【アジア新興経済レビュー】利下げや景気対策の動きが広がる

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【東南アジア経済】ASEANの貿易統計(5月号)~輸出は好調も、旧正月の影響を均せば増勢鈍化

【東南アジア経済】ASEANの貿易統計(1月号)~輸出の好調続くも新型スマホ関連がピークアウトへ

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今回の金融政策報告書では 米国内の投資活動が弱いために輸出が想定ほど伸びていないとしながらも 金融業などサービス関連の好調さを示す分析や 商品価格下落がカナダ企業の投資活動を抑制する動きは底打ちしたとの指摘など カナダ景気に前向きな材料も散見されます 当面は 政策金利の据え置きを続けると見通します

リンギ安進むマレーシア~原油安による経済への影響~

インド経済見通し~公共投資と農村部の回復で7%台半ばの成長を維持

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サマリー 1 市場の関心は米大統領選の行方に集まっています 世論調査においてドナルド トランプ氏の優勢が報じられると 市場の更なる丌確実性が懸念され リスク資産からの資金流出が記録されました 10 月の MSCI 世界株価指数はマイナス 2.01% MSCI 新興国株価指数は 0.18% と新興国が

マーケット フォーカス経済 : 中国 2019/ 5/9 投資情報部シニアエコノミスト呂福明 4 月製造業 PMI は 2 ヵ月連続 50 を超えたが やや低下 4 月 30 日 中国政府が発表した4 月製造業購買担当者指数 (PMI) は前月比 0.4ポイントの 50.1となり 伸び率がやや鈍化し

< 豪州債券市場の市況および今後の見通し > 2016 年の豪州債券市場では 金利が低下しました 年初から 2 月にかけては 中国株をはじめ世界の株式市場が下落するなど市場のリスク回避姿勢が強まる中 金利低下が進みました 1 月末に日銀のマイナス金利導入発表を受け 欧州など他国でもさらなる金融緩和期

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個人消費の回復を後押しする政策以外の要因~所得の減少に歯止め、節約志向も一段落

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ロシア 3節 第 第3節 ロシア 1 マクロ経済動向 ロシア経済は 緩やかな回復基調にある 2014 年 7 以下 輸出 個人消費 消費者物価 金融市場の動 月以降のウクライナ危機発生及びクリミア併合に伴う 向を中心に概観する 欧米からの経済制裁に加え 2015 年以降 原油価格 の下落を主因として

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FOMC 2018年のドットはわずかに上方修正

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Invesco Premia Plus Fund

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中国、財新サービス業PMIは4ヶ月ぶりの低水準に(Asia Weekly(3/4~3/8)) | 第一生命経済研究所 西濵徹

2018 年は激動の年 年初来 トルコ株式指数はトルコリラベースで最大で約 24% 下落し トルコリラは日本円に対して最大で約 45% 下落しました トルコ株式 * の推移 ( トルコリラベース ) /12 18/03 18/06 18

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中国におけるインフレの行方 中国経済は減速しているものの 過熱の解消にはまだ至っていない 年 9 月のリーマン ショックを受けて 中国は輸出が大幅に落ち込み 景気後退を余儀なくされたが 兆元に上る内需拡大策や 金利と預金準備率の大幅な引き下げをはじめとする拡張的財政 金融政策が実施されたことを受けて

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(2) 資産構成割合の推移 ( 給付確保事業 ) 1 資産配分実績の基本ポートフォリオからの乖離の推移 2 実践ポートフォリオと資産配分実績の推移 3. 運用受託機関 平成 29 年 3 月末現在 2

( 億円 ) ( 億円 ) 営業利益 経常利益 当期純利益 2, 15, 1. 金 16, 額 12, 12, 9, 営業利益率 経常利益率 当期純利益率 , 6, 4. 4, 3, 2.. 2IFRS 適用企業 1 社 ( 単位 : 億円 ) 215 年度 216 年度前年度差前年度

