制する動きは底打ちしたとの指摘など カナダ景気に前向きな材料も散見されます 当面は 政策金利の据え置きを続けると見通します

○ユーロ

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Economic Indicators   定例経済指標レポート

平成10年7月8日

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Economic Indicators   定例経済指標レポート

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SERIまんすりー2月号 今月のみどころ

月初の消費点検(3/4)~消費税増税の判断を控えて~

経済・物価情勢の展望(2018年1月)

[ 参考 ] 先月からの主要変更点 基調判断 3 月月例 4 月月例 景気は 急速な悪化が続いており 厳しい状況にある 輸出 生産は 極めて大幅に減少している 企業収益は 極めて大幅に減少している 設備投資は 減少している 雇用情勢は 急速に悪化しつつある 個人消費は 緩やかに減少している 景気は

< 豪州債券市場の市況および今後の見通し > 2016 年の豪州債券市場では 金利が低下しました 年初から 2 月にかけては 中国株をはじめ世界の株式市場が下落するなど市場のリスク回避姿勢が強まる中 金利低下が進みました 1 月末に日銀のマイナス金利導入発表を受け 欧州など他国でもさらなる金融緩和期

FOMC:ジョージ総裁が反対も政策変更なし

経済・物価情勢の展望(2017年10月)

経済・物価情勢の展望(2017年7月)

平成 21 年 9 月 5 日 角山智 投資環境レポート (2009 年 9 月 ) 1. 主な株価指数 8 月は 中国株が大幅に値下がりしました 反面 出遅れていた英国株が好調です 市場 日本株 日本新興市場 J-REIT 米国株 英国株 中国株 ( 指数 ) (TOPIX) (JASDAQ) (

マーケット フォーカス経済 : 中国 2019/ 5/9 投資情報部シニアエコノミスト呂福明 4 月製造業 PMI は 2 ヵ月連続 50 を超えたが やや低下 4 月 30 日 中国政府が発表した4 月製造業購買担当者指数 (PMI) は前月比 0.4ポイントの 50.1となり 伸び率がやや鈍化し

長と一億総活躍社会の着実な実現につなげていく 一億総活躍社会の実現に向け アベノミクス 新 三本の矢 に沿った施策を実施する 戦後最大の名目 GDP600 兆円 に向けては 地方創生 国土強靱化 女性の活躍も含め あらゆる政策を総動員することにより デフレ脱却を確実なものとしつつ 経済の好循環をより

ファンダの鬼・柳澤 浩と小杉 篤諭の「ファンダメンタルズの学び方、活かし方セミナー!」

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月例経済報告

目次 概況 p.1~ トピックス1: 米中貿易摩擦が本格化 p.3 トピックス :~6 月期以降 個人消費は持ち直しに転じる見込み 景気 金利見通し p. p.5 Fed Watch:18 年の利上げペースが注目点に p.6 調査部マクロ経済研究センター ( 欧米経済グループ ) 研究員長野弘和 (

みずほ米国経済情報 2019 年 2 月号 トピック 1 月 FOMC 議事要旨と米政治動向 FOMC の忍耐強さは 不確実性が後退すれば修正されるが 方向感は定まっていない 歳出 債務上限 自動車 部品関税 通商交渉と 不確実性が後退する動きも少ない 景気判断企業業況は低下傾向 個人消費は一時的な

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資料1

社団法人日本生産技能労務協会

グローバル・マクロ・ウォッチ

低インフレ 乏しい利上げ観測労働市場に目を向けると 8 月の失業率は約 年ぶりの低水準となる5.3% に低下した 雇用者数も伸びており 一部では技術者不足の声も聞かれる RBAは今後数年 失業率は自然失業率とされる5.% を目指して低下が続くとの見方を示している ただ 賃金の上昇率は ~ 月期が前年

2019 年 3 月期決算説明会 2019 年 3 月期連結業績概要 2019 年 5 月 13 日 太陽誘電株式会社経営企画本部長増山津二 TAIYO YUDEN 2017

中国、財新サービス業PMIは4ヶ月ぶりの低水準に(Asia Weekly(3/4~3/8)) | 第一生命経済研究所 西濵徹

個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入状況

1. トピック : 原油安下のテキサス経済 ( 現地ヒヤリング報告 ) ヒューストンとダラスで現地ヒヤリング実施テキサス経済は減速 足元持ち直しの兆しも原油価格に左右され易いヒューストン 高値圏でのヘッジが切れる今夏以降が正念場産業集積の多様化に支えられるダラス原油離れ経済の実力が問われるのはこれか

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平成24年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度(閣議了解)

Fidelity Charts & Graphs PowerPoint Template

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平成 25 年 3 月 19 日 大阪商工会議所公益社団法人関西経済連合会 第 49 回経営 経済動向調査 結果について 大阪商工会議所と関西経済連合会は 会員企業の景気判断や企業経営の実態について把握するため 四半期ごとに標記調査を共同で実施している 今回は 2 月下旬から 3 月上旬に 1,7

産業トピックス

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個人消費の回復を後押しする政策以外の要因~所得の減少に歯止め、節約志向も一段落

