事務連絡 平成 3 0 年 9 月 1 4 日 各都道府県衛生主管部 ( 局 ) 御中 厚生労働省医薬 生活衛生局医薬品審査管理課 原薬の開発と製造 ( 化学薬品及びバイオテクノロジー応用医薬品 / 生物 起源由来医薬品 ) に関する質疑応答集 (Q&A) について 医薬品規制調和国際会議 ( 以下 ICH という ) における合意に基づくガイドラインである ICH Q11 原薬の開発と製造 ( 化学薬品及びバイオテクノロジー応用医薬品 / 生物起源由来医薬品 ) については 原薬の開発と製造( 化学薬品及びバイオテクノロジー応用医薬品 / 生物起源由来医薬品 ) ガイドラインについて ( 平成 26 年 7 月 10 日付け薬食審査発 0710 第 9 号厚生労働省医薬食品局審査管理課長通知 ) の別添としてお示ししています 今般 ICH における合意に基づき 当該ガイドラインに係る質疑応答集が別添のとおり取りまとめられました なお 当該質疑応答集への理解を促進するための教育用資材として Training Material ( 英語版のみ ) が取りまとめられ ICH のウェブサイトに掲載されていることを申し添えます 以上 御了知の上 貴管下関係業者等に御周知方願います
別添 ICH Q11 ガイドライン : 原薬の開発と製造 ( 化学薬品及びバイオテクノロジー応用医薬品 / 生物起源由来医薬品 ) 質疑応答集 (Q&A) 2017 年 8 月 23 日版 1 / 18
参考資料 ICH のコード 通知等の題名 通知等の番号 ICH Q3A(R2) 新有効成分含有医薬品のうち原薬の不純物に関するガイドラインの改定について及び一部改訂について 平成 14 年 12 月 16 日付け医薬審発第 1216001 号 ( 一部改正 : 平成 18 年 12 月 4 日付け薬食審査発 1204001 号 ) ICH Q6A 新医薬品の規格及び試験方法の設定について 平成 13 年 5 月 1 日付け医薬審発第 568 号 ICH Q6B 生物薬品 ( バイオテクノロジー応用医薬品 / 生物起源由来医薬品 ) の規格及び試験方法の設定について 平成 13 年 5 月 1 日付け医薬審発第 571 号 ICH Q7 原薬 GMP のガイドラインについて 平成 13 年 11 月 2 日付け医薬第 1200 号 ICH Q7 Q&A 原薬 GMP のガイドラインに関する Q&A について 平成 28 年 3 月 8 日付け監視指導 麻薬対策課事務連絡 ICH Q8(R2) 製剤開発に関するガイドラインの改定について 平成 22 年 6 月 28 日付け薬食審査発 0628 号第 1 号 ICH Q9 品質リスクマネジメントに関するガイドライン 平成 18 年 9 月 1 日付け薬食審査発第 0901004 号薬食監麻発第 0901005 号 ICH Q10 医薬品品質システムに関するガイドラインについて 平成 22 年 2 月 19 日付け薬食審査発第 0219 第 1 号薬食監麻発第 0219 第 1 号 ICH Q-IWG ICH Q8 Q9 Q10 ガイドライン運用実務研修会資料 ( 教育用資材 英語版のみ ) 未通知 (ICH のウェブサイトに掲載 ) ICH Q11 原薬の開発と製造 ( 化学薬品及びバイオテクノロジー応用医薬品 / 生物起源由来医薬品 ) ガイドラインについて 平成 26 年 7 月 10 日付け薬食審査発 0710 第 9 号 ICH S9 抗悪性腫瘍薬の非臨床評価に関するガイドラインについて 平成 22 年 6 月 4 日付け薬食審査発 0604 第 1 号 ICH M7 潜在的発がんリスクを低減するための医薬品中 DNA 反応性 ( 変異原性 ) 不純物の評価及び管理ガイドラインについて 平成 27 年 11 月 10 日付け薬生審査発 1110 第 3 号 注釈 この文書は ICH Q11 Q&As(2017 年 8 月 23 日時点版 ) の原文に基づく日本語翻訳であ り 当該原文の著作権は ICH に帰属する なお 参考資料に掲げる各 ICH 文書について は 日本における該当する関連通知等を示している 2 / 18
目次 緒言... 4 1. はじめに... 4 2. 適用範囲... 4 3. 製造工程の開発の経緯... 5 4. 製造方法及びプロセス コントロールの記述... 5 5. 出発物質及び生物起源原材料の選定... 5 6. 管理戦略... 15 7. プロセス バリデーション / プロセス評価... 16 8. コモン テクニカル ドキュメント (CTD) 様式での製造工程開発上法及び 関連情報の提出... 16 9. ライフサイクルマネジメント... 16 10. 図解例... 16 11. 用語... 16 12. 付録 1: ディシジョンツリー... 16 3 / 18
