高速バックボーンネットワークにおける公平性を考慮した階層化パケットスケジューリング方式

Similar documents
公平なネットワーク利用を実現する スケーラブルな パケットスケジューリング方式

Łñ“’‘‚2004

プリント


router_cachehit.eps

2014 年電子情報通信学会総合大会ネットワークシステム B DNS ラウンドロビンと OpenFlow スイッチを用いた省電力法 Electric Power Reduc8on by DNS round- robin with OpenFlow switches 池田賢斗, 後藤滋樹

2004年度情報科学科卒論アブスト テンプレート

採択評価ヒアリング: 「膨大な数の極小データの効率的な配送基盤技術の研究開発」

PowerPoint プレゼンテーション

CPUスケジューリング

Maximize the Power of Flexible NetFlow

スライド 1

2) では, 図 2 に示すように, 端末が周囲の AP を認識し, 認識した AP との間に接続関係を確立する機能が必要である. 端末が周囲の AP を認識する方法は, パッシブスキャンとアクティブスキャンの 2 種類がある. パッシブスキャンは,AP が定期的かつ一方的にビーコンを端末へ送信する

スライド タイトルなし

ボンドグラフと熱伝導解析による EHA熱解析ツールの開発

MPサーバ設置構成例

スライド タイトルなし

索引

bitvisor_summit.pptx

F コマンド

リソース制約下における組込みソフトウェアの性能検証および最適化方法

2008 年度下期未踏 IT 人材発掘 育成事業採択案件評価書 1. 担当 PM 田中二郎 PM ( 筑波大学大学院システム情報工学研究科教授 ) 2. 採択者氏名チーフクリエータ : 矢口裕明 ( 東京大学大学院情報理工学系研究科創造情報学専攻博士課程三年次学生 ) コクリエータ : なし 3.

外部ルート向け Cisco IOS と NXOS 間の OSPF ルーティング ループ/最適でないルーティングの設定例

画像情報特論 (2) - マルチメディアインフラとしての TCP/IP (1) インターネットプロトコル (IP) インターネット QoS (diffserv / MPLS) 電子情報通信学科甲藤二郎

PowerPoint プレゼンテーション

アライドテレシス・コアスイッチ AT-x900 シリーズとディストリビューションスイッチ AT-x600 シリーズで実現するACLトラフィックコントロール

output2010本文.indd

目次 1 はじめに 登録商標 商標 注意事項 免債事項 SR-IOV の機能概要 性能検証事例 測定環境 測定結果 各方式による共有 NIC 性能比較 ( ポートあ

JANOG9 パネルセッション IP バックボーンにおける QOS の適用 Session , Cisco Systems, Inc. All rights reserved. 25 th Jan Miya Kohno 1

資料 2-1 IP 放送を行うネットワークの現状と課題 2017 年 12 月 26 日 日本電信電話株式会社東日本電信電話株式会社西日本電信電話株式会社

Cisco Unified IP Phone のモデル情報、 ステータス、および統計の表示

はじめに Web アプリケーションの発展と普及の勢いは弱まる兆しがありません 弱まるどころか 加速し続けています これは これまでの ERP CRM Web 2.0 などの Web ベースアプリケーションが提供してきたメリットを考えると 不思議なことではありません Web アプリケーションの爆発的拡

出岡雅也 旭健作 鈴木秀和 渡邊晃 名城大学理工学部

160311_icm2015-muramatsu-v2.pptx

情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report Vol.2013-CSEC-61 No.15 Vol.2013-IOT-21 No /5/10 トラフィック削減用ネットワークノードの多段構成と評価 古田駿介 大高友樹 成田明子 動画配信に代表されるように一つの

スマートフォン今昔物語

PowerPoint プレゼンテーション

外為オンライン FX 取引 操作説明書

1 2

untitled

INDEX

INDEX


1002goody_bk_作業用

Microsoft PowerPoint - ARC-SWoPP2011OkaSlides.pptx

p_network-management_old-access_ras_faq_radius2.xlsx

01 DAITO GROUP CSR Report 2014


Microsoft Word - トンネル方式(3 UNI仕様書5.1版)_ _1910.doc

01

ID010-2

- 1 -

%

2

PowerPoint プレゼンテーション

Kumamoto University Center for Multimedia and Information Technologies Lab. 熊本大学アプリケーション実験 ~ 実環境における無線 LAN 受信電波強度を用いた位置推定手法の検討 ~ InKIAI 宮崎県美郷

コンテンツセントリックネットワーク技術を用いた ストリームデータ配信システムの設計と実装

目次 1. はじめに SSL 通信を使用する上での課題 SSL アクセラレーターによる解決 SSL アクセラレーターの導入例 SSL アクセラレーターの効果... 6 富士通の SSL アクセラレーター装置のラインナップ... 8


PowerPoint プレゼンテーション

(Microsoft PowerPoint - Toyo_OpenFlowStage\224z\225z\227p_R1.ppt)