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米国経済見通し 不透明感は長引くか

中国:なぜ経常収支は赤字に転落したのか

月例経済報告

( 公社 ) 近畿圏不動産流通機構市況レポート市況トレンド /1 年 7~9 月期の近畿圏市場 1. 中古マンション市場の動き 成約価格は前年比で 3 期連続上昇 1 年 7~9 月期の近畿レインズへの成約報告件数は,9 件と 前年同期比で 1.% 増加した (P1 図表 1) 新規登録件数は 15

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ニュースリリース 農業景況調査 : 景況 平成 3 1 年 3 月 1 8 日 株式会社日本政策金融公庫 平成 30 年農業景況 DI 天候不順響き大幅大幅低下 < 農業景況調査 ( 平成 31 年 1 月調査 )> 日本政策金融公庫 ( 略称 : 日本公庫 ) 農林水産事業は 融資先の担い手農業者

金融市場2017年11月号

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Ⅰ.ファンダメンタルズ

[ 調査の実施要領 ] 調査時点 製 造 業 鉱 業 建 設 業 運送業 ( 除水運 ) 水 運 業 倉 庫 業 情 報 通 信 業 ガ ス 供 給 業 不 動 産 業 宿泊 飲食サービス業 卸 売 業 小 売 業 サ ー ビ ス 業 2015 年 3 月中旬 調査対象当公庫 ( 中小企業事業 )

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2. 利益剰余金 ( 内部留保 ) 中部の 1 企業当たりの利益剰余金を見ると 製造業 非製造業ともに平成 24 年度以降増加傾向となっており 平成 27 年度は 過去 10 年間で最高額となっている 全国と比較すると 全産業及び製造業は 過去 10 年間全国を上回った状況が続いているものの 非製造

ニュースリリース 食品産業動向調査 : 景況 平成 3 1 年 3 月 2 6 日 株式会社日本政策金融公庫 食品産業景況 DI 4 半期連続でマイナス値 経常利益の悪化続く ~ 31 年上半期見通しはマイナス幅縮小 持ち直しの動き ~ < 食品産業動向調査 ( 平成 31 年 1 月調査 )> 日

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米国株 投資家心理が落ち着けば 上昇基調に回帰と想定 株式市場 MSCI 米国 2, % 先月の回顧 長期金利の上昇を契機に急落米国株式市場は下落しました 月初に発表された1 月の雇用統計において 時間当たり賃金が市場予想を上回る伸び率となったことを受けて 長期金利が約 4 年ぶ

1. 30 第 1 運用環境 各市場の動き ( 4 月 ~ 6 月 ) 国内債券 :10 年国債利回りは狭いレンジでの取引が続きました 海外金利の上昇により 国内金利が若干上昇する場面もありましたが 日銀による緩和的な金融政策の継続により 上昇幅は限定的となりました : 東証株価指数 (TOPIX)

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Economic Trends    マクロ経済分析レポート

ロシア 3節 第 第3節 ロシア 1 マクロ経済動向 ロシア経済は 緩やかな回復基調にある 2014 年 7 以下 輸出 個人消費 消費者物価 金融市場の動 月以降のウクライナ危機発生及びクリミア併合に伴う 向を中心に概観する 欧米からの経済制裁に加え 2015 年以降 原油価格 の下落を主因として

1. 各都市の不動産市場トレンド 1-1. オフィス価格指数 対前回変動率 (2016 年 4 月から 2016 年 10 月まで ) 図表 1-1は オフィス価格指数の各都市 対前回変動率 今回 (2016 年 10 月現在 ) 対前回変動率が最も高かったのは 東京 の +3.4% 次いで 大阪

(2) 資産構成割合の推移 ( 給付確保事業 ) 1 資産配分実績の基本ポートフォリオからの乖離の推移 2 実践ポートフォリオと資産配分実績の推移 3. 運用受託機関 平成 29 年 3 月末現在 2

利上げを躊躇させる英国家計債務の増大

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1. 総論 総括判断 都内経済は 回復している 項目前回 ( 1 月判断 ) 今回 (3 年 1 月判断 ) 前回比較 総括判断回復している 回復している ( 注 )3 年 1 月判断は 前回 1 月判断以降 1 月に入ってからの足下の状況までを含めた期間で判断している ( 判断の要点 ) 個人消費

マネーマーケットマンスリー 2018年3月

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中小企業の動向

金融政策決定会合における主な意見

高値となった後 下がり始めた 前述の通り CI 一致指数は 生産や雇用など様々な経済指標を統合し算出されている そのため CI 一致指数の上昇 下降にどの指標 が寄与しているのかについても 内閣府は詳細に発表している 表 1は 各指標がCI 一致指数に対してプラスに寄与したのか マイナスに寄与したの

国内短期金利

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1. 自社の業況判断 DI 6 四半期ぶりに大幅下落 1 全体の動向 ( 図 1-1) 現在 (14 年 4-6 月期 ) の業況判断 DI( かなり良い やや良い と回答した企業の割合から かなり悪い やや悪い と回答した企業の割合を引いた値 ) は前回 ( 月期 ) の +19 から 28 ポイ