緒言 ICH Q11 ガイドラインの完成以降 原薬の開発と製造に関する推奨事項が実施され その経験が世界的に積まれたが そのことによって出発物質の選定及び妥当性に関して明確な説明が求められることとなってきた この質疑応答 (Q&A) 文書は さらに明確な説明を与え 合意を促進し 出発物質の選定及び妥当性に関する考え方や承認申請添付資料や原薬等登録原簿に記述すべき情報に関する一層の調和をもたらすことを意図している 本 Q&A 文書は 化学薬品の原薬に焦点を当てている 本 Q&A 文書の適用範囲は ICH Q11 の適用範囲に従う ICH Q11 は ICH Q6A 及び Q6B ガイドラインの 適用範囲 の項で定義されている原薬に適用されるが 該当する規制当局に相談した上で 他の種類の製品に対しても同様に適用可能な場合もある ICH Q11 は 医薬品の臨床開発段階の原薬にかかわる申請内容には適用されない ただし ICH Q11 に示されている開発の原則及び本 Q&A 文書は 臨床開発段階においても考慮することは重要である 規制当局が既に受け入れている原薬出発物質 ( 例えば 既承認医薬品における使用 ) は その製造工程及び管理に重大な変更がないかぎり 一般的には ICH Q11 一般原則または本 Q&A 文書での推奨事項に照らして 再度妥当性を示す必要はないと思われる しかし ある製造業者での製造工程で認められている出発物質であっても 別の製造業者の工程において出発物質として提案された場合には 説明が ICH Q11 ガイダンスに準拠していなければ 出発物質として許容可能とはみなされないと思われる 申請者 の用語を 本 Q&A 文書中で用いているが 製造販売業者 承認申請者 医薬品 製造業者及び原薬製造業者に対して広く言及していると解釈すること 出発物質の指定は 予定している商業用プロセスに関する知識に基づくべきである 補遺 1 のディシジョンツリーは 全ての ICH Q11 一般原則を適用して出発物質の選定と 妥当性の説明をする際の図解例として示されている 1. はじめに 2. 適用範囲 4 / 18
3. 製造工程の開発の経緯 4. 製造方法及びプロセス コントロールの記述 5. 出発物質及び生物起源原材料の選定 Q 5.1 出発物質の選定及び妥当性の説明にあたって ICH Q11 章 5 に示されるすべての一般原則について考慮し それに適合させる必要があるか A 5.1 申請者は 提案する出発物質の選定及び妥当性の説明にあたって 単に 一般原則のうち一部を選択して 出発物質の妥当性の説明に用いるのではなく すべての ICH Q11 一般原則と本 Q&A 文書で明確にされた点を考慮すべきである 提案する出発物質が ICH Q11 一般原則のすべてには適合しない場合は 提案する出発物質が適切であると考える根拠を示すこと Q 5.2 ICH Q11 における 出発物質 は ICH Q7 の 原薬出発物質 と同一か A 5.2 同一である ICH Q11 は ICH Q7 で述べている GMP 条項は 原薬製造工程の各分岐ルートにおいて 出発物質 が最初に用いられた時点から適用されると述べている ICH Q7 は ( そのガイダンスにおいて定義される ) 適切な GMP を 原薬出発物質 が工程に導入される以降の製造工程に適用する (ICH Q7 の Q&A 1.1 を参照 ) と述べている ICH Q11 は ICH Q7 の適応範囲を 出発物質 以降に定め ICH Q7 は 原薬出発物質 以降に ICH Q7 の適用性を定めているので この 2 つの用語は同じ物質を意図して言及している ICH Q7 は 原薬出発物質 は原薬の製造に用いられる原料 中間体又は原薬であると述べている ICH Q7 は 原薬 GMP について指針を示しているが 出発物質の選定及び妥当性に関する特定の指針を示していない 化学製品を出発物質として提案する際には そのものが原薬である場合を含め 全ての ICH Q11 一般原則を考慮する必要がある Q 5.3 出発物質選定に関する ICH Q11 一般原則は 直線的合成や収束的合成における出発物質 5 / 18
