自治体防災担当者による “現場からの提言”(第6回) | 自治体防災担当者による “現場からの提言” | TOA株式会社

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宮城県総合防災情報システム(MIDORI)

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ことを呼びかけます Q4. ミサイルが落下する可能性がある との情報伝達があった場合は どうすれば良いのでしょうか A4. 屋外にいる場合 近くの建物 ( できれば頑丈な建物 ) の中又は地下に避難してください 近くに適当な建物等がない場合は 物陰に身を隠すか地面に伏せ頭部を守ってください 屋内にい

U2. 北朝鮮のミサイルについて Q3. 北朝鮮によるミサイル発射の現状はどうなっているのか 北朝鮮は 過去に例を見ない頻度でミサイルを発射しており 平成 28 年 8 月以降 ミサイルが日本の排他的経済水域 (EEZ) 内に落下する事例も起こっています Q4. ミサイルは 発射から何分位で日本に飛

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奈良県ライフライン 情報共有発信マニュアル 第 3.3 版 平成 24 年 7 月 奈良県ライフライン防災対策連絡会

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大谷周辺地区 及び 役場周辺地区 地区計画について 木原市街地 国道 125 号バイパス 役場周辺地区 (43.7ha) 美駒市街地 大谷周辺地区 (11.8ha) 地区計画の概要 地区計画とは住民の身近な生活空間である地区や街区を対象とする都市計画で, 道路や公園などの公共施設の配置や, 建築物の

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本町二・四・五・六丁目地区の地区計画に関する意見交換会

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病院等における耐震診断 耐震整備の補助事業 (1) 医療施設運営費等 ( 医療施設耐震化促進事業平成 30 年度予算 13,067 千円 ) 医療施設耐震化促進事業 ( 平成 18 年度 ~) 医療施設の耐震化を促進するため 救命救急センター 病院群輪番制病院 小児救急医療拠点病院等の救急医療等を担

中国トラック協会 公益社団法人広島県トラック協会 会 長 小丸 成洋 ご挨拶 このたび 第21回全国トラック運送事業者大会 が中国ブロックの担当により 来る10月6 日の木曜日に鳥取県米子市で開催されることとなりました 本事業者大会を中国ブロックが担当するのは 今回が3回目になりますが 20年もの長

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Q4. ミサイルは発射から何分位で日本に飛んでくるのでしょうか A4. 北朝鮮から弾道ミサイルが発射され 日本に飛来する場合 極めて短時間で日本に飛来することが予想されます 例えば 本年 2 月 7 日に北朝鮮西岸の東倉里 ( トンチャンリ ) 付近から発射された弾道ミサイルは 約 10 分後に 発

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対応すべき行動_0921

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【東日本大震災発生から8年】「災害への備えに関するアンケート」結果_損保ジャパン日本興亜

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その時点で改めて ミサイルが落下する可能性がある旨を伝達し 直ちに避難することを呼びかけます Q4. ミサイルが落下する可能性がある との情報伝達があった場合は どうすれば良いのでしょうか A4. 屋外にいる場合 近くの建物 ( できれば頑丈な建物 ) の中又は地下に避難してください 近くに適当な建

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「dカーシェア」、“カーシェア時代におけるクルマの使い方”意識調査を実施

また, 区域外の道路部分については, 区域内の道路の整備後に, 交通量等の利用状況をみて, 検討していきます 4 常磐自動車道の側道沿いの一方通行の道路について, 一方通行の制限を解除できないのか また, この道路の交通量についても調査を実施した上で, 区域外の道路の整備をしなければならないのではな

アンケート調査の概要 目的東南海 南海地震発生時の業務継続について 四国内の各市町村における取り組み状況や課題等を把握し 今後の地域防災力の強化に資することを目的としてアンケート調査を実施 実施時期平成 21 年 11 月 回答数 徳島県 24 市町村 香川県 17 市町 愛媛県 20 市町 高知県

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津波警報等の留意事項津波警報等の利用にあたっては 以下の点に留意する必要があります 沿岸に近い海域で大きな地震が発生した場合 津波警報等の発表が津波の襲来に間に合わない場合があります 沿岸部で大きな揺れを感じた場合は 津波警報等の発表を待たず 直ちに避難行動を起こす必要があります 津波警報等は 最新

