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目次 第 1 章本調査の概要... 3 1-1. 背景と目的... 3 1-2. 本調査の進め方... 3 1-3. 回答者の基本属性... 5 第 2 章アート産業の市場規模... 6 2-1. 世界の美術品市場規模と経済状況... 6 2-2. 日本のアート産業の市場規模の推計方法... 8 2-3. 日本のアート産業の市場規模推計結果... 9 2-4. これまでの調査との比較と日本の経済状況... 11 第 3 章美術品の輸出入の状況... 14 3-1. 美術品の輸出入の算出方法... 14 3-2. 輸出入の状況... 14 第 4 章特集 1: ミュージアムへの訪問状況 ニーズ... 18 4-1. ミュージアムへの訪問状況... 18 4-2. ミュージアムへのニーズ... 21 第 5 章特集 2: 国際経験豊かなビジネスパーソンのアートに係る状況... 22 5-1. 国際経験豊かなビジネスパーソンの美術品購入状況... 23 5-2. 国際経験豊かなビジネスパーソンの価値観 考え方... 26 さいごに... 30 2

第 1 章本調査の概要 1-1. 背景と目的近年 アートとビジネスや産業との連関が 政府及び民間レベルで注目されている 我が国においてアート産業の実態を把握するための情報は未整備な部分が多く 市場規模ですら信頼性の高い形で明らかにされてこなかった そのような状況を受け 日本最大級のアート見本市であるアートフェア東京を主催する 一般社団法人アート東京 と文化芸術 産業政策のコンサルティングを行う 一般社団法人芸術と創造 は 2016 年より 日本のアート産業に関する市場調査 を継続的に実施 発表してきている 今回の調査では 例年通り アート産業の市場規模 ( 第 2 章に該当 ) や 美術品の輸出入の状況 ( 第 3 章に該当 ) を調査するとともに 今回のみの特集として 特集 1: ミュージアムへの訪問状況 ニーズ ( 第 4 章に該当 ) 特集 2: 国際経験豊かなビジネスパーソンのアートに係る状況 ( 第 5 章に該当 ) を盛り込んでいる 1-2. 本調査の進め方本調査は主にインターネットアンケート会社が保有するモニターを対象としたアンケート調査に基づいている 調査は 1 次調査と 2 次調査の 2 段階に分けて実施した 1 次調査ではこれまでと同規模の 20,475 サンプルの回収を行い また 2 次調査では 1 次調査の回答者のなかから 国際経験豊かな 一都三県在住の 20 代 ~50 代の就労者 で 過去 1 年間に 2 回以上美術館 博物館を訪問した 方 (299 サンプル ) を分析対象としている なお これまでの調査と同様に日本全体の市場規模を推計するために 1 次調査においては総務省統計局 労働力調査 (2017 年分 ) を基に 性 年代 (6 区分 ) 職務状況( 就業者 非就業者 ) 所得( 就業者は個人所得 非就業者は世帯所得 1 により 12 区分 ) について日本全体の分布に近い形で割り付けた また 美術品は所得が高い方がより購入していると考えられるため 所得が 700 万円以上の方に関しては実際の所得の分布よりも多く回収し 分析の際には 日本全体の分布にあわせてウェイトバック集計 ( サンプルに重みづけをした集計 ) を行った また 当初回収サンプルより その購入額等に非現実性 矛盾 2 が存在するものに関しては 一定の基準を設け 分析対象より除外した 設問は1 次調査 2 次調査ともに 10 問ずつ設けた 各項目の概要については図表 1 を参照されたい 1 非就業者数は個人所得による割付ができないため 世帯所得による割付を目指したが 世帯所得に関する世帯主の性年代別の統計が存在しないため 個人所得と就業率を基に推計を行った 2 ジャンル別の購入額の合計とチャネル別の購入額の合計に一定の開きがある方 美術関連品やミュージアムショップでの購入額が大きな方 オークションで の購入額が小さな方など 3

調査方法 図表 1 本調査の概要 インターネットアンケート会社が契約するモニターを対象としたアンケート調査 調査時期 2018 年 9 月 28 日 ( 金 )~10 月 4 日 ( 火 ) 調査対象 1 次調査と 2 次調査の 2 段階で実施 各調査での対象者は以下のとおり 1 次調査 : 政府統計を基に 性 年代 職務状況 ( 有職 / 無職 ) 年収 ( 有職者は個人所得 無職者は世帯所得 ) を日本全体の分布に近い形で割付 2 次調査 : 以下の条件を全て満たす方 一定以上の国際経験がある 3 美術館 博物館訪問 ( 年 2 回以上 ) 20~50 代 働いている ( 会社員 役員 自営業 専門職 公務員 ) 居住都道府県 ( 東京都 千葉県 埼玉県 神奈川県 ) 有効サンプル数 1 次調査 :20,475 サンプル 2 次調査 :299 サンプル 調査項目 1 次調査 : 美術品 美術関連品の購入経験 ジャンル別 チャネル別の美術品 美術関連品の購入額 国内の美術館 博物館への訪問頻度 国内の美術館 博物館に望むこと 国内の美術館 博物館への訪問日時 訪問した/ 夜間開館を望む国内の美術館 博物館 海外の滞在経験 個人年収 世帯年収など 10 設問 前回調査項目から追加した項目 2 次調査 : チャネル別の訪問頻度 画廊 ギャラリーに訪問しない理由 外国人の友人 知人に紹介する 訪問すべき場所 外国人の友人 知人に 美術館 博物館 を 積極的に紹介しない 理由 今後の美術品の購入意向 美術品を購入したい( より購入したい ) と思えるきっかけ 芸術に関する価値観 日本が海外に誇ることのできる美術のジャンルなど 10 設問 3 海外での居住経験 (1 ヶ月以上 ) 過去 1 年間での海外での滞在 ( 旅行や仕事で延べ 2 週間以上滞在 ) 外資系企業 ( 社内の公用語が英語のもの ) での勤務経験 のいずれかに当てはまる方を対象としている 4

