市場調査部レポートウィークリー アウトルック 米中貿易摩擦と日米通商協議 2018 年 8 月 3 日 ( 金 ) 発行 No.186 各通貨ペアの投資戦略については Weekly 投資戦略ガイド をご参照ください 原則 毎月曜 更新 ( 次回は 8 月 6 日 ) です ファンダメンタルズ << 相場環境 >> トランプ政権は 中国製品 2000 億ドル相当に関税を賦課する計画について 関税率を当初の 10% から 25% へ引き上げることを検討しているようです USTR( 米通商代表部 ) によれば 中国製品 2000 億ドル相当を対象とする意見公募期間は 8 月 20-23 日の公聴会を経て8 月 30 日に終了します トランプ政権は 公聴会前に関税率引き上げを公表する必要があり それまでに新たな材料が示される可能性があります 米上院は 1 日 米企業への外国からの投資について安全保障上の観点から審査を強化する法案を可決しました 同法案が正式に発効されれば 中国などの外国企業が米国に投資する際のハードルが高くなります 今後 通商協議が停滞している中国との対立が激しさを増す可能性もありそうです その場合 リスクオフの円高には注意しておく必要があります 6 月の日米首脳会談で合意された FFR(Free: 自由 Fair: 公正 Reciprocal: 相互的 ) は 当初の予定より遅れて 8 月 10 日 ( 米国時間 9 日 ) に米ワシントンで初回会合 ( 日米通商協議 ) が開催されます 日本も対象になっている鉄鋼 アルミ関税や 自動車関税などについて交渉が行われることになりそうです < 根岸 > 米ドル(/ 円 ) 日銀は 7 月 31 日 (1) フォワードガイダンス( 将来の指針 ) の導入 (2) 長期金利目標の柔軟化 (3) ETF 買入れ方針における買入れ比率の変更を決定 長短金利操作付き質的量的金融緩和 を微調整しました フォワードガイダンスでは 2019 年 10 月に予定されている消費税率引き上げの影響を含めた経済 物価の不確実性を踏まえ 当分の間 現在のきわめて低い長短金利の水準を維持することを想定している とされました 日銀が金融緩和の縮小には踏み込まなかったことから 結果判明後に市場は円売りの反応を示しました 米 FOMC は 8 月 1 日 金融政策の据え置きを決定しました 声明では 経済活動は 力強いペース (strong rate) で拡大 しているとされました 前回 6 月の 底堅いペース (solid rate) で拡大 と比較すると 当局者は経済への自信を深めたとみることが可能です FRB が利上げを継続すれば 日銀との金融政策の方向性の違いから米ドル / 円のサポートとなりそうです FRB が利上げを判断する 1 つの材料として 10 日の米 CPI には注目です FF レート先物によれば 9 月に年内 3 回目の利上げが行われる確率は 90.0% 12 1 Copyright 2018 MONEY SQUARE, INC. All rights reserved.
