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目次 I. 実証課題の名称と実施場所... 1 1. 実証課題の名称... 1 2. 実施事業体の名称... 1 3. 事業実施場所... 1 II. 事業の実施内容... 2 1. 実証課題の目的... 2 2. コストダウンについての目標... エラー! ブックマークが定義されていません 3. 実証事業の内容... 2 4. コストダウンについての目標等... 2 5. 実証調査の実施体制... 3 6. 事業概要... 3 7. ロープの仕様... 5 8. チョーカー仕様... 7 III. 実証調査項目及び方法... 8 1. 功程調査... 8 2. 引き出し試験... 8 IV. 調査結果... 9 1. 繊維ザイルとワイヤロープとの生産性比較... 9 2. 繊維ザイルとワイヤロープの労働負担比較... 16 3. ザイルの損傷と強度... 17 4. チョーカー集材の生産性 ( 下げ荷 )... 21 V. まとめと今後の課題... 23 1. まとめ... 23 2. 今後の課題... 24 VI. 謝辞... 25 VII. 参考資料... 26 1. 破断試験結果... 26 2. 試験体の外観... 27

I. 実証課題の名称と実施場所 1. 実証課題の名称 超高強力ポリエチレン繊維ザイルとチョーカーワイヤを使用したウィンチ集材 2. 実施事業体の名称 前田林業株式会社 3. 事業実施場所 (1) 流域名吉井川流域 (2) 所在地津山市加茂町大字下津川 (3) 森林の所有者前田林業株式会社 (4) 森林の現況 表 1 事業実施森林の概況 面積 約 2.5ha 樹種 アカマツ 林齢 39 年生 ~42 年生 伐採方法 皆伐 施業現場は標高 800m 以上であり マツノザイセンチュウの被害が拡大する恐れがあったため 皆伐を行った (5) 施業図 図 1 施業図 ( 図中赤色部分が今回の事業実施場所 ) 1

II. 事業の実施内容 1. 実証課題の目的新生産システムでは 流通体制の構築とともに 素材生産コストの削減が目標の一つとなっている 高密度路網においては グラップル集材が主流であるが 集材はグラップルのアームと樹高程度の範囲となり 集材可能範囲は限られる 現在 低コスト作業を実施する事業体でも グラップルで集材可能な範囲のみ施業を実施して 採算を合わせているに過ぎない事業体も少なくない ウィンチを使用した場合 集材可能範囲を広げることが可能であるが ワイヤの引き出しに時間と労力がかかり 労働生産性は極端に低下することが課題となる 今回 ワイヤロープに替わり 超高強力ポリエチレン繊維ザイルを使用することにより ウィンチ索の引き出し作業を容易にすることが可能である またチョーカーを使用することにより複数本の木材を同時に引き寄せることも可能である それらによって ウィンチ集材のコストダウンを図ること ウィンチ集材の作業者の負担を低減することを目的とした 2. 実証調査の内容超高強力ポリエチレン繊維ザイルとチョーカーを使用することによる生産性の向上 集材コストの削減効果を把握するため 以下の作業について サイクルタイムの測定 および作業時間 出材量の計測を行った 通常のウィンチ集材と玉掛けワイヤによる単木集材 チョーカーを使用した複数の木材のウィンチ集材 超高強力ポリエチレン繊維ザイルでのウィンチ集材 超高強力ポリエチレン繊維ザイルとチョーカーを使用した複数の木材のウィンチ集材また 作業路開設から集材作業のトータルコストの計測も行った 3. 実証事業の内容実証事業は 高密度路網の林分で バックホウ ( 造材時ハーベスタに交換 ) チェンソー ウィンチ付グラップル ハーベスタ フォワーダを使用したシステムにより行った まず バックホウにより作業路を開設し その後 チェンソーによる伐採 グラップルに取り付けたウィンチによる集材 ハーベスタによる枝払い 玉切り フォワーダによる積込 運材を行った ウィンチ集材には超高強力ポリエチレン繊維ダイニーマのロープを使用した またウィンチ集材時に複数の材を同時に集材できるようにチョーカーワイヤを使用した 4. コストダウンについての目標等現在の前田林業株式会社の集材コスト ( 委託作業 ) は 7,000 円 /m 3 である 今回は 作業路開設を含め自社作業員により実施し 集材コストは作業路開設込みで 7,000 円 /m 3 ウィンチ集材では 6,000 円 /m 3 を目標とする 2

5. 実証調査の実施体制 以下の体制で調査を行う 表 2 実施体制 役割 所属および役職 氏名 前田林業 ( 株 ) 専務取締役 前田多恵子 前田林業 ( 株 ) 主任 斉藤純一 調査および報告書作成 京都大学大学院農学研究科森林科学専攻森林利用学分野 博士課程 杉本和也 京都大学森林科学科森林利用学研究室 4 回生 福井遼 指導 京都大学大学院農学研究科森林科学専攻森林利用学分野 助教 長谷川尚史 アドバイザー 三菱 UFJリサーチ & コンサルティング ( 株 ) 6. 事業概要 (1) 作業システム図 2の作業システムで今回の事業を行った 繊維ザイルを用いた実証試験では スイングヤーダに付属するHAL( ホールライン ) HBL( ホールバックライン ) のドラムのうち HALのみに繊維ザイルを巻いて集材を行った 繊維ザイルを巻いたドラムを図 3に示す ホールラインは引寄せ索に用い ホールバックラインは引戻し索に用いる 2 胴あるスイングヤーダのドラムのうちホールラインは下部のドラム ( 図 4 参照 ) 図 2 今回の作業システム 伐倒 (1 人 ~2 人 ) チェンソー 作業道までの木寄せ (1 人 ) スイングヤーダ 枝払 造材 (1 人 ) プロセッサ 積込 運搬 椪積 (1 人 ) フォワーダ 3