1-3. 回答者の基本属性 1 次調査の回答者の基本属性は次表のとおり 性別 年代 個人年収 ( 就業者 ) についてはウェイトバックを行って いるため日本の分布と一致している 地域分類と世帯年収も日本の分布から大きくは乖離していない 図表 2 1 次調査回答者の基本属性 ( サンプル数と全体に占める割合 ) 性別 区分 単純集計 ウェイトバック後 日本の分布 男性 9,943 49% 8,705 48% 48% 女性 10,532 51% 9,262 52% 52% 年代 区分 単純集計 ウェイトバック後 日本の分布 15~24 歳 1,060 5% 1,978 11% 11% 25~34 歳 2,847 14% 2,206 12% 13% 35~44 歳 3,511 17% 2,836 16% 16% 45~54 歳 3,733 18% 2,843 16% 15% 55~64 歳 4,323 21% 2,504 14% 15% 65 歳以上 5,001 24% 5,601 31% 30% 地域分類 区分 単純集計 ウェイトバック後 日本の分布 北海道 936 5% 956 5% 4% 東北 1,013 5% 989 6% 7% 関東 9,044 44% 7,268 40% 34% 北陸 619 3% 612 3% 4% 中部 2,217 11% 1,954 11% 13% 近畿 3,872 19% 3,580 20% 18% 中国 931 5% 853 5% 6% 四国 458 2% 463 3% 3% 九州 1,385 7% 1,291 7% 11% 個人年収 ( 就業者 ) 区分 単純集計 ウェイトバック後 日本の分布 0 円 ( なし ) 254 2.1% 275 2.6% 100 万円未満 1,489 12.2% 1,591 14.9% 17.8% 100~200 万円未満 1,807 14.8% 1,941 18.1% 19.0% 200~300 万円未満 1,664 13.6% 1,804 16.8% 16.6% 300~400 万円未満 1,496 12.3% 1,565 14.6% 14.6% 400~500 万円未満 1,118 9.2% 1,145 10.7% 10.4% 500~600 万円未満 766 6.3% 711 6.6% 600~700 万円未満 599 4.9% 564 5.3% 11.5% 700~800 万円未満 663 5.4% 343 3.2% 800~900 万円未満 401 3.3% 211 2.0% 6.9% 900~1,000 万円未満 349 2.9% 188 1.8% 1,000~1,500 万円未満 1,033 8.5% 263 2.5% 2.4% 1,500 万円以上 561 4.6% 112 1.0% 0.9% 世帯年収 区分 単純集計 ウェイトバック後 日本の分布 300 万円未満 5,143 25% 8,473 47% 34% 300~500 万円未満 4,464 22% 3,393 19% 23% 500~700 万円未満 3,019 15% 2,313 13% 16% 700~1,000 万円未満 3,877 19% 2,326 13% 15% 1,000~1,500 万円未満 2,606 13% 1,063 6% 9% 1,500 万円以上 1,366 7% 400 2% 3% 5

第 2 章アート産業の市場規模 2-1. 世界の美術品市場規模と経済状況世界の美術品市場規模の推移を示したものが図表 3 である 金融危機のあった 2009 年を除くと約 600 億ドル規模で推移しており 2014 年以降は 2 年連続で減少傾向にあったが 2017 年は約 637 億ドル ( 約 7.16 兆円 4 ) に回復した 図表 3 世界の美術品市場規模 出所 )Art Basel & UBS The Art Market 2018 4 財務省 関税定率法第 4 条の 7 に規定する財務省令で定める外国為替相場 を基に 平成 30 年 12 月 30 日から平成 31 年 1 月 5 日まで の為替 1 ドル 112.43 円を適用した 6

この間 アメリカでは株価が上昇するとともに ( 図表 4) 世界的な富も増大しており ( 図表 5) 世界の美術品 市場も多分にこの影響を受けているものと考えられる 図表 4 ダウ平均株価の推移 ( 過去 5 年間 ) 2017 年度調査時点 2018 年度調査時点 出所 )Google 図表 5 世界の資産総額の推移 5 出所 )Credit Swiss Global Wealth Report 2018 5 元タイトル Total global wealth 2000 18, smoothed exchange rates 7

2-2. 日本のアート産業の市場規模の推計方法 本調査では これまでの調査と同様にアート産業の市場を 1 美術品市場 2 美術関連品市場 3 美術関連 サービス市場 の合計値として定義し その推移をみている 図表 6 市場規模の推計方法の概要 市場の分類推計の対象推計の手法 1 美術品市場 2 美術関連品市場 3 美術関連サービス市場 国内在住者による以下のチャネルでの以下の商品 ( 美術品 ) の購入 画廊 ギャラリー 百貨店 アートフェア 美術品のオークション ミュージアムショップ インターネットサイト 作家からの直接の購入 美術品 ( 日本画 洋画 彫刻 版画 現代美術 写真 映像作品 陶芸 工芸 書 掛軸 屏風 国内在住者による以下の商品 ( 美術関連品 ) の購入 著名な絵画を複製したポスター ポストカード 展覧会の図録 カタログ等の美術書 著名な絵画 彫刻等をモチーフとしたグッズ 国内在住者による美術館 博物館への訪問に係る入場料の支払い 主要なアートプロジェクトへの訪問に係る消費 本調査アンケート 6 各種報告書 3 美術関連サービス市場 は 国内在住者による美術館 博物館への訪問に係る入場料の支払い ( 以下 美術館 博物館入場料 ) と 主要なアートプロジェクトへの訪問に係る消費 ( アートプロジェクト消費 ) から構成される 美術館 博物館入場料 に関しては 本調査アンケートにおいて 年間の美術館 博物館への訪問回数( 有料のもののみ ) を調査しており その回数に平均的な入館料 7 を乗じ 推計した また アートプロジェクト消費 については 2015 年以降実施されている主要な美術芸術祭 ( 報告書が公開されているもののみ 8 ) の直接消費額を開催頻度 ( ビエンナーレ :2 年 トリエンナーレ :3 年 ) に基づき単年換算し それらを合算した 6 国内のオークションの値は 生活の友社 アートコレクターズ で毎年掲載されている国内オークション会社の落札額合計を採用している 7 2015 年に国立美術館 ( 東京国立近代美術館 京都国立近代美術館 国立西洋美術館 国立国際美術館 国立新美術館 ) 国立博物館( 東京国立博物館 京都国立博物館 奈良国立博物館 九州国立博物館 ) において行われた各企画展の入場料 ( 一般 前売り ) と入場者数から 1 人あたりの平均の入館料 (1,241 円 ) を導いて推計した これまでの調査と同様に本方法によって推計されたと1 人あたりの平均入館料を適用している 8 ヨコハマトリエンナーレ あいちトリエンナーレ 札幌国際芸術祭 PARASOPHIA 越後妻有アートトリエンナーレ 瀬戸内国際芸術祭 いちはらアートミックス 混浴温泉世界 さいたまトリエンナーレ 茨城県北芸術祭 岡山芸術交流 北アルプス国際芸術祭 奥能登国際芸術祭 Reborn-Art Festival 等 8