MU120138A 10ギガビットイーサネットモジュール 製品紹介

.o...EPDF.p.indd

Microsoft PowerPoint - mplsjp


Microsoft PowerPoint - PM4 安川_無線の基礎及びISA100.11a技術の特徴g.pptx

10sakai-H1・H4

Microsoft PowerPoint - chapter6_2012.ppt [互換モード]

2ACL DC NTMobile ID ACL(Access Control List) DC Direction Request DC ID Access Check Request DC ACL Access Check Access Check Access Check Response DC

Microsoft Word - Dolphin Expressによる10Gbpソケット通信.docx

dlshogiアピール文章

SIP を使った簡単な通話 ( とりあえず試してみよう ) 相手 IP アドレスがわかっており ネットワークに接続されているとき INVITE 200 OK SIP 端末 (MSN Messenger) SIP 端末 (YAMAHA ルータ ) SIP アド

h-hwang11phdthesis-RealizingName.pptx

02

janog40-sr-mpls-miyasaka-00

2.5 トランスポート層 147

研究成果報告書

アライドテレシス・コアスイッチ AT-x900 シリーズ で実現するエンタープライズ・VRRPネットワーク

Congress Deep Dive

Microsoft PowerPoint - chapter6_2013.ppt [互換モード]

VyattaでのPPPoEとNetwork emulator

SMTP ルーティングの設定

<4D F736F F F696E74202D208CA48B868FD089EE288FDA82B582A294C5292E B8CDD8AB B83685D>

ネットワーク高速化装置「日立WANアクセラレータ」のラインアップを強化し、国内外の小規模拠点向けに「オフィスモデル」を新たに追加

Microsoft PowerPoint ppt

新技術説明会 様式例

F コマンド

にゃんぱすー

9.pdf

Microsoft PowerPoint - OS12.pptx

情報通信の基礎

インターネットと運用技術シンポジウム 2014 Internet and Operation Technology Symposium 2014 IOTS /12/4 OpenFlow ネットワークモニタリングシステムの開発 1 堤啓彰 2 谷口義明 2 井口信和 3 渡辺健次 クラ

2015 TRON Symposium セッション 組込み機器のための機能安全対応 TRON Safe Kernel TRON Safe Kernel の紹介 2015/12/10 株式会社日立超 LSIシステムズ製品ソリューション設計部トロンフォーラム TRON Safe Kernel WG 幹事

情報通信ネットワーク特論 TCP/IP (3)

スライド 1

Microsoft PowerPoint SCOPE-presen

PowerPoint プレゼンテーション

御使用の前に必ず本取扱説明書をよく読んで理解して 安全の為の指示に従って下さい もし 不明点が有れば販売店か弊社におたずね下さい 目次 1. はじめに 対応 ios デバイス ダウンロードおよびライセンス認証 ダウンロード ライセ

(Microsoft PowerPoint - 2.\(\220\274\222J\202\263\202\361\)JANOG ppt [\214\335\212\267\203\202\201[\203h])

オペレーティング システムでの traceroute コマンドの使用

Transcription:

Advanced Network Architecture Research Group 高速バックボーンネットワークにおける 公平性を考慮した 階層化パケットスケジューリング方式 大阪大学大学院基礎工学研究科情報数理系専攻博士前期課程 牧一之進

発表内容 研究の背景 研究の目的 階層化パケットスケジューリング方式の提案 評価モデル シミュレーションによる評価 まとめと今後の課題

研究の背景 インターネットのインフラ化 ユーザのアクセス帯域の増加 特定のユーザのみが大きな帯域を占有 公平なインターネットの構築各ユーザフローを公平にサービス

従来の研究 CSFQ (Core Stateless Fair Queueing) エッジルータでレートを測定してパケットヘッダに書きこむ コアルータでそのレートをもとに動的に廃棄確率を決定する ヘッダの拡張が必要であり すべてのエッジ ルータを更新する必要がある DRR (Deficit Round Robin) フロー毎にキューを設けてスケジューリング コアルータでもすべてのフローに対してキューを設ける必要があるので実装が困難

研究の目的 ヘッダの拡張がなくフロー毎の情報をもたないパケットスケジューリング方式の提案 基本的にDRRのようなper-flowのスケジューリング 扱うべきフロー数にしたがってフローを集約 エッジからコアまで適用できてスケーラブル

提案方式 (Hierarchically Aggregated Fair Queuing) の概要 (/3) HAFQ Zombie List 各キューに収容されたフロー数を推定する 4 3 Input Hashing Zombie List 4 4 Output Zombie List 3 3 各フローのパケットを振り分ける

提案方式 (Hierarchically Aggregated Fair Queuing) の概要 (/3) ゾンビリスト : {Flow Id, counter} を つの組とする過去に到着したフローに関する履歴 Flow Id 5 7 counter 3 7 4 すべてのフローの情報は必要ない そのキューに収容されたフロー数を推定する 同一キュー内でより多くの帯域を使用しているフローを発見する

