2 章成層圏オゾン層の破壊 名古屋大学太陽地球環境研究所 松見豊 連絡先 : matsumi( アットマーク )stelab.nagoya-u.ac.jp ( アットマーク ) のところに @ をいれる Copyright @ Matsumi Lab. Nagoya Univ.
授業の内容 成層圏オゾン層はどのように生成するのか その物理 化学過程について解説する オゾン層破壊反応のサイクル反応 南極オゾンホールの生成機構について解説する 大気オゾンの計測 研究について解説する これらを通して地球規模の環境問題について考える
太陽
人間活動の地球大気への影響 地球規模の重要な環境問題は大気が関与している
産業革命以降の大気中の各気体の濃度変化 CO 2 CH 4 N 2 O CFCl 3 フロン
オゾン量 スイスアローサでのオゾン計測
ドブソンユニット (DU, Dobson Unit) の定義 オゾンの気柱 オゾンを 1 気圧にする = 300 DU
1,500 皮膚ガンの増加 Excess cases (per million per year) USA 1,250 フロン規制なし 1,000 倍増 750 500 250 規制 (1992) 0 1950 2000 2050 2100 Year
オゾン層の破壊 フロン ハロン ( 塩素 しゅう素化合物 ) 人類が放出 スプレー クーラー 冷蔵庫 IC 精密部品洗浄剤 土地の改良剤 太陽光 オゾン層 フロン フロンが光を吸収して分解塩素原子 Cl を出す フロン : 非常に化学的に安定
成層圏へ CFC の拡散 太陽光 成層圏 大気の窓 220nm 付近 200 対流圏 CFC 光吸収太陽光 30 km 250 300 波長 (nm) 大気の混合非常に遅い 0 km 400 300nm より長波長 OH が大気の掃除屋 C 3 H 8 + OH C 2 H 7 + H 2 O CF 2 Cl 2 + OH 反応しない 非常に長い寿命の気体が成層圏へ CFC ガス
フロン (CFC) および代替フロンの大気中での寿命 化合物 寿命 オゾン破壊係数 (ODP) CFCl 3 (CFC-11) 50 年 1 CF 2 Cl 2 (CFC-12) 102 年 0.82 CH 3 Br 1.3 年 0.64 CClF 2 H (HCFC-22) 13 年 0.04 CHF 2 -CHF 2 (HFC-134a) 14 年 ~ 0 1 OH と反応するかどうか OH は大気の掃除屋 CFCl 3 + OH 反応しない CClF 2 H + OH H 2 O + CClF 2 2 対流圏で光分解するかどうか 太陽光 λ > 300 nm 300 nm より長波長で光分解するかどうか
典型的な大気混合時間 対流圏界面 (10 km) 接地境界層 5 km 2 km 1 日 1 週間 1 ヶ月 10 年 0 km
1.2 1 太陽光の波長分布 大気の窓 大気の外の太陽光 0.8 光の強度 0.6 0.4 酸素の吸収オゾンの吸収 O2 O3 地上の太陽光 0.2 目で見える 0 100 200 300 400 500 波長 (nm) 生物に有害な光
太陽光の高度別のスペクトル強度
大気の窓と CFC の光吸収 太陽光の波長分布 波長 (nm) CFC の光吸収
Cl ClO ClO Cl (Cl の消費 ) (Cl の再生 )
1 つの塩素原子が 100.000 個のオゾンをこわす 酸素 O2 塩素原子 Cl オゾン O3 サイクル反応 酸素原子 O 一酸化塩素 ClO 酸素 O2
リザーバー分子 リザーバー分子 リザーバー分子
クルッツェン ( 独 ) モリーナ ( 米 ) ローランド ( 米 )
7 大気中全塩素濃度 (ppb) 6 5 4 3 2 1 当初の規制スケジュール 南極オゾンホール出現 1992 年改正スケジュール 1990 年改正スケジュール オゾンホール消滅? 0 1960 2000 2040 2080 年 CFC などオゾン層破壊物質の規制スケジュール ( 現行はモントリオール議定書 1992 年改正スケジュール ) とそれに伴う大気中全塩素濃度の将来予測 (WMO による )
フロン (CFC) および代替フロンの大気中での寿命 化合物 寿命 オゾン破壊係数 (ODP) CFCl 3 (CFC-11) 50 年 1 CF 2 Cl 2 (CFC-12) 102 年 0.82 CH 3 Br 1.3 年 0.64 CClF 2 H (HCFC-22) 13 年 0.04 CHF 2 -CHF 2 (HFC-134a) 14 年 ~ 0 1 OH と反応するかどうか OH は大気の掃除屋 CFCl 3 + OH 反応しない CClF 2 H + OH H 2 O + CClF 2 2 対流圏で光分解するかどうか 太陽光 λ > 300 nm 300 nm より長波長で光分解するかどうか