けた この間 生産指数は 上昇傾向で推移した (2) リーマン ショックによる大きな落ち込みとその後の回復局面平成 20 年年初から年央にかけては 米国を中心とする金融不安 景気の減速 原油 原材料価格の高騰などから 景気改善の動きに足踏みが見られたが 生産指数は 高水準で推移していた しかし 平成

ブラジル中国インド インドネシア ロシア 図表 新興国の消費者物価上昇率 ( 単位 :%)( 資料 :IMF 世界経済見通し ) 通常であれば 成長率が低下すれば 国内の需給バランスが緩和し むしろ物価は低下するのが自然である しかし 中国以外の カ国は逆に物価上

低インフレ 乏しい利上げ観測労働市場に目を向けると 8 月の失業率は約 年ぶりの低水準となる5.3% に低下した 雇用者数も伸びており 一部では技術者不足の声も聞かれる RBAは今後数年 失業率は自然失業率とされる5.% を目指して低下が続くとの見方を示している ただ 賃金の上昇率は ~ 月期が前年

1. 30 第 1 運用環境 各市場の動き ( 4 月 ~ 6 月 ) 国内債券 :10 年国債利回りは狭いレンジでの取引が続きました 海外金利の上昇により 国内金利が若干上昇する場面もありましたが 日銀による緩和的な金融政策の継続により 上昇幅は限定的となりました : 東証株価指数 (TOPIX)

[ 参考 ] 先月からの主要変更点 基調判断 3 月月例 4 月月例 景気は 急速な悪化が続いており 厳しい状況にある 輸出 生産は 極めて大幅に減少している 企業収益は 極めて大幅に減少している 設備投資は 減少している 雇用情勢は 急速に悪化しつつある 個人消費は 緩やかに減少している 景気は

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4月CPI~物価は横ばいの推移 耐久財の特殊要因を背景に、市場予想を上回る3 ヶ月連続の上昇

米国の利上げ見送りと日本の長期化した金融緩和

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○ユーロ

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株式市場 米国株 景気 企業業績は依然として堅調 MSCI 米国 2, % 先月の回顧 貿易摩擦への懸念から下落米国株式市場は下落しました トランプ米大統領が鉄鋼やアルミニウムの輸入を制限する方針を表明したことから 世界的な貿易摩擦への懸念が高まり下落して始まりました その後 貿

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中国:PMI が示唆する生産・輸出の底打ち時期

SERIまんすりー2月号 今月のみどころ

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グローバル株式市場を俯瞰する~2015年8月末データで見る市場動向~

長と一億総活躍社会の着実な実現につなげていく 一億総活躍社会の実現に向け アベノミクス 新 三本の矢 に沿った施策を実施する 戦後最大の名目 GDP600 兆円 に向けては 地方創生 国土強靱化 女性の活躍も含め あらゆる政策を総動員することにより デフレ脱却を確実なものとしつつ 経済の好循環をより

平成 21 年 9 月 5 日 角山智 投資環境レポート (2009 年 9 月 ) 1. 主な株価指数 8 月は 中国株が大幅に値下がりしました 反面 出遅れていた英国株が好調です 市場 日本株 日本新興市場 J-REIT 米国株 英国株 中国株 ( 指数 ) (TOPIX) (JASDAQ) (

経済・物価情勢の展望(2018年1月)

平成24年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度(閣議了解)

【アジア・新興国】東南アジア経済の見通し~19年は底堅い成長も、輸出鈍化と利上げの影響で減速傾向

第1章

平成10年7月8日

経済・物価情勢の展望(2016年10月)

中国経済見通し-18年下期は6.3%前後へ減速、米中貿易戦争が激化すればさらなる下振れも

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Economic Trends    マクロ経済分析レポート

1.ASEAN 概要 (1) 現在の ASEAN(216 年 ) 加盟国 (1カ国: ブルネイ カンボジア インドネシア ラオス マレーシア ミャンマー フィリピン シンガポール タイ ベトナム ) 面積 449 万 km2 日本 (37.8 万 km2 ) の11.9 倍 世界 (1 億 3,43

