増井利彦 ( 国立環境研究所 ) 資料 地球温暖化シンポジウム COP15 に向けた日本の戦略を考える パネル討論中期目標選択肢の評価と日本の戦略
長期目標
( 参考 )IPCC 第 4 次評価報告書のシナリオ区分 出典 :IPCC 第 4 次評価報告書統合報告書政策決定者向け要約 温室効果ガスの濃度と気温上昇との関係を示す気候感度は,2 ~4.5 の幅をとる可能性が高いとされているが, 本表においては 最良の推計値 である 3 が用いられている CO 2 換算 には, その他ガスの温室効果に加えて, 大気中微粒子 ( エアロゾル ) の冷却効果が含まれる ここで評価された研究では, 炭素循環フィードバックが考慮されておらず, 気温上昇が過小評価の可能性がある http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tikyuu/kaisai/dai07tyuuki/siryou4.pdf 地球温暖化問題に関する懇談会中期目標検討委員会 ( 第 7 回 ) 資料 4(p.10)
様々な温室効果ガス濃度レベルにおける 2020/2050 年排出許容量 (IPCC( AR4 WG3) 産業革命前比 4.5 以上に上昇する確率を最低限に抑えるためには,A-450ppmGHGシナリオを目指す必要がある ここから, 先進国 2020 年までに-25~-40% という排出経路が導かれる 4 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tikyuu/kaisai/dai07tyuuki/siryou5_3b.pdf 出典 :IPCC 第 4 次評価報告書 ( 第 3ワーキング ) 地球温暖化問題に関する懇談会中期目標検討委員会 ( 第 7 回 ) 資料 5-3(p.30)
炭素排出量 [GtCO2] 1.5 1.0 0.5 0.0 日本の炭素排出量 (GtCO2) 1990 2010 2030 2050 省エネ技術の普及により効率改善が進展 2030 年の排出量 ( 単位 :MtCO2) +5% 5% 15% 25% 890 680 530 510 1.5 1.0 0.5 0.0 1990 2010 2030 2050 早期に排出量を減らすケースにおいて 2050 年の排出量も小さくなる 省エネ技術の普及により効率改善が進展すると仮定した場合 2050 年におけるその差はさらに大きくなる 省エネ技術の普及にかかわらず効率改善が進展している状況をいかに実現させるか? BaU 25% 15% 5% +5% 5%* +5%* 注 : * の付いたケースは 普及の程度によって効率改善が進展する場合において 2050 年の排出量が 25% 削減ケースの排出量と同水準となるように 2050 年の炭素価格を上昇させたケースの結果を示す 炭素排出量 [GtCO2] 省エネ技術は普及に関わらず改善 2030 年の排出量 ( 単位 :MtCO2) +5% 5% 15% 25% 890 680 540 520 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tikyuu/kaisai/dai07tyuuki/siryou3_3.pdf 地球温暖化問題に関する懇談会中期目標検討委員会 ( 第 7 回 ) 資料 3-3(p.7)
衡平性
2.(3) 今後の国際交渉への備え 衡平な排出量目標の差異化 国際交渉及び政策研究では 多様な衡平性指標が検討されている 責任 ( 温暖化寄与度, 大気への権利 ) 気温上昇への歴史的貢献 一人当たり排出量 国の絶対排出量, 等 能力 ( 支払能力 ) GDP あるいは一人当たりGDP 人間開発指標 (HDI) ( 注 ) と一人当たり GDPの組合せ, 等 ( 注 ) 人間開発指標 : 人々の生活の質や発展の度合いを示す指標 実効性 ( 削減ポテンシャル ) 生産原単位当たり排出量 GDP 当たり排出量 限界削減費用一定, 等 多様な複合指標 トリプティ ク マルチステージアプローチ 多部門収斂 参考 1/28 付 ECコミュニケーションの4 指標 1 一人当たりGDP( 能力 ) 2 原単位排出量 ( 実効性 ) 3 温室効果ガス排出傾向 (1990~ 2005)( 責任 ) 4 人口動向 (1990~2005)( 責任, 実効性 ) 7 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tikyuu/kaisai/dai07tyuuki/siryou5_3b.pdf 地球温暖化問題に関する懇談会中期目標検討委員会 ( 第 7 回 ) 資料 5-3(p.14)
