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撮影技術分野座長集約 散乱線補正処理のメリット デメリット 座長みやぎ県南中核病院放射線部熊谷伸作 (Kumagai Shinsaku) 座長集約 3 年前に一般撮影領域において散乱線除去用グリッド ( 以下グリッド ) を使わずに高コントラスト画像を取得する画像処理技術 ( 散乱線補正処理 ) がリリースされており, 東北地区でも2017 年 1 月現在で60 以上の施設に導入されております. この画像処理技術により, 特にポータブルX 線撮影においては以下の問題が解消されます. グリッドの重量によるハンドリングの低下 グリッドと中心 X 線束のずれによって生じるミスアライメント モアレの発生しかし, 一見便利に思える画像処理技術も特性を理解しないと, 例えば胸部であれば肺野部分が黒く潰れた画像が出力されるといった想定外の画像が出力される可能性が大きくなります. そこで今回は散乱線補正処理特性の理解を目的として, テーマを 散乱線補正処理のメリット デメリット としました. 私の方から散乱線補正処理の使用における問題点について説明させて頂きました. 問題点として挙げたのは, 以下の3 点となります. 1. グリッド未使用によるオーバーレンジ 2. 散乱線量推定の誤差による画像コントラストの変動 3. 被写体厚増加に伴う画像ノイズの影響 1. グリッド未使用によるオーバーレンジ散乱線補正処理の場合, グリッドを使用していないので多くの線量がFPDに入射されます. これにより撮影部位と撮影条件によってはオーバーレンジによる画素値飽和が発生し, 情報が失われます. またFPDシステムはCRシステムと比較して, ダイナミックレンジはほぼ同等ですが, 低線量側へシフトしており高感度になっています. そのため,CRシステムよりも低線量で画像を出力することは可能ですが, 裏を返せばオーバーレンジがより発生しやすくなっていると言えます. この場合, 画像処理の設定を変更してもraw データ自体に情報が無いので適正画像を出力する事が出来なくなります. ですので, 撮影条件はグリッドを使用して撮影を行っていたときよりも 注意する必要があります. 2. 散乱線量推定の誤差による画像コントラストの変動次に散乱線量の推定方法はメーカーごとに異なります. 代表として東北地区に多いメーカーでは, 撮影線量 ( 被写体透過直後に到達したX 線量 ) と管電圧 管電流時間積 撮影距離の情報を元に計算した設定線量 ( 被写体が無い状態における検出器に到達したX 線量 ) の差分画素値から被写体厚を推定して散乱線量を算出します. よって撮影線量 設定線量になってしまうと, 散乱線量に誤差が生じ, 画像コントラストに影響が出ます. 3. 被写体厚増加に伴う画像ノイズの影響アクリル板厚を変化させて散乱線含有率を測定すると,20 cmアクリル板厚でグリッドを使用しない場合で約 80% となります. グリッド ( 8:1 ) を使用した場合, 約 60 % 位まで減少するので骨盤などの被写体が厚い部位では散乱線の増加による画像ノイズの影響を考慮しないといけません. また,S/Nを上げるために線量を増加しても, 高線量では画素値飽和が発生します. ですので, 被写体厚と撮影線量の関係を考慮する必要があります. 問題点 1 及び2に関してですが, これは胸部ポータブル撮影で大きく影響が出ると考えられます. 宮城県立がんセンターの石田俊太郎様には, 物理特性と客観的評価法のMean Square Errorで胸部領域の評価をして頂きました. また, 問題点 3に関してですが, 主に被写体の厚い骨盤領域で想定されます. 仙台医療センターの小堺雅貴様には, 従来のグリッド撮影と散乱線補正処理の比較を客観的評価法のStructural Similarity 及びNoise Power Spectrumで骨盤領域を評価して頂きました. 最後に, 散乱線補正処理特性を把握した上で使用することにより, 臨床に有益な画像を提供する事が出来ると考えております. ただ, 今回の講演では評価が不十分なところもあることから, 来年度の本学会にて報告できる様に引き続き検討していきます.

