原発被災自治体の今後の財政と町民町税等の負担 伊藤久雄 ( 認定 NPO 法人まちぽっと理事 ) 東日本大震から はや 8 年 執拗な国や福島県の帰還政策のもとでも 容易に帰還はすすまない 帰還政策の帰趨は 帰還した人々 帰還しなかった ( できなかった ) 人びとの生活基盤と それぞれの市町村財政

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( 例 2) 特定被災区域にある住家と区域外にある住家を行き来して生活しており 特定被災区域の家が被災したが 住民票は区域外にある場合 公共料金の支払等により生活実態が確認されれば対象として差し支えない ( 例 3) 学生で特定被災区域外に居住している ( 区域外に住民票 ) が 特例により 特定被

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る 1 減価補償金を交付すべきこととなる被災市街地復興土地区画整理事業において 公共施設の整備改善事業の用に供するために土地等が地方公共団体等に買い取られる場合 2 第二種市街地再開発事業の用に供するために土地等が地方公共団体等に買い取られる場合 (3) 特定住宅被災市町村の区域内にある土地等が 国

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特別障害者一人につき 75 万円を所得から控除することができます 障害者控除は 扶養控除の適用がない16 歳未満の扶養親族を有する場合においても適用されます ⑶ 心身障害者扶養共済掛金の控除 P128 条例の規定により地方公共団体が実施するいわゆる心身障害者扶養共済制度による契約で一定の要件を備えて

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土地建物等の譲渡損失は 同じ年の他の土地建物等の譲渡益から差し引くことができます 差し引き後に残った譲渡益については 下記の < 計算式 2> の計算を行います なお 譲渡益から引ききれずに残ってしまった譲渡損失は 原則として 土地建物等の譲渡所得以外のその年の所得から差し引くこと ( 損益通算 )

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平成29年 住宅リフォーム税制の手引き 本編_概要

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[2] 株式の場合 (1) 発行会社以外に譲渡した場合株式の譲渡による譲渡所得は 上記の 不動産の場合 と同様に 譲渡収入から取得費および譲渡費用を控除した金額とされます (2) 発行会社に譲渡した場合株式を発行会社に譲渡した場合は 一定の場合を除いて 売却価格を 資本金等の払戻し と 留保利益の分

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第2回税制調査会 総2-2

市税のしおり2016表紙再3

スライド 1

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「公的年金からの特別徴収《Q&A

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(2) 被災代替住宅用地の特例について 特例の概要 被災住宅用地の所有者等が当該被災住宅用地の代替土地を平成 33 年 3 月 31 日までの間に取得した場合 当該代替土地のうち被災住宅用地相当分について 取得後 3 年度分 当該土地を住宅用地とみなし 住宅用地の価格 ( 課税標準 ) の特例を適用

(2) 源泉分離課税制度源泉分離課税制度とは 他の所得と全く分離して 所得を支払う者 ( 銀行 証券会社等 ) がその所得の支払の際に 一定の税率で所得税を源泉徴収し それだけで所得税の納税が完結するものです 1 対象となる所得代表的なものとして 預金等の利子所得 定期積金の給付補てん金等があります

今回の変更点 所得税H22.16(震災特例法対応)

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木 造 非 木 造 建 築 承 継 建 築 承 継 併用 その他 , ,473,34 小計 22 1,6 3, ,672,187 専用 3 1, ,332,345 5,332,345 併用 課税標準の特例を適用したあとの額が法第 7

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起 案 書

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~ わかりやすい決算報告をめざして ~ 市ではさまざまな事業を行っています どのような事業を行うのか 資金調達はどうするか どのように支出するかを 歳入 歳出 という形でお金で表し とりまとめた計画が 予算書 です その予算に沿って事業を行った一年間の結果を報告したものが 決算書 です 決算書 には

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Q1 市県民税 ( 住民税 ) とはどんな税金ですか? A1 その年の1 月 1 日現在 市内に住所がある個人に対し 前年中の所得 ( 給与 年金 営業 不動産 譲渡などの所得 ) に応じて課税されます また その年の1 月 1 日現在市内に住所がなくても 市内に事務所 事業所又は家屋敷があれば課税