AIM/Enduse[Global] 2.(3) 今後の国際交渉への備え日本が同じ数値目標でも, 衡平性指標の取り方で, 各国の結果は変わる 3: 各国が日本と同等の削減 : 長期需給見通し 最大導入 ( フロー対策強化 ) 日本の 最大導入ケース (GHG は 7% 減, エネルギー起源 CO2 は 5% 減 ) 相当 と同等レベルの限界削減費用 ( 左図 ) または GDP 当たり対策費用 ( 右図 ) を,Annex I 諸国に設定した場合 限界削減費用均等化 限界削減費用 :187 ドル /tco2 eq GDP あたり対策費用均等化 GDP あたり対策費用 :0.31% 5% 5% GHG 排出量 [1990 年比 %] 0% -5% -10% -15% -20% -25% -30% -35% -40% -5% -2% 日本 -7% 5.5 ガス -21% エネ起 CO2 GHG 米国 -19% -3% -24% -8% EU25-23% ロシア -20% -5% -9% -27% -25% -32% Annex I GHG 排出量 [1990 年比 %] 0% -5% -10% -15% -20% -25% -30% -35% -40% -5% -2% -7% 日本 0% -2% 5.5 ガス -2% エネ起 CO2 GHG 米国 -15% -8% -23% EU25-20% -9% ロシア -28% -10% -5% -15% Annex I パーセントの数値については, 下記のルールに従う. 5.5ガスは (2020 年 5.5ガス 1990 年 5.5ガス ) 1990 年 GHG 総排出量, エネ起 CO2は (2020 年エネ起 CO2 1990 年エネ起 CO2) 1990 年 GHG 総排出量, GHGは (2020 年 GHG 1990 年 GHG) 1990 年 GHG 総排出量, http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tikyuu/kaisai/dai07tyuuki/siryou5_3b.pdf 地球温暖化問題に関する懇談会中期目標検討委員会 ( 第 7 回 ) 資料 5-3(p.16)
実現可能性
太陽光発電 ( 注 ) 次世代自動車 省エネ住宅 累積導入量 ( 削減量 ) 主要な政策メニュー 累積導入量 ( 削減量 ) 主要な政策メニュー 累積導入率 ( 削減量 ) 主要な政策メニュー 主要な対策技術の削減効果と政策強度 対策 0 (+3%) 600 万 kw ( - ) 余剰電力買取メニュー 60 万台 ( 0 万 t) 新築 70% ( 100 万 t) 対策 Ⅰ ( 7%) 1,400 万 kw ( 500 万 t) 固定価格買取制度 ( 補助金を含め投資回収年数 15 年 ) 導入補助金制度 1,210 万台 ( 600 万 t) 低公害車 低燃費車への税制優遇 トップランナー基準 税制優遇制度 新築 80% ( 110 万 t) 次世代省エネ基準 (H11 年基準 ) 対策 Ⅱ( 15%) 3,700 万 kw ( 2,000 万 t) 1,360 万台 ( 1,140 万 t) 新築 100% + 既築改修を年間 50 万戸 ( 250 万 t) 対策 Ⅲ( 25%) 7,900 万 kw ( 4,500 万 t) 固定価格買取制度導入 ( 投資回収年数 10 年 2011 年時点での買取価格を 55 円 /kwh 程度として全量買取 ) 新築住宅及び一定規模以上の既築住宅への導入義務化 2,170 万台 ( 2,130 万 t) 税制優遇 補助金の強化 CO2 排出に応じた重課 軽課など ( 投資回収年数 3 年 ) トップランナー基準の強化販売される新車の加重平均燃費を次世代自動車と同等とする規制の導入 新築 100% + 既築改修を年間 250 万戸 ( 880 万 t) 税制優遇 補助金制度の強化 ( 投資回収年数 10 年 ) 次世代省エネ基準の強化 ( 新次世代基準 ) 新築販売における次世代省エネ基準 (H11 年基準 ) の義務化 省エネ性能に応じた既築住宅への重課 軽課 AIM/Enduse[Japan] 既築住宅における 2020 年までの改修義務化 高効率給湯器 累積導入量 ( 削減量 ) 主要な政策メニュー 900 万台 ( 180 万 t) 補助金制度トップランナー基準 2,800 万台 ( 670 万 t) 3,900 万台 ( 1,200 万 t) 4,400 万台 ( 1,300 万 t) 税制優遇 補助金制度の強化 ( 投資回収年数 3 年 ) トップランナー基準の強化 ( 効率の悪い電気給湯器等の原則廃止 ) 既築住宅における 2020 年までの高効率給湯器導入義務化 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tikyuu/kaisai/dai06tyuuki/siryou2/4_1.pdf 地球温暖化問題に関する懇談会中期目標検討委員会 ( 第 6 回 ) 資料 2-41(p.6)
