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第 3 章内部統制報告制度 第 3 節 全社的な決算 財務報告プロセスの評価について 1 総論 ⑴ 決算 財務報告プロセスとは決算 財務報告プロセスは 実務上の取扱いにおいて 以下のように定義づけされています 決算 財務報告プロセスは 主として経理部門が担当する月次の合計残高試算表の作成 個別財務諸表 連結財務諸表を含む外部公表用の有価証券報告書を作成する一連の過程をいう ( 中略 ) 財務報告の信頼性に関して非常に重要な業務プロセスの一つである 実務上の取扱い 9.⑶ 当該プロセスは 文字どおり 企業の財務報告に直接影響を及ぼすことから 内部統制報告制度の適用会社が考慮 評価しなければならない重要なプロセスといえます このプロセスには いわゆる 決算締め 作業に係るものだけでなく 決算準備 プロセスに係る内部統制や 締め後の注記を含む 開示情報の作成 に関する内部統制も含まれることに留意が必要となります また 当該プロセスの業務処理にあたっては 後述のように高い専門性が要求され 細心の注意を払って手続を進めていく必要があります それでは 他の内部統制の評価対象プロセスとどのように異なるものなのでしょうか 以下にてその特徴を具体的にみていくこととしましょう 116

第 3 節全社的な決算 財務報告プロセスの評価について ⑵ 他の業務プロセスとの相違決算 財務報告プロセスは 企業の財務報告に係る内部統制の最後の砦ともいえる 特殊かつ重要性の高いプロセスであり 以下の点において 他の業務プロセスと異なります 1 2 つの領域が存在する点 2 慎重な評価が要求される点その特徴を把握し それぞれのリスクに対応した措置をとることで 財務報告に係る内部統制の有効性を 最も直接的 効果的に担保することができます 1 2 つの領域が存在する点内部統制評価の実施基準においては 以下のように規定されています 主として経理部門が担当する決算 財務報告に係る業務プロセスのうち 全社的な観点で評価することが適切と考えられるものについては 全社的な内部統制に準じて すべての事業拠点について全社的な観点で評価すること実施基準 Ⅱ.2.⑵ 実施基準では 決算 財務報告に係る業務プロセスを 全社的な観点で評価することが適切と考えられるものと 財務報告への影響を勘案して個別に評価の対象に追加することが適切なものの 2 つの領域があるとの整理をしています これは 連結会計方針の決定や会計上の予測 見積りなど経営者の方針や考え方等のように 全社的な内部統制の性格に近いものと 個別財務諸表作成にあたっての決算整理に関する手続 ( 例えば 引当金をはじめとする見積計算や税効果会計の計算 ) 等のように 業務プロセスに係る内部統制の性格に近いものの 2 つがあるとの解釈と考えられます 全社的な観点で評価することが適切と考えられるもの と 117

第 3 章内部統制報告制度 は 全社的な内部統制の考え方に準じた 財務報告の信頼性を確保するために企業グループ全体として整備すべき方針 プロセスや仕組み と考えられるものですが 詳細は後述します また 実務上の取扱いにおいては この点について以下のように補足しています 全社的な内部統制に準じて全社的な観点で評価することが適切と考えられるものと財務報告への影響を勘案して個別に評価対象に追加することが適切なものについては 必ずしも一律に決定されるものではなく 企業の実情に応じ 両者を区分 整理し対応を図ることが適切である 実務上の取扱い 9.⑶ したがって 決算 財務報告プロセスについては 2 つの観点からの評価が行われ この 2 つの観点からの評価が相俟ってその有効性が評価できるという点で他の個別の業務プロセスと比しても特異であるといえます 図表 3-3-1 決算 財務報告プロセスと各領域との関連 に影響 しあう関係 ( 両者の スの ) 全社的な観点で評価 する領域 固有の業務プロセスとして評価する領域 決算 財務報告プロセスの信頼性の確 2 慎重な評価が要求される点 118 財務報告に係る内部統制を評価するにあたって認識したいかなる業