の選定に適用されるのか A 5.3 適用される ICH Q11 一般原則は 直線的又は収束的な合成での出発物質の選定にも適用される 分岐ルートの収束点が適切な出発物質よりも上流に存在しない場合には ICH Q11 一般原則は 収束的合成における各分岐ルートに対して それぞれ独立して適用すべきである Q 5.4 出発物質選定に関する ICH Q11 一般原則は 中間体を単離せずに複数の化学変換を経るプロセスにも適用されるのか A 5.4 適用される ICH Q11 一般原則は 中間体を単離することなく複数の化学変換を経るプロセスにも適用される そのような単離操作 ( 例えば 晶析 沈殿 ) がない場合 不純物の管理や除去が適切に行われるように製造工程 ( 例えば 反応速度論 ) や単位操作 ( 例えば 抽出 蒸留 捕捉剤の使用 ) を設計し 承認申請添付資料に記述すべきである ICH Q11 一般原則は 一連の化学変換が連続的に実施される場合にも適用される 単離さ れていない中間体は 一般的に 適切な出発物質とはみなされない Q 5.5 ICH Q11 は 出発物質は 原薬の構造中の重要な構成部分となる と述べている それでは 明らかに重要な構成部分を含む中間体は 合成の後期に用いられる場合 出発物質として受け入れられないことが多いのはなぜか A 5.5 重要な構成部分 についての選定原則は 提案する出発物質がその原薬と構造的に類似したものであるということを意味していると誤解されることが多い しかし ICH Q11 で述べているように この選定原則は 出発物質と試薬 触媒 溶媒又は他の原材料との区別を促すことを意図している 重要な構成部分 という言葉は ごく初期又はごく後期における中間体を出発物質として選定することを指示する意図はない 提案する出発物質と原薬の間に複数の化学変換工程があり かつ ICH Q11 の一般原則に従い妥当性が示されているのであれば 提案する出発物質として市販の化学物質より下流の物質を定義してもよい 重要な構成部分 の存在を 出発物質を選定する唯一の根拠とすべきでない 重要な構成部分 であることを唯一の根拠として妥当性が説明されている出発物質は 提案する出発物質を適切に選定するための他の一般原則についても考慮される 6 / 18
べきであるため 恐らく規制当局に受け入れられないと思われる Q 5.6 市販の化学製品とカスタム合成された化学製品された化学製品の違いは何か A 5.6 ICH Q11 は 市販の化学製品とは 通常 提案する出発物質としての使用に加えて 既存の医薬品業界以外の市場を有し 汎用商品として販売されているものである と述べている カスタム合成された化学製品 の定義は ICH Q11 に示されていないが カスタム合成された化学製品とは 原薬製造業者の要求に応じて特別に自社若しくは社外で製造したもの 又は 購入可能であるが用途が医薬品製造に限られるものであると一般的には理解されている ICH Q11 一般原則の市販化学製品に関する記述において 医薬品業界以外の市場 を指定しているのは 中間体が市販の化学製品として提案されることを防ぐことを意図している ICH Q11 は 市販の化学製品と委託合成された化学製品の間に重要な区別をつけている 申請者は 一般的に 市販の化学製品を出発物質として用いる際に妥当性を示す必要はないが 提案する出発物質が委託合成された化学製品である場合は ICH Q11 一般原則に従って妥当性を示すべきである 複数の供給業者から化学製品が入手できることのみを唯一の根拠として 化学製品を市販の出発物質としてみなすことは適切ではない このことは 委託合成された化学製品が 年月を経た後に複数の供給業者から得られるようになる状況も含む そのような化学製品であっても ICH Q11 一般原則に従って出発物質選定の妥当性を説明すべきである 市販の化学製品であることが証明されている出発物質を合成の後期 例えば 原薬に至る最 後の化学変換工程に導入することは許容できる 小スケールで製造された化学製品は そのスケールが原薬製造に十分であり かつ その化 学製品が既存の医薬品業界以外の市場で用いられている場合は 市販の出発物質とするの に適しているとみなすことができる 市販の化学製品の定義を満たさないが ( 例えば 医薬品業界以外で用いていない ) 構造的に十分単純である化学製品は 出発物質として許容される場合がある ( 例えば 保護基で修飾された天然アミノ酸 ) しかしながらそのような場合にも なぜ出発物質として適切であると考えられるのか (Q&A 5.1 参照 ) なぜ提案する管理戦略が原薬の不純物を管理する上で適切であるのかを合理的に説明すべきである 7 / 18