図 3 繊維ザイルを巻いたドラム 図 4 HAL と HBL 4

7. ロープの仕様 (1) 超高分子量ポロエチレン繊維ダイニーマ の概要ダイニーマ は超高分子量ポリエチレン (UHMWPE:Ultra High Molecular Weight Polyethylene) を繊維化したもので 日本では オランダDMS 社と東洋紡の合弁会社 ( 日本ダイニーマ ) が 生産を行っている アメリカの Honeywell 社では Spectra という異なる製法で作った UHMWPE 繊維を生産している (2) ダイニーマの特徴 素材の性質は 表 3 のとおりである 表 3 ダイニーマとスチールの比較 組成分類 ポリエチレン スチール 商品名 ダイニーマ メーカー 東洋紡 強度 (kn/mm 2 ) 2.65 3.04 1.47 伸度 (%) 3.0-5.0 2.0 弾性率 (kn/mm 2 ) 86.3 123 199 比重 0.98 7.83 1 比重 0.98 であり 水に浮くほど軽い 注 ) 上村 1 (2001) を元に作成 2 強度 引張強度がスチールの約 2 倍である 3 素線の太さ 10μm であり 素線単位では磨耗に弱い 4 耐熱性 軟化点は 148 度であり 他の繊維ザイル ( ケプラー 430 度ベクトラン 400 度 ) と比較して低い 5 吸水性 繊維は吸湿性がないが 繊維間への水の浸透により 重量が重くなる場合がある 湿強度 / 乾強度は 100% であり 水が入り込むことにより 強度が低下することはない 6 弾性率 弾性率がワイヤロープの約 2 分の 1 であるため 屈曲性に優れている 1 上村巧 (2001) ワイヤロープ軽量化について - スーパー繊維ロープ -. 機械化林業 570:20-24 5

7 ロープの伸び率 繊維ザイルの伸び率は 3~5% であり ナイロンロープが 30% と比較すると低い 8 耐紫外線 紫外線により 分子量が減少し強度の低下が起きる ただし紫外線の照射を受けるのは 表面であ り 径を大きくすることで 強度低下の影響を軽減することができる 図 5 紫外線による強度の低下 注 ) 東京製綱繊維ロープ ( 株 ) カタログより引用 9 他の使用方法 軽いため 係留ロープによく利用されている ワイヤロープをダイニーマにすることで持ち運びにかかる作業人員を減らすことができ 阪神 淡路大震災後の神戸港復活に一役買った また伸度が小さい特徴を活かして 釣り糸に利用されている 水深があるところでは 通常のナイロンの釣り糸を使用した場合 糸が伸びて魚の反応が伝わらないが ダイニーマを使用すると 魚の反応が釣り竿に直接伝わる それ以外にもゴルフネットなど幅広い分野に応用されている (3) ロープの仕様 今回の実証事業で使用したロープは ワイヤ 繊維ともに直径 10mm である ストランド数は 12 である 繊維ザイルはダイニーマを素材にした Grube 社製ダイナフォースである 繊維ザイルの価格は m あたり 722 円である (m あたり 5.55 1=\130 として換算 ) 表 4 ロープの仕様の比較 ダイナフォース ワイヤロープ 太さ (mm) 10 10 破断強度 (tf) 110-122 59.2-67.7 重量 (100mあたりkg) 6.0 39.6 価格 722 円 約 350 円 注 ) ワイヤロープの破断強度 重量は浪速 2 製鋼 ( 株 )HP のワイヤロープ規格表 6 Fi(29) を参考にした 2 浪速製鋼株式会社ワイヤロープ規格表.http://www.naniwa-wire.co.jp/rope_01.html(2009/03/03) 6

(4) 先端加工先端には通常アイスプラス加工を施す ( 今回の実証調査では もやい結びで先端加工を行った ) ロープ会社からのインタビューでは 先端加工の方法によりロープ強度が異なり もやい結びでは強度は 3 割程度低下するとのことであった 8. チョーカー仕様チョーカーの使用方法を図 6に示す ワンタッチで荷掛けと荷外しがワンタッチでできるため 作業時間が短縮できると考えられる 荷外しについて チョーカーを使用した場合 ワイヤロープの先留め金具を外すだけで荷掛けが完了するのに対し 玉掛けワイヤの場合 両端がアイスプラス加工で図中の A と B の部分が輪になっているため 両方の輪を抜く必要がある ワイヤ先留 A B ロープフック チョーカースライド 使い方 1. チョーカー先端の留め金具を木材の下にくぐらせて チョーカースライドに装着する 2.B のところでもう片方の留め金具をロープフックに装着して 荷掛けが終了 3. 赤い矢印の方向にロープが動くと 緑の矢印の方向にチョーカーワイヤが動いて A がしまる 4. 荷外しは A の留め金具を外すと終了 ロープフックを複数個使うことで 複数本のチョーカーワイヤの使用が可能 図 6 チョーカーの使い方 チョーカーと玉掛けワイヤの比較を表 5 に示す 表 5 チョーカーと玉掛けワイヤの仕様 器具名称 重さ (kg) 長さ (cm) ワイヤ径 (mm) 価格 ( 円 ) チョーカー 1.58 140 12 2578 チョーカー金具 0.66 玉掛けワイヤ 0.55 140 9 426 注 ) チョーカーの価格は 19.83 であり 日本円に換算した ( 1=\130) 7