2-3. 日本のアート産業の市場規模推計結果ジャンル別の市場規模の推計結果が図表 7 である これまでと同様洋画が最も大きく 548 億円 次いで日本画 陶芸 版画などが続く 美術関連品は 470 億円であった また チャネル別の市場規模の推計結果が図表 8 である 美術品の購入額は 2,460 億円と推計される うち 2,125 億円が国内事業者からの購入である これまでの調査と同様に 国内の画廊 ギャラリー (735 億円 ) 国内の百貨店 (644 億円 ) が大きかった 9 図表 7 ジャンル別の美術品 美術関連品市場規模 ( 単位 : 億円 ) (n=20,475) 洋画日本画陶芸版画現代美術 ( 平面 ) 掛軸 屏風工芸現代美術 ( 立体 インスタレーション ) 書写真彫刻映像作品著名な絵画 彫刻等をモチーフとしたグッズ著名な絵画を複製したポスター ポストカード展覧会の図録 カタログ等の美術書 18 70 69 66 136 110 97 120 156 222 194 294 402 436 美術関連品 470 億円 548 図表 8 チャネル別の美術品市場規模 ( 単位 : 億円 ) (n=20,475) 国内の画廊 ギャラリー国内の百貨店 ( 通販 外商扱いも含む ) 国内のアートフェア国内のインターネットサイト国内の美術品のオークションその他の国内事業者国内のミュージアムショップ国外のアートフェア国外の画廊 ギャラリー国外のミュージアムショップ国外のインターネットサイト国外の美術品のオークションその他の国外事業者作家からの直接の購入その他 253 180 135 103 74 39 26 13 6 2 1 211 36 644 735 国内での購入 2,125 億円 国外での購入 89 億円 全体 2,460 億円 9 ジャンル別の数値には重複が含まれるので ジャンル別の美術品購入額合計はチャネル別の美術品購入額合計と数値が異なることに留意されたい 9

また 美術館 博物館入場料 の合計は 408 億円 アートプロジェクト消費の合計は 96 億円であった これらをあわせた 3 美術関連サービス市場 は 504 億円になる 1 美術品市場 (2,460 億円 ) 10 2 美術関連品市場 (470 億円 ) 3 美術関連サービス市場 (504 億円 ) の全てを合算した アート産業 の市場規模は 3,434 億円と推計された 11 図表 9 アート産業に関する市場規模の全体像 1 美術品市場 :2,460 億円 国内事業者からの購入 :2,125 億円 画廊 ギャラリー 735 億円 百貨店 644 億円 国外事業者からの購入 :89 億円 その他 ( 事業者以外からの購入 ):247 億円 アートフェア 253 億円 インターネット 180 億円 オークション 135 億円 その他 177 億円 1 美術品市場 + 2 美術関連品市場 2,930 億円 1 美術品市場 + 2 美術関連品市場 + 3 美術関連サービス市場 3,434 億円 2 美術関連品市場 :470 億円 3 美術関連サービス市場 :504 億円 美術館 博物館入場料 :408 億円 アートプロジェクト消費 :96 億円 10 ジャンル別とチャネル別の美術品市場の値が異なるが ジャンル別では重複回答 ( 複数ジャンルにまたがるもの ) が存在すると考えられるため 美術品市場としてはチャネル別の値を採用している 11 それぞれの数値は億円の単位で四捨五入して表示している ( 端数が含まれている ) ため 合計値が必ずも内訳の数値の合計値と一致しない場合がある ことに留意されたい 10

2-4. これまでの調査との比較と日本の経済状況 アート産業に関する市場規模 の主要な要素について過去 3 年間の調査結果の推移を整理したものが図表 10 である 2018 年のアート産業 (1+2+3) の市場規模はこれまでで最大となった あわせて 美術品市場については緩やかではあるが毎年増加傾向にある 画廊 ギャラリーや百貨店は毎年若干の増減はあるが 画廊 ギャラリーは 700 億円台 百貨店は 600 億円台で推移している 1+2+3 1 美術品市場国内事業者からの購入画廊 ギャラリー百貨店 2 美術関連品市場 3 美術関連サービス市場美術館 博物館入場料アートプロジェクト消費 図表 10 各市場規模の推移 2,431 2,437 2,460 2,037 2,003 2,125 792 726 735 627 685 644 403 306 470 507 517 504 428 427 408 79 90 96 3,341 3,260 3,434 ( 単位 : 億円 ) 2016 年 2017 年 2018 年 11

近年 日本の経済状況は比較的堅調であり 日経平均株価 ( 図表 11) や TOPIX( 図表 12) は前回の調査時点と比較すると上昇している また 1 人あたりの資産や富裕層の数 ( 図表 13) も増 加傾向にある 図表 11 日経平均株価の推移 ( 過去 5 年間 ) 2017 年度調査時点 2018 年度調査時点 出所 )Google 図表 12 TOPIX の推移 ( 過去 5 年間 ) 2017 年度調査時点 2018 年度調査時点 出所 )Google 図表 13 日本の成人 1 人あたりの資産 ( ドル ) の推移 12 と各国の資産 1 億円以上の人数 ( 千人 ) の推移 13 12 元タイトル Wealth per adult over time 13 元タイトル Number of dollar millionaires (thousand) 2000 18, selected countries 12

13 出所 )Credit Swiss Global Wealth Report 2018

世界の美術品市場における各国の市場 ( 約 7.16 兆円 ) の割合を示したものが図表 14 である アメリカ 中国 イギリスで世界の 8 割を占める 2017 年の国内における美術品の市場 (2003 億円 ) をあてはめると 日本の割合は 2.8% と推計される ( 互いの調査の市場規模の推計方法 定義などが異なるため あくまでも参考値としての位置づけであることに留意されたい 14 ) 図表 14 世界の美術品市場における各国の市場の割合 (2017 年 ) 出所 )Art Basel & UBS The Art Market 2018 14 Art Basel & UBS The Art Market 2018 のデータは全世界の人々による 当該国内における美術品の取引額を推計しているのに対して 日本のアート産業に関する市場レポート では日本在住の日本人による美術品の取引額を推計している 14

第 3 章美術品の輸出入の状況 3-1. 美術品の輸出入の算出方法本調査では美術品の輸出入の状況についてもあわせて分析している 分析においては財務省 貿易統計 を活用し 分析対象は 書画 コラージュその他これに類する装飾板 銅版画 木版画 石版画その他の版画 彫刻 塑像 鋳像その他これらに類する物品 とし これら 4 つの区分をあわせて美術品と定義している 15 コード 図表 15 美術品の定義 定義 9701.10 書画 ( 肉筆のものに限るものとし 手作業で描き又は装飾した加工物及び設計図及び図案を除く ) 9701.90 コラージュその他これに類する装飾板 97.02 銅版画 木版画 石版画その他の版画 97.03 彫刻 塑像 鋳像その他これらに類する物品 ( 材料を問わない ) これら 4 つの区分をあわせて美術品として扱っている 出所 ) 財務省 貿易統計 を基に ( 一社 ) アート東京 ( 一社 ) 芸術と創造作成 3-2. 輸出入の状況これらの定義を基に 1988 年以降の美術品の輸出入額を示したものが図表 16 図表 17 である 1990 年に 6,000 億円規模まで膨らんだ美術品輸入も 1993 年以降は 500 億円未満で推移してきたが 2011 年以降は再度拡大傾向にあり 2017 年は 580 億円となっている 図表 16 美術品の輸出入額の推移 ( 億円 ) 7,000 6,000 5,000 4,000 3,000 輸出 輸入 2,000 1,000 0 88 年 90 年 92 年 94 年 96 年 98 年 00 年 02 年 04 年 06 年 08 年 10 年 12 年 14 年 16 年 出所 ) 財務省 貿易統計 を基に ( 一社 ) アート東京 ( 一社 ) 芸術と創造作成 15 2017 年調査では 書画 コラージュその他これに類する装飾板 銅版画 木版画 石版画その他の版画 の 3 つの区分の合計値として定義していたが 2018 年調査から 彫刻 塑像 鋳像その他これらに類する物品 を加え 4 つの区分の合計値としている 15