月に 4 回目の利上げが行われる確率は 68.9% です (2 日時点 ) < 根岸 > ユーロ 今週のユーロは軟調でした 貿易摩擦を背景にしたリスクオフの局面では 円 > 米ドル>ユーロの順で通貨が買われる傾向があります 米国と EU は 7 月 25 日に貿易戦争の回避で合意しましたが 注目されていた自動車関税は棚上げされました 貿易摩擦の激化は対円や対米ドルでユーロが弱含む材料となる可能性があり 引き続き注意が必要でしょう < 根岸 > 英ポンド BOE( 英中銀 ) は 8 月 2 日 政策金利を 0.25% 引き上げて 0.75% とすることを全会一致で決定しました 利上げは 2017 年 11 月以来です 英ポンドは利上げ決定後に上昇しましたが その後反落しました ブレグジットの不透明感などを背景に カーニー総裁が今後の利上げペースについて慎重な見方を示したことが材料視されました OIS( 翌日物金利スワップ ) によれば BOE が年内に追加利上げを行う確率は 10% 程度です 政策金利が当面据え置かれる見込みであることやブレグジットの不透明感を背景に 英ポンドは上値の重い展開となるかもしれません メイ英首相は ソフトブレグジット ( 穏健な EU 離脱 ) の方針を選択しました ただ 英国内の離脱強硬派から批判を受けていることに加えて EU のバルニエ主席交渉官は 離脱後の通商条件について英国案の主要部分を拒否しました 交渉後の手続きを踏まえると 英国は 19 年 3 月のブレグジットに向けて 18 年 10 月までに EU と合意する必要がありますが ブレグジット交渉は依然として難航しています < 根岸 > 豪ドル 豪ドルは引き続き 米国など各国の通商政策のほか 中国 人民元や上海総合指数の動向に注意が必要です 米中の貿易摩擦激化への懸念が強まる あるいは人民元安や上海総合指数が下落した場合 豪ドルにとってマイナス材料と考えられます 来週 (8 月 6 日の週 ) は 7 日に RBA( 豪中銀 ) の政策金利が発表されます 政策金利は現行の 1.50% に据え置かれる可能性が高いとみられます 注目は声明で それが市場の RBA の政策金利は当面据え置き との見方を変化させる内容になれば 豪ドルが反応する可能性もあります < 八代 > NZ ドル RBNZ(NZ 中銀 ) の政策金利が 8 月 9 日に発表されます RBNZ は政策金利を当面 据え置くことを示唆しているため 政策金利は現行の 1.75% に据え置かれるとみられます 今回の注目は 金融政策声明における政策金利やインフレの見通しです 前回 5 月は RBNZ が来年 (2019 年 )7-9 月期の利上げを想定していることが判明 また CPI( 消費者物価指数 ) 上昇率はインフレ目標中央値である +2% に到達するのは 2020 年 10-12 月期との見通しが示されました それらの見通しが変化すれば NZ ドルが反応する可能性があります 利上げ時期や CPI 上昇率の 2% 到達時期が前倒しされた場合 NZ ドルにとってプラス材料になりそうです < 八代 > 2 Copyright 2018 MONEY SQUARE, INC. All rights reserved.
カナダドル 市場では BOC( カナダ中銀 ) が年内に追加利上げを行うとの観測があります 年内利上げ観測は 引き続きカナダドルを下支えするとみられます 年内に行われる BOC の会合は 9 月 5 日 10 月 24 日 12 月 5 日です 来週 (8 月 6 日の週 ) 発表のカナダの主な経済指標は Ivey 購買部協会指数 (7 日 ) 住宅着工件数(9 日 ) 雇用統計(10 日 ) です それらが堅調な結果になれば BOC の年内利上げ観測は一段と強まる可能性があります その場合 カナダドルのさらなる支援材料になりそうです また NAFTA( 北米自由貿易協定 ) 再交渉に関するニュースにも目を向ける必要がありそうです メキシコの大統領が 12 月 1 日に交代するため 米国はメキシコとの合意を優先し メキシコの次にカナダとの合意を目指すとの観測があります 米国がメキシコと原則合意すれば 米国とカナダの合意への期待感が高まる可能性もあります そうなれば カナダドルにとってプラス材料と考えられます < 八代 > トルコリラ トルコリラは今週 (7 月 30 日の週 ) 対米ドルや対円で過去最安値を記録しました トルコが米国人のブランソン牧師を拘束している問題で 米国が 8 月 1 日にトルコの 2 閣僚に対して制裁を科したことが要因です トルコは報復の構えを見せており 両国の関係が一段と悪化するとの懸念が再燃しました トルコリラについては TCMB( トルコ中銀 ) が 7 月 24 日に政策金利を据え置いたことで TCMB の独立性をめぐる懸念が一段と強まり 下落圧力が加わりやすい地合いとなっています そのうえ トルコと米国の関係が悪化するとの懸念が再燃しました ブランソン牧師の問題をめぐる米国とトルコの対応に注意が必要です トルコリラの下落が続いた場合 市場の関心はトルコリラ安に対する TCMB の対応にも向く可能性がありま す 市場は今後 トルコリラ安への TCMB の対応を試す動き (= さらなるトルコリラ売り ) になる可能性もあり トルコリラの動きには引き続き 要注意です < 八代 > 南アフリカランド ランドは今週 (7 月 30 日の週 ) 対米ドルや対円で軟調に推移しました 米国と中国の貿易摩擦への懸念 ( リスクオフ要因 ) のほか 南アフリカの土地改革問題が ランドの重石となりました ラマポーザ大統領は 与党は 無償での土地収用を認める憲法改正を推進する と表明しました ラマポーザ大統領は 貧困解決策として白人が所有する土地を補償金なしで収用する方針を示しています ランドは引き続き 米中の貿易摩擦のほか 土地改革に関するニュースに目を向ける必要がありそうです 米中の貿易摩擦が一段と激化した場合 ランドには下落圧力が加わる可能性があります < 八代 > 3 Copyright 2018 MONEY SQUARE, INC. All rights reserved.