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-災害に備えて-

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国土技術政策総合研究所 研究資料

基調講演

38 災害緊急時における聴覚障害者の情報伝達保障支援の状況分析 表2 生の協力のおかげで遂行することができた 避難訓練の年間実施回数 回 回 2回 3回 4回 5回以上 4 6 35 9 図 避難所担当者との連携 図2 避難訓練の年間実施回数 Ⅳ 調査研究の経過および結果 なかでも年2 3回実施して

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図 1 平成 19 年首都圏地価分布 出所 ) 東急不動産株式会社作成 1963 年以来 毎年定期的に 1 月現在の地価調査を同社が行い その結果をまとめているもの 2

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平成19年度・地球工学研究所の知的財産に関する報告会 - 資料集

第8章 災害復旧計画

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住民アンケート調査結果 調査概要 平成 29 年 8 月 29 日 ( 火 ) 及び9 月 15 日 ( 金 ) の北朝鮮による我が国の上空を通過する弾道ミサイルの発射に際しては 全国瞬時警報システム (J アラート ) を使用して 国民の皆様に情報提供したところです 今回 今後の国民保護施策の参考

試行の概要 試行の目的石狩川滝川地区水害タイムライン ( 試行用完成版 ) を試行的に運用することにより 対応行動や実施手順を確認するとともに 運用結果を検証し 同タイムラインを精査することを目的とする 試行の概要 実施時期 : 平成 29 年出水期 (8 月 ~10 月ごろ ) 実施場所 : 各主

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浸水深 自宅の状況による避難基準 河川沿いの家屋平屋建て 2 階建て以上 浸水深 3m 以上 緊急避難場所, 近隣の安全な建物へ水平避難 浸水深 50 cm ~3m 緊急避難場所, 近隣の安全な建物へ水平避難上階に垂直避難 浸水深 50 cm未満 緊急避難場所, 近隣の安全な建物へ水平避難 自宅に待

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(4) 対象区域 基本方針の対象区域は市街化調整区域全体とし 都市計画マスタープランにおいて田園都市ゾーン及び公園 緑地ゾーンとして位置付けられている区域を基本とします 対象区域図 市街化調整区域 2 資料 : 八潮市都市計画マスタープラン 土地利用方針図

~ 二次的な被害を防止する ~ 第 6 節 1 図 御嶽山における降灰後の土石流に関するシミュレーション計算結果 平成 26 年 9 月の御嶽山噴火後 土砂災害防止法に基づく緊急調査が国土交通省により実施され 降灰後の土石流に関するシミュレーション結果が公表された これにより関係市町村は

1 調査の目的 マイナンバーカード に関するアンケート 区政運営 区政会議 に関するアンケート 区の広聴事業 に関するアンケート 防災 に関するアンケート 防犯 に関するアンケート区民の皆さんに マイナンバーカード取得に関する事や 区政会議 広聴事業の取り組み 住之江区の防災 防犯についてお伺いし

問 2. 現在 該当区域内に居住していますか 1. 居住している % 2. 居住していない % 無回答 % % 単位 : 人 1.9% 32.7% 65.4% 1. 居住している 2. 居住していない無回答 回答者のうち 居住者が約 65

によれば 旧耐震基準に基づき建設されている建物のうち 大規模な地震が発生した 場合にその利用を確保することが公益上必要な建物の所有者は 当該建物について 耐震診断を行い その結果を都道府県知事等へ報告しなければならないとされており 耐震性の向上を図る必要があると認められるときは 耐震改修を行うよう努

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Q4. ミサイルは発射から何分位で日本に飛んでくるのでしょうか A4. 北朝鮮から弾道ミサイルが発射され 日本に飛来する場合 極めて短時間で日本に飛来することが予想されます 例えば 平成 28 年 2 月 7 日に北朝鮮西岸の東倉里 ( トンチャンリ ) 付近から 発射された弾道ミサイルは 約 10