株式市場 米国株 国内の政策動向や海外の政治動向などに注目 MSCI 米国 2, % 先月の回顧 米国株式市場はほぼ変わらずとなりました 月初には 2 月末のトランプ大統領の議会演説を好感して 株価は大幅上昇となりました しかし その後は 新政権の経済政策に対する期待が徐々に後退

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米国株 投資家心理が落ち着けば 上昇基調に回帰と想定 株式市場 MSCI 米国 2, % 先月の回顧 長期金利の上昇を契機に急落米国株式市場は下落しました 月初に発表された1 月の雇用統計において 時間当たり賃金が市場予想を上回る伸び率となったことを受けて 長期金利が約 4 年ぶ

【アジア・新興国】東南アジアの経済見通し~景気は内需を中心に堅調維持も、資金流出と貿易摩擦のリスクに注意

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南十字星(オセアニアレポート)(No

From The FIXED INCOME Desk 2013年3月

1.ASEAN 概要 (1) 現在の ASEAN(217 年 ) 加盟国 (1カ国: ブルネイ カンボジア インドネシア ラオス マレーシア ミャンマー フィリピン シンガポール タイ ベトナム ) 面積 449 万 km2 日本 (37.8 万 km2 ) の11.9 倍 世界 (1 億 3,43

オーバルネクスト ETF 情報 2010 年 2 月 15 日号 ( 株 ) オーバルネクスト 東京都中央区日本橋兜町 13-2 TEL 03(5641)5777

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金融市場2018年12月号

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月例経済報告

ニュースリリース 農業景況調査 : 景況 平成 3 1 年 3 月 1 8 日 株式会社日本政策金融公庫 平成 30 年農業景況 DI 天候不順響き大幅大幅低下 < 農業景況調査 ( 平成 31 年 1 月調査 )> 日本政策金融公庫 ( 略称 : 日本公庫 ) 農林水産事業は 融資先の担い手農業者

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Economic Indicators_  定例経済指標レポート

株式市場 米国株 トランプ氏の政策への期待感後退で調整も MSCI 米国 2, % 先月の回顧 米国株式市場は上昇しました 11 月 8 日 ( 現地 ) に行われた大統領選挙でトランプ氏が当選し 減税やインフラ投資の拡大などの同氏の政策に注目が集まりました 債券市場では金利が上

[ 調査の実施要領 ] 調査時点 製 造 業 鉱 業 建 設 業 運送業 ( 除水運 ) 水 運 業 倉 庫 業 情 報 通 信 業 ガ ス 供 給 業 不 動 産 業 宿泊 飲食サービス業 卸 売 業 小 売 業 サ ー ビ ス 業 2015 年 3 月中旬 調査対象当公庫 ( 中小企業事業 )

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2019 年 3 月期決算説明会 2019 年 3 月期連結業績概要 2019 年 5 月 13 日 太陽誘電株式会社経営企画本部長増山津二 TAIYO YUDEN 2017

インフレ加速の足音-物価指標はインフレ加速を示唆。今後も賃金上昇、GDPギャップ解消からインフレは加速しよう

株式市場 米国株 上値が重く神経質な展開 MSCI 米国 2, % 先月の回顧 米国株式市場は下落しました FOMC( 米国連邦公開市場委員会 ) における利上げの有無 大統領選挙の動向 ドイツの大手銀行の資本不足懸念などに一喜一憂する展開となりました 月半ばにかけて 利上げ観測や原油

経済・物価情勢の展望(2017年7月)

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米労働市場は直近の回復基調に変化なし ~FRB出口政策への影響は限定的~

先行き高めの成長が持続 現状 : 内外需要が堅調足許の経済は内外需要が堅調を維持 輸出は世界経済の回復を背景に急拡大 個人消費は良好な雇用所得環境を受けて 若干減速しつつも安定的に拡大 企業マインドの改善によって 固定資産投資に底入れの兆し 堅調な需要拡大を受けて 工業生産は高めの伸びを維持 展望