胸部ポータブル撮影における散乱線補正処理 宮城県立がんセンター診療放射線技術部石田俊太郎 (Ishida Shuntarou) はじめに 当院ポータブル撮影において,2015 年に Flat Panel Detector(FPD) が全面的に導入された. 導入後の胸部ポータブル撮影における撮影条件は, 管電圧 90 kv, 撮影線量 4.0 mas, 撮影距離 120 cm であり, 撮影時にはグリッドを使用していた. しかし, 座位撮影ではグリッドのミスアライメントによる濃度ムラなどのリスクが大きく, グリッドを使用するメリットよりもデメリットの方が大きくなる場合がしばしば見受けられた. その後, 胸部および腹部撮影において, 散乱線補正処理としてVirtual Grid (VG) が導入された. それによりグリッドのミスアライメントによる影響がなくなり, グリッドを使用しなくてもグリッド使用時と同等のコントラストの画像が得られるようになった (Fig.1). しかし, グリッドを使用しないことにより検出器到達線量が増加するため, 撮影条件の再検討を行なう必要がある. また,VGには撮影条件やグリッド特性に関する設定値があり, それに応じて散乱線補正処理を行うため, 設定値と実際の撮影条件が一致することが前提となる. ところが, 臨床の現場においては設定値と撮影条件の乖離が起こる場合があり, その影響を評価することは重要であると考えられる. そこで本検討では, 胸部ポータブル撮影において, 撮影条件の検討, および設定値と撮影条件が乖離した場合の検討を行なった. 方法 1. 撮影条件の検討 VG では, グリッド使用時と比べて検出器到達線量が増加するため, 線量低減の可能性がある. 一方で, 検出器に過剰な線量が入射すると画素値の飽和が起こり, 画像が黒潰れするが, グリッドを使用しないことによりそのリスクが高まる. そこで, 線量下限と上限について検討した. 1.1 線量下限の検討 Detective Quantum Efficiency (DQE) を算出し, 現状 4.0 masからどれだけ線量を低減可能か検討した. 線質はRQA7とし,mAs 値を1.0-8.0 mas(7steps) となるように可変させた. その後 0.5 cycles/mmのdqeについてグラフを作成し, 下限となる線量をグラフより推定した. 1.2 線量下限の検討 mas 値を可変させて撮影した胸部ファントムの画像について, 視覚評価から線量上限を推定した. 撮影条件は管電圧 90 kv, 撮影距離 120 cm とし,mAs 値を8.0 20.0 mas (7steps) となるように可変させた. 散乱線補正強度は6:1 相当とした. 得られた画像より, 肺野が黒潰れしない最大 mas 値を評価し, 線量上限とした. 2. 設定値と撮影条件が乖離した場合の検討 VGの設定値と実際の撮影条件との乖離は, 画像のコントラストに影響を与える (Fig.2). 例えば, 撮影 mas 値よりも設定 mas 値が低い場合, 散乱線量の推定が過小となるため, 散乱線低減処理は弱くなり, 設定値と撮影条件が一致するときと比べてコントラストの改善は過小となる. 一方, 撮影 mas 値よりも設定 mas 値が高い場合, 散乱線量の推定が過大となるため, 散乱線低減処理は強くなり, コントラストの改善は過大となる. 設定値にはmAs 値, 管電圧, 撮影距離の3 項目があるが, 今回は撮影 mas 値が同一のときに, 設定 mas 値を変化させた場合の影響について検討した. 撮影条件は管電圧 90 kv, 撮影線量 4.0 mas, 撮影距離 120 cmとし, 散乱線補正強度は6:1 相当とした. 同一条件で撮影された画像について, 設定 mas 値を1.0 8.0 mas(7steps) となるように可変させ, 得られた画像の画素値よりMean Square Error(MSE) を算出し評価した. 2.2 MSE について MSEとは, ある評価画像が基準画像に対してどれだけ一致するかを, 画素値を用いて客観的に評価するための指標であり,0に近いほど, 評価画像が基準画像に近似することを示す. 次式で表される. グリッド (8:1) VG (8:1) Fig.1 ファントム画像 ( グリッド有と VG)

設定値 < 撮影条件設定値 = 撮影条件設定値 > 撮影条件 Fig.2 ファントム画像 ( 設定値と撮影条件の乖離 ) 本検討において,y は任意の設定 mas 値の画 像 ( 評価画像 ) の画素値,s は設定 4.0 mas の画 像 ( 基準画像 ) の画素値である. 乖離により画質が変化することが数値による結果 から示された. また, その影響は設定値が撮影条件 よりも大きい場合に顕著であることが示唆された. 結果 方法 1,2 の結果を Fig.3 5 に示す. Fig.3 より,DQEが頭打ちとなる2.5 mas 付近が線量下限であることが推定された. またFig.4より,12.6 masの画像において肺野の一部が黒潰れを起こしているため,11.2 masが線量上限であることが推定された. Fig.5より, 設定値と撮影条件が一致する4.0 masにおいてはmseが0となるが, その他の設定 mas 値においてはMSEが0とはならず, 設定値と撮影条件の Fig.5 設定 mas 値変化と MSE 約 2.5 mas Fig.3 0.5 cycles/mmのdqe 11.2 mas 12.6 mas Fig.4 ファントム画像 ( 設定 mas 値 ) 考察 設定値が撮影条件よりも大きい場合, 設定値と撮影条件が一致する場合と比べて, コントラストの改善が過大となる. それによりノイズの増加も相対的に多くなるため,MSE が顕著に大きくなると考えられる. 一方で, 設定値が撮影条件よりも小さい場合, コントラストの改善は過小となるため, ノイズの増加は相対的に小さくなる. このことが,MSEがさほど大きくならない一因であると考えられる. まとめ 胸部ポータブル撮影においてVGを用いた場合, 線量下限は2.5 mas, 上限は11.2 masとなることが示唆された. また, 設定値と撮影条件の乖離により画質が変化することが数値により客観的に示され, その影響は設定値が撮影条件よりも大きい場合に顕著であることが示唆された.