III. 実証調査項目及び方法 1. 功程調査繊維ザイルとワイヤロープの生産性を 上げ荷 下げ荷それぞれで比較するため 0.05ha のプロットを 4 つ設定し 毎木調査を行った 毎木調査の結果を表 6に示す ウィンチ集材の調査時は ビデオカメラにより作業を撮影し 後ほど映像を見ながら作業を要素作業ごとに区分した なお繊維ザイルとワイヤロープとの比較では 玉掛けの際はチョーカーではなく従来の玉掛けワイヤを使用した 表 6 調査プロットの概況 平均 DBH 24.2cm 平均樹高 14.6m 立木密度 1876 本 /ha 伐倒方法 皆伐 ( 下側伐倒 ) 平均傾斜 27.2 度 ( 上げ荷 ) 16.9 度 ( 下げ荷 ) 2. 引き出し試験 ワイヤロープと繊維ザイルを使用した場合の労働負荷を比較するため ロープの引き出し試験を行い 心拍数の比較を行った 心拍数の評価指標には山田 3 (1997) が推奨する予想心拍水準を採用した 3 人の被験者に対して それぞれ ワイヤロープの引き出し 繊維ザイルの引き出し 何も持た ず の 3 種類の引き出し試験を行い 作業終了時の心拍数を計測した 心拍数の計測は Globalsat 社の 心拍数モニター GH-615M を使用した 3 人の身体データを表 7 に示す 引き出し試験を行う場所は 下り ( 傾斜 18 ) 平地 ( 傾斜 0 ) 上り ( 傾斜 18 ) の 3 箇所で行った 引き出す距離はいずれも 50m とし 所要時間は傾斜別に表 8 のようにした 表 7 被試験者の身体データ A B C 年齢 34 24 22 林業経験年数 12 0 0 身長 (cm) 192.4 169.2 179.5 体重 (kg) 75.5 62 61.0 表 8 引き出し試験時の所要時間と歩行距離 傾斜 所要時間 歩行距離 時速 上り 18 75 秒 50m 2.4 km/h 平地 0 60 秒 50m 3.0 km/h 下り 18 50 秒 50m 3.6 km/h 3 山田容三 田口貞善 (1997) 森林作業研究における心拍数評価法の統計的検討. 日本林学会誌 79:1-8 8

IV. 調査結果 1. 繊維ザイルとワイヤロープとの生産性比較 ロープによる作業時間の違いをはっきりさせるため ワイヤロープ 繊維ザイルそれぞれの集材作業 にかかった時間を各要素作業に区分し 要素ごとで作業時間の比較を行った 要素作業は表 9 のよう に区分した (1) 引き出し速度 ( 上げ荷 ) 表 9 ウィンチ集材の要素作業の区分 単位要素 要素作業 単位要素 要素作業 引出し 引出し 荷掛け 荷掛け 遅延 退避 引寄せ 引寄せ 遅延 遅延 荷下し 荷下し 荷外し 荷外し 遅延 遅延 その他 その他 材整理 材整理 上げ荷集材における集材距離と引出し時間の関係を図 7 に示す 図中の数字は木の番号を示して いる それぞれの回帰直線の傾き すなわち引出し速度はワイヤロープで 0.62m/s 繊維ザイルで 0.64m/s となり ほぼ等しかった 速度が同じになった理由として 今回使用したドラムがフリーに出来な い仕様であり ドラムの引出し速度が規定されたことが原因と考えられる 45 40 集材距離 (m) 集材距離 (m) 45 40 18 35 30 25 20 15 10 5 0 1 15 14 17 10 9 8 6 7 11 4 3 2 5 18 23 22 21 16 y = 0.6222x R 2 = 0.8701 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 35 30 25 20 15 10 5 0 2 1 4 3 7 6 5 21 19 15 16 12 14 10 13 20 11 17 y = 0.6392x R 2 = 0.9458 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 引出し時間 (s) 引出し時間 (s) 図 7 引き出し速度 ( 左 : ワイヤ上げ荷右 : 繊維上げ荷 ) 9

(2) 引出し速度 ( 下げ荷 ) 図 8は下げ荷における引出し速度を示している 上げ荷と同じく 下げ荷においても 引き出し速度に差はみられなかった 調査前の仮説では 特に下げ荷ではロープを斜面上部に向かって引き出すことになるため 繊維の方が速いのではないかと考えられたが これもほぼ同じ速度であった ( ともに 0.50m/s) この理由として 作業者が引き出し時に歩く速度は ロープの重さによって変わらないこと また 今回使用したスイングヤーダが ドラムをフリーに出来ない仕様のため 引き出し速度が同じであったことが理由と考えられる 今後 ドラムをフリーに出来る仕様のものを用いることで 上げ荷 下げ荷両方において ワイヤロープと比較して 繊維ザイルの引き出し速度の向上が期待できる 45 40 35 30 25 20 15 10 5 集材距離 (m) 2 y = 0.5025x R 2 = 0.9537 1 3 4 7 5 6 12 14 11 13 45 40 35 30 25 20 15 10 集材距離 (m) 5 y = 0.5024x R 2 = 0.9543 2 3 1 4 5 7 6 14 11 10 8 12 9 13 16 0 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 引出し時間 (s) 0 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 引出し時間 (s) 図 8 引き出し速度 ( 左 : ワイヤ下げ荷右 : 繊維下げ荷 ) (3) 荷掛けと荷外し ( 荷外し時間は 荷下し時間との合計 ) 図 9に荷掛け作業にかかった時間の頻度分布を示す 上げ荷では ワイヤロープによる荷掛け作業の方が 繊維による作業よりもやや短い傾向が見られた一方 下げ荷では繊維ザイルの作業時間が明らかに短かった 荷外し作業の時間分布 ( 図 10) は 上げ荷ではロープ間に大きな違いは見られなかったが 下げ荷では分布のばらつきに違いが見られた 下げ荷では 木の先端に荷掛けを行うが アカマツの特徴として 木の先端の形状の個体差が大きく 荷掛けや 荷外しが行いにくいものがあったと考えられ 分布のばらつきが発生したと考えられる そのため 今回の分布のばらつきの違いは ロープの違いではないと考えられる 10