マクロ経済動向分析4月 成長減速の中に見える安定 ソフトランディング体勢へ

平成 25 年 3 月 19 日 大阪商工会議所公益社団法人関西経済連合会 第 49 回経営 経済動向調査 結果について 大阪商工会議所と関西経済連合会は 会員企業の景気判断や企業経営の実態について把握するため 四半期ごとに標記調査を共同で実施している 今回は 2 月下旬から 3 月上旬に 1,7

Transcription:

ニッセイ基礎研究所 2015-10-01 アジア新興経済レビュー 利下げや景気対策の動きが広がる 韓国 台湾 マレーシア タイ インドネシア フィリピン インド経済研究部研究員斉藤誠 TEL:03-3512-1780 E-mail: msaitou@nli-research.co.jp 1. ( 実体経済 ) 面の伸び率 の動きを見ると 好不調の差が拡大する結果となった マレーシア インドネシアは通貨安による輸出の持ち直しによる改善が見られる一方 タイはハードディスクドライブ (HDD) の大幅マイナスが続いていること 台湾は販売が低調な自動車が減少したことから それぞれ 3 ヵ月 6 ヵ月平均を下回った 2. ( インフレ率 ) 7 月の消費者物価上昇率 は 国際商品市況の下落が続いたほか 景気減速によるインフレ期待の後退を受けて低めの伸びとなり 韓国 台湾 タイ インドなどでは 3 ヵ月 6 ヵ月平均を下回った 3. ( 金融政策 ) 9 月は 全 7 ヵ国 地域の中央銀行で金融政策会合が開かれた 政策金利は台湾 インドでは引下げが決まり その他の会合では据え置かれた 4. (9 月の注目ニュース ) -マレーシア : 緊急経済対策を発表 (14 日 ) -タイ : 短期的な景気対策を決定 (1 日 8 日 ) -インドネシア: 経済政策パッケージを公表 (9 日 29 日 ) 5. (10 月の主要指標 ) 10 月は韓国 (23 日 ) 台湾(30 日 ) で 7-9 月期の GDP 統計が公表される 輸出主導経済の韓国と台湾では 7-9 月期も輸出不振が続いていることから景気低迷は避けられないだろう また韓国は MERS 感染の終息宣言で消費の反動増が見られるか 台湾は輸出型製造業で人員削減が進むなか内需が景気を支えられるかに注目したい 1