試行の概要 試行の目的石狩川滝川地区水害タイムライン ( 試行用完成版 ) を試行的に運用することにより 対応行動や実施手順を確認するとともに 運用結果を検証し 同タイムラインを精査することを目的とする 試行の概要 実施時期 : 平成 30 年出水期 (8 月 ~10 月ごろ ) 実施場所 : 各主

目次 はじめに P3 1 災害 緊急の範囲 P3 2 時間と場所を考慮した対応の必要性 P3 3 時間ごとの対応 P4 4 場所ごとの対応 P5 5 デジタルサイネージの提供コンテンツ P6 6 緊急時を意識したデジタルサイネージシステム P6 7 情報の切替 復帰の条件 P7 8 緊急運用体制 P

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その一方で 防災行政無線の聞き取り状況の調 査では 図 3に示すように20% の人が放送内容を聞き取れなかったと答えており 今後の改善 もしくは代替え手段の充実の必要性を示唆している なお 情報の入手先としてテレビの割合が低いのは地震による停電 ( 岩手県 宮城県では95% 以上が停電 ) が原因と

(2) 地震発生時の状況地震発生時の運転状況ですが 現在 20 清掃工場で40 炉が稼動していますが 地震発生当日は32 炉が稼動しており 8 炉は定期補修や中間点検のため停止していました 地震後は設備的な故障で停止したのが2 炉ありまして 32 炉稼動していたうち2 炉が停止したというのが地震発生

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当面の事業概要 < 平成 25 年度 > 実施設計業務委託 < 平成 26 年度 > 市道 1504 号線電線共同溝整備工事 道路改築工事 < 平成 27 年度 > 市道 1504 号線電線共同溝整備工事 市道 1504,1505,1507 号線道路改築工事 < 平成 28 年度 > 市道 1504

活動状況調査

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どんなところを注意したらいいの? まず 建物の見分け方から始めましょう 中古住宅を購入するときは何年に建てられたかを確認してください 昭和 56 年に建築基準法が改正され 耐震基準が厳しくなりました これより古いものを旧耐震基準 新しいものを新耐震基準と呼んでいるんだよ じゃあ 昭和 56 年築 よ

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1.WEB アンケート調査の概要 まとめ 2. 集計結果 ( 抜粋 ) p.10- p.2-1

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3 参加しやすい工夫 ( 効果的な周知や会議運営 ( 開催時間 委員の構成等 ) の工夫 ) 4 名柳田委員 猪瀬委員 庄司委員 小橋委員 2 名関口副会長 高柴委員 1 名櫻井委員 関口副会長 パブリックの後の説明会 意見交換会の開催検討の方向性は 担当課の工夫がある 高柴委員 このバスを望んでい

筑豊広域都市計画用途地域の変更 ( 鞍手町決定 ) 都市計画用途地域を次のように変更する 種類 第一種低層住居専用地域 第二種低層住居専用地域 第一種中高層住居専用地域第二種中高層住居専用地域 面積 約 45ha 約 29ha 建築物の容積率 8/10 以下 8/10 以下 建築物の建蔽率 5/10

平成27年基準年度固定資産税標準 宅地の鑑定評価でのバランス検討体制等に関する説明会資料

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図 1 津波 AR アプリ起動画面 図 2 パノラマ画像を用いた AR アプリ ( 志津川 ) 図 3 津波 AR アプリ QR コード 図 4 パノラマ画像を用いたアプリ QR コードと位置情報コード

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( 参考資料 ) 緊急速報メールを活用した 洪水情報のプッシュ型配信 国土交通省四国地方整備局松山河川国道事務所平成 29 年 3 月

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あおぞら彩時記 2017 第 5 号今号の話題 トリオ : 地方勤務の先輩記者からの質問です 気象庁は今年度 (H 29 年度 )7 月 4 日から これまで発表していた土砂災害警戒判定メッシュ情報に加え 浸水害や洪水害の危険度の高まりが一目で分かる 危険度分布 の提供を開始したというのは本当ですか

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資料 4 平成 29 年 1 月 27 日記者会見 土地区画整理事業に関する土地利活用意向調査の実施結果について 復興推進本部都市整備推進室 1 土地利活用意向調査の目的 市内 4 地区の土地区画整理事業は 平成 29 年度末を目標に全ての宅地引渡しが完了できるよう鋭意工事を進めております 地権者へ