Q 5.7 ICH Q11 は 通常 原薬の不純物プロファイルに影響を及ぼす製造工程は 承認申請添付資料の章 3.2.S.2.2 で記述される製造工程に含める必要がある と推奨している 類縁物質又は変異原性不純物が 原薬の不純物プロファイルに影響するとみなされるのは どのレベルか A 5.7 非変異原性の類縁物質について ICH Q3A での構造決定の必要な閾値は そのレベルを超えて存在する類縁物質は原薬の不純物プロファイルに影響を与えるとみなされるレベルを特定する役割を果たす ICH Q3A での構造決定の必要な閾値を超える判定基準が設定された類縁物質は 原薬の不純物プロファイルに影響を与えるとみなされる 変異原性不純物について ICH M7 での許容限度値の 30% 閾値は そのレベルを超えて存在する変異原性不純物は原薬の不純物プロファイルに影響を与えるとみなされるレベルを特定する役割を果たす このような場合 管理戦略は一般にその不純物を許容限度値以下で管理する試験を含む (ICH M7 章 8 参照 ) いずれの不純物が 30% 閾値を超えて原薬に存在すると思われるかを特定するために ICH M7 に記述されるいずれの方策もとることができる ICH M7 及び ICH S9 に述べられているように 原薬の出発物質を選定するために上述のレベルまで変異原性不純物プロファイルを特に考察する必要がない状況がある ( 例えば 原薬自体が遺伝毒性物質である場合 及び これらのガイドラインに記述されている他の状況の場合 ) そのような場合 変異原性不純物は ICH Q3A での構造決定の必要な閾値を超えていない限り 原薬の不純物プロファイルに影響するとはみなされない 製造プロセスの複数の工程にわたって持続される不純物については Q&A 5.8 も併せて考 察すること Q 5.8 ICH Q11 の例 4 において 持続される 不純物とは 何を意味しているのか A 5.8 ICH Q11 は 通常 原薬の不純物プロファイルに影響を及ぼす製造工程は 承認申請添付資料の章 3.2.S.2.2 で記述される製造工程に含める必要がある と推奨している しかし ICH Q11 の例 4 で記述されているように 出発物質より前の合成段階において生じた不純物が 原薬に至る複数工程にわたって 持続される とき この原則を必ずしも適用する必要はない 出発物質の持続性不純物に対する妥当性は その不純物が提案する出発物質の上流の一つ又はそれ以上の製造工程にわたって持ち越されること かつ その製造工程が持続 8 / 18
性不純物以外には原薬の不純物プロファイルに影響を与えないこと ( 影響 については Q&A 5.7 を参照 ) に基づいていることが通常想定される 例 4 では 化合物 B 中の不純物は 原薬の不純物プロファイルに影響を与える ステップ 2 及び 3( 化合物 B から化合物 D まで ) では 原薬の不純物プロファイルに影響する他の不純物は生成しない ステップ 2 又は 3 において生成する不純物が原薬の不純物プロファイルに影響を与えるならば これらのステップは承認申請添付資料の章 3.2.S.2.2 に含まれるべきである 持続される不純物 は その後の工程で反応する場合又は反応しない場合があるが それらが原薬の不純物プロファイルにはもはや影響を与えないものと考えられる程度までには除去されることはない 例えば 持続される不純物 は 他の中間体又は原薬と類似した物理的化学的な特性 ( 溶解性等 ) を有することがあり 例 4 における対掌体のように その除去は本質的に困難となる場合が考えられる ICH Q11 の例 4 は 合成経路中に持続される不純物が含まれているとき その不純物が原薬の不純物プロファイルに影響を与える場合であっても 出発物質の規格で管理することが許容される場合があるということを示している したがって 他の ICH Q11 一般原則が十分に考慮されている場合 そのような不純物が生成される工程を必ずしも章 3.2.S.2.2 に含む必要はない (ICH Q11 の第 5.1.1 章 ) 例 4 は 立体異性体に限定されるものでなく 他の種類の持続される不純物にも適用できる 例 4 においては 出発物質 D から原薬までに 3 つの化学変換工程が存在する 例 4 における 3 つの工程は すべての場合において 化学変換工程として 3 工程あれば十分である (Q&A 5.11 を参照 ) ことを意味するものでなく また 3 工程が必須であることを意味するものでもない 例 4 の場合では ICH Q11 の一般原則が適用される際に 提案する出発物質 D の規格による対掌体の管理と D の直前の工程は原薬の不純物プロファイルに影響を与える他の不純物を生成しないという理解とが共に考慮される 申請者は 持続される不純物の管理戦略も含め 提案する出発物質の妥当性を説明するために 承認申請添付資料に出発物質より上流工程の情報を示すべきである Q 5.9 申請者は 出発物質の選定及び妥当性を示す一環として どの製造工程が原薬の変異原性 不純物プロファイルに影響を及ぼすかを決定するときに何を考慮すべきか 9 / 18