1. 活動 ( 韓国 台湾 タイ :8 月 その他の国 :7 月 ) アジア新興国 地域の指数の伸び率 ( 前 年同月比 ) を見ると 国 地域間の好不調の差が 拡大する結果となった ( 図表 1) マレーシア インドネシアは通貨安による輸 出の持ち直しによってが上昇傾向にあると 見られ 3 ヵ月 6 ヵ月平均を上回る結果となっ た またインドは製造業がやや鈍化したものの 前月に続いて 4% 台の伸びを維持した タイは新車効果で自動車がプラスの伸びを示 ( 図表 1) 8% しているものの ソリッドステートドライブ (SSD) の需要拡大を受けて主力のハードディスクド ライブ (HDD) は大幅マイナスが続いている その結果 伸び率は前年比 8.3% と政治の混乱期 であった昨年 3 月以来の低水準を記録した 台湾は同 5. と 鬼月 と呼ばれる消費を控える 時期 ( 旧暦 7 月 ) で販売が低調な自動車が減少したほか 主力の電子部品やコンピューター 電子 光学機器の低迷が続いて 4 ヵ月連続のマイナスとなった 6% 4% 2% 2% 4% 6% 8% 1 指数 ( 注 ) 月は韓国 台湾 タイが 8 月 その他の国 地域が 7 月 2. 貿易 ( 韓国 台湾 タイ インドネシア インド :8 月 その他の国 :7 月 ) アジア新興国 地域における輸出 ( 通関ベー ス ) の伸び率 を見ると 鉱業製 品や農水産品など国際商品市況の下落を受けて 下押し圧力が強まる結果となり ( 図表 2) 韓国 台湾 タイ インドなどでは 3 ヵ月 6 ヵ月平均 を下回った 一方 マレーシア インドネシアは通貨安が 輸出の押上げ要因となり 3 ヵ月 6 ヵ月平均と 同水準を維持した またフィリピンは主力の電 子機器が前年比 +34.6% と好調で小幅のマイナ スを維持した 輸入の伸び率 については 国 際商品市況の下落が下押し要因となり フィリ ピンを除く国 地域では前月に続いて二桁マイ ナスを記録した ( 図表 3) フィリピンは同 +16.9% と 政府支出の拡大で 資本財や消費財を中心に拡大して二ヵ月連続の ( 図表 2) 二桁増となった また 7-9 月期の消費者信頼感指数は前期から 4.6 ポイント改善するなど消費に楽 観的な見方が広がっていることから輸入拡大の傾向は当面続くと見られる 1 2 2 輸出 ( 注 ) ドルベース 月は韓国 台湾 タイ インドネシア インドが 8 月 その他の国 地域が 7 月 ( 図表 3) 2 1 1 1 2 輸入 ( 注 ) ドルベース 月は韓国 台湾 タイ インドネシア インドが 8 月 その他の国 地域が 7 月 2

3. 自動車販売 (8 月 ) 8 月の自動車販売台数の伸び率 を見ると 3 ヵ月 6 ヵ月平均を上回る国が多く 持ち直しの動きが見られた ( 図表 4) フィリピンは前年同月比 +21.3% と前月から 更に 2.8% ポイント上昇し 21 ヵ月連続の二桁 増を記録した また韓国は同 +13.6% と 前月に 続いて新車効果が追い風となった インドは同 +4.7% と前月から鈍化したものの インフレ圧 力の後退や原油安による自動車の維持費の低下 を受けて 2 ヵ月連続のプラスを記録した このほか マレーシアは同 +4. と 4 月の GST( 物品 サービス税 ) 導入後 初めてプラスに転化した 一方 台湾は同 1.1% と 鬼月 と呼ばれる消費を控える時期 ( 旧暦 7 月 ) だったことから 3 ヵ月ぶりのマイナスに転じた タイは同 9.9% と 28 ヶ月連続の減少となった しかし 新型車 の販売が伸びて 3 カ月連続で 6 万台を上回り マイナス幅は 1 桁台に縮小した インドネシアは同 6.3% と 12 ヵ月連続のマイナスを記録した 8 月はモーターショー開催の影響でマイナス幅が縮 小したが 引き続き昨年 11 月の燃料補助金削減やガソリン価格の値上げによる消費者の購買意欲 の低下が足枷になっている ( 図表 4) 2 2 1 1 1 2 2 新車販売台数 ( 注 ) 台湾は登録台数 ( ナンバープレート交付数 ) 4. 消費者物価指数 (8 月 ) 8 月の消費者物価上昇率 ( 前年同月比 以下 CPI 上昇率 ) は 国際商品市況の下落が続いたほか 景気減速によるインフレ期待の後退を受けて低めの伸びとなった ( 図表 5) マレーシア ( 同 +3.1%) とインドネシア ( 同 +7.2%) は 前月のイスラム教の断食明け大祭の消費需要の増加による上昇圧力が剥落したものの 通貨安による輸入インフレを受けて小幅の低下に止まった インドは同 +3.7% と 2 ヵ月連続で 4% を下回 ( 図表 5) 8% 7% 6カ月平均 6% 3カ月平均 4% インフレ目標 3% 2% 1% 1% 2% インフレ率 ( 注 ) インフレ率は CPI 上昇率 インフレ目標を採用している国は韓国 タイ インドネシア フィリピン インド る結果となったが 7 月以降は雨不足が続き 雨季 (6-9 月 ) の降雨量は 9 月 23 日時点で平年を 12% 下回る水準となっており 今後インフレ率がどれだけ上昇するか注意を払う必要がある またフィリピンは同 +0.6% と 食料品や国際原油価格の下落を受けて前月から 0.2% 低下した また年明けから見るとインフレ率は 2.1% 低下している フィリピンは 7 ヵ国 地域のなかでは最も低下幅が大きい国となっている 5. 金融政策 (9 月 ) 9 月は 全ての国 地域の中央銀行で金融政策会合が開かれた 政策金利は台湾 インドでは引下げが決まり その他の会合では据え置かれた 台湾では 24 日に政策金利を 0.12 引き下げて 1.7 とした 2011 年 7 月から政策金利を動か 3