繊維ザイル ワイヤロープ 繊維ザイル ワイヤロープ 図 9 荷掛け時間の頻度分布 図 10 荷外し時間の頻度分布 11

図 11に作業ごとの平均所要時間を示す バーは標準偏差である 上げ荷と下げ荷の作業についてワイヤロープを使った場合と繊維ザイルを使った場合の作業時間に差があるか t 検定を行った ただし作業時間は対数正規分布しているとみなし, 作業時間を対数化して検定を行った その結果 下げ荷の荷掛け作業で有意な差が見られた (t=2.9369 自由度 25 p=0.0035) すなわち 下げ荷の場合 繊維ザイルを使用することにより明らかに作業時間が短縮されている 下げ荷では荷掛け位置が木の先端近くで 枝などが邪魔になるためロープを取り回す必要があり 軽量かつ屈曲性に優れた繊維ザイルの方が有利であったと考えられる 上げ荷の場合 今回は斜面下方に伐倒したが 斜面上方に伐倒した場合は 木の先端に荷掛けするため 屈曲性に優れた繊維ザイルでは ワイヤロープと比べて作業時間が短縮されると考えられる 時間 ( 秒 ) 荷掛け 荷外し 図 11 作業ごとの平均所要時間 (4) トラブル時間について 1 乱巻きの発生 ( ワイヤロープで多く発生 ) 集材作業中のトラブルの発生状況と処理にかかった時間を表 10に 各要素の平均作業時間の合計を図 12に示す 上げ荷ではともにほとんどトラブルはなかったが 下げ荷ではいずれも乱巻きによるトラブルが発生した ワイヤロープの場合 下げ荷集材で乱巻きが発生しやすく その処理や防止のために長い時間が費やされた 一方 繊維ザイルでも乱巻きは発生したが 乱巻き防止のために時間が取られることは少なく また乱巻き発生時の処理時間もワイヤロープに比べて短かった この理由として 繊維ザイルの方が屈曲性に優れるために乱巻きが起きにくく また軽量であるためにトラブルの処理にかかる 12

時間 (s) 時間が短縮されたものと考えられた 表 10 ロープに起因するトラブルの詳細と処理にかかった時間 内容 時間 (s) ワイヤ上げ 無し 0 ワイヤ下げ ドラム乱巻き 478 乱巻き防止の引出し 114 乱巻き防止の引出し 47 乱巻き防止の引出し 48 ドラム乱巻き 610 ドラム乱巻き 214 乱巻き防止の引出し 14 計 1525 繊維上げ 食込んだザイルの引張り 10 繊維下げ ザイルの振り回し 17 ドラム乱巻き 256 ドラム乱巻き 33 計 306 250 時間 ( 秒 ) 200 150 100 その他トラブル ( ロープ ) 荷外し荷下し引寄せ 50 退避荷掛け 0 引出し ワイヤ 繊維 ワイヤ 繊維 上げ荷 下げ荷 図 12 各要素作業の平均時間の合計 2 ザイルの食い込み繊維ザイルを用いた上げ荷集材でのトラブルは ドラム内でのザイルの食い込みであった これは使用初期のザイルは柔らかいため ザイルの引張力によりドラム内で食込みやすい事に起因する このトラブルは 使用回数が増えるにつれて減少するものと思われる また繊維ロープメーカーからのヒアリングでは 繊維ザイルを初めにドラムに巻き取るときに テンションをかけて巻けば食い込みは起こらない との回答を得た 今回は 人力で巻いたため このような食い込みが起こったと考えられる 13

図 13 ドラムにおけるザイルの食い込み (5) ランニングスカイラインでの集材今回の事業では ランニングスカイラインでの集材も行ったが 金属製の搬器とザイルの接触による損傷が激しく 実用的ではないと考えられたため集材試験は行わなかった 詳細については後述するが ランニングスカイラインなど滑車や搬器と組み合わせて繊維ザイルを用いる際は 従来のワイヤロープ用の器具を使うのではなく 専用のものを開発する必要性があると考えられる (6) 作業員の感想ヒアリングにより得た作業員の主観的評価によると ワイヤロープの利点として 今までの経験から扱いに慣れており 強度への信頼がある が挙げられ 欠点として 下げ荷では重たいワイヤロープに張力を掛けながら引き上げるのが大変 なこと 乱巻きの心配がある ことが挙げられた 一方 繊維ザイルでは 楽に引ける ことが高く評価されたが ある程度の負荷に耐えられることは少し使用した後に理解したが どれほどの損傷まで使用できるかが分からない ということが不安要素として指摘された 強度に関しての不安は 今後試験を繰り返し行いながら 交換基準を策定することで 解消されると考えられる (7) 集材コストの比較サイクルタイムを元に 集材コストの比較を行った 作業要素のうち 引き出し時間と 引き寄せ時間について ワイヤロープと繊維ザイルでは 引出し速度 引き寄せ速度に差はみられなかったが 集材距離が異なるため 引出し時間と引き寄せ時間に差が生じた そのため 引き出し時間と引き寄せ時間については 上げ荷 下げ荷の各平均速度を用いて作業時間を求めた 引出し距離は 50m とした また 追加的な集材コストの比較として 今回はドラムがフリーにならない仕様のため 繊維ザイルの軽いというメリットが 生産性に反映されないと考えられたが 繊維ザイルの場合の引出し速度がワイヤロープと比べて増加すると仮定して 集材コストの試算を行った 14

