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資料1:地球温暖化対策基本法案(環境大臣案の概要)

間を検討する 締約国が提出した 貢献 は 公的な登録簿に記録される 締約国は 貢献 ( による排出 吸収量 ) を計算する また 計算においては 環境の保全 透明性 正確性 完全性 比較可能性及び整合性を促進し 並びに二重計上の回避を確保する 締約国は 各国の異なる事情に照らしたそれぞれ共通に有して

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仮訳 日本と ASEAN 各国との二国間金融協力について 2013 年 5 月 3 日 ( 於 : インド デリー ) 日本は ASEAN+3 財務大臣 中央銀行総裁プロセスの下 チェンマイ イニシアティブやアジア債券市場育成イニシアティブ等の地域金融協力を推進してきました また 日本は中国や韓国を

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エチオピア 2017 年 2 月 エチオピアは FATF 及び ESAAMLG( 東南部アフリカ FATF 型地域体 ) と協働し 有効性強化及び技術的な欠陥に対処するため ハイレベルの政治的コミットメントを示し 同国は 国家的なアクションプランや FATF のアクションプラン履行を目的とした委員会

手法 という ) を検討するものとする この場合において 唯一の手法を選択することが困難であるときは 複数の手法を選択できるものとする なお 本規程の対象とする PPP/PFI 手法は次に掲げるものとする イ民間事業者が公共施設等の運営等を担う手法ロ民間事業者が公共施設等の設計 建設又は製造及び運営

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5. 文書類に関する要求事項はどのように変わりましたか? 文書化された手順に関する特定の記述はなくなりました プロセスの運用を支援するための文書化した情報を維持し これらのプロセスが計画通りに実行されたと確信するために必要な文書化した情報を保持することは 組織の責任です 必要な文書類の程度は 事業の

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社会的責任に関する円卓会議の役割と協働プロジェクト 1. 役割 本円卓会議の役割は 安全 安心で持続可能な経済社会を実現するために 多様な担い手が様々な課題を 協働の力 で解決するための協働戦略を策定し その実現に向けて行動することにあります この役割を果たすために 現在 以下の担い手の代表等が参加

1. のれんを資産として認識し その後の期間にわたり償却するという要求事項を設けるべきであることに同意するか 同意する場合 次のどの理由で償却を支持するのか (a) 取得日時点で存在しているのれんは 時の経過に応じて消費され 自己創設のれんに置き換わる したがって のれんは 企業を取得するコストの一

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新興国市場開拓事業平成 27 年度概算要求額 15.0 億円 (15.0 億円 ) うち優先課題推進枠 15.0 億円 通商政策局国際経済課 商務情報政策局生活文化創造産業課 /1750 事業の内容 事業の概要 目的 急速に拡大する世界市場を獲得するためには 対象となる国 地

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〈参考〉

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2008年6月XX日

< 目的 > 専ら被保険者の利益 にはそぐわない目的で運用が行われるとの懸念を払拭し 運用に対する国民の信頼を高める 運用の多様化 高度化が進む中で 適切にリスクを管理しつつ 機動的な対応を可能に GPIF ガバナンス強化のイメージ ( 案 ) < 方向性 > 1 独任制から合議制への転換基本ポート

により 都市の魅力や付加価値の向上を図り もって持続可能なグローバル都 市形成に寄与することを目的とする活動を 総合的 戦略的に展開すること とする (2) シティマネジメントの目標とする姿中野駅周辺や西武新宿線沿線のまちづくりという将来に向けた大規模プロジェクトの推進 並びに産業振興 都市観光 地

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各資産のリスク 相関の検証 分析に使用した期間 現行のポートフォリオ策定時 :1973 年 ~2003 年 (31 年間 ) 今回 :1973 年 ~2006 年 (34 年間 ) 使用データ 短期資産 : コールレート ( 有担保翌日 ) 年次リターン 国内債券 : NOMURA-BPI 総合指数

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GLOBAL STATUS OF LARGE-SCALE INTEGRATED CCS PROJECTS: December 2011 update has been translated from English into Japanese for convenience. The Global

目次 1. 策定の趣旨 2 2. 水素利活用による効果 3 3. 能代市で水素エネルギーに取り組む意義 5 4. 基本方針 7 5. 水素利活用に向けた取り組みの方向性 8 6. のしろ水素プロジェクト 10 1

財政投融資 財政投融資とは 租税ではなく 有償資金 すなわち金利を付して返済しなければならない資金を用いて 民間では困難な大規模 超長期プロジェクトを実施したり 民間金融では困難な長期資金を供給したりすることにより 財政政策のなかで有償資金の活用が適切な政策分野に効率的 効果的に対応する仕組みです