さなかったことから予想外であった 年明け以降の輸出不振に伴う景気減速を受けて 政府は先月下旬にサービス輸出の拡大や投資促進に向けた景気刺激策を公表しており 今回の中央銀行の利下げ判断は政府と足並みを揃える形となった またインドは 29 日の会合で政策金利を 0. 引き下げて 6.7 とした 足元のインフレ率が中央銀行のインフレ目標 2016 年 1 月までに 6% を大きく下回っていただけに利下げは予想通りであったが 0. の引下げ幅はサプライズであった この結果 年明けからの利下げ幅は 1.2 となる 今後 不良債権の問題を抱える市中銀行が貸出金利を引下げ 設備投資の改善に繋がるかが重要だ 6. 金融市場 (9 月 ) 9 月のアジア新興国 地域の株価は 米連邦 準備理事会 (FRB) による利上げ先送りを受けて 買い戻しの動きも見られたが 下旬からは再び 米国の金融政策や中国の景気減速に対する懸念 が燻り 軟調に推移した ( 図表 6) 国別に見ると 資源国であるマレーシア イ ンドネシアは資金流出が続き インドネシアは 株価下落に繋がったが マレーシアは株価下支 え策の影響で横ばいの結果となった また台湾 は 9 月 25 日に発売した米アップルの新型スマー トフォンの予約状況が好調だったことや 2009 年以来初の利下げが買い材料となったが 主要 輸出先である中国経済の減速を受けて横ばいと なった 為替 ( 対ドル ) は 株価と同様に FRB による 利上げが先送された中旬までは売り圧力が一服 していたが 下旬に米 FRB のイエレン議長が 年 内の利上げが適切 と発言したことから先行き ( 図表 6) に対する警戒感は高まり 軟調に推移した ( 図表 7) 国別に見ると マレーシア インドネシアは国際商品市況の下落も加わって下落幅が大きかった 一方 インドは積極的な利下げによって株式市場に資金が流入し ルピー高につながった (%) 5 0 5 10 15 20 6 カ月 3 カ月 株価上昇率 1カ月 25 韓国 台湾 マレーシア タイ インドネシア フィリピン インド ( 図表 7) (%) 5 0 5 10 15 通貨上昇率 6 カ月 3 カ月 1 カ月 ( ドル安 自国通貨高 ) ( ドル高 自国通貨安 ) 20 韓国 台湾 マレーシア タイ インドネシア フィリピン インド 7. 9 月の注目ニュース 今後の注目点など 1マレーシア : 緊急経済対策を発表 14 日にナジブ首相が緊急経済対策を発表した 政府ファンドに 200 億リンギ ( 約 5,600 億円 ) 注入し 過小評価されている企業の株式を買い支えて金融市場の安定を図るほか 通貨安に伴う輸入価格の高騰への対応として 90 品目の輸入関税を免除するとした また中国人団体客向けの観光ビザ免除や福祉の改善 雇用対策なども盛り込まれた また同日 国営投資会社カザナ ナショナルが国内企業向けに 67.7 億リンギ ( 約 1,900 億円 ) を投資すると発表しており 政府と合わせて約 280 億リンギ ( 約 7,750 億円 ) の景気浮揚策となっ 4