経済:マーケット・フォーカス

( 億円 ) ( 億円 ) 営業利益 経常利益 当期純利益 2, 15, 1. 金 16, 額 12, 12, 9, 営業利益率 経常利益率 当期純利益率 , 6, 4. 4, 3, 2.. 2IFRS 適用企業 1 社 ( 単位 : 億円 ) 215 年度 216 年度前年度差前年度

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エコノミスト便り

Transcription:

米国経済 2016 年 6 月 21 日全 10 頁 米国経済見通し個人消費の加速と不透明感 緩やかな回復軌道を描いているが 労働市場や政治に不透明感 ニューヨークリサーチセンターシニアエコノミスト土屋貴裕エコノミスト橋本政彦 [ 要約 ] 米国経済の現状は 労働市場の先行きに不透明感が台頭する一方で 個人消費は足下で加速の動きが見られており 住宅市場と合わせて堅調である 企業部門に関しては 製造業の企業マインドが徐々に持ち直しつつある一方で 非製造業のマインドには減速が見られている 労働市場の改善ペースが急減速したことを受けて 6 月の FOMC( 連邦公開市場委員会 ) では 想定通り利上げは見送られた 経済と金融政策の先行きを見通すにあたり 5 月の雇用統計の落ち込みが一時的であったか否かを確認する必要がある 大統領選で民主党のヒラリー クリントン前国務長官が指名を確実にした 今後は各党の副大統領候補選びが始まり 候補者の政策内容が明らかになる見込みである 民主 共和両党は 本選に向けて挙党態勢を固めるため 主張や政策の方針を調整するだろう 金融政策にも影響は及び 先行き不透明感が払拭されるまで時間がかかる可能性もある 5 月までの経済統計を踏まえると 4-6 月期の個人消費は高い伸びとなる公算が大きく 輸出についても底打ちの兆しが見られていることから 4-6 月期の GDP 成長率は 1-3 月期から加速すると見込まれる 個人消費主導の成長が続くというシナリオに変更はない 株式会社大和総研丸の内オフィス 100-6756 東京都千代田区丸の内一丁目 9 番 1 号グラントウキョウノースタワー このレポートは投資勧誘を意図して提供するものではありません このレポートの掲載情報は信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが その正確性 完全性を保証するものではありません また 記載された意見や予測等は作成時点のものであり今後予告なく変更されることがあります 大和総研の親会社である 大和総研ホールディングスと大和証券 は 大和証券グループ本社を親会社とする大和証券グループの会社です 内容に関する一切の権利は 大和総研にあります 無断での複製 転載 転送等はご遠慮ください

2 / 10 労働市場の先行き不透明感で利上げ見送り 2016 年 6 月 14 日 -15 日に開催された FOMC( 連邦公開市場委員会 ) では 政策金利である FF ( フェデラルファンド ) レートの誘導目標レンジを 0.25-0.% で維持する決定が行われた 1 5 月の雇用統計における非農業部門雇用者の増加ペースが急減速したことを受けて 同 FOMC では利上げを見送るとの見方が市場の大勢を占めていたため 政策金利の据え置きは想定通りの結果である 声明文では 個人消費の持ち直しを主因に経済の現状認識が上方修正された 一方 経済の現状認識以外の部分に関しては 前回会合からほぼ変更されておらず 次回以降の利上げに関するヒントは明示されなかった FOMC 参加者の政策金利の見通しを見ると 2016 年については 0.25%pt ずつの利上げであれば 2 回の利上げを見込んでおり 前回見通しから変わっていない 2017 年 2018 年は年間 3 回の利上げを見込む形となり 利上げペースは前回見通しで提示されていたものよりも緩やかなものとなった 前回 4 月の FOMC の議事要旨では 4-6 月期の経済の回復が示されれば 6 月の利上げが適切になる可能性が高いとされ 経済の強さを前提として前向きに利上げが討議されたことになる 事実 5 月に公表された 4 月の小売売上高が良好な結果となって 4-6 月期の回復の可能性が高まると 6 月利上げが取り沙汰されるようになった また 6 月の FOMC の討議資料となったベージュブック ( 地区連銀景況報告 ) では 5 月 23 日までの経済動向を 大半の地区連銀で 緩慢な成長 としたものの 同時に労働市場の引き締まりが報告されていた ところが 軟調な 5 月の雇用統計で労働市場の改善に疑問が投げかけられたことになる 5 月の雇用統計の落ち込みが一時的であったか否かを確認する必要があり 6 月の雇用統計が従前よりも重要さを増したと言えよう 実際の経済動向では 労働市場の先行きに不透明感が台頭する一方で 個人消費は足下で加速の動きが見られており 住宅市場と合わせて堅調である 企業の生産活動は緩慢だが ドル高の一服を受けて製造業の景況感は持ち直しつつあり 低調なままの設備投資も持ち直しに向かうとみられる 4-6 月期は高めの GDP 成長率が見込まれる FRB( 連邦準備制度理事会 ) は 次の政策変更に向けたフリーハンドを維持した格好であるが 再利上げの必要性は低下気味である 再利上げには将来に向けてインフレ率が上昇していくことを期待させるような労働市場の力強さが求められる 7 月の FOMC までに公表される 6 月分の雇用統計などの結果が望ましいものであれば 利上げ判断に至る可能性がある 7 月の FOMC を過ぎると 大統領選などの選挙が近づき インフレ率が上昇して誰しもが納得できる環境でなければ 政策変更しにくくなってくるだろう 大統領選の指名候補争いは 民主党でヒラリー クリントン前国務長官が指名を確実にし 主要政党で初の女性大統領候補となった 今後は各党の全国大会 ( 共和党は 7 月 18 日 -21 日 1 大和総研ニューヨークリサーチセンター土屋貴裕橋本政彦 FOMC 利上げ見通しは年内 2 回で変わらず (2016 年 6 月 16 日 ) 参照 http://www.dir.co.jp/research/report/overseas/usa/201616_010981.html