注 : 平成 年度募集研究種目 国際的に評価の高い研究の推進 研究費の規模 / 研究の発展 H には 新たに基盤研究 (B) 若手研究 (A) の 種目に基金化を導入 若手研究 9 歳以下 ~ 年 (A) 500~,000 万円 (B) ~500 万円 研究活動スタート支援 年以内年間 50 万円以

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ファンド名説明 ifree 8 資産バランス 本を含む世界の 8 資産へ均等に分散投資します 株式および不動産投資信託に投資することで世界の経済成 の果実を享受するとともに これらとは値動きの異なる債券にも投資することで安定した収益の確保も期待できます これまで預貯 中 だったお客様が幅広く資産を分

インベスコ オフィス ジェイリート投資法人 (3298) 平成 30 年 1 月 29 日付 投資口分割 規約の一部変更及び平成 30 年 4 月期 ( 第 8 期 ) の 1 口当たり分配金の予想の修正に関するお知らせ 補足資料 インベスコ グローバル リアルエステート アジアパシフィック インク

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どのような便益があり得るか? より重要な ( ハイリスクの ) プロセス及びそれらのアウトプットに焦点が当たる 相互に依存するプロセスについての理解 定義及び統合が改善される プロセス及びマネジメントシステム全体の計画策定 実施 確認及び改善の体系的なマネジメント 資源の有効利用及び説明責任の強化

これは 平成 27 年 12 月現在の清掃一組の清掃工場等の施設配置図です 建替え中の杉並清掃工場を除く 20 工場でごみ焼却による熱エネルギーを利用した発電を行っています 施設全体の焼却能力の規模としては 1 日当たり 11,700 トンとなります また 全工場の発電能力規模の合計は約 28 万キ

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政策目標 6-2: 開発途上国における安定的な経済社会の発展に資するための資金協力 知的支援を含む多様な協力の推進 1. 政策目標の内容自由かつ公正な国際経済社会の実現やその安定的発展に向け 開発途上国における貧困の問題や気候変動等の地球環境問題等の課題への対応を含む国際的な協力に積極的に取り組むこ

また 関係省庁等においては 今般の措置も踏まえ 本スキームを前提とした以下のような制度を構築する予定である - 政府系金融機関による 災害対応型劣後ローン の供給 ( 三次補正 ) 政府系金融機関が 旧債務の負担等により新規融資を受けることが困難な被災中小企業に対して 資本性借入金 の条件に合致した

Ⅰ. 経緯 国際金融コミュニティにおける IAIS の役割は ここ数年大幅に増加している その結果 IAIS は 現行の戦略計画および財務業績見通しを策定した際には想定していなかった システム上重要なグローバルな保険会社 (G-SIIs) の選定支援やグローバルな保険資本基準の策定等の付加的な責任を

中期事業計画の評価 平成 27 年度 ~ 平成 29 年度 香川県信用保証協会

ニュースリリース 平成 26 年 10 月 24 日中日信用金庫株式会社日本政策金融公庫 日本公庫 地方公共団体 地域金融機関 中間支援組織と連携し ソーシャルビジネス支援ネットワークを設立 このたび 中日信用金庫 ( 理事長 : 山田功 ) 日本政策金融公庫 ( 略称 : 日本公庫 ) は 地域の

エキスポプレゼン0329

規制 制度改革に関する閣議決定事項に係るフォローアップ調査の結果 ( 抜粋 ) 規制 制度改革に係る追加方針 ( 抜粋 ) 平成 23 年 7 月 22 日閣議決定 番号 規制 制度改革に係る追加方針 ( 平成 23 年 7 月 22 日閣議決定 ) における決定内容 規制 制度改革事項 規制 制度

住宅融資事業においては 融資利率と借入利率との間に利子差益が生じており 平成 7 年度以降 横浜市に継続して寄附をしているが その総額は 666 億円に達し 事務費等を控除した事業開始以来の通算の損益を見ても 387 億円のプラスとなっている 2 融資債権の整理に向けた検討課題 (1) 債務者への配

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ISO/TC176/SC2/N1291 品質マネジメントシステム規格国内委員会参考訳 ISO 9001:2015 実施の手引 目次 1.0 序文 2.0 ISO 9001:2015 改訂プロセスの背景 3.0 ユーザグループ 4.0 実施の手引 4.1 一般的な手引 4.2 ユーザグループのための具

けた取組が重要である 米国 カナダ 欧州諸国が UNFCCC へ提出した 2050 年に向けた長期戦略においても 濃淡はあるものの 各国ともゼロエミッション化 電化の重要な手段として CCS/CCUS を位置付けている これまで 将来的に CO2 削減にかかるコストについては 様々な報告がなされてい