た しかし 発表後も国内株式 為替相場は軟調な推移が続いており 現在のところ目立った効果 は見られない 2タイ : 短期的な景気対策を決定 (1 日 8 日 ) タイ政府は 1 日に短期的な景気対策第 1 弾を決定した 予算規模は 1,360 億バーツ ( 約 4,600 億円 ) となり 景気低迷に苦しむ低所得者や中小企業向けの救済措置などが盛り込まれた そして政府は 8 日に 2,060 億バーツ ( 約 6,900 億円 ) の景気対策第 2 弾を決定し 中小企業の資金繰りを支援する低利融資や融資保証 法人減税などが盛り込まれた 主要輸出先である中国経済の減速でタイ経済も低迷するなか ソムキット副首相 ( 経済担当 ) はまず短期的な景気対策によって内需を改善させ その後で投資誘致促進策を打ち出すことを考えているようだ 3インドネシア : 経済政策パッケージを公表 (9 日 29 日 ) 9 日にジョコ大統領が消費 投資の拡大や通貨下支えに向けた経済政策パッケージを発表した 9 日に発表された第 1 弾では 重複規制の簡素化による製造業の競争力強化 国家プロジェクトの加速 不動産セクターの投資促進などが盛り込まれた また中央銀行も同日にインフレ抑制や通貨安定に向けた施策を発表した また 29 日には 第 2 弾の経済政策パッケージを発表した 外国企業の投資を呼び込むべく 投資認可や税制優遇措置の手続きの簡素化 迅速化を図るとしたほか インフレ抑制や資金流出に備えて輸出入業者に対する税制優遇措置を見直すとした これまでに発表されたメニューを見る限り 即効性の乏しい内容であった 410 月の主要指標 : 韓国 台湾で GDP 公表 10 月は 韓国 (23 日 ) と台湾 (30 日 ) で 2015 年 7-9 月期の GDP が公表される 4-6 月期の実質 GDP 成長率は 韓国が前年同期比 +2.2%( 前期 : 同 +2.) 台湾が同 +0.( 前 期 : 同 +3.8%) とそれぞれ減速した 景気減速 の主因となった輸出不振は 7-9 月期も続いてお り 景気の低迷は避けられないと見られる ま た韓国では MERS 感染について終息宣言しており 4-6 月に落ち込んだ消費の反動増が見られるか また台湾では輸出型製造業で人員削減が進むな か内需が景気を支えられるかに注目したい 当研究所では 7-9 月期の実質 GDP 成長率 は 韓国が前年同期比 +2.3% 台湾が同 +0.4% と低迷すると予想する ( 図表 8) 新興国経済指標カレンダー 10 月 1 日木貿易 CPI CPI 10 月 2 日金 CPI 10 月 6 日火 CPI 6-19 日 CPI 10 月 7 日水貿易貿易 10 月 9 日金輸出 10 月 12 日月 10 月 14 日水 WPI 10 月 15 日木金融政策貿易海外送金 10 月 16 日金 CPI 10 月 20 日火輸出受注 金融政策 10 月 23 日金 GDP 10 月 26 日月 26-29 日 貿易 10 月 27 日火 27-30 日 貿易 10 月 30 日金 GDP ( 資料 ) 各種報道資料 指数の対象月は 韓国が 8 月と 9 月 台湾 タイが 9 月 マレーシア インドネシア フィリピン インドが 8 月 貿易統計の対象月は 韓国 台湾 タイ インドネシアが 9 月 その他が 8 月 貿易統計については フィリピンは輸出と輸入の公表日が異なる 公表日は変更になる可能性がある 特に斜体字については日程が不確実なもの 9-15 日貿易 CPI ( お願い ) 本誌記載のデータは各種の情報源から入手 加工したものであり その正確性と安全性を保証するものではありません また 本誌は情報提供が目的であり 記載の意見や予測は いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません 5