プロセスに対する理解の必要性 大気への排出前駆体 プロセス 大気中存在量大気組成 特性 / プロセス 気候環境 このプロセスを理解することが重要 化学反応過程 物理化学特性 大気力学過程
大気寿命 τ の重要性 無限の超寿命 消失なし, 回復なし 大気中の濃度 放出停止 長寿命 τ ゆっくりした回復 時間 短寿命 τ 速い回復 大気寿命 τ は大気中の濃度を決めている 大気寿命 τ は大気浄化の速度を決めている ある成分が環境に与える影響はその大気寿命に依存する
成層圏オゾンを観測する
1.2 1 太陽光の波長分布 大気の外の太陽光 0.8 光の強度 0.6 0.4 酸素の吸収オゾンの吸収 O2 O3 地上の太陽光 0.2 目で見える 0 100 200 300 400 500 波長 (nm) 生物に有害な光
地上紫外分光によるオゾンの計測 太陽光 ドブソン分光計による観測 オゾンの光吸収紫外 CO, O 3, VOCs, etc. ドブソン分光計
ドブソン分光計 305.5 nm, 325.4 nm 317.6 nm, 339.8 nm
地上赤外分光によるオゾンの計測 太陽光 フーリエ赤外分光計観測 オゾンの光吸収赤外 CO, O 3, VOCs, etc. 太陽追尾装置 母子里 陸別 北海道 高分解能フーリエ変換型赤外分光器 (FTIR)
太陽追尾装置 母子里観測所フーリエ変換赤外分光計 Bruker IFS120HR 可動鏡 1.5m 移動
赤外地上分光によるオゾンの計測
ドブソンユニット (DU, Dobson Unit) の定義 オゾンの気柱 オゾンを 1 気圧にする = 300 DU
成層圏オゾンを観測する
オゾンゾンデの測定原理 O 3 + 2Br - + H 2 O O 2 + Br 2 + 2OH - 炭素電極 C + 2OH - CO + H 2 O + 2e - 白金電極 Br 2 + 2e - 2Br - 白金電極 A 炭素電極 オゾンを含む大気 KBr 溶液
成層圏オゾンを観測する
ILAS I, II 日本の人工衛星 ( みどり I, II)
成層圏オゾンを観測する
成層圏オゾンを観測する
オゾン層 エアロゾル 空気分子で反射 2 色のレーザー オゾン分子の光吸収のある波長 オゾン分子の光吸収がない波長 光の速さ 1 10 8 m/s 到達時間で高度わかる オゾン分子の光吸収 O3 受光器 受光望遠鏡 データ処理系 200 300 400 波長 (nm)
成層圏オゾンを観測する
南極オゾンホール オゾンゾンデ観測
成層圏の飛行機 (ER-2) 観測
極域では 冬になると著しく気温が低下するため 成層圏であっても雲が発生する この雲を極成層圏雲 (PSC) と呼ぶ
リザーバー分子 リザーバー分子 リザーバー分子
極渦による大気成分の隔離 南極
フロン (CFC) および代替フロンの大気中での寿命 化合物 寿命 オゾン破壊係数 (ODP) CFCl 3 (CFC-11) 50 年 1 CF 2 Cl 2 (CFC-12) 102 年 0.82 CH 3 Br 1.3 年 0.64 CClF 2 H (HCFC-22) 13 年 0.04 CHF 2 -CHF 2 (HFC-134a) 14 年 ~ 0 1 OH と反応するかどうか OH は大気の掃除屋 CFCl 3 + OH 反応しない CClF 2 H + OH H 2 O + CClF 2 2 対流圏で光分解するかどうか 太陽光 λ > 300 nm 300 nm より長波長で光分解するかどうか
代替フロン HCFC:R22(CHClF 2 ) CFC ほど強力ではないが, オゾン層を破壊する能力があり, 温室効果ガスでもある オゾン破壊係数 0.055, 地球温暖化係数 1700 HFC:R134a(CH 2 FCF 3 ) オゾン層を破壊能力がないという意味で 環境配慮型 だが, 強力な温室効果がある オゾン破壊係数 0 地球温暖化係数 1300 京都議定書 温室効果係数 代替フロン (HFC PFC) 六フッ化硫黄 (SF 6 ) は 1995 年に比べて 先進国全体で 5.2% 削減する
オゾン破壊係数 ODP (Ozone Depletion Potential)
成層圏オゾン層の今後の課題 フロンの減少とともに成層圏オゾン層が復活するか 国際的なフロンガスなどの生産 使用 禁止の取り決めの効果 現在がオゾン破壊の最も大きな時期であり これから回復に向かう予測 - 予測どおりに回復するか 気候変動がオゾン層破壊にどのような影響を与えるか 地球温暖化 成層圏の温度の低下をもたらす オゾン破壊反応の不均一反応の活発化の予測
以上は講義 2 章の一部です 2 章成層圏オゾン層の破壊 に興味がある方は連絡をください 連絡先 : matsumi( アットマーク )stelab.nagoya-u.ac.jp ( アットマーク ) のところに @ をいれる