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第6回税制調査会 総6-3

相続税計算 例 不動産等の評価財産の課税評価額が 4 億 8 千万円 生命保険金の受取額が 2 千万円 現金 預金等が 4 千万円 ローン等の債務及び葬式費用等が 3 千万円である場合の相続税を計算します 相続人は妻と 2 人の子供の 3 人です ( 評価額を計算するには専門知識を要します 必ず概算

の両方を提出する必要がある 問 3 還付額は 領収証に記載されている金額を還付するのか それともレセプト情報から自己負担分を計算するのか 領収証により保険診療に係る一部負担金の額を確認して還付する 問 4 領収証の紛失 または医療機関等の全壊等により 対象の被保険者が負担した一部負担金の額の確認が取

4 保険料の状況 (1) 保険料の設定及び徴収第 1 号被保険者の介護保険料基準額は 区介護保険事業計画の3 年間の計画期間ごとに必要な介護サービス給付費の見込み額等を基に 高齢者人口の見込み数値等により算出する仕組みになっている この基準額を基に所得状況に応じた ( 段階ごとに ) 保険料を設定し

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東日本大震災により被害を受けた方の入力編

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復興 5 年間の現状と課題 ( 概要 ) 復興期間 10 年の折り返し平成 23~27 年度 集中復興期間 平成 28~32 年度 復興 創生期間 インフラ復旧は概ね終了 住宅の再建が最盛期 被災者の心身のケアや 産業の再生が重要 福島においては 順次 避難指示を解除 住民の帰還に向けた環境整備を進

< 現行 > 対象者医療区分 Ⅰ(Ⅱ Ⅲ 以外の者 ) 1 * 医療の必要性の低い者医療区分 Ⅱ Ⅲ 1 2 * 医療の必要性の高い者 ( 指定難病患者を除く ) 3 指定難病患者 2 生活療養標準負担額のうちにかかる部分 1 日につき32 1 日につき 1 日につき < 見直し後 > 対象者医療区

お問い合わせ先 1のうち総則関係及び3について自治税務局企画課 西脇係長 板倉 TEL のうち都道府県税関係について自治税務局都道府県税課 金谷係長 桐山 TEL のうち市町村税関係について自治税務局市町村税課 卯田係長 小野 TEL 03-5

2 都市的税目に乏しい市町村税 市町村税は 法人所得課税 消費 流通課税といった経済活動を反映する都市的税目に乏しいため 増大する都市的財政需要に市税収入が対応しきれない大きな要因となっています 都市的税目の割合比較 ( 平成 22 年度 ) 100% 80% 37.7% 34.9% 60% 資産課

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各年の住宅ローン控除額の算出 所得税から控除しきれない額は住民税からも控除 当該年分の住宅ローン控除額から当該年分の所得税額 ( 住宅ローン控除の適用がないものとした場合の所得税額 ) を控除した際に 残額がある場合については 翌年度分の個人住民税において 当該残額に相当する額が 以下の控除限度額の

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P10 第 2 章主要指標の見通し 第 2 章主要指標の見通し 1 人口 世帯 1 人口 世帯 (1) 人口 (1) 人口 平成 32 年 (2020 年 ) までの人口を 国勢調査 ( 平成 7 年 ~22 年 ) による男女各歳人口をもとにコーホー 平成 32 年 (2020 年 ) までの人口

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消費税率引上げ時期の変更に伴う税制上の措置

13. 平成 29 年 4 月に中古住宅とその敷地を取得した場合 当該敷地の取得に係る不動産取得税の税額から 1/2 に相当する額が減額される 14. 家屋の改築により家屋の取得とみなされた場合 当該改築により増加した価格を課税標準として不動産 取得税が課税される 15. 不動産取得税は 相続 贈与