表 11 集材コストの比較 ( 上げ荷 )( 引出し距離 50m の場合 ) 上げ荷 ドラムがフリーになると仮定し 繊維ザイルの引き出し速度を増加 ワイヤロープ 繊維ザイル 10% 増 20% 増 30% 増 (2.7 km/h) (2.9 km/h) (3.2 km/h) サイクルタイム ( 秒 ) 240 250 243 237 233 コスト ( 円 /m 3 ) 1213 1264 1230 1202 1178 表 12 集材コストの比較 ( 下げ荷 )( 引出し距離 50m の場合 ) 下げ荷 ドラムがフリーになると仮定し 繊維ザイルの引き出し速度を増加 ワイヤロープ 繊維ザイル 10% 増 20% 増 30% 増 (2.1 km/h) (2.3 km/h) (2.5 km/h) サイクルタイム ( 秒 ) 365 301 292 285 279 コスト ( 円 /m 3 ) 1847 1522 1479 1443 1412 表 13 費用計算の用いた評価値 1スイングヤーダ機械費 リース代 ( 円 / 月 ) 325,000 月間稼働日数 ( 日 ) 25 一日稼働時間 ( 時 ) 6 リース費 ( 円 / 分 ) 36.11 リース代 / 月間稼働日数 / 一日稼働時間 /60 保守修理費率 0.27 保守修理費 ( 円 / 分 ) 9.75 保守修理費率 リース費 燃料 油脂費 ( 円 / 分 ) 9.52 時間費用合計 ( 円 / 分 ) 55.38 2 人件費 人件費 ( 円 / 日 ) 15,000 一日実働時間 ( 時 ) 7 時間費用 ( 円 / 分 ) 35.71 人件費 ( 円 / 日 )/ 一日実働時間 /60 比較の結果 上げ荷では 繊維ザイルの使用により集材コストは m 3 あたり 51 円上がったが 下げ荷では m 3 あたり 325 円下がった 下げ荷では 荷掛け時間およびトラブル処理にかかる時間が 繊維ザイルの使用により短縮されたため 集材コストが低くなった 上げ荷で繊維ザイルの集材コストが高くなった理由は 繊維ザイルにおける荷掛け 荷外しの平均作業時間が ワイヤロープと比べて有意な差ではないものの長いためである 繊維ザイルの引出し速度を増加させた場合の試算では 繊維ザイルの引出し速度を 20% 以上増加させた場合 上げ荷においても 繊維ザイルの集材コストのほうが低い結果となった また 作業システム全体でコストを考えると 下げ荷でワイヤロープを使用した場合は トラブルの件数と 処理にかかる時間が多いため スイングヤーダ プロセッサの連携作業では プロセッサの稼働率が下がり 繊維ザイルと比較して よりコスト高になる可能性がある 15

2. 繊維ザイルとワイヤロープの労働負担比較 (1) 引き出し試験時の比較 ワイヤロープ 繊維ザイル 何も持たない 場合の3 種類で引出し試験を行い 予想心拍水準での比較を行った ( 予想心拍水準 = 引き出し試験終了時の心拍数 / 最高心拍数 最高心拍数 =220- 年齢 ) 予想心拍水準 ( % ) 100% 90% 80% 70% 被験者 A 100% 90% 80% 70% 被験者 B 100% 90% 80% 70% 被験者 C ワイヤーロープ繊維ザイル何も持たず 60% 60% 60% 50% 上り平地下り 50% 上り平地下り 50% 上り平地下り 図 14 使用したロープ種毎の心拍水準の比較 上り 下りでは いずれの被験者もワイヤロープの予想心拍水準が一番高いという結果となった 被験 者 B と C では 繊維ザイルと何も持たない場合の予想心拍水準が同じ程度であり 繊維ザイルを引き出 す場合の負荷は 何も持たない場合とほとんど変わらないということが示唆された 16

3. ザイルの損傷と強度 (1) ザイルの損傷ザイルの使用後 ザイルの先端部 滑車との接触部などを中心に広範囲にザイルの毛羽立ちが見られた 図 15をみると 搬器の一部が削れて鋭利になっていることが分かる これはワイヤロープと搬器が接触することによって 搬器が削れたと考えられる 今回は繊維ザイルの場合も ワイヤロープと同じ搬器を使用したため 削れて鋭利になった部分と接触し 損傷が進んだと考えられる 損傷したザイルを図 17に示す ワイヤロープの場合は 接触により搬器とワイヤ双方にダメージがあるが 繊維ザイルの場合は 繊維ザイルが一方的にダメージを受けるため 搬器の改良が必要である また滑車との接触も 損傷が進んだ原因と考えられる 図 16をみると 滑車に繊維ザイルの一部が付着しているのが分かる ザイルが滑車に対して斜めに入ると 滑車の外側と接触を起こし 損傷が進むと考えられる 今後 滑車そのものの材質を変えたり ザイルの進入角度に合わせて滑車が回転するものを用いたりすることで 損傷を減少させることができると考えられる 滑車の材質については プラスチック製のものや ダイニーマと同じ超高分子ポリエチレンで出来た滑車もあり 滑車の材質を変えることで 大きく損傷を抑えることができると考えられる 搬器との接触 滑車との接触 図 15 金属器具との接触 17

繊維が付着 図 16 金属器具との接触による磨耗 図 17 摩耗によるザイルの損傷 (2) 試験結果 1 外見の損傷程度と強度強度試験を行った試験体の採取箇所と強度試験の結果を表 14と表 15に示す 外見上の損傷も激しいザイルでは 半分程度に強度が低下したものがあった 強度低下の原因として 紫外線による影響も考えられるが 今回使用した試験体は 1 ヶ月弱しか使用していないことや 紫外線による影響はザイル内部では少ないことから 紫外線による強度低下はほとんどないと考えられる したがって 今回の強度低下は磨耗による損傷が原因と考えられる ダイニーマの繊維ザイルの場合 破断強度がワイヤロープの 2 倍であり 50% の強度低下が起こってもワイヤロープと同程度の破断強度であり 強度的には問題ないと考えられる ただし磨耗による損傷の速度が速い場合は それに合わせて強度も低下するため 磨耗を防ぐための保護布を使用するなど 磨耗を減らすことが必要である 18