A 5.9 どの製造工程が原薬の不純物プロファイルに影響するのかを決定する一環として 申請者はまず 製造プロセスにおいて生成又は導入される可能性の高い変異原性物質を特定する必要がある また 申請者は どの工程が不純物プロファイルに影響を与えるとみなされるレベルで原薬中の変異原性不純物に寄与しているかを判断すべきである (Q&A 5.7 参照 )) ICH M7 ガイドラインのハザード評価の要件は 実際の不純物及び潜在的不純物のうちど の不純物が 変異原性不純物とみなされるかを判断するのに用いることができる 出発物質の選定及び妥当性を示すために 次の取組みを推奨する : 構造決定された原薬中の不純物 ( 実際の不純物 ) は 変異原性を評価すること 市販の化学製品から原薬に至る合成中に用いられる試薬及び中間体については それらが原薬の不純物プロファイルに影響する可能性があれば 変異原性を評価すること 最終的に提案する出発物質より前の工程で用いられる試薬及び中間体の変異原性を評価することも含まれる場合があることに留意すること 変異原性物質が市販の化学製品又は合成中間体に含まれている場合や 合成の副生成物として生成する場合もあり それらの変異原性物質が安全性に係わるレベルで原薬中に存在する可能性もある しかし そのような変異原性不純物や副生成物は 試薬 溶媒及び中間体よりも通常は十分に低濃度でしか存在しない したがって そのような不純物が初期反応工程から原薬中に著しく持ち越されるリスクは 同一の反応工程から試薬 溶媒又は中間体が持ち越されるリスクよりも低い 申請者は この種の潜在的不純物に関するハザード評価において どの工程を含めるかを判断するために リスクベース推論の手法を用いるべきである また 変異原性評価の際にこれらの不純物及び副生成物を含む合成経路上の箇所を特定する場合 リスク評価の考察を含めるべきである 潜在的な変異原性不純物の評価中に得られた情報は 承認申請時に提出することができ 多様な目的で価値がある場合がある 例えば 提案する出発物質の妥当性の説明は その提案する出発物質のすぐ上流 ( 即ち 合成の早期 ) の工程が原薬の不純物プロファイルに影響を与えないことを実証する情報を含むべきである また 提案する管理戦略の適切性は 提案する出発物質から原薬までの製造工程で生成又は除去される変異原性不純物についての情報や提案する出発物質の規格で管理される変異原性不純物についての情報により支持される 持続される 不純物に関する ICH Q11 の例外は 変異原性不純物にも適用できる (Q&A 5.8 参照 ) さらに 変異原性の試薬又は不純物を含む工程が原薬の不純物プロファイルに影響しない場合 その工程は出発物質よりも上流の工程としてよい (Q&A 5.10 参照 ) 10 / 18
本 Q&A で概説している取組みは ハザード評価 変異原性不純物のリスクの特性解析及びその管理に関して ICH M7 における原則と一致している しかし ICH M7 は 適切な出発物質の選定の妥当性を示すために 変異原性不純物の評価がどのように用いられるべきかについて特別な指針を与えていない 本 Q&A は ICH Q11 の原薬の不純物プロファイルへの影響に関する概念に基づき 出発物質の選択及び妥当性に対して ICH M7 の原則の適用に対応している 本 Q&A は ICH M7 が適用されない種類の原薬及び効能 ( 例えば 遺伝毒性のある原薬 ICH S9 が適用される進行がんの効能 ) を対象としない Q 5.10 変異原性の試薬や不純物を含むすべての工程 もしくは位置化学や立体化学における配置を確立するすべての工程は 承認申請添付資料の章 3.2.S.2.2 の製造工程の記述に含める必要があるか A 5.10 すべてを章 3.2.S.2.2 に含める必要はない 出発物質を選定する ICH Q11 一般原則は 変異原性の試薬又は不純物を含む全ての工程を章 3.2.S.2.2 