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原発被災自治体の今後の財政と町民町税等の負担 伊藤久雄 ( 認定 NPO 法人まちぽっと理事 ) 東日本大震から はや 8 年 執拗な国や福島県の帰還政策のもとでも 容易に帰還はすすまない 帰還政策の帰趨は 帰還した人々 帰還しなかった ( できなかった ) 人びとの生活基盤と それぞれの市町村財政の行方に直結する ここでは 箇条書き的に問題点や課題を抽出してみることにする 1. 市町村財政 (1) 固定資産税 市町村財政を市町村民税の観点からみると その基盤は固定資産税である 浪江町 双 葉町 大熊町 富岡町の市町村民税を大震災の前年の 2011 年度と直近のデータ ( いじれも 決算カード ) である 2016 年度で比較してみると次のようになる 歳入に占める市町村税等の割合 単位 :% 浪江町 双葉町 大熊町 富岡町 歳入に占める市 10 年度 20.2 10 年度 33.8 10 年度 49.7 10 年度 43.0 町村税の割合 16 年度 2.5 16 年度 9.6 16 年度 16.3 16 年度 7.0 市町村税に占め 10 年度 38.6 10 年度 17.0 10 年度 24.6 10 年度 28.2 る市町村民税 16 年度 78.3 16 年度 19.0 16 年度 15.1 16 年度 34.0 市町村税に占め 10 年度 50,5 10 年度 80.6 10 年度 72.2 10 年度 66.3 る固定資産税 16 年度 6.3 16 年度 80.3 16 年度 84.4 16 年度 62.7 上表の 4 町では浪江町が他と状況が異なるので 28 年度の福島県市町村普通会計決算状況をみると 市町村税の割合 18.6% である 浪江町の 2017 年度 2018 年度予算をみても 歳入に占める町税の割合 ( 構成比 ) は 1% 台である その要因は別途する必要がある 双葉町 大熊町 富岡町については 福島県市町村全体より町財政に占める市町村税の割合より低い これは 交付金等の国庫支出金が多額のためである 町税に占める固定資産税の割合は 震災前と 2016 年度であまり変化がない 双葉町 富岡町は若干の減少であるのに対し 大熊町は増加している 大熊町は 金額的にも 2010 年度約 27 億円 2016 年度 36 億円と約 33% もの増加となっている

したがって 双葉町 大熊町 富岡町については 震災関連の交付金が今後どう推移するのかにもよるが固定資産税の課税がどうなるかは 重要な課題になる そこで楢葉町の 2016 年度決算状況をみると 歳入に占める町税の割合は 7.4% 町税に占める固定資産税の割合は 73.0% と 交付金もふくめて双葉町 大熊町 富岡町とあまり変わりはない 富岡町は今後の楢葉町の状況を注視していく必要がある (2) 市町村民税 楢葉町の帰還が一定程度落ち着いた後 帰還しなかった できなかった人々の納税のあり方は大きな課題になる可能性がある それは 住民票を移住地先に移すのかどうか 移住先に納税することのするのか否かということである 二重住民登録を総務省は認めていない あってはならないことだが 国や県が避難指示を解除した地域の復興状況によって 住民票 = 納税地のあり方を強権的に決めてしまう懸念がある 双葉町 大熊町そして富岡町も 避難指示解除の状況にもよるが 楢葉町等の今後の状況に関心をもっていく必要がある (3) 積立金残高 固定資産税と同様に 4 町の震災前と 2016 年度の状況を表にしてみる 積立金残高の状況 単 位 : 百万円 浪江町 双葉町 大熊町 富岡町 2010 年度末 計 1,695 3,963 9,991 4.425 財政調整基金 1,095 215 4,636 1,558 減債基金 0 0 24 270 特定目的基金 600 3,748 5,331 2,597 2016 年度末 計 15,556 55,073 95,422 15,971 財政調整基金 1,917 3,366 8,521 5,109 減債基金 501 0 24 284 特定目的基金 13,138 51,707 86,877 10,578 減債基金の表示が 0 とあるのは 百万円に満たない額である 浪江町は 震災前の積立金残高はごくわずかであった それは 原発交付金に依存し ていなかった証でもあった 現在は交付金によって残高は 155 億円ほどであるが 津 波被害もあって 残高が多いとはいえない状況にある