(第14回協議会100630)

【東日本大震災発生から7年】「災害への備えに関する調査」結果 ~あなたのご家庭の備えを点検しませんか~_損保ジャパン日本興亜

Transcription:

ソリューション 納入事例 特集自治体防災担当者による 現場からの提言 ( 第 6 回 ) 第 6 回目は 2013 年 ( 平成 25 年 ) に防災行政無線のデジタル化整備事業を担当され 現在は多様な手段で災害情報の伝達に力を入れておられる鳥取県日吉津村の総務課課長補佐仲原章二氏にお話をうかがいました スペシャルインタビュー すべての住民へ迅速かつ正確な情報伝達こそが防災の基本 住民が災害情報収集に対して動線を確保できる仕組みを目指す 日吉津村役場総務課課長補佐仲原章二 ( なかはらしょうじ ) 氏 仲原さんの日吉津村役場での経歴を教えてください 私は生まれも育ちも日吉津村です 学校を卒業後 民間企業で自動車学校の指導員や路線バスの運転手 弱電関係の企業に勤めていました 日吉津村役場には中途採用での入庁になります 最初の配属は総務課で 公用車や村のマイクロバスの運転業務を11 年ほど担当しました その後 建設産業課に異動し 下水道とか道路工事の各種申請業務や工事契約の手続き 下水道使用料の賦課 徴収などを行っていました 建設産業課の思い出は うなばら荘 の前の旧淀江町 ( 現在の米子市淀江町 ) につながる村道温泉線の橋の架け替え工事を手掛けたことです 日吉津村と淀江町の境界部分ですが 米子市との間でも長年の懸案事項となっていました といいますのも 排水路を挟んでジェットコースターのように道路が急勾配で下っており 川を挟んだ橋の両サイドの幅員は広いのですが 橋の間は幅員が狭く 車がすれ違うこともできず いつ事故が起きてもおかしくない状況でした ちょうど私が担当のときに話がうまく進められまして 下がっているところを嵩上げして平地にし 狭かった橋の幅員を広くして通行しやすくしました 現在では真っ平なしっかりした道路に生まれ変わり 米子市内に抜ける国道 431 号線の裏道としてよく利用されています 結果として村民の皆さんだけでなく 米子市民の方なども生活で利用していただける事業になったと思います 建設産業課には7 年間在席し 平成 23 年 7 月に総務課の防災担当に異動になり 現在に至っています 防災担当になってから丸 4 年が経ちました 当初は防災の知識もまったくなく また 1

東日本大震災が発生してまだ数カ月の頃だったので大変でした 鳥取県からの要請で義援金や救援物資の協力を行ったり 職員を派遣するなどの協力を行いました 鳥取県は宮城県の支援を行うことになっていましたので 職員は南三陸町に派遣されました 日吉津村は 15 年前にマグニチュード7.3の鳥取県西部地震が発生し 本村でも震度 6 弱を記録しましたが 幸いにも大きな被害はありませんでした それ以外はとくに大きな災害は記録されていません ただ災害となると総務課が中心となって各課から職員を招集して災害対策パトロールや見回りをします そういう意味で防災の意識は多少ありましたが 実際の担当業務についての知識はまったくありませんでした 仲原さんが取り組まれた防災行政無線のデジタル化整備事業のことを教えてください 私が防災担当になった時には 昭和 59 年ごろに整備されたアナログ式の防災行政無線を使用していました しかしながら 音声による情報伝達のみで すべての日吉津村民に対して情報を万遍なく伝達することはできていませんでした また 土地区画整理事業によって宅地開発できる場所 ( 住宅 ) が増えた関係で 従来のトランペット型の屋外拡声器では届かない場所ができてしまいました 村長から日吉津村のどこにいても情報が伝達できるようにという指示があり そのことを重点として工事に着手することになりました デジタル化と一言でいえば簡単そうに聞こえますが 電波は目には見えない世界ですし もともと知識もありません やりたいことはあっても 当初はできるかどうか全然イメージが湧きませんでした まず 今までの防災行政無線の保守を依頼している業者に相談しました 少しずつ知識を増やしては相談しての繰り返しといった感じでした その過程の中でデジタル化の全体像のイメージを創っていくのが難しかったですね それから 事業にかけられる予算には限度がありますので あれもこれも欲張ると収拾がつかなくなります 東日本大震災以降 想定外 の事態を招くことは許されませんが あまりそこに拘ると際限がなくなってしまいます 住民に これは必要! これは便利! と納得してもらう 理解してもらうために 防災行政無線が聞こえない場所もカバーする 聴覚障がい者の方にも防災行政無線の内容を伝達したいということで 道路事業で経験した感覚に近いですが 住民が災害情報収集に対して動線を確保できる最適な組み合わせを考えるように努力しました 結果的に 防災行政無線の中心となる親局のデジタル化を行い さらに災害時などで親局が故障したときのバックアップ用に可搬式の非常用親局制御装置の導入 ( 当時全国 3 例目 ) を中国総合通信局と協議し 設置しました さらに平坦地で南北に長いという地形の特性を考慮し 従来型トランペットスピーカーの2 倍 3 倍音達距離が長いホーンアレイスピーカー 2