3 / 10 民主党は 7 月 25 日 -28 日 ) に向けた副大統領候補選びが始まり 本選に向けた各党候補者の政策内容が明らかになってくる見込みである ところがオバマ大統領がクリントン候補への支持を表明したが 民主党のサンダース候補は選挙戦からの撤退を明示していない 共和党ではトランプ候補に不動産セミナーに関する疑惑や反イスラム感情 人種差別を煽る発言があり それぞれの党が一枚岩になりきれていない クリントン候補とトランプ候補が本選で対峙する構図では クリントン候補の支持がトランプ候補のそれを上回っているが どちらも支持しない比率は上昇傾向で両候補ともに不人気である 両候補は挙党態勢を固めるために 今後の主張や政策の方針を調整していくことになろう 例えば 従来の共和党の主張と異なるトランプ候補の反自由貿易主義的な主張などが注目されよう また 積極財政などは金利上昇要因になり得るが それは金融引き締め的な効果をもたらすことになり 金融政策の判断にも影響が及ぶことになる より具体的な政策が明らかになって 先行きの不透明感が払拭されるまで時間がかかる可能性もある 図表 1 クリントン候補とトランプ候補が対決する場合の支持率 (%) 53 51 ヒラリー クリントン 49 47 45 43 41 39 ドナルド トランプ 37 35 16/3 16/4 16/5 16/6 ( 出所 )RealClearPolitics より大和総研作成 ( 年 / 月 ) 労働市場の改善ペースが急減速 2 2016 年 5 月の非農業部門雇用者数は前月差 +3.8 万人となり 国勢調査要因によって減少した 2010 年 9 月以降で最も小幅な伸びとなった 雇用者数の増減を部門別に見ると 鉱業での雇用削減が続いたことに加えて 製造業 建設業でも雇用者数が減少し 生産部門の雇用者数は同 3.6 万人と 4 ヵ月連続で減少した また 民間サービス部門の雇用者数も同 +6.1 万人と 2012 年 6 月以来の小幅な増加に留まった 米国大手通信業者ベライゾンのストライキという特殊要因が押し下げ要因となったが これに加えて 卸売業や 専門 企業向けサービス業のうち労働派遣業の雇用が減少しており 特殊要因を割り引いてもサービス部門の雇用者増加ペースは 2 大和総研ニューヨークリサーチセンター橋本政彦 雇用の伸びが失速 6 月利上げは見送りへ (2016 年 6 月 6 日 ) 参照 http://www.dir.co.jp/research/report/overseas/usa/2016_010954.html

4 / 10 減速している 一方で 5 月の失業率は前月から 0.3%pt 低下の 4.7% となり 急減速した非農業部門雇用者数とは対照的に改善が見られた ただし 失業率の改善に関しても内容は良くない 失業者数は前月差 48.4 万人と 2014 年 4 月以来の減少幅となったが 就業者数はほとんど増えず 非労働力人口が同 +66.4 万人と大幅に増加した 労働参加率は同 0.2%pt と 2 ヵ月連続で低下しており 求職意欲の低下による労働参加率の低下が失業率を押し下げたと考えられる 労働参加率は 2015 年末から上昇の兆しが見られていたが 足下で腰折れする形となっている 就業者の内訳に関しても 経済的理由でパートタイム就業者となっている人の数が前月差 +46.8 万人と 2012 年 9 月以来の大幅増となっており 労働市場の質の改善は一服する結果となった 賃金に関して 5 月の民間部門の平均時給は前月から 5 セント上昇 前月比 +0.2% となった 前年比変化率は+2.5% と前月と同じ伸びとなり 賃金は安定的な増加が続いているものの 目立った加速感は見られない また雇用の伸びが鈍化したこともあり 5 月の民間部門の総賃金 ( 雇用者数 週平均労働時間 時給 ) は前月比 +0.2% と前月から伸びが縮小した 企業による労働需要を見ると 4 月の求人件数は 5 ヵ月連続で増加し 2000 年 12 月の統計開始以来の高水準となった 後述するように 個人消費は堅調さを維持しており 個人消費の増加が労働需要を誘発するという状況は変わっていないとみられる しかし一方で ISM 景況感指数に見る企業の雇用マインドは 製造業で持ち直しつつある半面 雇用者数の大宗を占める非製造業では慎重な姿勢が見られている 企業の労働力は不足しているものの 先行きに対する不透明感から採用を抑制している可能性があろう また 以前から指摘されているように 企業の求人に見合った人材が不足しているという 労働供給不足の問題も影響しているとみられ 労働市場の先行きに関しては不透明感が増しつつある 図表 2 非農業部門雇用者数と失業率 雇用動態 非農業部門雇用者数と失業率 80 ( 前月差 万人 ) (%) 12 0 非農業部門雇用者数 11 5 10 0 20 9 4 0 0 8 3-20 7 300-6 2-5 200 失業率 -80 4 1 ( 右軸 ) -100 3 100 08 09 10 11 12 13 14 15 16 ( 年 ) ( 出所 )BLS, Haver Analytics より大和総研作成 雇用動態 ( 万人 ) 求人件数新規雇用者数自発的離職者数解雇者数 08 09 10 11 12 13 14 15 16 ( 年 )

