個人がどのように CO 2 を認識しているかを理解する CO 2 回収貯留の受容への影響 2012 年 6 月
The executive summary of Understanding how individuals perceive carbon dioxide has been translated from English into Japanese for convenience. The Global CCS Institute does not warrant the accuracy, authenticity or completeness of any content translated in the Japanese version of the Report. 個人がどのように CO 2 を認識しているかを理解する は 利用者の便宜のために Understanding how individuals perceive carbon dioxide のエグゼクティブサマリーを英語から日本語に翻訳したものです グローバル CCS インスティテュートは日本語版のいかなる内容についてもその正確性 信頼性又は完全性について保証しません
エグゼクティブサマリー CO 2 回収貯留 (CCS: Carbon Capture and Storage) は CO 2 発生源から大気中への排出を緩和するための技術的解決策候補の一つである (GCCSI, 2011 IEA, 2009) しかし CCS は比較的新しい技術であり 不確実性があってリスクも伴うと理解されている このため 現在 CCS 技術に関する社会認識及び潜在的な社会的受容性に重点を置いた研究が増えている CCS 技術に関する説明では ほとんどの場合で CO 2 について触れているが これは一般市民が CO 2 について理解していることを前提にしている 一般市民にとって CO 2 の性質に関する知識及び理解がCO 2 排出産業及び CCS 技術との関わり方に影響を及ぼすと分かってきている (Wallquist, Visschers & Siegrist, 2009) しかし CO 2 に関する社会的な認識 知識及び理解について調査した研究は非常に少ない 本調査は そのギャップを埋めようと試みるものである 本報告書では 3 ヶ国 ( 日本 豪州及びオランダ ) の市民がどのように CO 2 を認識しているかに関する調査について説明している また 個人の CO 2 に関する認識が CCS に関する認識とどう関連するのかを示すとともに CO 2 の基本的な性質及び特性に関する情報提供が低炭素エネルギーの各選択肢 特にCCS に対する個人の姿勢にどのように影響するかについて調査している 簡潔に述べると 本研究には四つの最終的な目的があった その目的は以下のとおりである 1 CO 2 の性質に関する一般市民一般市民の知識の知識及び及び理解 上述の知識の知識が 一般市民のの調査 CO 2 及び CCS に関する関する認識認識に及ぼす影響影響の調査 CO 2 の基本的な性質及び特性に関する情報の提供情報の提供が CCS に対する個人の姿勢個人の姿勢にどのように影響影響するかの調査 価値観と信念 CO 2 の性質に関する知識及び CCS に関する認識について 国による国による違いがあるかどうかの特定本研究では 相互に補完し合うよう設計された定性的手法及び定量的手法を併用した 定性的な部分では 各国における CO 2 に関する一般知識を調査するために インタビュー及びフォーカスグループの手法を使った これにより CO 2 及び CCS に関する情報を与えられたときに参加者がどのような反応を示すかを調査することもできた またグラウンデッド セオリー アプローチを用いて 定性的要素から共通のテーマや特性を特定し これに基づいて大規模な調査を行った この調査は各国で試験的に実施され その後 大規模に展開された インタビュー及びフォーカスグループの結果から 各回答者には CO 2 に関する知識が少ないことが明らかになった 回答者は CO 2 を知っており 多くは植物が CO 2 を吸収すること 化石燃料の燃焼によって CO 2 が発生することなどの基本的事実は理解していたものの 大部分の回答者は CO 2 の特性又は固有の性質を説明することは難しいと感じていた フォーカスグループの回答者は