2011/01 2011/04 2011/07 2011/10 2012/01 2012/04 2012/07 2012/10 2013/01 2013/04 2013/07 2013/10 2014/01 2014/04 2014/07 2014/10 2015/01 2015/04 2015/07 2015/10 2016/01 2016/04 2016/07 2016/10 2017/01 2017/04 2017/07 2017/10 2018/01 2018/04 2018/07 図表 17 美術品の輸出入額の推移 ( 拡大 ) ( 億円 ) 600 500 輸出 輸入 400 300 200 100 0 88 年 90 年 92 年 94 年 96 年 98 年 00 年 02 年 04 年 06 年 08 年 10 年 12 年 14 年 16 年 出所 ) 財務省 貿易統計 を基に ( 一社 ) アート東京 ( 一社 ) 芸術と創造作成 また 美術品の輸入額の 2011 年以降の単月の推移を示したものが図表 18 である 月ごとの増減が大きいことがわかる 日本人コレクターが ニューヨークのオークションにて 2016 年 5 月に 5728 万 5000 ドル 2017 年 5 月に 1 億 1050 万ドルにてジャン=ミシェル バスキアの作品を落札しており ( 国内持ち込みのタイミングは不明 ) 年間 500 億円前後の規模の輸入のなかで このような高額の美術品の輸入の影響は非常に大きい 図表 18 美術品の輸入額の推移 ( 単月 ) ( 億円 ) 250 200 150 100 50 0 出所 ) 財務省 貿易統計 を基に ( 一社 ) アート東京 ( 一社 ) 芸術と創造作成 16

書画に限定した際の 1988 年以降の輸出入の数量と単価 16 の推移を示したものが図表 19 図表 20 である 近 年 輸入における単価は上昇傾向にあることがわかる 図表 19 書画の輸出入数量の推移 ( 点 ) 1,600 1,400 1,200 1,000 800 600 輸出 輸入 400 200 0 88 年 90 年 92 年 94 年 96 年 98 年 00 年 02 年 04 年 06 年 08 年 10 年 12 年 14 年 16 年 出所 ) 財務省 貿易統計 を基に ( 一社 ) アート東京 ( 一社 ) 芸術と創造作成 図表 20 書画の輸出入単価の推移 ( 千円 ) 2,500 輸出 2,000 輸入 1,500 1,000 500 0 88 年 90 年 92 年 94 年 96 年 98 年 00 年 02 年 04 年 06 年 08 年 10 年 12 年 14 年 16 年 出所 ) 財務省 貿易統計 を基に ( 一社 ) アート東京 ( 一社 ) 芸術と創造作成 16 金額 / 数量 書画 コラージュその他これに類する装飾板 銅版画 木版画 石版画その他の版画 では大きく単価が異なるため 書画 のみで分析を行っている 17

2017 年における相手国別の美術品の輸入額を示したものが図表 21 輸出額を示したものが図表 22 である 輸 入 輸出ともにアメリカが最大の相手国となっている 輸入はそのほか フランスやスペインなども多く 輸出はアジア ( 中国 韓国 台湾等 ) が多い 図表 21 相手国別の美術品の輸入額 (2017 年 ) ( 百万円 ) 0 5,000 10,000 15,000 20,000 アメリカ合衆国フランススペイン中国 香港英国イタリアオランダスイスノルウェー韓国ドイツその他 1,571 1,274 700 626 596 367 395 245 261 532 11,153 17,753 出所 ) 財務省 貿易統計 を基に ( 一社 ) アート東京 ( 一社 ) 芸術と創造作成 図表 22 相手国別の美術品の輸出額 (2017 年 ) ( 百万円 ) 0 5,000 10,000 15,000 アメリカ合衆国中国 香港大韓民国台湾英国スイスシンガポールフランスベルギードイツブラジルその他 2,138 1,638 1,245 1,200 840 805 428 265 239 960 9,052 13,537 出所 ) 財務省 貿易統計 を基に ( 一社 ) アート東京 ( 一社 ) 芸術と創造作成 18

第 4 章特集 1: ミュージアムへの訪問状況 ニーズ近年 日本においてはインバウンドを意識した魅力向上 ( ナイトミュージアム等 ) やユニークベニューとしての活用など ミュージアムの可能性について注目が集まっている しかしながら ミュージアム ( 博物館 美術館 ) 17 の個別の利用状況は それぞれの施設や団体により一部公表されているが 主要なミュージアムの訪問状況について比較調査したものは限定的である 18 そこで 日本のアート産業に関する市場調査 ではより具体的なミュージアムへの訪問状況を明らかにしている 4-1. ミュージアムへの訪問状況人々のミュージアムの訪問状況を示したものが図表 23 である 37.2% の方々は過去 1 年間に 1 回以上ミュージアムに訪問している そのほとんどは 1~2 回の訪問 (27.7%) であり 月に 1 回以上訪問する方は少数 (1.5%) である 図表 23 過去 1 年間のミュージアムの訪問回数 1 回程度 2 回程度 ( 半年に1 回程度 ) 3 回程度 (4ヶ月に1 回程度 ) 4 回程度 (3ヶ月に1 回程度 ) 6 回程度 (2ヶ月に1 回程度 ) 12 回程度 ( 月に1 回程度 ) 25 回程度 ( 月に2 回程度 ) 50 回程度 ( 週に1 回程度 ) 100 回程度 ( 週に2 回程度 ) 150 回程度 ( 週に3 回程度 ) 200 回程度 ( 週に4 回程度 ) 300 回程度 ( ほぼ毎日 ) ほとんど訪問していない 17.0% 10.7% 3.7% 2.9% 1.7% 0.9% 0.3% 0.1% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 62.8% (n=20,475) 17 ここでは名称として博物館 美術館を掲げている施設 ( 一般的な人々により博物館 美術館として認識されている施設 ) を対象としており 博物館法上の博物館とは異なる定義により使用している 18 政府でも 内閣府 文化に関する世論調査 文部科学省 社会教育調査 を行っているが 年間の博物館 美術館の訪問者数や頻度など 一部の状 況の調査に留まる 19