5 / 10 労働市場の減速に反して 個人消費は堅調維持 労働市場の改善ペースに陰りが見られていることは 言うまでもなく米国経済にとって懸念材料である しかし そうした雇用 所得環境を背景にしても個人消費は 足下まで堅調な推移が続いている 5 月の小売売上高 ( 含む飲食サービス ) は前月比 +0.5% と 2 ヵ月連続で増加した 前月が同 +1.3% と高い伸びになったにもかかわらず 目立った反動減などは見られず 増加基調を維持している 業種別では 価格上昇によってガソリンスタンドの売上が増加した他 新車販売の持ち直しにより自動車ディーラーの売上が 2 ヵ月連続で増加し全体を押し上げた また 振れの大きい自動車ディーラー ガソリンスタンド 建材 園芸 飲食サービスを除いたコア小売売上高も同 +0.4% と 7 ヵ月連続の増加となり 非常に底堅い コア小売売上高の最大の押し上げ要因となったのは無店舗販売 ( 同 +1.3%) の増加であったが この他にも飲食料品 衣服 宝飾品 ヘルスケア関連など 幅広い業種の売上が増加した 個人消費の実態面同様に 消費者マインドも好調を維持している 6 月のロイター / ミシガン大消費者センチメント ( 速報値 ) は前月差 0.4pt 低下の 94.3% となった 前月からは低下したものの 大幅に上昇した前月から小幅な低下に留まり 高水準を維持している 内訳を見ても 前月の上昇幅が大きかった期待指数が低下に転じたことが全体を押し下げたが 現状指数については 3 ヵ月連続の上昇 2005 年 7 月以来の高水準を記録した 図表 3 小売売上高の内訳 消費者センチメントと家計貯蓄率 飲食サービスを含む小売売上高の内訳 消費者センチメントと家計貯蓄率 2.0 ( 前月比 % %pt) 110 (1966Q1=100) (%) 0 1.5 1.0 0.5 0.0-0.5-1.0-1.5 12345678910111212345678910111212345( 月 ) 14 15 16 ( 年 ) 08 09 10 11 12 13 14 15 16 飲食サービス ガソリンスタンド 建材 園芸 自動車ディーラー コア小売売上高 小売 飲食サービス ( 注 ) コア小売売上高は 自動車ディーラー ガソリンスタンド 建材 園芸 飲食サービスを除く ( 出所 )Census, ロイター / ミシガン大, BEA, Haver Analytics より大和総研作成 100 90 80 消費者センチメント 家計貯蓄率 ( 右軸 目盛逆 ) 2 4 6 8 10 12 ( 年 ) 5 月までの経済統計を踏まえると 4-6 月期の個人消費は 1-3 月期から大きく加速する見込みであり 一方で所得の伸びは減速するとみられることから 貯蓄率は低下する公算が大きい