の製造工程の記述に含むことを推奨しているものではない 同様に ICH Q11 一般原則は 位置化学又は立体化学の配置を確立する ( したがって 位置異性又は立体異性となる ) 全ての工程を章 3.2.S.2.2 に含むことを推奨しているものでもない しかし 変異原性の試薬又は不純物を含む工程 もしくは位置化学又は立体化学の配置を確立する工程を ( 章 3.2.S.2.2 に ) 含める必要があるかどうかを決定するとき 不純物 (Q&A 5.7 5.8 及び 5.9) 及び十分な製造工程の記載 (Q&A 5.11) に関する他の ICH Q11 一般原則を適用することが求められる 例えば ICH Q11 一般原則に適合している場合 通常 変異原性の化合物を出発物質以前の工程に導入すること 又は変異原性の化合物自体を出発物質とすることができる Q 5.11 ICH Q11 には 原薬の製造工程を承認申請添付資料に十分に記述する必要がある と記述されている 申請者は 承認申請添付資料の章 3.2.S.2.2 に原薬の製造工程を十分に記載することを保証するために 提案する出発物質を選択する際にどのような考え方を適用すべきか A 5.11 原薬の製造工程が承認申請添付資料の章 3.2.S.2.2 に十分に記載されているか否かを決定する際に 下記の考察を適用すべきである 11 / 18
まず始めに 申請者は 製造工程中のどの化学変換工程が原薬の不純物プロファイルに影響 を与えるかを評価すべきである これらの工程は通常章 3.2.S.2.2 に記載されるべきである (Q&A 5.7 5.8 及び 5.9) 次に 申請者は 原薬の不純物プロファイルに影響を与える工程の上流に位置する直近の数 工程を綿密に調査すべきである これらの工程が下記に相当する場合には これらの工程も 通常章 3.2.S.2.2 に含まれるべきである これらの工程が 原薬の不純物プロファイルに影響を与えることが想定される不純物の発生を防止するために 慎重に管理 ( 例えば 狭いパラメータの幅で ) される必要がある場合 これらの工程が 原薬の不純物プロファイルに影響を与えることが想定される特定の不純物を管理するために 製造工程に追加された単位操作を含む場合 出発物質の製造工程は 通常精製操作を含んでいるものの 早期の 上流の化合物を出発物質と定義することを避ける目的で 提案する出発物質の前に精製工程を追加することは 適当とはみなされない さらに これらの考察の後にも 評価の結果として少数の化学変換工程しか記述されない場合には より上流の 1 工程以上の化学変換工程を 章 3.2.S.2.2 に追加で含めることが一般的には適切である このことは 汚染や出発物質の合成ルートや供給業者の将来の変更に伴うリスクを適切に低減するために 十分な工程が GMP の下で実施されることを保証するためである 以下にこのリスク低減に関してより詳細な説明を与えるので 合わせて考慮すべきである ICH Q11 においては GMP の下で実施されるべき工程数に関しては特定していないが 汚染のリスクを低減し また製品のライフサイクルにわたり管理戦略の効果的な実行を支持するために 章 3.2.S.2.2 に 複数の化学変換工程 を含めることを推奨している 少数の工程しか GMP の下で実施されない場合では 申請者が出発物質の妥当性を説明する際に対処する必要のある汚染のリスクが増大しており そのリスクは 1 工程以上の工程を章 3.2.S.2.2 に追加で含めることにより しばしば最も良く低減される 出発物質の合成方法の将来の変更による潜在的なリスクも考慮されるべきである (Q&A5.16 参照 ) 出発物質が原薬から少数工程しか離れていなければ 出発物質より上流の製造工程の変更の結果として生成した不純物が検出されないか 適切に除去されないかもしれないというリスクが増大している 含めるべき追加工程数を決定するためには 申請者はその他のリスク低減の方策を考慮しても良い 例えば 提案する出発物質の規格及び試験方法として 物理的 化学的に異なる分離や検出の原理に基づき 12 / 18
