1 BCM BCM BCM BCM BCM BCMS
わが国では BCP と BCM BCM と BCMS を混同している人を多く 見受けます 専門家のなかにもそうした傾向があるので BCMS を正 しく理解するためにも 用語の理解はきちんとしておきましょう 1-1 用語を組織内で明確にしておかないと BCMS や BCM を組織内に普及啓発していく際に齟齬をきたすことがあります そこで 2012 年に公表された国際規格 (ISO 22301) における定義を使いこれを明確にしておきます その定義の主なものを下記に解説します business continuity 事業継続とは 組織の経営資源の破壊 混乱 中断などを引き起こすインシデント ( 事態 ) が発生したあとで 自組織が許容できる製品やサービスの提供レベルを予め検討 決定し そのレベルで組織が ことを言います つまり どのような巨大災害に遭遇しても その直後から業務を休みなく続けることがもっとも厳しい 事業継続 と言えましょう BCM business continuity management BCM とは 組織が直面する可能性のある脅威やその脅威が現実に発 生した場合に組織の事業活動に与える のことを言います このプロセスは ただ脅威やインパクトを特定するだけでなく 重要なステークホルダの利益 組織の評判 ブランドおよび企業価値を保護するために有効に対応できる組織のレジリエンスを構築する枠組みを作り上げることができるものとされています 10 第 1 章 BCM から BCMS への展開
レジリエンスとは 複雑で変化に富む環境のなかで組織が適応できることを言いますが 経営資源を破壊 混乱 中断させるようなリスクを組織がうまく管理できる能力と言い換えてもいいでしょう (ISO Guide73 による ) 以下 この事業継続マネジメントのことを BCM と呼びます BCMS business continuity management system BCMS とは 全社的なマネジメントシステムの一部として 事業継 続を確立 実践 運用し モニタリングやレビューを行い 維持 改善する であるとされています この事業継続マネジメントシステムには 組織の構造 方針 計画策定活動 責任 手続き プロセス 経営資源が含まれます 以下 この事業継続マネジメントシステムのことを BCMS と呼びます BCP business continuity plan BCP とは 組織の対応 復旧 再開 および事業中断後あらかじめ決めた業務活動のレベルに復旧させるための のことを指しています この文書には 重要な業務機能の継続を確かなものにするのに必要な経営資源 サービスおよび活動が記載されるのが一般的 です BCM BCMS BCP の集合関係を簡単に図示すると のようになります つまり BCP という文書は BCM の一部であり BCM は BCMS という組織の仕組みに関するマネジメントの一部なのです 2005 年以降 中央官庁から次々に BCP BCM BCMS 1 1 用語の定義 11
BCP( 事業継続計画 ) に関する策定ガイドラインが公表されましたが その指針のなかには BCP の策定プロセスのすべてを BCP と称しているものがあります 本書では BCP は BCM というマネジメントプロセスから生み出される手続き文書とします 以下 この事業継続計画のことを BCP と呼びます この他 後述する ISO の BCMS の規格は リスクマネジメントの考え方が導入されています 本書の3 4 節に述べるリスクマネジメントについても 国際規格での定義を知っておきましょう risk management リスクマネジメントとは のことをいいます ここでいうリスクは 一般の社会で言われているものより範囲が広く と定義されています 損失も利益も含め未来の 不確かさ こそがリスクの本質というわけです この定義は 旧来のリスクの概念とは顕著な相違点です もう一つ注意すべきことがあります 事業継続マネジメント は マネジメントプロセスと定義されるように であるのに対し 同じ マネジメント が最後につく リスクマネジメント は であるという点です プロセス と 活動 は 似たような言葉ではありますが 前者は定型的でかつ順序が重視されるものあるのに対し 後者はもう少し上位の概念の行為を指しているととらえることができます どちらかというと 後者は一般に用いられるマネジメントの概念に近いものでしょう 逆に 事業継続マネジメント が プロセス であるという定義は 一般的な語感とはやや異なっているというべきかもしれません 12 第 1 章 BCM から BCMS への展開
1-2 BCM わが国では 中央官庁の BCP の策定 指針が公表されて以来 企業の BCP 策 定の取り組みが大変進みました 回答 0.2% 東日本大震災後にインターリスク総研未策定 31.3% が公表した 第五回事業継続マネジメント (BCM) に関する日本企業の実態調策定中査報告書 (2011.12) によると 38.1% のように一部上場企業の BCP 策定率は30.3% 計画中および策定中を含め ると 68.4% に達しています 法令等の強制でない計画策定において 6 割を超えるのは驚異的なことです 行政指導等で強要または半ば強要されている業界では更に策定率が上がっています たとえば 金融庁から BCP の策定が求められている金融業界では BCP 策定率が100% となっています BCM BCP を策定する企業が増えているのは大変喜ばしいことですが BCM には実行すべき重要な要素があります 英国の BCM 規格である BS 25999のパート 1 事業継続マネジメントの実践基準:2006 では 次の 5 つの要素を含む BCM サイクルを明示しています 1 2 BCM ではなぜ駄目なのか 13
このステップでは 組織にとって重要な製品 サービスを見極め その提供のために必要な活動および経営資源を見極め 優先順位をつけることを行います また 事業活動ならびにその依存関係に対する脅威の評価を行います BCM BCM このステップでは インシデント発生後に事業活動を再開するための適切な対策を整備します BCM このステップでは 対策がどのような状況下でも有効であることを確認します BCP だけを策定していると この 5 つの要素のうち BCM 文化の構 築等と訓練 維持 レビューを忘れてしまいがちです 実際 BCM に 関する教育の実施について先の調査結果を見ると のようにお よそ 4 分の 3 の企業が実施してい ないと回答しています 未実施 69.4% 特徴的なのは BCP の 配布 実施配布その他 回答 13.2% 14.1% 2.5% 3.9% のみ という回答が約 14% もある点です つまり 策定した BCP を従業員に配布するだけですましているというわけです 訓練についても に示すように 約 3 分の 2 の企業で実施 0% 50% 100% されていません 14 第 1 章 BCM から BCMS への展開