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G7 ICT マルチステークホルダー会議からの成果を歓迎する 6. 我々は 2016 年 6 月 21 日から 23 日にかけてメキシコのカンクンで開催される イノベーション 成長及び社会の繁栄をテーマとした デジタル経済に関する OECD 閣僚級会合の成果に期待する 7. 我々は デジタル連結世界

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IFRS基礎講座 IAS第37号 引当金、偶発負債及び偶発資産


Transcription:

発展途上国における CO 2 回収貯留への資金供与 2012 年 3 月

The executive summary of FUNDING CARBON CAPTURE AND STORAGE IN DEVELOPING COUNTRIES has been translated from English into Japanese for convenience. The Global CCS Institute does not warrant the accuracy, authenticity or completeness of any content translated in the Japanese version of the Report. 発展途上国における CO 2 回収貯留への資金供与 は 利用者の便宜のために FUNDING CARBON CAPTURE AND STORAGE IN DEVELOPING COUNTRIES のエグゼクティブサマリーを英語から日本語に翻訳したものです グローバル CCS インスティテュートは日本語版のいかなる内容についてもその正確性 信頼性又は完全性について保証しません

エグゼクティブサマリー気候変動対策として CO 2 回収貯留 (CCS: Carbon Capture and Storage) が支持されるべきとの主張には十分な論拠がある それは 電力分野であっても産業分野であっても あるいは CCSと組み合わせた新たなバイオエネルギー分野であっても同様と言える 世界が排出削減目標を達成しようとする上では 化石燃料から生じる排出量を削減することが不可欠である 2012 年現在 CCSは化石燃料使用による CO 2 排出量を最大限に削減できる手段である CCSにより世界の CO 2 排出量を大幅に削減できることに鑑みると 現在の 実証 段階において CCS 技術がさらに経済的なものへと進展するよう支援することが重要である 大規模な再生可能エネルギープロジェクトを経済的に実行可能な段階まで進めるに当たっては その支援に特化した公的資金を必要とするのと同様に CCSにも公的資金が必要である CCSが現在不利な立場にあるのは いくつかの気候変動に関する資金メカニズムから CCSが敢えて除外されてきたためであり その代表的な例が 2011 年 12 月までのクリーン開発メカニズムである 発展途上国における CCS については ほとんどの国で比較的脆弱な ビジネス事例 しか存在してないのが現状である つまり 市場の失敗による CCSの 追加的 コスト及びリスクを正当化できるだけの商業ベース又は市場ベースのインセンティブが欠如している したがって 現在の CCS 実証 段階においては 市場の失敗に対処するために公的資金の投入が必要である 公的資金の投入により対処すべき市場の失敗には大きく二つある 一つは市場による炭素価格設定の失敗 もう一つは 先発者 のリスク及び利益の間の不均衡である つまり 先発者が全てのリスクを負う一方で 技術コストが下がった頃に利益のほとんどを得るのは第二 第三の後発者だということである 世界の排出削減目標を最小コストで達成するのに CCSが役立つことを考慮すると CCSに対する公的資金投入は全世界の公益にかなう 公的資金投入の主な目的は 1CCSの知識及び学識を拡充すること及び2CCS のコストを経済的に実行可能な段階まで引き下げることである 技術開発では その段階に応じて適した公共政策及び資金供与メカニズムが異なる 例えば 知識の拡充及びコストの引下げを目的とした特定の技術に対する資金供与メカニズム ( 例えば 出資補助金 譲許的融資など ) は 技術に対して中立なメカニズム ( すなわち 炭素価格の設定 排出制限又は性能基準 ) と比較して この実証段階において最も適している しかし CCS 実証プロジェクトに必要な資金の規模 (1 プロジェクト当たり数億ドル ) を考慮すると プロジェクトを経済的に実行可能なものにするためには たとえ実証段階であっても複数の資金援助メカニズム及びインセンティブを組み合わせる必要があると考えられる 現在計画中又は操業中の CCS 実証プロジェクトのすべてにおいて 資金供与メカニズム及びインセンティブが組み合わされて活用されているが それでも多くの CCS 実証プロジェクトにとって 出資補助金及び譲許的融資こをが経済的な実行可能性を支える主力となる 発展途上国における CCS 実証プロジェクトのうち 知識の拡充及びコスト削減という資金供与政策の目標を達成するプロジェクトがどの程度の数になるのかを正確に予測する方法はない それは どのような回収技術を実証するのか 対象プロジェクトが CCS 利用の進歩にどの程度効果的か さらに 知識共有の方法がどの程度有効かに拠る 主要 8 カ国は 2020 年までに 20 プロジェクトという現実的な目標を定めた したがって 本レポートの作業グループは 適切な目標をその半分 すなわち 2022 年までに発展途上国で 10 件程度の大規模実証プロジェクトとし それらプロジェクトが産業 技術及び場所について幅広い範囲の ポートフォリオ にまたがって行われることを推奨する 大規模で複雑な産業プロジェクト及び電力プロジェクトと同様に CCSプロジェクトの実施前には相当規模の投資前作業を行う必要がある あらゆる大規模プロジェクトで行う通常のスコーピング 事前実行可能性調査 実行可能性調査及び最終投資判断といったプロセスに加え いくつかの CCS 特有の作業を実施する必要がある ( 例えば 地層貯留評価 事前実行可能性 / 実行可能性調査のうち CCS 特有のものなど ) さらに 統合 CCSはほとんどの国にとって新しいものであるため 数多くのプロジェクト支援活動も行う必要がある ( 例えば 法的 規制的並びに財政的及び商業的な枠組みの構築 知識獲得 全面的な市民関与など ) この作業には数年を要すると考えられ 包括的で 段階的 なアプローチが必要である 短期的 (2012~2015 年 ) には 発展途上国でさらに必要となる CCS 向け資金の規模は 投資前活動及び能力構築活動で 1 億 5,000 万 ~2 億ドル程度となる これは 投資前活動及びプロジェクト支援活動のコストを 1 プロジェクト当たりおよそ 2,000 万 ~4,000 万ドルとする大まかな仮定に基づいている この資金によって 発