広範な潜在的不純物を検出できる分析方法を設定することがこの方策に該当する こ の際 個別規格を設定しない不純物に対して適切な判定基準を含めるべきである 申請者は リスクを適切に低減したことを保証するために 原薬の製造工程を十分に承認申 請添付資料の章 3.2.S.2.2 に記述しているか否かを判断する際にどの要因が考慮されたかに 関する包括的な記述を 提案する出発物質の妥当性の説明の中に含めるべきである Q 5.12 出発物質の規格設定には 何を考察することが重要か A 5.12 申請者は 原薬の管理戦略の一環として すべての提案する出発物質に対する規格 ( 試験の一覧表 試験方法に関する情報 適切な判定基準を含む ) を示し その妥当性を説明すべきである 出発物質の規格は 確認試験及び純度試験 ( 例えば 不純物の管理 ) を含むべきであり また適宜 定量 個別規格設定不純物 個別規格を設定しない不純物 不純物の総量 残留溶媒 試薬 元素不純物及び変異原性不純物に関する判定基準を含むことができる 用いられる分析方法は 適切にバリデートされているべきである 試験及び判定基準は 工程知識及び原薬の管理戦略に基づいて設定するべきである 規格の妥当性の説明には 以降の工程における不純物のリスクの評価と不純物を適切に管理あるいは除去する能力に関する評価を含むこと Q 5.13 市販の化学製品でない出発物質については 合成経路に関してどのような情報を提出すべきか A 5.13 提案する出発物質の製造方法に関する情報 ( 例えば 使用される試薬 触媒及び溶媒のすべてが示されている出発物質の製造工程の流れ図 ) は 出発物質に適用する管理の妥当性を説明することに役立つため 提出すること 提案する出発物質に含まれる実際の不純物及び潜在的な不純物についての情報も提出すること Q 5.14 市販の化学製品である出発物質について どのような情報を承認申請添付資料に含む必要があるか A 5.14 申請者は 一般的に 市販の化学製品を出発物質として用いることについて妥当性を示す必 13 / 18
要はない (ICH Q11 の第 5.2.1 章を参照 ) しかし 申請者は 出発物質に関する基本的な情報 ( 化学名 化学式及び分子量 ) 出発物質の不純物プロファイルの情報及び出発物質の規格の妥当性が原薬製造工程の管理戦略によってどのように説明されているかについて 提出する必要がある 原薬の製造業者が 市販の出発物質の品質の一貫性を保証するために 追加の精製工程を実 施する必要がある場合 ICH Q11 は 追加された精製工程を原薬製造工程の一部として章 3.2.S.2.2 に含めることも推奨する 申請者は 科学的な知識と利用可能な情報に基づき 提案する出発物質に実際の不純物及び 合理的に予想される潜在的な不純物に対して適切な管理を設定し また 提案する規格の妥 当性を示すべきである ICH M7 は 原薬合成の後期に用いられる出発物質 ( かつ その出発物質の合成ルートがわかっている場合 ) については その出発物質の合成の最終段階の工程について潜在的な変異原性不純物に関する評価を行うべきである と述べている 出発物質が市販の化学製品である場合にも 適切な管理戦略を定めるために 最終段階の工程での変異原性不純物に関する評価を用いることができるだろう 全ての出発物質に対して 申請者は 適切な管理を設定し 提案する規格の妥当性を示すべ きである Q 5.15 ICH Q11 におけるライフサイクルマネジメントの章 ( 第 9 章 ) は 出発物質のライフサイクルマネジメントに適用可能か A 5.15 適用可能である 定義された出発物質の上流における変更は 承認申請添付資料で提出した事項に加えて 申請者の医薬品品質システム (PQS) によって管理され その管理により原薬品質の残存リスクは対処されるべきである ICH Q11 のライフサイクルマネジメントの章は ICH Q10 に示されている経営陣の責任を補強するものであり 出発物質のライフサイクルマネジメントに適用できる ICH Q10 の第 2.7 章 ( 外部委託作業及び購入原材料の管理 ) は 医薬品品質システムは 本章で記述されている経営陣の責任も含め あらゆる外部委託作業並びに購入原材料の質の監督及びレビューにまで及ぶものである 製薬企業は 外部委託作業及び購入原材料の質の監督を保証するためのプロセスが実施されていることを確実とする最終的な責任を負う ことを推 14 / 18
