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なお本研究は 東京大学 米国ウィスコンシン大学 国立感染症研究所 米国スクリプス研 究所 米国農務省 ニュージーランドオークランド大学 日本中央競馬会が共同で行ったもの です 本研究成果は 日本医療研究開発機構 (AMED) 新興 再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業 文部科学省新学術領


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図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

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ルス薬の開発の基盤となる重要な発見です 本研究は 京都府立医科大学 大阪大学 エジプト国 Damanhour 大学 国際医療福祉 大学病院 中部大学と共同研究で行ったものです 2 研究内容 < 研究の背景と経緯 > H5N1 高病原性鳥インフルエンザウイルスは 1996 年頃中国で出現し 現在までに

Research 2 Vol.81, No.12013

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みどりの葉緑体で新しいタンパク質合成の分子機構を発見ー遺伝子の中央から合成が始まるー

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法医学問題「想定問答」(記者会見後:平成15年  月  日)

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平成24年7月x日

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研究の背景 B 型肝炎ウイルスの持続感染者は日本国内で 万人と推定されています また, B 型肝炎ウイルスの持続感染は, 肝硬変, 肝がんへと進行していくことが懸念されます このウイルスは細胞へ感染後,cccDNA と呼ばれる環状二本鎖 DNA( 5) を作ります 感染細胞ではこの

界では年間約 2700 万人が敗血症を発症し その多くを発展途上国の乳幼児が占めています 抗菌薬などの発症早期の治療法の進歩が見られるものの 先進国でも高齢者が発症後数ヶ月の 間に新たな感染症にかかって亡くなる例が多いことが知られています 発症早期には 全身に広がった感染によって炎症反応が過剰になり

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報道発表資料 2006 年 8 月 7 日 独立行政法人理化学研究所 国立大学法人大阪大学 栄養素 亜鉛 は免疫のシグナル - 免疫系の活性化に細胞内亜鉛濃度が関与 - ポイント 亜鉛が免疫応答を制御 亜鉛がシグナル伝達分子として作用する 免疫の新領域を開拓独立行政法人理化学研究所 ( 野依良治理事

相模女子大学 2017( 平成 29) 年度第 3 年次編入学試験 学力試験問題 ( 食品学分野 栄養学分野 ) 栄養科学部健康栄養学科 2016 年 7 月 2 日 ( 土 )11 時 30 分 ~13 時 00 分 注意事項 1. 監督の指示があるまで 問題用紙を開いてはいけません 2. 開始の

60 秒でわかるプレスリリース 2006 年 4 月 21 日 独立行政法人理化学研究所 敗血症の本質にせまる 新規治療法開発 大きく前進 - 制御性樹状細胞を用い 敗血症の治療に世界で初めて成功 - 敗血症 は 細菌などの微生物による感染が全身に広がって 発熱や機能障害などの急激な炎症反応が引き起

VACCINE PART.2 VACCINE PART.2 VACCINE PART.2 VACCINE PART.2 VACCINE 第 1 章 その魔力は薬か毒か ワクチンの効果を高める目的で添加されている補助剤がです しかし よいことだけではありません とはいったいどのようなもので ワクチンの

1. 背景血小板上の受容体 CLEC-2 と ある種のがん細胞の表面に発現するタンパク質 ポドプラニン やマムシ毒 ロドサイチン が結合すると 血小板が活性化され 血液が凝固します ( 図 1) ポドプラニンは O- 結合型糖鎖が結合した糖タンパク質であり CLEC-2 受容体との結合にはその糖鎖が

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RNA Poly IC D-IPS-1 概要 自然免疫による病原体成分の認識は炎症反応の誘導や 獲得免疫の成立に重要な役割を果たす生体防御機構です 今回 私達はウイルス RNA を模倣する合成二本鎖 RNA アナログの Poly I:C を用いて 自然免疫応答メカニズムの解析を行いました その結果

統合失調症発症に強い影響を及ぼす遺伝子変異を,神経発達関連遺伝子のNDE1内に同定した

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糖鎖の新しい機能を発見:補体系をコントロールして健康な脳神経を維持する

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ランゲルハンス細胞の過去まず LC の過去についてお話しします LC は 1868 年に 当時ドイツのベルリン大学の医学生であった Paul Langerhans により発見されました しかしながら 当初は 細胞の形状から神経のように見えたため 神経細胞と勘違いされていました その後 約 100 年