を役場屋上から南向けに 小学校屋上から北向きに設置し 南北エリアにはこの 2 基でカバーし 残りの東西エリアの音達不足エリアは従来型トランペットスピーカーで補い 村内全域の屋外で防災行政無線の音声を聞くことを可能にしました 全方位に放送できる長距離スピーカーのみでカバーすることは村の面積的に可能でしたが もしその1 箇所のスピーカーが故障したらと考えるとリスキーだと感じ 指向性がとれるスピーカーの屋外鳴動デモンストレーションで音達効果を確認しながら 複数配置で検討しました また 屋外放送だけでなく屋内にいる住民にも防災行政無線の情報を届けるために 戸別受信機を全戸に配布しています そのほか 村が定めた一定の基準を満たす事業所 公共施設 不特定多数の人が集まる施設 にも戸別受信機の貸し出しを行っています さらに 聴覚障がい者 ( 障害者手帳 6 級以上 ) の方には 専用の戸別受信機と文字表示機をセットで貸し出すことにより 文字による情報 収集を可能にしましたし 放送を受信したことがわかるように 腕時計式のバイブレーター の貸し出しも行っています 日吉津海岸では 津波災害や近年何度か発生した水難事故に対 応するために 緊急の場合には役場へ直接連絡が取れるよう屋外拡声子局に送信機も設置 しました また 海岸や沖合におられる人に対して情報提供ができるように LEDの屋外文 字表示機を設置し 音声と文字で情報発信ができるようにもしました とにかくいくら計算してみたところで どのような災害が起こるかわからないので リスク ヘッジで最悪の場合でもどれか 1 つの手段で情報伝達したいと考えました イメージの全体 像構築に 2 3 カ月かかりましたが 年度初めに検討を始め 確か 7 月くらいに発注の準備を し 単年度事業で実施することができました 財源に関しては緊急防災減災事業債を活用し ました 日吉津村の取り組みが比較的他の自治体よりも早かったこともあり なかなか防災 行政無線整備の補助金についての情報が見つかりませんでしたが 県に相談したところ事 業債の存在を教えていただいて 使わせていただきました 仲原さんは情報発信も積極的ですね 今回の防災行政無線のデジタル化は大規模だったので 住民の方に積極的に周知したいと考えて 日吉津村のホームページで紹介しています 今回の事業が日吉津村の1 年間の予算に占める割合が大きかったこともあります すべて税金を使っての事業なので 慣れてしまえば何とも思われないかもしれませんが 住民の方に新しくて便利な情報伝達手段を導入したことを理解してもらうために 言葉だけでなく写真を載せたり 以前の防災用行政無線との違いを図で紹介しています やはり住民に今回の整備を認知していただいて初めて 今 3

回の事業が意味あるものになると思います また 今回の防災用行政無線のデジタル化を検討する際に 自分でもインターネットで他の自治体やメーカーの事例などを調べてみたのですが あまり参考になる情報を見つけることができませんでした 同じ行政のネットワークでお互いに情報提供しあって 自分の自治体の地理や気候の条件にあったものだけを選択できるような協力ができたらとも考えました このような自治体間の共助の取り組みがないと 1つの自治体では財政的にも厳しく 新しいことに取り組むのは難しい環境です ぜひ参考にしていただけたらと思います 4 画像 : 日吉津村役場 Web サイト