また この訪問について曜日と時間帯での状況を明らかにしたものが図表 24 である 特に人気の展覧会に関しては週末 ( さらには会期末 ) に来場が集中し 一部のミュージアムでは会期中の価格の変動 ( 及び招待券の訪問期間の限定 ) や事前予約制など 平準化の試みがなされているが それでも週末の訪問割合が多いことがわかる さらに これを年代別にみると ( 図表 25) 20 代 30 代では特に週末の訪問が多く また 実施しているミュージアムはまだ限定的ではあるが金曜日 週末の 17 時以降の訪問も比較的多い 60 代は曜日による差がほとんどないといえる 19 図表 24 過去 1 年間の曜日 時間帯別ミュージアムの訪問状況 それ以外の (n=9,151)9 時 ~11 時 11 時 ~13 時 13 時 ~15 時 15 時 ~17 時 17 時 ~19 時 19 時 ~24 時合計時間帯月曜日 4% 5% 6% 3% 1% 0% 0% 19% 火曜日 6% 11% 10% 5% 1% 0% 0% 33% 水曜日 7% 11% 12% 5% 1% 0% 0% 37% 木曜日 6% 11% 11% 6% 1% 1% 0% 36% 金曜日 6% 10% 11% 6% 3% 2% 0% 40% 土曜日 13% 21% 26% 15% 4% 1% 0% 82% 日曜日 祝日 14% 25% 31% 17% 4% 1% 1% 93% 合計 57% 94% 108% 57% 16% 6% 3% 340% 20 代 30 代 図表 25 過去 1 年間の曜日 時間帯別ミュージアムの訪問状況 ( 年代別 ) それ以外の (n=2,022)9 時 ~11 時 11 時 ~13 時 13 時 ~15 時 15 時 ~17 時 17 時 ~19 時 19 時 ~24 時合計時間帯月曜日 3% 3% 5% 3% 2% 1% 0% 17% 火曜日 3% 4% 6% 5% 1% 1% 0% 20% 水曜日 3% 4% 7% 4% 2% 1% 0% 23% 木曜日 3% 4% 7% 4% 1% 2% 0% 21% 金曜日 2% 3% 5% 5% 4% 2% 1% 23% 土曜日 14% 23% 32% 22% 7% 2% 0% 100% 日曜日 祝日 16% 28% 41% 26% 9% 2% 1% 123% 合計 44% 69% 103% 70% 26% 11% 4% 327% 60 代以上 それ以外の (n=3,853)9 時 ~11 時 11 時 ~13 時 13 時 ~15 時 15 時 ~17 時 17 時 ~19 時 19 時 ~24 時合計時間帯月曜日 5% 7% 8% 2% 0% 0% 0% 23% 火曜日 9% 17% 15% 6% 1% 0% 0% 48% 水曜日 10% 18% 17% 6% 1% 0% 1% 54% 木曜日 9% 18% 17% 7% 1% 0% 1% 53% 金曜日 10% 18% 18% 7% 2% 1% 0% 55% 土曜日 11% 18% 20% 8% 1% 0% 1% 59% 日曜日 祝日 11% 18% 20% 8% 1% 0% 1% 58% 合計 65% 113% 115% 45% 7% 2% 3% 350% 19 過去 1 年間に 1 回以上ミュージアムに訪問したと回答した方に調査を行った ( 図表 25 も同様 ) 20

過去 1 年間に人々が訪問したミュージアムを示したものが図表 26 である 東京国立博物館 国立西洋美術館 東京都美術館 上野の森美術館 など上野に立地するミュージアムが上位にのぼる そのほか 国立新美術館 江戸東京博物館 百貨店での展示会 展示 なども割合が高い これを年代別にみたものが図表 27 である トップ 10 に入っているものは 年代別でそれほど大きな差が見られないが 20~40 代では 森美術館 の訪問割合が高い 図表 26 過去 1 年間に訪問したミュージアム 20 (n=4,030) 東京国立博物館 35% Bunkamuraザ ミュージアム ( 渋谷 ) 7% 国立西洋美術館 29% 森アーツセンターギャラリー 5% 東京都美術館 26% 山種美術館 ( 広尾 ) 5% 国立新美術館 23% 三井記念美術館 5% 上野の森美術館 18% 出光美術館 5% 百貨店での展覧会 展示 16% 東京都庭園美術館 ( 白銀台 ) 5% 江戸東京博物館 12% 東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館 5% サントリー美術館 11% 東京ステーションギャラリー 4% 東京国立近代美術館 11% すみだ北斎美術館 4% 画廊 ギャラリーでの展覧会 展示 11% 根津美術館 ( 青山 ) 4% 森美術館 9% 東京都写真美術館 ( 恵比寿 ) 3% 三菱一号館美術館 9% 東京オペラシティアートギャラリー 3% 東京都内の市立 区立の美術館 7% ブランドショップ併設のギャラリー 3% 横浜美術館 ( 横浜 ) 7% 東京都現代美術館 ( 木場 清澄 ) 休館中 2% 図表 27 過去 1 年間に訪問したミュージアム ( 年代別トップ 10) 20 代 30 代 (n=863) 40 代 (n=674) 東京国立博物館 30% 東京国立博物館 38% 国立西洋美術館 21% 国立西洋美術館 27% 国立新美術館 17% 国立新美術館 25% 上野の森美術館 17% 東京都美術館 23% 東京都美術館 17% 上野の森美術館 19% 森美術館 11% 百貨店での展覧会 展示 17% 百貨店での展覧会 展示 10% 森美術館 11% 画廊 ギャラリーでの展覧会 展示 8% サントリー美術館 10% サントリー美術館 8% 江戸東京博物館 10% 東京国立近代美術館 7% 東京国立近代美術館 10% 50 代 (n=828) 60 代以上 (n=1,642) 東京国立博物館 35% 東京国立博物館 37% 国立西洋美術館 33% 国立西洋美術館 33% 東京都美術館 27% 東京都美術館 33% 国立新美術館 24% 国立新美術館 27% 上野の森美術館 20% 百貨店での展覧会 展示 19% 百貨店での展覧会 展示 15% 上野の森美術館 19% 東京国立近代美術館 13% 江戸東京博物館 16% 江戸東京博物館 12% サントリー美術館 15% サントリー美術館 11% 画廊 ギャラリーでの展覧会 展示 14% 三菱一号館美術館 10% 東京国立近代美術館 14% 20 東京都 神奈川県 千葉県 埼玉県居住で過去 1 年間に 1 回以上ミュージアムに訪問したと回答した方に調査を行った 21