6 / 10 しかし 4 月の FOMC の声明文でも言及されていた通り これまで所得の伸びに対して個人消費の伸びが緩慢であったため 家計の貯蓄率は緩やかに上昇してきた 高水準の消費者マインドに照らせば 貯蓄率には依然低下余地があり 雇用 所得の伸びが減速する中で個人消費が堅調を維持していることに大きな違和感はないと言える CPI は緩やかな上昇が続く エネルギーの下押し剥落で先行きは上昇幅拡大 5 月の CPI は前月比 +0.2% と 3 ヵ月連続の上昇となったが 前月から上昇幅は縮小した 食品 エネルギーを除くコア CPI は同 +0.2% と前月と同じ伸びとなったものの エネルギーの上昇幅が前月よりも縮小したことに加えて 食品価格の下落によって CPI 全体の伸びが鈍化した コア CPI の内訳については 中古車価格の下落を主因に財 ( 除く食品 エネルギー ) 価格が 3 ヵ月連続で下落する一方で サービス ( 除くエネルギー ) に関しては 医療サービス 住居サービスなど幅広い品目の上昇を受けて 前月と同程度の上昇となった 前年比で見た CPI 上昇率は+1.0% と前月 ( 前年比 +1.1%) からわずかに上昇幅が縮小したが これは前年の裏が出る形でエネルギーによるマイナス寄与が拡大したためである コア CPI については同 +2.2% と前月から上昇幅が拡大した このところ中古車価格の下落によって財 ( 除く食品 エネルギー ) 価格は低迷が続いているが サービス ( 除くエネルギー ) 価格は徐々に増勢を強めており 5 月は前年比 +3.2% と 2008 年 9 月以来の上昇幅を記録している 図表 4 CPI の内訳 家計の期待インフレ率 CPIの内訳家計の期待インフレ率 ( 前年比 % %pt) (%) 2.5 6 CPI 食品 2.0 5 1.5 1 年先 1.0 4 0.5 0.0 3-0.5 サービス 2-1.0 ( 除くエネルギー ) 5-10 年先 -1.5 1-2.0 財 ( 除く食品 エネルギー ) エネルギー -2.5 0 12345678910111212345678910111212345( 月 ) 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16( 年 ) 14 15 16 ( 年 ) ( 出所 )BLS, ロイター / ミシガン大, Haver Analytics より大和総研作成 CPI の先行きを見通すと 原油価格の下落と ドル高による輸入価格下落という 2 つの下押し要因が剥落することで徐々に総合指数の前年比上昇幅は拡大していくことになる 他方で 物価との関係が強い賃金上昇率に加速感が見られていないことに加えて 期待インフレ率についてもこのところ低下傾向にある 6 月のロイター / ミシガン大調査による家計の期待インフレ率 ( 中央値 ) は 1 年先が 2.4% と前月から横ばいとなったものの 5-10 年先に関しては同 +2.3%

7 / 10 と前月から低下し 過去最低を更新した 原油 為替などの市況要因を除けば インフレ圧力はさほど強まってはおらず 基調的なインフレが急速に加速する懸念はさほど大きくない 住宅販売は好調 建設業者の景況感も持ち直し 5 月の新築住宅着工戸数は前月比 0.3% と 2 ヵ月ぶりに減少し 年率換算 116.4 万戸となった 一戸建てが同 +0.3% と小幅ながら前月から増加する一方 集合住宅の着工が同 1.2% 減少したことが押し下げ要因となった ただし 減少した集合住宅についても 前月の増加に照らせば減少幅は小さく さほど悲観的な結果ではない 住宅着工は全体として緩やかな増加基調が続いていると言えよう 着工の先行指標となる建設許可件数は同 +0.7% と 2 ヵ月連続で増加し 年率換算 113.8 万戸となった 足下では着工件数を下回る水準で推移していることから 着工の上振れを示唆するほどの強さはないものの 2015 年末からの減少傾向に歯止めが掛かりつつある また このところ横ばいで推移してきた住宅建設業者の景況感にも持ち直しが見られている点は 住宅市場を見通す上で好材料である 6 月の NAHB( 全米住宅建設業協会 ) 景況感指数は前月から 2pt 上昇 5 ヵ月ぶりに改善した 指数の内訳を見ると 販売の現状 半年先の販売見通し 見込み客の動向の全てが前月から改善 とりわけ半年先の販売見通し改善幅が大きく全体を押し上げた 販売の現状に対する見方は相対的に慎重な状況が続いているものの 住宅建設業者による需要見通しは改善の動きが見られている 180 1 1 120 100 図表 5 住宅着工 許可件数と建設業者の景況感 中古住宅販売と仮契約指数 80 住宅着工 許可件数と建設業者の景況感 ( 年率万戸 ) ( 最大 =100) NAHB 景況感指数 ( 右軸 ) 許可件数 住宅着工件数 0 08 09 10 11 12 13 14 15 16 ( 年 ) ( 出所 )Census, NAHB, NAR, Bloomberg, Haver Analytics より大和総研作成 30 20 10 (2001=100) ( 年率万戸 ) 120 0 中古住宅仮契約指数 115 5 110 105 100 95 90 85 80 75 中古住宅販売と仮契約指数 中古住宅販売 ( 右軸 ) 0 4 0 3 300 08 09 10 11 12 13 14 15 16( 年 ) 実際の住宅販売の動向を見ると 4 月の新築住宅販売は前月比 +16.6% と大幅に増加 水準は年率換算 61.9 万戸と 2008 年 1 月以来の高さとなった また 4 月の中古住宅販売も同 +1.7% と 2 ヵ月連続の増加 年率換算 545 万戸と高水準を維持している 加えて 先行指標となる中古住宅仮契約指数の 4 月分は同 +5.1% と大きく増加し 中古住宅販売の更なる加速を示唆する