仲原さんのモチベーション維持の秘訣は? 特別意識はしていないのですが 今回のデジタル化にあたっては住民が一人でも多く助かるようにとの思いがありました 私としては今までの防災行政無線では聴覚障がい者には意味をなさなかったので あわせて文字表示機も導入しました できるだけ多くの人の役に立てればと思っています 今回の防災行政無線の事業もそうですが 村道温泉線も日吉津村民だけでなく近隣市町のみなさんのメリットになるように みなさんに喜ばれるように 使ってもらえるようにという思いを持ち続けています それがモチベーションになっていますね 全国の防災担当者の方へのメッセージをお願いします 行政規模や地形が異なれば 同じ防災担当といっても やるべきことをどこまでやっていいのかというのはそれぞれだと思います 防災対策はゴールがないとは思うのですが 私の経験としてはあまり隣の市や町がここまでやっているとかを気にせずに 日吉津村の約 3,400 人の人口に見合う対策を考えてきました 現在の日吉津村にとって必要な対策 地形や障がい者の方のことも考えて できることを最低限のところで構築していけばいいと思います それ以外のことは 近隣の自治体との広域連携等で進めていければと思っています 想定外はダメ ということも言われていますが それを頭の片隅に置きながら 現実的に考えられる災害で必要な対策のラインを見定め 予算を要求したり事業を進めていけばいいのではないでしょうか 他の自治体をあまり意識せずに 自分の自治体の特性にあわせた防災対策の構築を割り切って考えていったらいいと思います 日吉津村の防災は防潮堤などのものを作るというよりも 住民に早く正確な情報を伝達する というのが基本的な考え方で 防災行政無線のデジタル化に集約していきました まだ移動系の防災用行政無線の課題は残っていますが 同報系のデジタル化は完了しましたので 後はこれに合わせて地域防災計画を修正した上で 災害ごとの避難方法 避難経路などを住民に周知し 行政は正確かつ迅速に情報を伝達していきたいと思っています すべての住民がそれを聞いて時間に余裕をもって避難してもらえるようにしていきたいと考えています 5

日吉津村の概要と想定される自然災害 鳥取県日吉津村の概要 日吉津村は鳥取県の西北端部に位置する 人口約 3,400 人の鳥取県で唯一の村です 北は日本海に面し その他の周囲を米子市に囲まれています 東は西日本一を誇る国立公園大山の雄姿を望み 西は鳥取県三大河川の日野川が流れる気候温和な平坦地です 日吉津村は大字日吉津 富吉 今吉の 3 集落からなっています 古くは稗の生えた海岸の沼地であったので稗津 ( ひえづ ) と呼ばれていましたが 1571 年以後に日吉津に改められ現在に至っています おもな産業としては農業が盛んで 日吉津村の全面積の約 38% が耕作地です おもに米や白ねぎなどの野菜類 チューリップの球根をはじめ花き類などの栽培が盛んに行われています 過去の鳥取県西部地震の経験を活かし 災害発生時の情報伝達手段を見直し 日吉津村では 過去には平成 12 年 10 月に鳥取県西部を震源とするM7.3の鳥取県西部地震が発生しました 鳥取県西部は地震空白域とされていますが 未確認の地下断層の活動による地震であったといわれています 日吉津村でも震度 6 弱が観測され かなりの揺れがあったものの 目立った被害は発生しませんでした 日吉津村は 地震や台風などの自然災害による甚大な被害を受けたことはほとんどありません 台風やゲリラ豪雨などで降水量が多くなっても 農作物の水没程度で民家への浸水などの被害には至っていません しかしながら 住民への迅速かつ正確な情報伝達こそが防災の基本 という日吉津村の考えにより 防災行政無線のデジタル化事業を実施 さらに戸別受信機や文字表示板などの導入 非常用親局の整備により 有事の際には多様な手段による確実な情報伝達が可能になっています 6