CO 2 は有毒かつ有害なものとして否定的に認識する傾向があった 調査の回答者は共通して CO 2 は大気汚染又はばい煙に似た性質を有し 引火性又は爆発性があると誤解していた CO 2 が一酸化炭素と同じような作用をヒトに与えるかについては 確信を持って答えられない場合が多かった CO 2 の用途について説明できる回答者もほとんどいなかった 同様に 多くの調査参加者は気候変動メカニズムについて誤解しており CO 2 排出がオゾン層破壊を引き起こし その結果として気候変動が起きていると考えていた これは 2010 年 10 月に豪州で実施された研究の結果を裏付けるものであり 当該豪州の研究によると 豪州の回答者の 59% が オゾンホールが気候変動の一因となっている と考えていた (Ashworth, Jeanneret, Gardner & Shaw, 2011) 1 本報告書では 知識 及び 理解 という言葉は 大部分において区別なく用いられている
CCS の認知度は概して低いが オランダの住民の方が日本又は豪州の住民よりも高い認知度を示した この結果は 2008 年から 2010 年にかけてマスメディアが Barendrecht CCS プロジェクトを大きく取り上げたことに関連していると考えられる (Feenstra ら, 2010) CCS に関する認識にも 国による違いが見られた インタビュー及びフォーカスグループで CCS 技術に関する基本的な情報を提供した後に 日本の回答者は CCS を好意的に評価する傾向が見られたのに対し 豪州の回答者の大半は CCS を否定的に評価し オランダでは認識が様々であった 全体としては フォーカスグループ及びインタビューの回答者は自宅近くでの CCS の実施を支持しない傾向が見られた 調査の回答者は 概して陸域貯留よりも沖合貯留に対して好意的であったが その一方で 陸域貯留及び沖合貯留への反対の割合は 3 ヶ国で異なっていた ( 日本では最小であった 2 ) さらに 3 ヶ国すべての参加者は 社会が新しい技術に関連するリスクをある程度までは容認する必要があることに同意する傾向が見られた 一方で 気候変動に対処するために別途税金を支払うことに反対する傾向も見られた インタビュー フォーカスグループ及び意識調査において得られた CO 2 に関する情報により 回答者のより深い理解を促し 一部の誤解をある程度解消できたが CCS に関する認識及び意見を劇的に変化させるものではなかった 特筆すべきは CO 2 関連の自然現象 3 及び CCS における CO 2 の挙動に関する情報が CCS に関する認識にわずかではあるが重要な否定的影響を及ぼしたのに対して CO 2 の性質及び化学的性質に関する情報は肯定的な影響を与えることを調査の結果が示したことである さらに インタビュー参加者は CCS における CO 2 の挙動やそれが自然状態でどのように起こるかについての説明は重要だと考えていた ただ これにより参加者の認識及び意見が劇的に変化することはなかった CO 2 に関する誤解のほとんどが CCS に関する誤解と相関を示した これらの調査結果は CCS に関するコミュニケーションの一環として CO 2 に関する基本的かつ広範な情報を提供することの重要性を明らかにした 加えて 回答者の反応が多様であったことは 今後のコミュニケーション活動を通じて これらの考え方の違いに対処するべきであることを示している 本研究の興味深い結果の一つは 参加者が情報やコミュニケーションの特定の発信源を確かなものとして信頼する傾向と その参加者の CCS に関する知識との間に 強い相関関係があったことである ( 公的機関 地方自治体 全国紙及び科学者ではなく ) 全国規模の NGO 地元の NGO 友人及びインターネットを信頼していることと CCS を正しく理解していることとは負の相関関係にあった このことは 公的機関及び科学的な情報源をあまり信頼しない市民は 同時に CCS の理解が最も乏しい人々でありうることを示しており これは CCS に関する情報提供に際して深刻な意味合いを持つ 本研究から得られる提言は以下のように要約できる 2 日本で以前に実施された研究では アンケート調査から 沖合貯留 / 陸域貯留の支持に関して類似の結果が得られた ( みずほ情報総研 2010 年 ) 同研究では フォーカスグループの回答者が陸域貯留よりも沖合貯留を支持する主な理由として 空間的な近さを挙げていることが明らかになった ( みずほ情報総研 2010 年 ) 日本では人口の大半が沿岸地域に居住していることが沖合貯留及び陸域貯留の支持の差が小さい理由の一つであると解釈している 3 CO 2 が関係する自然現象 とは 本来は CO 2 が関係する CCS に類似した現象を意味する 情報シートには 自然に起こる CO 2 の漏洩現象 自然又は事故による 高濃度 CO 2 あるいは自然の CO 2 貯留層へのヒトのばく露が含まれている