4-2. ミュージアムへのニーズまた 人々が国内のミュージアムに望む事柄を調査した結果が図表 28 である 入場料金 ( 企画展 常設展 ) の低廉化 著名な芸術家の展覧会の充実 アクセスの利便性 人気の展覧会の混雑の緩和 などのほか 自由 気軽に滞在 休憩できるスペースの充実 レストラン カフェの充実 などの割合も高かった 一方 近年話題のナイトミュージアムに繋がる 開館時間の延長 ( 夜 ) の割合は過去 1 年間に 1 回以上ミュージアムに訪問した方でも 17% に留まり 顕在化したニーズではないことがわかる 図表 28 国内のミュージアムに望むこと 21 入場料金 ( 企画展 ) の低廉化著名な芸術家の展覧会の充実アクセスの利便性入場料金 ( 常設展 ) の低廉化人気の展覧会の混雑の緩和 ( 入場時間の分散化等 ) 自由 気軽に滞在 休憩できるスペースの充実 ( 屋内ラウンジ エントランスホール等 ) 自由 気軽に滞在 休憩できるスペースの充実 ( 庭園 芝生広場 屋上等 ) 常設された作品 ( 所蔵作品含む ) の充実レストラン カフェの充実美術館 博物館の近隣の飲食店や商業施設の充実駐車スペースの充実ミュージアムショップの充実開館時間の延長 ( 夜 ) 有名建築家やデザイナーによる魅力的な空間レストラン カフェの金額設定の低廉化展覧会に関する情報提供サービス ( メルマガ等 ) の充実展示に関する説明 オーディオガイドの充実ワークショップ トークプログラムの充実年間会員サービス ( 年間パスポート イベント招待 ) の充実ライブラリー施設 ( 図書室 ) の設置 充実開館時間の延長 ( 朝 ) 託児所 キッズスペースの設置 充実 45% 45% 26% 44% 39% 34% 35% 34% 17% 29% 25% 25% 22% 24% 12% 23% 20% 22% 14% 19% 21% 18% 8% 17% 9% 17% 11% 年 1 回以上訪問 15% (n=9,151) 15% 13% 訪問なし 6% (n=12,320) 11% 7% 10% 6% 9% 4% 6% 4% 5% 2% 3% 4% 57% 21 これらの項目のほか 年 1 回以上訪問 では 4% 訪問なし では 82% が あてはまるものはない どのような事柄があってもより行きたいとは思わない と回 答 22

第 5 章特集 2: 国際経験豊かなビジネスパーソンのアートに係る状況 2018 年は ビジネスとアートの関係性に特に注目が集まった年であった この傾向は 日本に特有のものではなく 欧米の国々において先行的に進んでいたものだと考えられる そこで本調査では 2 つ目の特集として 1 次調査の回答者のなかから 国際経験豊か 22 な 一都三県在住の 20 代 ~50 代の就労者 で 過去 1 年間に 2 回以上美術館 博物館に訪問した という条件にあてはまる 国際経験豊かなビジネスパーソン ( 以下 ビジネスパーソン ) (299 サンプル ) を分析対象とし アートに係る様々な実態を明らかにしている 調査対象とした方々の基本属性は以下の通りである 個人所得が 1,000 万円以上の方が 4 割近く占めるなど所得の高さが際立っている 図表 29 2 次調査回答者の基本属性 ( サンプル数と全体に占める割合 ) 性別 区分 ビジネスパーソン 全サンプル (WB 後 ) 日本の分布 男性 173 58% 8,705 48% 48% 女性 126 42% 9,262 52% 52% 年代 区分 ビジネスパーソン 全サンプル (WB 後 ) 日本の分布 15~24 歳 6 2% 1,978 11% 11% 25~34 歳 41 14% 2,206 12% 13% 35~44 歳 78 26% 2,836 16% 16% 45~54 歳 115 38% 2,843 16% 15% 55~64 歳 59 20% 2,504 14% 15% 65 歳以上 0 0% 5,601 31% 30% 地域分類 区分 ビジネスパーソン 全サンプル (WB 後 ) 日本の分布 北海道 0 0% 956 5% 4% 東北 0 0% 989 6% 7% 関東 299 100% 7,268 40% 34% 北陸 0 0% 612 3% 4% 中部 0 0% 1,954 11% 13% 近畿 0 0% 3,580 20% 18% 中国 0 0% 853 5% 6% 四国 0 0% 463 3% 3% 九州 0 0% 1,291 7% 11% 個人年収 ( 就業者 ) 区分 ビジネスパーソン 全サンプル (WB 後 ) 日本の分布 0 円 ( なし ) 1 0.3% 275 2.6% 100 万円未満 4 1.3% 1,591 14.9% 17.8% 100~200 万円未満 10 3.3% 1,941 18.1% 19.0% 200~300 万円未満 20 6.7% 1,804 16.8% 16.6% 300~400 万円未満 22 7.4% 1,565 14.6% 14.6% 400~500 万円未満 28 9.4% 1,145 10.7% 10.4% 500~600 万円未満 16 5.4% 711 6.6% 600~700 万円未満 24 8.0% 564 5.3% 11.5% 700~800 万円未満 25 8.4% 343 3.2% 800~900 万円未満 13 4.3% 211 2.0% 6.9% 900~1,000 万円未満 21 7.0% 188 1.8% 1,000~1,500 万円未満 67 22.4% 263 2.5% 2.4% 1,500 万円以上 48 16.1% 112 1.0% 0.9% 世帯年収 区分 ビジネスパーソン 全サンプル (WB 後 ) 日本の分布 300 万円未満 13 4% 8,473 48% 34% 300~500 万円未満 24 8% 3,393 19% 23% 500~700 万円未満 28 9% 2,313 13% 16% 700~1,000 万円未満 63 21% 2,326 13% 15% 1,000~1,500 万円未満 87 29% 1,063 6% 9% 1,500 万円以上 84 28% 0 0% 3% 22 経験 習慣として 海外での居住経験 ( 欧米の国々に 1 ヶ月以上 ) (5.1%) 海外での居住経験 ( アジアの国々に 1 ヶ月以上 ) (2.6%) 海外での居住経験 ( その他の国々に 1 ヶ月以上 ) (1.4%) 過去 1 年間での海外での滞在 ( 旅行や仕事で延べ 2 週間以上滞在 ) (2.8%) 外資系企業 ( 社内の公用語が英語のもの ) での勤務経験 (1.0%) のいずれかにあてはまる方を 国際経験豊か と定義している 23

5-1. 国際経験豊かなビジネスパーソンの美術品購入状況 ビジネスパーソンの美術品の購入状況と今後の購入意向は以下のとおり 約半数は美術品を購入した経験を持ち ( 日本全体では約 16%) さらには購入したことがない方でも約 3 割が購入に関心を持っている 図表 30 国際経験豊かなビジネスパーソンの美術品の購入状況と今後の購入意向 (n=299) 購入経験なし (n=150) 4% 26% 21% 25% 24% 過去 3 年間に購入 32% 購入経験あり & 過去 3 年間に購入なし 18% 購入経験なし 50% 購入経験あり & 過去 3 年間に購入なし 13% 46% 19% 7% 15% (n=54) 過去 3 年間に購入 (n=95) 33% 55% 4% 3% 5% 購入したい どちらかというと購入したい どちらかというと購入したくない 購入したくない 判断できない わからない また 過去 1 年間に国内の画廊 ギャラリーには約半数 アートフェアには 3 割強の人々が訪問しており これらの チャネル ( 美術品購入の場 ) とは距離を置いていないことがわかる 図表 31 国際経験豊かなビジネスパーソンの各チャネルの訪問頻度 (n=299) 0 20 40 60(%) 画廊 ギャラリー 21 12 17 国内 アートフェア 美術品のオークション 18 5 1 4 9 9 美術の芸術祭 ( ビエンナーレ トリエンナーレ等 ) 15 3 4 博物館 美術館 30 13 11 国外 画廊 ギャラリー アートフェア 美術品のオークション 12 6 4 2 312 6 4 美術の芸術祭 ( ビエンナーレ トリエンナーレ等 ) 6 22 1 回程度 2 回程度 ( 半年に 1 回程度 ) 3 回以上 24