提案方式 (Hierarchically Aggregated Fair Queuing) の概要 (3/3) HAFQ Zombie List フロー数に比例した帯域を動的に割り当てる 4 3 Input Hashing Zombie List 4 4 4 3 Output Zombie List 3 3

ゾンビリスト ( リスト内に ID があるとき ) パケットがルータに到着したときのゾンビリストの動作 ゾンビリストをすべて検索する少ないエントリ数で できる限り多くのフローを管理する Flow Id counter Flow Id counter 3 Count Up 3 7 8 5 5 7 4 7 4 Hit ゾンビリスト内に到着して来たフローのIDがあれば そのゾンビのカウンタ値を 増やす

3 Miss Hit ゾンビリスト ( リスト内に ID が存在しないとき ) Flow Id 5 7 counter 3 7 4 Swap (Prob : q) No-Swap (Prob : -q) Flow Id 3 5 7 Flow Id 5 7 counter 3 4 counter 3 7 4 ゾンビリスト内に到着して来たフローのIDがなければ q の確率で置き換え カウンタ値をに初期化する -q の確率で何もしない

比較の際 同じである確率 : p ( ヒット率 ) SRED のフロー数推定アルゴリズム SRED のフロー数推定方式各フローのレートがほぼ一定であると仮定 Flow Id 5 7 N = /p のある確率 : /N N : フロー数 レートにかたよりがある場合 うまくいかない

λ 提案方式のフロー数推定アルゴリズム (/) avg N = = N i= N λ i N λ λ i avg i= () λ i λ avg : フロー i のレート : 全フローの平均レート N : フロー数 フロー数 = 全到着レート / 全フローの平均レート レートにかたよりがある場合にもフロー数を正しく推定できる Ri を全到着レートに占めるフロー i のレートの割合として から推定フロー数を求める 推定フロー数 = Ravg Ravg

提案方式のフロー数推定アルゴリズム (/) Ri の計算は ゾンビの内容が置き換えられるときに行うこのときのカウンタ値が そのフローのレートに比例 問題点 レートの高いフローが存在する場合 他のフローよりも多く平均到着割合に組み入れられる平均をとるさいに 重みをつける フロー数がエントリ数より少ない場合 定常状態でカウンタ値が発散してしまうエントリ数を動的に減らし 常にフロー数がエントリ数より大きくなるようにする

カウンタによる廃棄 各キュー間の公平性は保たれるところが同一キュー内の公平性は保たれない ゾンビのカウンタ値が大きければ大きいほど そのフローは他のフローよりも多くの帯域を使用 Flow Idcounter 3 5 4 7 カウンタ値が大きいフローのパケットを優先的に廃棄

評価モデル ( シングルリンクモデル ) Sender Hosts S フロー数 : 64 本帯域 : 55 [Mbps] 伝播遅延時間 : [ms](bottleneck link) 0. [ms](access link) Bottleneck Link Receiver Hosts R Router Router S64 R64

推定フロー数の評価 Number of flows 00 80 60 40 0 秒毎にフロー数を 倍にしていく キュー数を とし ゾンビ数を 4 とする TCPのみ64 本 SRED HAFQ HAFQ(DROP) Number of flows 00 80 60 40 0 TCP : 3 本 UDP(3.Mbps) : 3 本 SRED HAFQ HAFQ(DROP) 0 0 4 6 8 0 Time(s) 0 0 4 6 8 0 Time(s) SRED に比べて HAFQ は推定フロー数が実際の数に近い

各フローのスループットの評価 各フローは同時に送信を開始する TCPのみ64 本 TCP : 3 本 UDP(3.Mbps) : 3 本 Throughput[Mbps] 3.5 3.5 Throughput[Mbps] FIFO,TailDrop FIFO,TailDrop.5 HAFQ.5 HAFQ HAFQ(DROP) HAFQ(DROP) 0 0 0 30 40 50 60 70 0 0 0 30 40 50 60 70 Flow Id Flow Id レートの高いフローが存在する場合 HAFQ(DROP) では高い公平性を実現 3.5.5 3

Fairness Index 0.8 フロー数を変化させた場合の評価 DRR: キュー数 64 とし フロー数が 64 本を越えるとき ランダムにキューイング TCP のみ 0.6 FIFO,TailDrop 0.4 DRR HAFQ HAFQ(DROP) 0. 4 6 64 56 04 Number of flows Fairness Index 0.8 HAFQ: CRC6 でハッシングキュー数 64, ゾンビ数 4 TCP と UDP が混在 0.6 FIFO,TailDrop DRR 0.4 HAFQ HAFQ(DROP) 0. 4 8 6 3 64 8 56 04 Number of flows HAFQ: DRRと同等の性能 ( フロー数が少ないとき ) 従来手法に比べて高い公平性を実現 ( フロー数が多いとき )

まとめと今後の課題 まとめ エッジルータやコアルータの能力に応じてスケーラブルに実装可能なパケットスケジューリング方式の提案 フロー毎の優れた公平性を実現 今後の課題 ルータを多段に配置した場合の影響 既存のルータと共存できるのか?