参考文献 1) Virtual Grid のご使用開始にあたり 富士フイルムメディカル株式会社 2) 川村隆浩, 内藤慧. 新画像処理 Virtual Grid ( バーチャルグリッド ) 技術 の開発 : X 線検査の画質と作業性の向上 FUJIFILM RESERCH & DEVELOPMENT 2015 骨盤領域の散乱線補正処理 国立病院機構仙台医療センター放射線科小堺雅貴 (Kozakai Masataka) はじめに 骨盤領域は被写体が厚く, 散乱線含有率が多い撮影部位である. 従来は散乱線除去用グリッド ( 以下グリッド ) を使用していたが, ハンドリングの低下やミスアライメントの出現等が問題となっている. 当院では, 救急撮影時にグリットを使用して骨盤領域の撮影を行っているが, 今回はVirtual Gridの骨盤領域における有用性について検討を行った 方法 1.SSIM (Structural Similarity) の算出撮影条件は, 管電圧 80 kv 及び管電流 320 ma, 撮影距離 120 cm 固定 (Fig.1) とし, 骨盤ファントム ( 被写体厚 16 cm) 表面の入射表面線量を0.19 1.51 mgy(4steps) となるように撮影時間を可変とした. グリッド使用画像 (8:1) をリファレンスとして, Virtual Grid 使用画像 (3:1, 6:1,8:1,10:1, 12:1) とのSSIMを算出した. また, 当院で使用している撮影条件である1.51 mgyを撮影条件固定として,ssimの算出を行った. 2. 被写体厚 16 cmに対する撮影条件固定時におけるnpsの測定撮影条件を管電圧 80 kv 及び管電流 320 ma, 撮影時間 71 msec, 撮影距離 120 cm 固定とした. グリッド使用 (8:1) 画像とVirtual Grid 使用画像 (6:1,8:1,10:1) を比較した. 3. 被写体厚 23 cmに対する撮影条件固定時におけるnpsの測定骨盤ファントムにアクリル板を付加して被写体厚を23 cmとし, 撮影条件は,FPDのEI 値が被写体厚 16 cmと同等になるように, 管電圧 80 kv 及び管電流 400 ma, 撮影時間 140 msec, 撮影距離 120 cm 固定とした. グリッド使用 (8:1) 画像と Virtual Grid 使用画像 (6:1,8:1,10:1) を比較した. 4. 被写体厚 23 cmに対する撮影条件固定時におけるnpsの測定 Virtual Grid(6:1) 使用画像を比較した撮影条件を管電圧 80 kv 及び管電流 400 ma, 撮影距離 120 cm 固定とし, 骨盤ファントム ( 被写体厚 16 cm) 表面の入射表面線量を 0.54 4.23 mgy(4steps) となるように撮影時間を可変とした. 結果 方法 1 4の結果をFig.2 5に示す.Fig.2 及び Fig.3より,Virtual Grid (6:1) 画像でSSIMが最も1に近づき, グリッド (8:1) 使用画像に近いことを示した. またFig.4 及びFig.5より,Virtual Grid(6:1) 画像で NPSがグリッド (8:1) 使用画像に近いことを示した. 空間周波数に関しては, 散乱線成分が含まれる低 Fig.1 幾何学配置図 Fig.2 撮影条件可変時の SSIM

Fig.3 撮影条件固定時の SSIM Fig.4 被写体厚 16 cm における 撮影条件固定時の NPS Fig.5 被写体厚 23 cm における撮影条件固定時の NPS 周波領域のみとした.Fig.6より, 線量の増加に伴いNPSの向上に限界が認められた. 考察 被写体厚の増加に伴って散乱線は増加傾向になる. 被写体厚が薄い場合は,Virtual Grid 及びグリットともにNPSは同様の傾向を示している. 被写体厚が厚い場合は,Virtual Grid(6:1) とグリットでは類似しているが,Virtual Grid(8:1,10:1) ではNPSの向上が認められていない. これは, 被写体厚の厚みに応じて強い散乱線補正処理を使用しても,NPS の向上には限界があることを示していると考えられ Fig.6 被写体厚 23 cm における撮影条件可変時の NPS る. また, 被写体厚の厚み応じて照射線量を増加させた場合に関しても, ある程度の線量でNPSの向上に限界が認められ, 患者の被ばくの問題からも体厚に応じた適切な撮影条件を決定していく必要があると考えられる. まとめ 骨盤領域におけるVirtual Grid 画像は,6:1でグリッド (8:1) 使用画像に近い特性を示し有用であるが, 被写体厚の厚さによってはグリットの使用も考える必要がある. 参考文献 図書 1)Z. Wang, A. C. Bovik, H. R. Sheikh and E. P. Simoncelli, "Image quality assessment: From error visibility to structural similarity," IEEE Transactions on Image Processing, vol. 13, no. 4, pp. 600-612, Apr. 2004 2) 市川勝弘, 石田隆行. 標準ディジタルX 線画像計測. オーム社, 東京,2010