CCS についての対話及び及び理解を促進する活動には理解を促進する活動には CO 2 の性質及び及び化学化学的性質的性質に関する情報を取り入れる取り入れるべきである べきである 本研究では 回答者の知識基盤が限定的であることが明らかになった このような知識の欠如により 市民は CO 2 をどのように認識すべきか分からず 様々な誤った考えに同意してしまう可能性がある CO 2 の性質に関する偏りのない包括的な情報が入手できるようにすべきである 入手できるようにすべきである これ らの情報を伝える際には ヒト及び環境に対する CO 2 の影響 ( 例えば ばい煙のような影響や毒性をもたらす可能性など ) に関する情報を含めることが重要である CO 2 の科学的 化学的性質についての情報は CCS に関する認識に対して わずかではあるが重要な肯定的な影響を及ぼすことが示されている 回答者が重要だと考えるテーマについてテーマについて情報提供すべき情報提供すべきである ある 回答者間で反応 不安及び考えが大きく違うことは CO 2 及びCCS に関するコミュニケーション及び教育活動の中で これらのテーマについて説明することが重要であることを示している CCS に関して一般市民と対話を行うためのあらゆる取組は 一般市民の知識レベル及び情報ニーズに関する調査及び理解に基づくものであるべきである この情報は Communication/Engagement toolkit for CCS projects(ashworth ら, 2011a) に記載されているような ベースライン調査によって収集することができる CO 2 に関する自然現象の説明には注意を要する 自然現象の説明には注意を要する 自然発生した CO 2 がヒト 植物及び 4 5 動物に悪影響を与えた事例 ( すなわち ニオス湖及びマンモス山の事象 ) などについて 公開された透明性のある情報を提供することが重要である CO 2 が関係する自然現象の情報は CCS に関する認識に対してわずかではあるが重要な否定的な影響を及ぼした これは 人々が CCS CO 2 及びその影響について推測する際に このような自然現象の情報を用いることを示唆している CCS プロセスにおける CO 2 の挙動の説明には注意を要する 挙動の説明には注意を要する CO 2 の挙動に関する正確かつ完全な情報の伝達が重要である なぜなら CO 2 の挙動の理解により 回答者が CCS に関する不十分又は間接的な情報を受け取る際に起こり得る誤解の軽減に役立つからである まだ多くの市民市民が 気候変動 CCS 及びこれらと CO 2 排出との関連についての基本的な情報を必要としている な情報を必要としている 例えば CCS について聞いたことがあると申告した参加者の方がCCS について実際に理解していた参加者よりも多かったように これらのテーマを知っていると思っていても それが必ずしも知識を有していることを意味するわけではない より非公式公式なやり方で CCS に関するさらなるさらなる教育教育 支援運動 支援運動を計画すべきである を計画すべきである 非 公式な情報源を信頼することと CCS に関する理解度が低いこととの間に相関関係があることを考慮すると 公式の情報及びコミュニケーションの発信源 ( つまり 公的機関 地方自治体 全国紙及び科学者 ) のみに頼っていては CCS に関する理解度が最も乏しく 上述の情報源よりも NGO 友人及びインターネットに信頼を置くような人々に情報が届かない可能性がある 4 1986 年に カメルーンのニオス湖から自然発生による CO 2 が放出され 動物及び 1,700 人の住民が死亡した 5 米国の火山であるマンモス山では 地下から浸出する大量の CO 2 により樹木が枯れている