購入経験がないビジネスパーソンの美術品非購入理由を示したものが図表 32 である 美術品を購入することに関心がないから (41%) 購入できそうにないから( 値段が高そうだから ) (26%) のほか 画廊 ギャラリーの仕組みが分からないから ( 気軽に訪問していいのものか分からないから ) (26%) それぞれの画廊 ギャラリーでどのような企画を行っているか知らないから ( わかりづらいから ) (22%) など 関係者による情報発信で解消できそうな要素の割合も高かった 図表 32 国際経験豊かなビジネスパーソンの美術品非購入理由 美術品を購入することに関心がないから画廊 ギャラリーの仕組みが分からないから ( 気軽に訪問していいものか分からないから ) 購入できそうにないから ( 値段が高そうだから ) それぞれの画廊 ギャラリーでどのような企画を行っているか知らないから ( わかりづらいから ) 展示スペースが小さいから 展示されている作品が少ないから店内の様子がわからないからどこにあるか知らないから ( わかりづらいから ) スタッフが無愛想だから作品説明が少ないからアクセスが良くないから美術に関心がないからその他特に理由はない 41% 26% 26% 22% 16% 11% 11% 7% 5% 4% 3% (n=149) 2% 17% 25

また 美術品購入経験のそれぞれの区分ごとに 美術品を購入したい ( より購入したい ) と思えるきっかけ を調査した ( 図表 33) どの区分でも 部屋に飾りたい作品と出会う ことが最も高かったが そのほか 購入経験があるが過去 3 年間に購入しなかった方 では 何らかの記念 ( 結婚 出産等 ) (33%) や 引っ越しや模様替え (20%) などライフステージに関わる事柄が高く 過去 3 年間に購入している方 では 美術品に詳しい人のアドバイス ( 専門家によるもの :26% 友人によるもの:23% 画廊 ギャラリー等の店員によるもの:22%) や 作家と直接話す (24%) ことが上位となっており きっかけの傾向が全く異なることが分かる 図表 33 美術品を購入したい ( より購入したい ) と思えるきっかけ 購入経験なし (n=150) 購入経験あり & 過去 3 年間に購入なし (n=54) 過去 3 年間に購入 (n=95) 部屋に飾りたい作品と出会う 35% 57% 46% 作品の現在価格が明確化される 16% 17% 17% 美術品に詳しい人 ( 美術品に関する専門家 ) のアドバイス 15% 15% 26% 美術品に詳しい人 ( 友人 ) のアドバイス 15% 17% 23% 何らかの記念 ( 結婚 出産等 ) 12% 33% 19% 美術品に詳しい人 ( 画廊 ギャラリー等の店員 ) のアドバイス 11% 7% 22% 作家や作品の情報がインターネットや本で調べやすくなる 11% 9% 15% 作品の購入 保管 転売 相続等の仕組みが分かる 9% 11% 14% 気になっている作家や作品が展覧会 メディアなどで取り上げられる 9% 4% 13% 引っ越しや模様替え 8% 20% 14% 作家と直接話す 7% 13% 24% ( 美術品 ) 投資に詳しい人のアドバイス 6% 4% 12% どのようなきっかけがあっても美術品を購入したい ( より購入したい ) とは思えない 21% 0% 2% あてはまるものはない 11% 6% 1% 26

5-2. 国際経験豊かなビジネスパーソンの価値観 考え方 2016 年調査では 一般の人々 ( 全サンプル ) に対して芸術の価値観を調査したが 同様の項目に関してビジネスパーソンに調査を行った 全体的にビジネスパーソンの方が高い傾向があったが 特に差分が大きかったのは 芸術的視点は 産業競争力の強化において重要である 芸術的視点は あなたの仕事において重要である といった項目であった 国際経験豊かな方はよりビジネスにとって芸術的視点が重要であると考えている傾向がみてとれる 図表 34 芸術に関する価値観 (2016 年調査との比較 ) 差分 芸術は 人々が豊かに 生きるために必要である 62% 80% 18% 芸術的視点は 地域の魅力の 向上において重要である 48% 69% 21% 芸術的視点は 産業競争力の 強化において重要である 36% 58% 22% 芸術的視点は 企業のより良い経営において重要である芸術的視点は あなたの仕事において重要である 22% 32% 44% 48% 一般 (2016 年調査 ) 国際経験豊かな方 (2018 年調査 ) 16% 22% 27

また ビジネスパーソンについて年代別に比較したものが図表 35 である 多くの項目について 50 代が最も割合が高いが 芸術的視点は 企業のより良い経営において重要である 芸術的視点は あなたの仕事において重要である といった点については 20 代 30 代が最も高かった 若い世代のほうが芸術的視点をよりビジネスと結びつけて考えていることがわかる 図表 35 芸術に関する価値観 ( 年代別 ) 芸術は 人々が豊かに生きるために必要である芸術は国際的な相互交流において重要である芸術に対して公的な支援が十分に行われるべきである芸術的視点は 地域の魅力の向上において重要である芸術は国家ブランドの向上において重要である芸術的視点は 産業競争力の強化において重要である芸術的視点は 企業のより良い経営において重要である芸術的視点は あなたの仕事において重要である 75% 75% 86% 73% 75% 78% 64% 64% 75% 69% 64% 74% 58% 67% 70% 61% 20 代 30 代 54% 59% (n=77) 53% 48% 40 代 46% (n=97) 55% 39% 41% 50 代 (n=125) 28