8 / 10 結果となった 好調な販売を背景に住宅価格も上昇が続いている 4 月の中古住宅販売価格の中央値は前年比 +6.3% 上昇 このところ鈍化していた新築住宅販売価格の中央値も同 +9.7% と前月から大幅に加速する結果となった 所得を上回るペースでの住宅価格の上昇が続いており 住宅取得能力指数は低下基調が続いている点については 引き続き留意が必要であろう 製造業の景況感が持ち直す一方で 非製造業の景況感が減速 5 月の ISM 製造業景況感指数は前月から+0.5%pt 上昇の 51.3% となり 3 ヵ月連続で基準となる % を上回った 内訳のうち 入荷遅延の大幅な上昇が指数の押し上げに寄与しており 景気に先行する新規受注 生産については前月から低下している しかし 新規受注や生産についても均してみれば年初の落ち込みからは回復傾向にあり ネガティブに捉えるほど弱いわけでもない 景況感指数の構成指数ではないが 新規輸出受注は前月から横ばいと回復傾向を維持しており ドル高一服による輸出の下げ止まりも企業マインドの改善につながっているとみられる 6 月上旬までの動向を含むニューヨーク連銀 およびフィラデルフィア連銀による製造業景況感指数は いずれも前月から改善し基準となる 0% を上回った 製造業の景況感は年初の落ち込みから徐々に持ち直しつつある 他方で これまで製造業が減速する中で企業部門をけん引してきた非製造業が減速しつつある点は懸念材料である 5 月の ISM 非製造業景況感指数は前月から 2.8%pt 低下の 52.9% となった 拡大の基準となる % は依然上回った状態が続いているものの 2014 年 2 月以来の低水準に留まった 構成指数のうち 事業活動 新規受注 雇用の 3 系列が前月から低下した 特に雇用については 3 ヵ月ぶりに基準となる を下回っており これはサービス業の雇用者数の伸びが減速していることと整合的である 図表 6 製造業の景況感 ISM 非製造業景況感指数の内訳 (DI) 30 20 10 0-10 -20-30 - 製造業の景況感 (DI) 45 ISM 製造業 ( 右軸 ) フィラデルフィア 35 連銀製造業 NY 連銀製造業 30 08 09 10 11 12 13 14 15 16( 年 ) 65 55 65 55 45 35 30 (DI) ISM 非製造業景況感指数の内訳 (3 ヵ月移動平均値 ) 入荷遅延 雇用 新規受注 事業活動 08 09 10 11 12 13 14 15 16( 年 ) ( 出所 )ISM, NY 連銀, フィラデルフィア連銀, Haver Analytics より大和総研作成

9 / 10 自動車の生産減少が鉱工業生産を押し下げ 設備投資は引き続き軟調 企業活動の実態面に関して見ると 5 月の鉱工業生産指数は前月比 0.4% 低下した 製造業についても同 0.4% の低下となったが これは自動車 同部品が同 4.2% と大幅に減少したことが主因である 自動車を除いた製造業については同 0.1% と前月からわずかに低下 横ばい圏の推移が続いている 製造業以外に関して 公益部門の生産は前月の大幅な増加の反動で同 1.0% と前月から減少したが均して見れば持ち直しつつある また 原油価格が下落する中で減産が続いてきた鉱業の生産指数は 原油価格が上昇したことを受けて 同 +0.2% と 9 ヵ月ぶりの上昇に転じた 生産指数の低下によって 5 月の設備稼働率は 74.9% となり 前月から 0.4%pt 低下した 2015 年初からの低下トレンドに歯止めが掛かるには至っておらず 水準としても引き続き長期平均 (1972 年 ~2015 年平均 :80.0%) を下回る低水準での推移が続いていることから 能力増強を含めた設備投資需要が盛り上がるような状況ではない 機械投資の一致指標である 4 月のコア資本財出荷は前月比 +0.4% 増加したが 均してみればなおも軟調な推移が続いている 先行指標となるコア資本財受注についても同 0.6% となり 持ち直しの兆しは見られておらず 機械投資の先行きは短期的には慎重に見るべきであろう しかし 2016 年初以降のドル高の一服を受けて 米国製造業の競争力や収益環境は改善しつつあると考えられる 製造業の景況感は持ち直しつつあり 設備投資も徐々に持ち直しに向かうとみられる また 原油価格が上昇するのに従って 鉱業による生産は漸く下げ止まりの兆しが見られている 鉱業の稼働率はなおも非常に低い水準に留まっていることから 即座に設備投資の増加に結びつくとは考えづらいが 構築物も含めた鉱業関連投資の減少による設備投資の下押しは徐々に緩和へ向かうことが期待されよう 図表 7 鉱工業生産の内訳 コア資本財出荷 受注と設備稼働率 1 130 120 110 100 90 80 鉱工業生産の内訳 (2012 年 =100) 75 自動車 同部品 ( 右軸 ) 公益 65 鉱業 自動車 同部品を除く製造業 55 45 08 09 10 11 12 13 14 15 16 ( 年 ) ( 出所 )FRB, Census, Haver Analytics より大和総研作成 コア資本財出荷 受注と設備稼働率 (10 億ドル ) コア資本財受注 設備稼働率 ( 右軸 ) コア資本財出荷 (%) 85 65 08 09 10 11 12 13 14 15 16 ( 年 ) 83 81 79 77 75 73 71 69 67