双葉町と大熊町 とりわけ大熊町は豊富な積立金残高を抱えている 現在は取り崩している状況であるが その使途が課題である 帰還する町民は少ないと予想されるにもかかわらず 大規模な公共施設を膨大に建設中である 帰還する町民が少なければ 将来の財政負担となるのは明らかである その負担は 帰還した町民が負うことになる 富岡町は 避難指示区域を残しているにも関わらず 積立金残高は少ない 少ない残高をどう生かしていくのか 帰還する町民の負担はどうなのか等 課題は多い 2. 町民の負担 (1) 東日本大震災における地方税の取扱い等について 東日本大震災における地方税の取扱い等については 住民税関係 固定資産税 都市計 画税 不動産取得税関係 自動車取得税 自動車税 軽自動車税関係などに特例がある 今後 避難指示が解除された地域の取扱いが課題である (2) 固定資産税 2015 年年 9 月 5 日に全地域の避難指示が解除された楢葉町 その楢葉町の町税の減免措 置等については以下のようになっている < 楢葉町の徴税の取扱い> HPから平成 30 年度の町税等につきましては 下記の取扱いとなりますのでお知らせします なお 平成 29 年度までは各税金等において減免措置が講じられていましたが 国の財政支援の終了に伴い税額が変更等になる税金が生じますことをご理解ください 固定資産税土地 家屋については算出された税額を2 分の1に減額します ( 平成 30 年度まで ) 町民税 軽自動車税町民税については所得に応じて段階的に減免措置を講じておりましたが 平成 29 年度から通常課税となっています また 軽自動車税も通常課税となりますが 税制改正により平成 29 年度中に新規取得した軽四輪のグリーン化特例 ( 排ガス基準に応じた軽減措置 ) は平成 30 年度に適用されることとなります 国民健康保険税世帯に属する被保険者の合計額が 基準所得額 600 万円以下の世帯については 平成 29 年度と同様に減免を実施します 介護保険料

合計所得金額 ( 譲渡所得に係る特別控除後 ) が 633 万円未満の方については 平成 29 年度と同様に減免を実施します 被災現地と移住先 ( 被災自治体以外の宅地 建物を求めた場合 ) とに土地 建物がある場合 被災地の課税がどのように行われるのかが課題 楢葉町は 帰還していない住民の土地は 雑種地 に変更する意向のようだが 問題は固定資産税がどの程度の課税になるかどうかである 移住先 ( 被災自治体以外の宅地 建物を求めた場合 ) における減免は考えられないので 二重の課税が負担となる懸念がある 被災地の土地は売却したくても買い手は見つかる保障はない 自治体ごとに 空き家バンク がつくられているようだが どの運用状況はどうだろうか (3) 復興公営住宅の共益費等について 陸前高田家賃の他に 共益費 (1 世帯あたり 月額約 1,200 円 ) 及び駐車場使用料 (1 台あたり 月額約 2,500 円 ) が別途必要 宮古市家賃のほか 毎月 共益費 を負担していただく 団地ごとの 街灯やエレベーターの電気代などの負担 (1 戸あたり月 1,000 円 3,000 円程度の見込み かかった費用を入居者で均等に負担 ) 駐車場使用の許可を受けた場合は 別途駐車場の料金がかかる (1 世帯 1 台のみ :1,500 円 / 月 ) 大熊町災害公営住宅募集要項( 第 1 期 ) (1) 駐車場 駐車場は 1 戸当たり 2 台分の駐車スペースを整備しています 駐車料金は発生しません (2) 家賃以外の必要な経費 入居時に必要な費用敷金 ( 家賃の3ヶ月分 ) 入居後に必要な費用共益費 自治会費 (4) 復興 創生期間後も対応が必要な課題の整理 ( 概要 ) 2018 年 12 月 18 日復興庁 < 別紙参照 > 地震 津波被災地域と原子力災害被災地域の記述の違い < 例 > 地震 津波被災地域住まい応急仮設住宅の撤去 被災者生活再建支援金の支給災害公営住宅の

家賃低廉化事業 特別家賃低減事業 原子力災害被災地域帰還促進 生活再建魅力あるまちづくり コミュニティ形成 買い物 教育 医療 介護 福祉 交通 防犯 鳥獣害対策等の生活再開に必要な環境整備医療 介護保険等の保険料 窓口負担の減免心身のケア 見守り 生活 健康相談 個人線量管理等 < 参考資料 > 復興 創生期間後も対応が必要な課題の整理 ( 概要 ) 2018 年 12 月 18 日復興庁 (PDF) 浪江町 双葉町 大熊町 富岡町 楢葉町各町の決算カード (2010 年度および 2016 年度 総務省 決算カードについて ) http://www.soumu.go.jp/iken/zaisei/card.html 2016 年度市町村普通会計決算の概要 https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/153881.pdf