2 ザイルの損傷箇所損傷が激しい箇所は 地面との接触が発生する部分や 搬器 滑車 機械との接触が発生する部分であった 搬器や滑車との接触は 局所的に発生するのではなく 全体的に発生していた 残存強度が 57% であった T-2-3 はザイル先端から約 10m の部分であり 損傷を受けた部分を廃棄すると 多くのロスが出ることになる したがって 搬器や滑車を改良することによって損傷をなるべく抑え 交換する部分をなるべく先端部などに限定することが必要である 先端部については 地面との接触は避けにくいと考えられるが 保護布の使用や 先端部のみワイヤロープを用いることによって 交換の頻度を少なくすることが可能と考えられる 表 14 試験体の採取箇所 左端が集材時に破断 右端がドラム側 左端が集材時の先端 右端がドラム側 右端がドラムとの接触 19

試験体番号 試験体外観 損傷程度 表 15 試験結果 引張り強さ (kn) 残存強度 T-1-1 大 73.8 67% 切断箇所 ザイル中央部 試験結果 損傷の原因 搬器 滑車との接触 備考 破断個所に最も近い T-2-1 大 77 70% 加工端 地面との接触 ザイル先端に最も近い ( 先端から 2.0m) T-2-2 大 70.7 64% 加工端 地面 滑車 機械との接触 ザイル先端からドラム側へ 6.0m T-2-3 大 63 57% ザイル中央部 滑車 機械との接触 ザイル先端からドラム側へ 9.8m T-3-3 大 76.2 69% ザイル中央部 滑車 機械との接触 ザイル先端からドラム側へ約 15m T-1-2 大 80 73% 加工端 T-1-3 小 87.2 79% 加工端 搬器 滑車との接触 搬器 滑車との接触 破断個所からドラム側へ 6.0m 破断個所からドラム側へ 9.8m T-3-1 ほぼ無 85 77% 加工端 ドラムとの接触 ウレタンが硬化したため ザイルが硬い ドラムとの接触により錆が付着 T-3-2 ほぼ無 90.2 82% 加工端 繊維ザイル同士の接触 残存強度 = 引っ張り強さ /110kN(Grube 社が公表しているダイナフォース の破断強度 ) 外見上の損傷はほぼ無 網掛け部分はアイスプラスの加工部分で破断した場合で ザイル中央部の残存強度はそれよりも高いと考えられる 20

4. チョーカー集材の生産性 ( 下げ荷 ) チョーカー集材の調査については 調査場所の都合上 下げ荷のみでの調査となった ロープには繊維ザイルを使用した (1) 生産性についてチョーカー集材では 荷掛けと荷外しがワンタッチでできるため 従来の玉掛けワイヤと比較して作業時間の短縮ができると考えられる チョーカーと従来の玉掛けワイヤで荷掛け時間と 荷外し時間を比較したものを図 18に示す 荷掛け 荷外し 時間 ( 秒 ) 玉掛けワイヤチョーカー玉掛けワイヤチョーカー 図 18 荷掛け時間と荷外し時間の比較 荷外しについてはチョーカーの場合の作業時間が短くなる傾向が見られた 荷外しは 図 19 中の A の部分を外すだけであり 作業時間が短くなかったと考えられる 荷掛けについては 玉掛けワイヤとチョーカーで差はみられなかった 荷掛けの場合は 従来の玉掛けワイヤの場合でも 輪をもう片方の輪に通すだけであり 作業時間に差が生じなかったと考えられる また今回はチョーカーのワイヤロープ径が 13mm と 玉掛けワイヤの 9mm と比較して太く ロープの取り回しが行いづらかったが より小径のロープを用いることで 荷掛け 荷外し両方において 作業時間を短縮できる可能性がある また調査は下げ荷のみであったが 上げ荷の場合で使用した場合 チョーカーの先端部が太くなっているため 材と地面との隙間が少ない場合は 先端部が引っ掛かり通しにくい ということがあった 先端部の形状を小さいものにしたり 円錐型にするなど 改良することでさらに荷掛け時間を短縮できる可能性がある ワイヤ先留 A B ロープフック チョーカースライド 図 19 チョーカーの構造 21

(2) チョーカーのメリットとデメリット 今回使用してみて分かったチョーカーのメリットとデメリットについて 整理する 1 取り付け器具について取り付けがワンタッチでできることから 荷掛けと荷外し作業がスムーズにできる ただしワイヤ先端の留め金具が 材の下を通す際に引っ掛かることがあり 作業に支障がでるため 先端の形状については 小さい金具を使用することが必要である また下げ荷の場合に チョーカーが外れることがあり この点についても先端器具の改良や 外れにくいフックの形状になっているものを使用する必要がある 2 重さについて今回 ワイヤーロープ径が 13mm と比較的太いチョーカーを使用したため チョーカーだけで 1.58kg あり 取り付け金具と合わせると 2.24kg となった 通常の玉掛けワイヤは 0.55kg( ロープ径 9mm 長さ 140cm) である 繊維ザイルと併用する場合 繊維ザイルの軽さが生かされないため 取り付け金具や チョーカースライドの軽量化が望まれる また今回使用したチョーカーのロープ径は 13mm と太く 取り回しに課題があったが 比較的小径木の集材には 細いチョーカーを選択することにより 重さの軽減と生産性の向上が期待される ロープの素材に関して 繊維ザイル製のチョーカーも存在するが 今回の調査結果から考えると磨耗の問題があると思われる 3 扱いやすさについて従来の玉掛けワイヤは 革手を着用しないと ワイヤ先端部が指にささるなどして怪我をする恐れがあるが チョーカーは先端部が金具で固定されているので 怪我をする恐れは少なく その点については扱いやすいと考えられる 4 現場での調整について従来の玉掛けワイヤのメリットとして 現場でワイヤを用いて作成できるということが挙げられる 大径木を集材する場合は長く 小径木の場合は短くするなど 玉掛けワイヤを現場の状況に応じて作成することができる チョーカーの場合は 長さの調節ができないため あらかじめ 複数の長さをそろえておくことにより さまざまな現場に対応が可能となる 22