現在 日本では観光を将来的な主力産業とすべく インバウンドに力を入れているが 外国人の知人 友人も多いと考えられる国際経験豊かなビジネスパーソンの影響力も無視できない そのなか 彼らに対して 日本に来た外国人の友人 知人に積極的に紹介したい場所 を調査した結果が図表 36 である 多くの人は 寺社 仏閣 庭園 (67%) 旅館 温泉 (61%) 古い街並みが残る場所 (57%) や日本食など日本独自のものを挙げており そのなかで 美術館 博物館 についても約 1/4 の方々が紹介したいと考えている また 美術館 博物館 を紹介しない理由として最も多い理由 ( 図表 37) は 展覧会が日本文化に関するものが少ないから (23%) であった 日本では依然として欧米文化に基づく展覧会が多く インバウンド促進においては足かせになりそうである 図表 36 日本に来た外国人の友人 知人に積極的に紹介したい場所 寺社 仏閣 庭園 67% 東京の町並みが見渡せる場所 ( 展望所 ) 20% 旅館 温泉 ( 日帰り含む ) 61% 日本のサブカルチャーを体験できる場所 ( メイドカフェ 竹下通り等 ) 19% 古い町並みが残る場所 57% 最新の日本文化を体験できる場所 19% 寿司 天ぷら すき焼き しゃぶしゃぶ とんかつ 割烹など比較的高価な日本食 57% 特定のデザイン性の高い建築 ( 近現代建築 ) 17% 居酒屋 そば うどん お好み焼きなど比較的廉価な日本食 49% 服 服飾雑貨のショップ ショッピングができる場所 15% 伝統文化を体験 見学できる場所 45% 日本の田舎暮らしを体験できる場所 14% 日用雑貨のショップ ショッピングができる場所 31% テーマパーク 14% ラーメン 中華料理 28% ナイトライフを楽しむことができる場所 ( カラオケ クラブ バー等 ) 11% 和菓子 スイーツ 28% スポーツ観戦 ( 相撲 プロ野球等 ) 11% 市場 朝市 ( 魚 野菜等の食料品 ) 25% フレンチ イタリアン ステーキ等の洋食 10% 美術館 博物館 25% 外装 内装が個性的な店 8% 自然を楽しむことができる場所 24% 画廊 ギャラリー 4% 現代の東京らしい町並みがある場所 23% あてはまるものはない 0% 昭和の雑踏感がある町並みが残る場所 22% わからない 判断できない 4% 電化製品のショップ ショッピングができる場所 20% 出所 ) 日本のアート産業に関する市場調査 2018 ( 一社 ) アート東京 ( 一社 ) 芸術と創造 図表 37 日本に来た外国人の友人 知人に 美術館 博物館 を積極的に紹介しない理由 展覧会が日本文化に関するものが少ないから混雑しているから ( ゆっくりと過ごすことが難しいから ) 入場料金が高いからコレクション ( 所蔵作品 常設展 ) が充実していないから多言語対応が十分にされていないからどの施設でどのような展示を行われているか知らないから普段自分があまり行かないから別に紹介したい観光地から遠いからアクセスが悪いから建築 内部空間に魅力がないから夜間に営業をしていないからミュージアムショップが充実していないからレストラン カフェが充実していないから休館日があるからあてはまるものはないわからない 判断できない 23% 18% 17% 14% 14% 11% 10% 8% 7% 4% 4% 3% 3% (n=224) 3% 12% 14% 29

また 国際経験豊かなビジネスパーソンが考える 日本が海外に誇ることができる美術のジャンル ( 図表 38) は 浮世絵 (48%) が圧倒的に多かった また 仏像 掛け軸 屏風 なども高かった これを年代別に見てみると ( 図表 39) 浮世絵 はどの世代でも高いが 20 代 30 代では 現代建築 茶道美術 の割合が高く 40 代以上とは少し視点が異なることがわかる 図表 38 日本が海外に誇ることができる美術のジャンル 北斎 広重などの 浮世絵 運慶 円空などの 仏像 伊藤若冲 長谷川等伯などの 掛け軸 屏風 安藤忠雄 坂茂 伊東豊雄等などの 現代建築 平山郁夫 東山魁夷 加山又造などの 日本画 千利休 吉田織部などの 茶道美術 草間彌生 村上隆 奈良美智などの 現代美術 チームラボ ライゾマティクスなどの メディアアート 書 北大路魯山人などの 工芸 縄文土器 土偶 はにわ 藤田嗣治 岸田劉生などの 近代洋画 若手の作家による現代アート 蜷川実花 森山大道 荒木経惟などの 写真 その他わからない 判断できない 11% 10% 8% 7% 6% 4% 4% 0% 10% 30% 28% 22% 21% 19% 19% (n=299) 48% 図表 39 日本が海外に誇ることができる美術のジャンル ( 年代別 ) 20 代 30 代 (n=77) 40 代 (n=97) 50 代 (n=125) 北斎 広重などの 浮世絵 34% 54% 53% 安藤忠雄 坂茂 伊東豊雄等などの 現代建築 27% 21% 19% 千利休 吉田織部などの 茶道美術 27% 15% 18% 運慶 円空などの 仏像 21% 29% 36% 草間彌生 村上隆 奈良美智などの 現代美術 19% 18% 20% チームラボ ライゾマティクスなどの メディアアート 18% 11% 6% 伊藤若冲 長谷川等伯などの 掛け軸 屏風 14% 27% 37% 平山郁夫 東山魁夷 加山又造などの 日本画 14% 22% 24% 書 13% 8% 10% 北大路魯山人などの 工芸 6% 8% 8% 藤田嗣治 岸田劉生などの 近代洋画 5% 4% 9% 縄文土器 土偶 はにわ 5% 4% 10% 若手の作家による現代アート 5% 6% 2% 蜷川実花 森山大道 荒木経惟などの 写真 1% 5% 5% 30

さいごに本調査は今年で 2016 年から数えて 3 回目にあたる 定点的に調査を行うことで 日本のアート産業について語るうえで重要な統計データとして定着してきたのではないだろうか 美術品市場については経済的な状況を受ける形で 3 年連続増加した 2019 年と 2020 年は 特に経済的な状況 消費マインドに影響力が多いイベントが控えており ( 消費税増税 東京大会等 ) 美術品市場にも多分に影響をもたらすと考えられるので特に注意深く追っていく また 昨年調査までは 特定のセグメント ( 経営者 コレクター 美術愛好家等 ) の美術品購入や価値観に係る実態について深ぼってきた 今回調査では 近年政策的に関心が高まっている ミュージアムへの訪問状況 ニーズ や 各種出版などによりブームになっているビジネスとアートの関係にもつながる 国際経験豊かなビジネスパーソンのアートに係る状況 を特集として扱った 日本のアート産業に関する市場調査 では このように必ずしも美術に関する購買状況だけではなく 社会 産業とアートの関わりを全般的に扱っていく予定である 文化庁平成 30 年アート市場活性化事業 タイトル : 日本のアート産業に関する市場調査 2018 企画 調査 : 一般社団法人アート東京 ( 代表理事 : 來住尚彦 ) 調査協力 ( 共同調査 ) : 一般社団法人芸術と創造 ( 代表理事 : 綿江彰禅 ) ( 調査体制 ) 一般社団法人アート東京マーケティング & コミュニケーションズ統括ディレクター墨屋宏明 ( 企画 調査設計 編集 ) 澤田伸之 ( 企画 調査設計 編集 ) 一般社団法人芸術と創造代表理事綿江彰禅 ( 調査設計 分析 本レポート執筆 ) 31