川崎市中原区小杉御殿町 1-868 電話 044-271-6690 Fax044-271-6686 E-mail:hara@haratax.jp URL:http://www.haratax.jp 2014 年 4 月 17 日第 65 号 haratax 通信 二世帯住宅と小規模宅地等の特例 前月のharatax 通信では 老人ホームに入居していた場合の小規模宅地等の特例の改正についてご紹介しました 今月のharatax 通信では 今年の 1 月 1 日から改正されている小規模宅地等の特例の改正のうち もう一つの改正である二世帯住宅の取扱いについてご紹介いたします このテーマについては昨年の 7 月のharatax 通信でも取り上げましたが その間に通達が改正され 国税庁から情報が公表されるなど 取扱いがだいぶ整理されてきました 今月のharatax 通信では 二世帯住宅に居住していた場合の小規模宅地等の特例の改正についてご紹介いたします 1. 特定居住用宅地等お亡くなりになった方 ( 被相続人 ) が住んでいた自宅の敷地を1 配偶者 2 被相続人の同居親族 3 配偶者および同居親族がなく 自己所有の家屋に住んでいないなど一定の要件を満たす非同居親族が相続した場合には その土地 ( 以下 特定居住用宅地等 という ) の課税価格を一定の限度面積まで80% 減とする 小規模宅地等の特例 という規定があります お亡くなりになった方の配偶者が自宅敷地を相続すれば基本的に80% 減となりますが 配偶者に先立たれている場合 同居していた親族または3に該当する親族が相続しない限り 基本的に自宅敷地の評価減はありません 2. 改正前の取扱い (1) 基本的な考え方措置法通達 69 の 4-21 で 同居親族とは相続開始の直前においてその家屋で被相続人と共に起居していた者をいい その建物が構造上数個の部分に区分される1 棟の建物で 被相続人がその独立部分の一に居住していた場合には その独立部分において被相続人と共に起居していた者をいうと定めていました つまり 構造上区分された二世帯住宅で各独立部分に被相続人と相続人が別々に居住している場合には 原則として 共に起居していたことにならず 同居親族には該当しませんでした (2) 同居として認められる場合 措置法通達 69 の 4-21 のなお書きにおいて 次の要件を満たし 被相続人の居住用家屋に居住 していた者に当たるとして申告があった場合には 同居していたものと認めるとの規定がありました
1. その構造上区分された数個の部分の各部分 ( 以下 独立部分 といいます ) を独立して居住その他の用途に供することのできる建物の全部を被相続人または被相続人の親族が所有していること 2. 小規模宅地等の適用を受ける親族は 被相続人が相続開始の直前において居住の用に供していた独立部分以外の独立部分に居住していること 3. 被相続人の配偶者または被相続人が居住の用に供していた独立部分にともに起居していた被相続人の相続人 ( 相続の放棄があった場合には その放棄がなかったものとした相続人 ) がいないこと (3) 同居として認められる場合の二世帯住宅のイメージ 要件 1 建物全部を被相続人またはその親族が所有 2F 1F 親族が居住 ( 長男夫婦 ) 被相続人が居住 ( 母のみ ) 敷地 240 m2 玄関 玄関 要件 2 親族は被相続人が居住していた独立部分以外の独立部分に居住している 要件 3 被相続人が居住していた独立部分に配偶者または一緒に居住していた相続人がいないこと 上記の場合 措置法通達なお書きのすべての要件を満たすため 2F に居住している親族が敷地を相続した場合には 同居親族と認め 敷地全体が 80% 減となりました (4) 改正前の取扱い構造上区分された二世帯住宅で各独立部分に被相続人と相続人が別々に居住している場合 基本的に同居と認められませんが (2) の要件を満たす場合のみ 同居しているものとして小規模宅地等の特例を適用することができました 逆にいうと (2) の要件をすべて満たせない限りは 同居として認められませんでした 配偶者がいる状況で二世帯住宅の敷地を子に相続させたいなど (2) の要件を満たせなくなる可能性があるときは あらかじめ内階段を設け 内部で行き来できる体裁をとるなど 完全独立型の二世帯住宅に該当しないように対策を講じていました
3. 改正後の取扱い (1) 租税特別措置法施行令租税特別措置法施行令第 40 条の 2 第 4 項その居住の用に供されていた部分が被相続人の居住の用に供されていた一棟の建物 ( 建物の区分所有等に関する法律第 1 条の規定に該当する建物を除く ) に係るものである場合には その一棟の建物の敷地の用に供されていた宅地等のうちその被相続人の親族の居住の用に供されていた部分を含む 租税特別措置法施行令第 40 条の 2 第 10 項特定居住用宅地等にかかる法第 69 条の 4 第 3 項第 2 号イに規定する政令で定める部分は 次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める部分とする 1 被相続人の居住の用に供されていた一棟の建物が建物の区分所有等に関する法律第 1 条の規定に該当する建物である場合当該被相続人の居住の用に供されていた部分 2 前号に掲げる場合以外の場合被相続人又は当該被相続人の親族の居住の用に供されていた部分 (2) 建物の区分所有等に関する法律建物区分所有に関する法律第 1 条 ( 建物の区分所有 ) 一棟の建物に構造上区分された数個の部分で独立して住居 店舗 事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができるものがあるときは その各部分は この法律の定めるところにより それぞれ所有権の目的とすることができる (3) 法令解釈通達 69 の 4-7 の 3( 建物の区分所有等に関する法律第 1 条の規定に該当する建物 ) 措置法令第 40 条の 2 第 4 項及び第 10 項に規定する 建物の区分所有等に関する法律第 1 条の規定に該当する建物 とは 区分所有建物である旨の登記がされている建物ということに留意する ( 注書き省略 ) (4) 改正後の取扱い政令の規定によると 建物の区分所有等に関する法律第 1 条の規定に該当する区分所有建物以外である場合には 被相続人およびその親族の居住の用に供されていた部分に対応する土地が特定居住用宅地等の対象となりますが 区分所有建物である場合には 被相続人の居住の用に供されていた部分に対応する土地のみが対象になるとされています