V. まとめと今後の課題 1. まとめ (1) 繊維ザイルについて 1 メリット (a) 軽い今回使用したダイニーマを素線とした繊維ザイルは 50m で 3kg とワイヤロープと比較してかなり軽い 繊維ザイルを引き出す場合とワイヤロープを引き出す場合で労働負担を比較したところ 繊維ザイルの労働負担は 何も持たずに歩いた場合の労働負担に近く 従来のワイヤロープによるウィンチ集材を繊維ザイルで代替した場合に 労働負担を大きく軽減できることが分かった また引出し速度の比較では ワイヤロープと繊維ザイルに差はみられなかったが これはドラムがフリーにならなかったためと考えられ ドラムをフリーにできる機械と組み合わせることで 生産性の向上が図られると考えられる (b) ロープの扱いやすさの向上繊維ザイルの弾性率は ワイヤロープの 2 分の 1 であり 屈曲性に優れているため ロープの取り回しの際に扱いやすい 時間観測調査の結果 下げ荷の荷掛け時間がワイヤロープと比較して短縮された また乱巻きなどのトラブル発生の際にも処理にかかる時間が短縮された これらの結果は ロープの取り回しの容易さによるものと考えられる (c) トラブル処理にかかる時間の軽減下げ荷の場合において ワイヤロープと繊維ザイルの両方において乱巻きのトラブルが発生していたが トラブル処理にかかった時間を比較した結果 繊維ザイルのトラブル件数が少なく また処理にかかる時間が短いことが分かった ワイヤロープの場合 下げ荷のサイクルタイムのうちロープのトラブル処理にかかる割合は大きく 繊維ザイルの使用により サイクルタイムを大きく短縮することができると考えられる 2 デメリット (a) 磨耗に弱い素線の太さが 10μm であり 素線単位で考えると磨耗に弱く 搬器や地面との接触で繊維ザイルの毛羽立ちが発生する 特に今回の調査では ワイヤロープで使用する搬器や滑車をそのまま繊維ザイルにも適用したため 鋭利な金属部分と繊維ザイルとの接触が発生し 磨耗が進むという結果になった また強度試験の結果 見た目の損傷が激しい部分は 強度も低下していることが分かり 磨耗の進行が強度低下につながることが分かった 23

(2) チョーカーについてチョーカーのメリットとして荷掛け 荷外しが容易なことが挙げられる 調査の結果 荷外し時間は 従来の玉掛けワイヤと比較して 短い傾向が見られた また荷掛けの作業時間に差はみられなかったが 細いロープ径のチョーカーを使用することで 取り回しが容易になり 作業時間の短縮が期待できる デメリットとして 取り付け器具が重いこと 取り付け器具の形状による使いにくさが挙げられたが 今後 ワイヤロープ径を細くする ワイヤロープをチェーンやダイニーマ製のザイルに変更するなど 形状 太さ及び材質の異なるものを使用して 最も作業効率の向上に繋がるチョーカーを見極める調査が必要である 2. 今後の課題 (1) 耐久性に関する検討ダイニーマの場合 紫外線により分子量の低下が起こり 強度が低下する 他の繊維ザイルと比較すると 強度低下の速度は緩やかではあるが ( 図 5 参照 ) 林業は野外での作業であり 紫外線の影響を大いに受けると考えられるため 今後検討しなければならない課題である またダイニーマの軟化点が 148 と低いため ドラムとの接触などによる高熱化により強度が低下する可能性がある この点についても今後の検討課題である (2) 繊維ザイルの改良繊維ザイルの磨耗の程度は 場所によって異なり 先端部では地面や材との摩擦によるものと考えられる損傷が多く発生していた 先端部については 地面や材との接触は避けにくいため ザイルの損傷が起こらないよう 別の素材でコーティングしたものを使用したり 先端部のみワイヤロープを使用したりするなどの対応策をとることが考えられる また破断に至るまでの時間を長くするため 太いロープ径のものを使用することも考えられる これら繊維ザイルの改良については 採算性と合わせて検討する必要がある (3) 専用器具の開発ワイヤロープで使用する滑車や搬器をそのまま繊維ザイルに応用した場合 繊維ザイルの損傷が進み強度低下につながるため 材質や構造を改良し なるべく磨耗の発生を減らすことが必要である また 滑車の径が小さいと 内部損傷を起こす可能性があり 適切な径の滑車を選択することが必要である (4) 安全基準の策定 4 ワイヤロープの場合は 1 割断線 といった交換基準があるが 繊維ザイルの場合はまだない 上村 (1996) は 同じ繊維ザイルであるベクトランロープの耐久試験を行ったところ 見た目での損傷管理は難しいとしている また繊維ロープメーカーからのヒアリングでは 繊維ザイルの使用者が 一定期間使 4 上村巧 陣川雅樹 広部伸二 (1996) ガイラインロープの疲労特性と繊維ロープの適用試験. 資源 素材 1996(5):178-181 24