2.(1) 実現する政策 (2) 供給 需要両面の対策 削減費用 ( 円 /tco2eq) 排出量削減を可能にする政策 社会の仕組み 50,000 トップランナー制度 40,000 の強化全ての部門で世界 30,000 最高水準の効率 20,000 10,000 10,000 20,000 30,000 40,000 対策群 A 削減費用がマイナスで導入する主体に経済的メリットがある対策 対策 0 現在の政策の延長 見える化の徹底的確な選択を促進する情報開示 対策群 B 削減費用が一定のレベル以下に留まる対策 対策 I トップランナー制度の強化など現状の政策の強化 技術開発 普及のための制度構築と支援戦略的な技術の開発 普及のための制度構築と支援 投資回収年数 3 年 ( 一部 10 年 ) を可能にする支援などの誘導的政策と制度構築の 0 30,000 60,000 90,000 120,000 150,000 180,000 210,000 240,000 270,000 300,000 実施 対策 II 炭素への価格付け削減努力が経済的に報われる仕組み ( 国際競争への配慮は必要 ) 対策群 C 削減費用が高く相応の費用負担が必要な対策 対策 III AIM/Enduse[Japan] 一定の省エネレベルを満たす機器 設備が販売可能となるなどの義務づけを行う政策の追加 GHG 削減量 (ktco2eq) http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tikyuu/kaisai/dai06tyuuki/siryou2/4_1.pdf 地球温暖化問題に関する懇談会中期目標検討委員会 ( 第 6 回 ) 資料 2-41(p.5)
費用 ( 兆円 ) 250 200 150 100 50 0 50 100 投資費用は省エネ節約分によって大幅に低減 直接費用 = 温暖化対策のための投資総額 ex. ハイブリッド車の価格 24 76 116 2010 年から 2020 年までの費用の総額 ( 兆円 ) 242 追加費用 = 対策技術と従来技術の差の総額 ex. ハイブリッド車の価格と現状の在来自動車の価格の差 183 75 45 19 17 30 40 53 追加費用 -エネルギー費用削減 130 3 15 35 対策 0 対策 Ⅰ 対策 Ⅱ 対策 Ⅲ 対策 0 対策 Ⅰ 対策 Ⅱ 対策 Ⅲ 対策 0 対策 Ⅰ 対策 Ⅱ 対策 Ⅲ エネ庁最大導入 52 兆円に相当 エネルギー費用削減 = 省エネ対策に伴い削減できたエネルギー支出の総和 AIM/Enduse[Japan] エネルギー節約分によって大幅に低下 2020 年までの省エネ投資 直接費用追加費用 & エネ費用削減追加費用 - エネ費用削減 2020 年までの省エネ投資の効果は 2020 年以降も発揮される 省エネ技術による削減量 寿命 10 年の機器の場合 2020 年以降の節約分を入れるとさらに低下 2010 2015 2020 省エネ投資によるエネルギー削減費用 = 約 40 兆円 ( 対策 Ⅱ,2020 年までの累積 ) 2025 2030 寿命の長いものほど効果が長い ( 住宅の 2020 年までの投資による2020 年以降のエネルギー削減費用 = 左と同程度高断熱化など ) http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tikyuu/kaisai/dai06tyuuki/siryou2/4_1.pdf 地球温暖化問題に関する懇談会中期目標検討委員会 ( 第 6 回 ) 資料 2-41(p.11)
GDP への影響 AIM/CGE[Japan] お問合せ :report@tky.ieej.or.jp 応用一般均衡モデル (AIM/CGE[Japan]) を用いた経済活動への影響の試算 対策 Ⅰ 及び対策 ⅡケースにおけるGDPへの影響はほとんど見られない 対策 Ⅲケースでも 年率 1.1% の経済成長は確保できる 800 +25% 700 600 500 400 年率 300 1.5% 対策 0:GHG1990 年比 +3%( エネ 200 庁努力継続並み ) 100 対策 Ⅰ:-7%( エネ庁最大導入並 0 み ) 対策 Ⅱ:-15%( 仮分析結果より ) 対策 Ⅲ:-25%( IPCCの最も厳しいシナリオから ) GDP[2000 年価格兆円 ] 2000 年 2005 年 2020 年 対策 0 対策 Ⅰ 対策 Ⅱ 対策 Ⅲ 実質 GDP(2000 年価格兆円 ) 521.9 559.7 697.2 693.9 691.7 655.4 2020 年対策 0 の実質 GDP との差 (%) - - - -0.5% -0.8% -6.0% 2005 年実質 GDP を 100 とした場合の各ケースの GDP +24% 年率 1.4% +24% 対策 0 対策 Ⅰ 対策 Ⅱ 対策 Ⅲ 2000 年 2005 年 2020 年 年率 1.4% +17% 年率 1.1% - 100 125 124 124 117 CO2 価格 (2000 年価格円 /tco2) - - - 10,099 28,430 61,029 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tikyuu/kaisai/dai06tyuuki/siryou2/5_1.pdf 対策 Ⅲは 設定する将来の経済成長率を低く設定していることに注意 地球温暖化問題に関する懇談会中期目標検討委員会 ( 第 6 回 ) 資料 2-51(p.4)