第 3 節全社的な決算 財務報告プロセスの評価について務プロセスにおいても 慎重な評価が必要であることはいうまでもありません しかしながら 実施基準および実務上の取扱いにおいては 決算 財務報告プロセスの整備状況や運用状況の評価について 特に慎重に実施するような表現が用いられています 決算 財務報告プロセスに係る内部統制は 財務報告の信頼性に関して非常に重要な業務プロセスであることに加え その実施頻度が日常的な取引に関連する業務プロセスなどに比して低いことから評価できる実例の数は少ないものとなる したがって 決算 財務報告プロセスに係る内部統制に対しては 一般に 他の内部統制よりも慎重に運用状況の評価を行う必要がある 実施基準 Ⅱ.3.⑶4ニ.b. 決算 財務報告プロセスは 引当金の計上 税効果会計 固定資産の減損会計の適用等会計上の見積りや判断にも関係し 財務報告の信頼性に関して非常に重要な業務プロセスの一つである 実務上の取扱い 9.⑶ 上記の内容を踏まえ 決算 財務報告プロセスにおいて慎重な評価が求められる理由としては以下のようなものが挙げられます a 各一連の財務報告に係る業務プロセスの一番最後に位置するプロセスであり 財務報告の信頼性に関して直接的な影響を与える業務プロセスである b 日常的な取引に関連する業務プロセスに比して統制の実施頻度が低いため 統制の有効性を評価する機会が少ない 結果として 事前に発見できず誤謬の発生可能性が高い c 引当金の計上 税効果会計 固定資産の減損会計の適用等 会計上の見積りや判断にも関連するなど 担当者にも特に専門性が要求される aについては いうまでもなく 決算数値の最後の業務ですから 119

第 3 章内部統制報告制度財務報告に直接影響を及ぼす可能性があります 言い換えると このプロセスにおける統制はいわば最後の砦で補完的な統制が少ないことです 例えば 決算数値が正確に認識され 測定されていても 最終的な財務諸表へ転記する金額を誤ってしまえば 重要な不備となる可能性が高いといえるでしょう また 後に詳細に述べますが この最終段階での不備は決算末日後に発覚することが多く ( 決算日後の会計監査の過程で発覚 ) その時点では既に是正の余地はなく 開示すべき重要な不備 となってしまうリスクがあります bおよびcについては 当該プロセスの性質に関わるものです 見積りや判断に関連するテクニカルな側面をもった項目は 高い専門性および実務経験が要求されるものであり また その専門能力を要求される頻度が各決算ごと ( 多くても月次単位 ) という低い頻度であり ( 検証担当者も含めた ) 担当者のノウハウも蓄積しづらいものがあります 結果として 誤謬につながる可能性が高いプロセスであるということが確認できます ⑶ 基本的な業務フロー 決算 財務報告プロセス と一口にいっても 冒頭部で触れたように その業務フローは 決算締めの前から開示にわたる業務取引であり非常に多くのリスクが存在しています 以下 図表 3-3-2および図表 3-3-3における業務フローに沿って詳細に検討していきましょう 120

第 3 節全社的な決算 財務報告プロセスの評価について 図表 3-3-2 決算財務報告プロセスにおける業務フローの流れ 項目内容 1 2 3 4 決算準備 単体決算 連結パッケージでの集計作業 ( 注 2) 連結決算 連結決算の対象となる全拠点において 期末日前後に実施する準備作業各業務別のシステムで収集された情報を会計システムに集約し 総勘定元帳を作成する 総勘定元帳での決算整理仕訳を開始 記録 処理し 財務諸表へと転記する作業拠点ごとに連結パッケージ ( 注 1) に決算数値を入力し 親会社がそれを収集する作業 3の結果を受けて 全拠点における決算数値を集計 合算し 連結消去仕訳を計上し 連結決算数値を確定させる作業 ( 注 2) 開示ベース連結財務諸表の作成ならびに注記情報の作 5 開示情報作成成を行う作業 ( 注 1 ) 連結パッケージとは連結グループごとに定義された財務情報の報告フォーマットのことです 自社開発するものよりは 外部のソフトウェアを自社用にカスタマイズして利用することが多いようです ( 注 2 )4および5については 全社的な観点から評価する領域だけでなく 固有の業務プロセスとして評価する領域の要素も含まれています また 企業グループごとに プロセスが大きく違う可能性がある領域です 121