テクニカル ( Pick Up 通貨 : 米ドル / 円 カナダドル / 円 ) 米ドル / 円 (8/6-10 戦略アイデア ) コアレンジ :110.30-112.90 円 買い トラリピ 上図チャートにおける各メルクマールをそれぞれ確認すると 1) 21 日 MA( 移動平均線 ) が右肩上がりであること 2) 遅行スパンがローソク足の上方にあること 3) パラボリック SAR( ストップ アンド リバース ) がローソク足の下方にあること 4) ローソク足が 21 日 MA 付近にあること そして 5) DMI( 方向性指数 ) で +DI >-DI となりつつある ( 上図青色点線丸印 ) ことから 足もとの米ドル / 円は下方硬直性を伴うレンジ相場となっていることが視認できます 注意すべきメルクマールは BB( ボリンジャーバンド ) +2σ ラインの方向性 3 日 ( 本稿執筆 ) 時点では 前 述の通り 21 日 MA は右肩上がりとなっているのに対し BB +2σ ラインは横向き推移となっており これは 上値はある程度限定的である というシグナルと見た方がよさそうです 同時に 前述の通り ローソク足が 21 日 MA 付近にあることから ローソク足 ( レート ) は 居心地のいい 場所で推移している と捉えるべきでしょう 総合すると 足もとにおける米ドル / 円の下値メドは BB -2σ ラインを基準とする 110.30 円 上値メド は BB +2σ ラインを基準とする 112.90 円 と仮定し 当該レンジをベースとする 買い トラリピ を仕掛ける のも一案でしょう < 津田 > 4 Copyright 2018 MONEY SQUARE, INC. All rights reserved.
カナダドル / 円 (8/6-10 戦略アイデア ) コアレンジ :85.00-87.00 円 買い トラップ 上図チャートにおける各メルクマールをそれぞれ確認すると 1) 21 日 MA( 移動平均線 ) が右肩上がりであること 2) 遅行スパンがローソク足の上方にあること 3) パラボリック SAR( ストップ アンド リバース ) がローソク足の下方にあること 4) ローソク足がBB( ボリンジャーバンド ) +1σラインと同 +2σラインの間で推移する 上昇バンドウォーク となっていること そして 5) DMI( 方向性指数 ) で +DI>-DI となりつつある ( 上図赤色点線丸印 ) ことから 足もとのカナダドル / 円は典型的な上昇トレンド相場となっていることが視認できます 上図チャートからも見て取れる通り 各 BB が右肩上がりとなっている 21 日 MA に対してパラレルで推移し ていることから これからの時間におけるカナダドル / 円は 徐々に下値を切り上げていく相場展開となりそう です す 同時に 今後仮に ADX が右肩上がり推移となった場合は 上昇モメンタムが強まる可能性がありそうで 総合すると 足もとにおけるカナダドル / 円の下値メドは 21 日 MA を基準とする 85.00 円 上値メドは直 近高値 (5/22 上図青色三角印 ) を基準とする 87.00 円 と仮定し 当該レンジをベースとする 買い トラ ップトレード を仕掛けるのも一案でしょう < 津田 > ( 注 ) 戦略アイデア については 観測におけるタイムラグやそれに伴うメルクマール変化により 必ずしも Weekly 投資戦略ガイド と一致するものではありません 5 Copyright 2018 MONEY SQUARE, INC. All rights reserved.
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