10 / 10 経済見通し 1-3 月期 GDP 二次速報では 住宅投資 輸出 在庫寄与度が上方修正され 実質 GDP 成長率は一次速報の前期比年率 +0.5% から同 +0.8% へと上方修正された 上方修正が見込まれていた個人消費については 財消費が上方修正される一方で サービス消費が下方修正されたことで全体としては一次速報段階と変わらない伸び率となった 今回の改定は景気の先行きに対する見方を変えさせるほどのインパクトはなかった 小売売上高は 4 月の大幅な増加に続いて 5 月も堅調を維持したため 4-6 月期の個人消費は高い伸びとなる公算が大きい 設備投資に関しては依然冴えない動きが続いているものの 輸出についても底打ちの兆しが見られており 4-6 月期の GDP 成長率は 1-3 月期から加速し 高めの成長率となると見込む 7-9 月期以降についても 個人消費主導の成長が続くというシナリオに変更はなく 足下の成長率の上振れを主因に 2016 年の GDP 成長率見通しは前回から+0.2% pt 引き上げ 2.0% とした 金融政策に関しては 6 月の FOMC では利上げを見送られることとなったが 次回の 7 月の FOMC での利上げの可能性は十分に残されていると考えられる ただし 2016 年内の利上げを 1 回と見込む FOMC 参加者が増えたように 利上げの必要性は低下気味で無理に進めることはない インフレ率の加速が確認できない場合は消費の力強い回復 少なくとも賃金の伸びが加速するなどのデータが確認される必要があろう 統計を後追いするような政策対応となるが 7 月の FOMC までに得られる経済統計が FOMC メンバーの見通しに沿った結果であれば利上げ判断に至ると予想する 図表 8 米国経済見通し 四半期 暦年 2015 2016 2017 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ 2014 2015 2016 2017 前期比年率 % 前年比 % 国内総生産 0.6 3.9 2.0 1.4 0.8 3.1 2.5 2.1 2.2 2.2 2.3 2.4 前年同期比 % 2.9 2.7 2.1 2.0 2.0 1.8 1.9 2.1 2.5 2.2 2.2 2.3 2.4 2.4 2.0 2.3 個人消費 1.8 3.6 3.0 2.4 1.9 4.2 3.2 2.7 2.6 2.6 2.5 2.5 2.7 3.1 2.9 2.8 設備投資 1.6 4.1 2.6-2.1-6.2-0.1 1.0 1.8 2.6 3.5 4.4 5.3 6.2 2.8-1.2 2.6 住宅投資 10.1 9.3 8.2 10.1 17.1 4.3 5.2 4.8 4.5 4.1 3.9 3.4 1.8 8.9 9.4 4.4 輸出 -6.0 5.1 0.7-2.0-2.0 2.4 2.0 2.1 2.8 3.4 3.9 4.3 3.4 1.1 0.3 2.9 輸入 7.1 3.0 2.3-0.7-0.2 0.9 2.1 2.9 3.6 3.8 4.3 4.6 3.8 4.9 0.9 3.3 政府支出 -0.1 2.6 1.8 0.1 1.2 0.7 0.2 0.9 0.6 0.4 0.4 0.2-0.6 0.7 0.9 0.5 国内最終需要 1.7 3.7 2.9 1.7 1.2 3.1 2.5 2.3 2.3 2.4 2.5 2.5 2.5 2.8 2.3 2.4 民間最終需要 2.0 3.9 3.2 2.0 1.2 3.6 3.0 2.6 2.7 2.8 2.9 2.9 3.2 3.3 2.5 2.8 鉱工業生産 -1.9-2.7 1.5-3.3-1.6-1.0 1.7 1.6 1.8 2.1 2.3 2.5 2.9 0.3-0.9 1.7 消費者物価指数 -2.9 2.4 1.4 0.8-0.3 2.6 2.3 1.9 1.7 2.1 2.0 2.3 1.6 0.1 1.3 2.0 失業率 (%) 5.6 5.4 5.2 5.0 4.9 4.8 4.7 4.7 4.7 4.7 4.6 4.6 6.2 5.3 4.8 4.6 貿易収支 (10 億ドル ) -127-124 -126-124 -122-120 -120-122 -123-125 -127-130 -490-0 -484-5 経常収支 (10 億ドル ) -115-112 -123-113 -125-122 -123-125 -125-126 -128-131 -392-463 -494-510 FFレート (%) 0.25 0.25 0.25 0. 0. 0. 0.75 1.00 1.00 1.25 1. 1.75 0.25 0. 1.00 1.75 2 年債利回り (%) 0. 0.61 0.69 0.83 0.84 0.78 1.01 1.20 1.23 1.44 1.66 1.89 0.46 0.69 0.95 1.55 10 年債利回り (%) 1.97 2.17 2.22 2.19 1.92 1.77 1.99 2.17 2.20 2. 2.61 2.83 2.54 2.14 1.96 2.51 ( 注 1) 網掛けは予想値 2016 年 6 月 20 日時点 ( 注 2)FF レートは誘導レンジ上限の期末値 2 年債利回り 10 年債利回りは期中平均 ( 出所 )BEA, FRB, BLS, Census, Haver Analytics より大和総研作成