奨している ICH Q7 の第 7 章 ( 原材料等の管理 ) と第 13 章 ( 変更管理 ) ICH Q7 の Q&A 文書の第 7 章と第 13 章及び ICH Q10 の第 2.7 章 ( 外部委託作業及び購入原材料の管理 ) は 出発物 質及び出発物質の供給業者の管理に適用可能な指針を示している ICH Q9 及びその付属書は 出発物質に関連する変更 ( 例えば 新規の出発物質供給業者 製造工程又は規格 ) に適用可能な品質リスクマネジメントに関する原則の使用の指針を示 している Q 5.16 ICH Q11 は 出発物質の上流工程に関して 承認後変更のための特定のガイダンスを含んでいるか ( 例えば 合成経路 試薬 溶媒 出発物質供給業者の変更 ) A 5.16 含まない 出発物質の上流工程の承認後の変更は ICH Q11 では明確には対象とされていない しかし ICH Q11 は 出発物質以降の工程の承認後の変更が及ぼす影響を評価するために用いる 科学及びリスクに基づく基本的な概念を示しており (ICH Q11 第 9 章ライフサイクルマネジメント ) 出発物質の上流の変更による影響を評価する際にも同様の概念を適用すべきである 例えば 出発物質上流の変更が出発物質に与える影響 ( 例えば 潜在的な変異原性不純物や元素不純物を含め 現在の不純物及び潜在的な新たな不純物 ) 及び該当する場合は原薬への影響についても評価すべきである その評価は 提案する変更に関するリスク評価及び科学的な理解 並びに出発物質への近接度に基づくことができる その評価は 管理戦略の評価を含むべきである ( 例えば 出発物質の規格の妥当性 新たな不純物を検出する分析法の能力を含む ) ICH Q7 の Q&A 文書の第 13.1 章で述べているように サプライチェーン上の各関係者は 品質又は規制上の変更に関連する情報を サプライチェーン上の次の顧客に伝達する責任 がある このことは その情報を製剤の製造業者にまで適時に伝達するためである 出発物質に関連する情報の承認後変更は 各極の規制及びガイドラインに従って規制当局 に報告する必要がある 6. 管理戦略 15 / 18
7. プロセス バリデーション / プロセス評価 8. コモン テクニカル ドキュメント (CTD) 様式での製造工程開発上法及び関連情報の 提出 9. ライフサイクルマネジメント 10. 図解例 11. 用語 12. 付録 1: ディシジョンツリー本ディシジョンツリーは 全ての ICH Q11 一般原則を適用して出発物質 (SM) の選定と妥当性の説明をする際の図解例として示されている 本ディシジョンツリーは 単独で使うというよりはむしろ ICH Q11 と本 Q&A 文書に記載されている説明と合わせて使用するべきものである ディシジョンツリーのパート 1 は 提案する出発物質の化学構造の観点からの評価に焦点を当てている パート 2 は どの製造工程が原薬 (DS) の不純物プロファイルに影響を与えるか 適切な SM を選択する際に十分な製造プロセスが GMP 下で実施されているかを判断することに焦点を当てている 16 / 18
パート 1 工程知識に基づき予定する商業用プロセスの各分岐ルートを評価 (Q&A 5.3 参照 ) 提案する SM の化学的性質と構造は特定されているか No SM を再定義 Yes 提案する SM は重要な構成部分として原薬に取り込まれるか? (Q&A 5.5 参照 ) Yes 提案する SM は既存の医薬品業界以外の市場における汎用商品か? (Q&A 5.6 参照 ) No パート 2 に移動 No Yes 試薬である SM を再定義 SM として提案してよい (Q&A 5.12, 5.14, を参照し 管理戦略を支持すること ) 17 / 18
パート 2 提案する SM の上流や下流の工程が DS の不純物プロファイルに影響を与えるか否かを評価するために 予定する商業用プロセスの工程知識に基づき DS の不純物プロファイルを調査する (Q&A 5.7, 5.9, 5.10 参照 ) 提案する SM の上流工程は DS の不純物プロファイルに影響を与えるか? (Q&A 5.7, 5.9 参照 ) Yes 工程を追加し SM を再定義 No それらの工程では持続性不純物のみが生じているのか? (Q&A 5.8 参照 ) 1. 一般的にそれらの工程を含め工程を追加し SM を再定義 Yes No 提案する SM の直近の上流工程は慎重に管理する必要があるか あるいは Q&A 5.11 に示されるような特別な単位操作を含むか? Yes No 章 3.2.S.2.2 に少数の化学変換工程のみが記載されているか? (Q&A 5.11 参照 ) Yes 一般的に 1 工程以上の化学変換工程を章 3.2.S2.2 に追加して SM を再定義すべきである 追加工程数を決定するために 他のリスク低減の方策を考慮してもよい (Q&A 5.11 参照 ) No SM として提案してよいだろう (Q&A 5.11, 5.12, 5.13 を参照し 管理戦略を支持すること ) 18 / 18