用後に強度試験を行うことを繰り返しながら 独自に交換基準を定めているということであった これは使用者によって 損傷箇所が異なるため 各自で基準を定めているとのことであった 林業の場合 ウィンチ作業や 控え索などの使い方があり 損傷箇所もそれぞれで異なると考えられる 今後 作業に合わせた交換基準づくりが必要と考えられる (5) 生産性の検討今回の調査では ドラムがフリーにならないため 繊維ザイルの軽さが十分に生かされず 繊維ザイルの引出し速度がワイヤロープと同程度であった 今後 ドラムがフリーになる仕様のウィンチを用いて 実証実験を行い必要がある (6) 採算性の検討繊維ザイルの交換基準がまだないため 耐用時間が不明であり採算性が計算できない段階である VILL 5 ETTE,A.and CACOT,E.(2008) は 繊維ザイルが破断により短くなっていき 100m 短くなるまでの可能な集材量を計算することによって 費用対効果を計算しているが そもそも破断時に安全なのかについては 検討が不十分だと考えられる 今後 交換基準と合わせて採算性を検討する必要がある (7) 海外の事例を研究国内での繊維ザイル使用例はほとんどないが 海外ではフランス アメリカ カナダを始めとして ドイツやオーストリアでも使われている 海外の事例から 磨耗に対する対応策や 採算性などについて調査を行う必要がある VI. 謝辞 今回の実証調査では 東京製綱繊維ロープ ( 株 ) の方々に強度試験や ロープに関するインタビューにお いて ご協力を頂き今回の検証作業を行うことができました ここに厚く御礼申し上げます 5 VILLETTE,A.and CACOT,E.(2008) Skidding trial with synthetic rope:pyrenean experience feedback.projet DEFOR SZ70 Rapport Final,Annexes:38-45 25

VII. 参考資料 1. 破断試験結果表 15の結果に 伸び率を追加したものを表 16に示す 伸び率はいずれも 3%~5% 程度であり ナイロンロープと比較すると 小さいことが分かった 表 16 試験体の概要と強度試験結果 試験体番号 損傷の程度 T-1-1 T-1-2 T-1-3 T-2-1 T-2-2 T-2-3 T-3-1 T-3-2 T-3-3 大大小大大大ほぼ無ほぼ無大 試験体概要 試験結果 損傷の原因 呼称太さ (mm) リード (mm) 備考 引張り強さ (kn) 伸び率 (%) 残存強度 (%) 切断箇所 搬器 滑車との接触 破断個所に最も近い 搬器 滑車との接触 破断個所からドラム側へ 6.0m 搬器 滑車との接触 破断個所からドラム側へ 9.8m 地面との接触 ザイル先端に最も近い ( 先端から 2.0m) 地面 滑車 滑車 機械機械とのとの接触接触 ザイル先端からドラム側へ 6.0m ザイル先端からドラム側へ 9.8m ドラムとの接触 繊維ザイル同士の接触 ウレタンが硬化したため ザイル外見上の損が硬い ドラ傷はほぼ無ムとの接触により錆が付着 滑車 機械との接触 ザイル先端からドラム側へ約 15m 無荷重時 11.4 11.3 11.3 11.4 11.1 11.2 10.6 10.2 10.6 初荷重時 10.4 10.2 10.1 10.2 10.4 10.4 10.3 9.9 10.4 無荷重時 90 89.7 89.3 87.7 88.3 88.3 89 89.7 88.3 初荷重時 93 92.7 92 91 91.7 91.2 91 91.7 90.7 73.8 80 87.2 77 70.7 63 85 90.2 76.2 3.4 3.6 5 3.4 3.4 3.2 5.2 4 4 67% 73% 79% 70% 64% 57% 77% 82% 69% ザイル中央部 加工端 加工端 加工端 加工端 ザイル中央部 加工端 加工端 ザイル中央部 伸び率は初荷重 (0.13kN) から破断までの伸びを示す 残存強度 = 引っ張り強さ /110kN(Grube 社が公表しているダイナフォース の破断強度 ) 網掛け部分はアイスプラスの加工部分で破断した場合で ザイル中央部の残存強度はそれよりも高いと考えられる 26

2. 試験体の外観 (1) T-1-1 搬器を送る際に破断した箇所に最も近い部分で 外見上の損傷も大きい 搬器や滑車との接触を多く受けていた箇所 27

(2) T-1-2 搬器を送る際に破断した箇所からドラム側へ 6.0m の地点であるが ストランドの毛羽立ちが見られ 損傷範囲は破断箇所周辺だけではないことがわかる 28

(3) T-1-3 搬器を送る際に破断した箇所からドラム側へ 9.8m の地点で 毛羽立ちは少なく 6.0m 地点 (T-1-2) と比較して 損傷の程度は小さかった 29

(4) T-2-1 ザイルの先端はアイスプライス加工ができないため 先端から 2m 地点から試験体を採取 ザイルの先端に近いため地面や 集材木との接触が多く大きな損傷が見られた 30

(5) T-2-2 ザイル先端からへ 6.0m の地点で 地面との接触の他 滑車との接触も発生していると考えられる そのため 大きな損傷が見られた 31

(6) T-2-3 ザイル先端からへ 9.8m の地点で 地面との接触の他 滑車との接触も発生していると考えられる 残存強度は 57% であり 約 4 割程度の強度低下が見られる 32

(7) T-3-1 ドラムとの接触部分であるが ザイル硬化が見られた ダイニーマ原糸のほつれ防止のために入れられたウレタンが硬化したものと考えられるが 繊維ロープメーカーからのインタビューによると ウレタンの硬化による強度低下はないだろうとのことであった 33

(8) T-3-2 ドラムの外に引き出されなかった箇所と考えられ 最も損傷が少ない 34

(9) T=3-3 ザイル先端から約 15m の地点であるが 大きな損傷が見られた 損傷は滑車や機械との接触による ものと思われる 35