展途上国における 5~10 件の実証プロジェクトを 2015 年頃までに最終投資判断に進めるよう支援することができるはずである 中期的には 資金規模はおよそ 50 億ドルに増加するだろう これは 発展途上国のプロジェクトに要する 追加の CCS コストを産業プロジェクトでは 5 億ドル 電力プロジェクトでは 10 億ドル程度とする大まかな仮定に基づいている これによれば 50 億ドルあれば初期の 5~10 件のプロジェクトを操業段階まで支援することができる CCS に対する補助金及び譲許的融資を確保するのに利用可能な資金供与の 手段 がいくつかある 先進国は 国連気候変動枠組条約の先進国全体の国際公約達成に CCS が使用可能となるように 将来的に CCS のための資金提供を望むと考えられる 補助金及び譲許的融資を投入する適切な手段を特定するのに際し 本レポートの作業グループはそれが既存の国際的な資金援助メカニズムを補完するものとなるように努めた 作業グループが妥当と判断した資金提供の手段には 既存の CCS 専用基金及びプログラム クリーン技術基金 地球環境ファシリティ 二国間又は多国間の協定 グリーン気候基金並びに新規の CCS 専用基金が含まれる 以上の検討に基づき 作業グループは以下のとおり提案する 提案 短期 1. 援助国は 主に発展途上国における CCS のプロジェクト支援活動及び投資前活動に対して 既存の CCS 向け資金援助プログラムに上乗せする形で 1 億 5,000 万 ~2 億ドル程度の資金提供を行うこと このような資金援助に容易に対応することができる既存の CCS 専用基金及びプログラムには次のものがある アジア開発銀行の CO 2 回収貯留信託基金 (Carbon Capture and Storage Trust Fund) 炭素隔離リーダーシップフォーラムの人材育成プログラム (Capacity Development Program) グローバル CCS インスティテュートの人材育成プログラム (Capacity Development Program) 世界銀行の CCS 能力構築信託基金 (CCS Capacity Building Trust Fund) 2. 援助国は クリーン技術基金における CCS の適用除外が解除されるよう努力すること 3. 援助国及び発展途上国は 二国間及び / 又は多国間のプロジェクト支援に取り組むこと 4. 発展途上国は 地球環境ファシリティの能力構築活動に対して補足的な資金援助を求めること 中期 1. 援助国は 発展途上国における実証プロジェクトの建設及び操業に係る 追加の CCS コストのために 50 億ドル程度の CCS 向け資金を提供すること 作業グループは資金供与の導入が可能と考えられる手段をいくつか特定した ( 以下に詳述 ) 50 億ドルの資金確保を目指すことを考慮すると どの資金援助の手段が好ましいかについて援助国間で合意を得ることが重要である 1. グリーン気候基金に CCS 向け資金供与を含めること ( これは最終的にはグリーン気候基金理事会の判断である点に留意 ) 2. グリーン気候基金において 様々な技術に資金供与を行うポートフォリオ手法を採用し その一項目として CCS を加えること ( これは最終的にはグリーン気候基金理事会の判断である点に留意 )

3. 独自のガバナンス体制を持つ新たな CCS 向け基金を新設すること 一方で この基金は拠出各国が気候変動対策に向けて資金援助したものとしてカウントされること 4. 既存の CCS 向け信託基金やプログラムを資金的に上乗せするとともに プロジェクト支援の資金供与に対応できるようその基準を変更すること 一方で この対策は拠出各国が気候変動対策に向けて資金援助したものとしてカウントされるようにすること