そうすると 区分所有登記ができる建物であっても あえて区分所有登記をしていない場合にどうなるかという点について 税理士の間でもいろいろな意見がありました その後 昨年 11 月に公表された法令解釈通達 69 の 4-7 の 3 において 建物の区分所有等に関する法律第 1 条の規定に該当する建物 とは 区分所有建物である旨の登記がされている建物をいうこととされました これにより 区分所有登記ができる建物であっても 区分所有登記をしていなければ 被相続人およびその親族の居住の用に供されていた部分に対応する土地が特定居住用宅地等の対象となることが明確になりました 4. 平成 26 年 1 月 15 日付で国税庁から公表された情報の設例 事例 1 区分所有建物の登記がされていない 1 棟の建物の敷地の場合 問被相続人甲は 自己の所有する宅地の上に一棟の建物を所有し 甲とその配偶者乙及び生計を別にする子丙の居住の用に供していた ( 建物は 区分所建物である旨の登記がなく 甲単独の名義である ) 配偶者乙 子丙は 当該当宅地の 2 分の 1 の持分を各々相続により取得し 申告期限まで引き続き所有し かつ居住の用に供している 甲の所有していた宅地は 特定居住用宅地等に該当するか 被相続人甲と配偶者乙が居住 乙が引き続き居住 生計を別にする子丙が居住 丙が引き続き居住 甲の居住の用に供されていた部分 (A 部分 ) 乙が居住の用に供している 丙の居住の用に供されていた部分 (B 部分 ) 丙が居住の用に供している 土地 (200 m2 ) 乙と丙は 2 分の 1 共有持分を相続 被相続人等の居住の用に供されていた宅地等の判定甲の居住の用に供されていた一棟の建物の敷地には 被相続人甲の居住の用に供されていた部分 ( 以下 A 部分 という ) と 生計を別にする親族丙の居住の用に供されていた部分 ( 以下 B 部分 という ) がある 当該一棟の建物は 区分所有建物である旨の登記がされていないことから 生計を別にしていた親族丙の居住の用に供されていた部分についても 被相続人等の居住の用に供されていた
宅地等の部分に含まれることとなる ( 措置法令 40 条の2 4) したがって 敷地の全体が 措置法第 69 条の4 第 1 項に規定する被相続人等の居住の用に供されていた宅地等に該当することとなる 事例 2 区分所有建物の登記がされている 1 棟の建物の敷地の場合 問被相続人甲は 自己の所有する宅地の上に子丙と一棟の建物を所有し 甲とその配偶者乙及び生計を別にする子丙の居住の用に供していた ( 建物は 区分所建物である旨の登記があり 甲及び丙はそれぞれの占有部分について 区分所有権を登記し 居住の用に供している ) 配偶者乙 子丙は 当該当宅地の 2 分の 1 の持分を各々相続により取得し 申告期限まで引き続き所有し かつ居住の用に供している 甲の所有していた宅地は 特定居住用宅地等に該当するか 被相続人甲と配偶者乙が居住 乙が引き続き居住 生計を別にする子丙が居住 丙が引き続き居住 甲の居住の用に供されていた部分 (A 部分 ) 乙が居住の用に供している 丙の居住の用に供されていた部分 (B 部分 ) 丙が居住の用に供している 土地 (200 m2 ) 乙と丙は 2 分の 1 共有持分を相続 被相続人等の居住の用に供されていた宅地等の判定甲の居住の用に供されていた一棟の建物の敷地には 被相続人甲の居住の用に供されていた部分 ( 以下 A 部分 という ) と 生計を別にする親族丙の居住の用に供されていた部分 ( 以下 B 部分 という ) がある 甲の居住の用に供されていた一棟の建物は 区分所有建物である旨の登記がされていることから 生計を別にする丙の居住の用に供されていた部分 ( B 部分 ) は 措置法第 69 条の4 第 1 項に規定する被相続人等の居住の用に供されていた宅地等の部分に含まれないこととなる ( 措置法令 40 条の2 4) したがって 一棟の建物の敷地のうち A 部分だけが 措置法第 69 条の4 第 1 項に規定する被相続人等の居住の用に供されていた宅地等に該当することとなる
5. まとめ平成 26 年 1 月 1 日以後に相続または遺贈により取得した二世帯住宅の敷地については 上記の設例のとおり 区分所有建物の登記がされているかどうかで 小規模宅地等の特例の対象面積が変わることになります こうなると聞かれるのが すでに区分所有登記をしている二世帯住宅について 小規模宅地等の特例を最大限受けたいので どうにかできないかという相談です 土地家屋調査士の方に確認したところ 区分所有登記をしている建物を区分所有登記でなくするためには 各区分の所有者および所有割合が同じであり 抵当権等は同一日付で同一の受付番号である必要があるということです 建物の贈与または譲渡などにより建物の所有権を同一にすることはできますので 現実的には 各区分で別々にローンを組んでいるかどうかがポイントになりそうです また 紙面の関係で省略しましたが 小規模宅地等の特例は その土地が被相続人等の居住の用に供されていた宅地等に該当するのかの判断のほかに その土地を相続する側の要件があります その土地を引き継ぐ相続人が被相続人と生計を一にしていたか 家なき子に該当するかなどにより 特例を適用できる面積が変わってきますので 実際に適用されるときは 税理士に個別で相談することをおすすめします