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平成24年7月x日

教育・研究・資金の三位一体による

研究背景 糖尿病は 現在世界で4 億 2 千万人以上にものぼる患者がいますが その約 90% は 代表的な生活習慣病のひとつでもある 2 型糖尿病です 2 型糖尿病の治療薬の中でも 世界で最もよく処方されている経口投与薬メトホルミン ( 図 1) は 筋肉や脂肪組織への糖 ( グルコース ) の取り

汎発性膿疱性乾癬のうちインターロイキン 36 受容体拮抗因子欠損症の病態の解明と治療法の開発について ポイント 厚生労働省の難治性疾患克服事業における臨床調査研究対象疾患 指定難病の 1 つである汎発性膿疱性乾癬のうち 尋常性乾癬を併発しないものはインターロイキン 36 1 受容体拮抗因子欠損症 (

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11 月 16 日午前 9 時 ( 米国東部時間 ) にオンライン版で発表されます なお 本研究開発領域は 平成 27 年 4 月の日本医療研究開発機構の発足に伴い 国立研究開発法人科学 技術振興機構 (JST) より移管されたものです 研究の背景 近年 わが国においても NASH が急増しています

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前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

2017 年 2 月 1 日放送 ウイルス性肺炎の現状と治療戦略 国立病院機構沖縄病院統括診療部長比嘉太はじめに肺炎は実地臨床でよく遭遇するコモンディジーズの一つであると同時に 死亡率も高い重要な疾患です 肺炎の原因となる病原体は数多くあり 極めて多様な病態を呈します ウイルス感染症の診断法の進歩に

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るマウスを解析したところ XCR1 陽性樹状細胞欠失マウスと同様に 腸管 T 細胞の減少が認められました さらに XCL1 の発現が 脾臓やリンパ節の T 細胞に比較して 腸管組織の T 細胞において高いこと そして 腸管内で T 細胞と XCR1 陽性樹状細胞が密に相互作用していることも明らかにな

本研究成果は 2015 年 7 月 21 日正午 ( 米国東部時間 ) 米国科学雑誌 Immunity で 公開されます 4. 発表内容 : < 研究の背景 > 現在世界で 3 億人以上いるとされる気管支喘息患者は年々増加の一途を辿っています ステロイドやβ-アドレナリン受容体選択的刺激薬の吸入によ

報道発表資料 2006 年 6 月 21 日 独立行政法人理化学研究所 アレルギー反応を制御する新たなメカニズムを発見 - 謎の免疫細胞 記憶型 T 細胞 がアレルギー反応に必須 - ポイント アレルギー発症の細胞を可視化する緑色蛍光マウスの開発により解明 分化 発生等で重要なノッチ分子への情報伝達

年219 番 生体防御のしくみとその破綻 (Immunity in Host Defense and Disease) 責任者: 黒田悦史主任教授 免疫学 黒田悦史主任教授 安田好文講師 2中平雅清講師 松下一史講師 目的 (1) 病原体や異物の侵入から宿主を守る 免疫系を中心とした生体防御機構を理

ごく少量のアレルゲンによるアレルギー性気道炎症の発症機序を解明

クローン病 クローン病の患者さんサポート情報のご案内 ステラーラ を使用される患者さんへ クローン病に関する情報サイト IBD LIFE による クローン病治療について ステラーラ R を使用されているクローン病患者さん向けウェブサイトステラーラ.j

報道発表資料 2002 年 10 月 10 日 独立行政法人理化学研究所 頭にだけ脳ができるように制御している遺伝子を世界で初めて発見 - 再生医療につながる重要な基礎研究成果として期待 - 理化学研究所 ( 小林俊一理事長 ) は プラナリアを用いて 全能性幹細胞 ( 万能細胞 ) が頭部以外で脳

報道機関各位 2017 年 4 月 13 日 東北大学大学院医学系研究科 慶應義塾大学先端生命科学研究所 ちょうないさいきんそう 腸腎連関 : 腸内細菌叢のバランス制御が慢性腎臓病悪化抑制のカギ - 腸内細菌叢は腎臓病に対して良い面と悪い面の二面性を持つ - 発表のポイント 腎臓病の病態において腸内

No. 2 2 型糖尿病では 病態の一つであるインスリンが作用する臓器の慢性炎症が問題となっており これには腸内フローラの乱れや腸内から血液中に移行した腸内細菌がリスクとなります そのため 腸内フローラを適切に維持し 血液中への細菌の移行を抑えることが慢性炎症の予防には必要です プロバイオティクス飲

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細胞膜由来活性酸素による寿命延長メカニズムを世界で初めて発見 - 新規食品素材 PQQ がもたらす寿命延長のしくみを解明 名古屋大学大学院理学研究科 ( 研究科長 : 杉山直 ) 附属ニューロサイエンス研究セ ンターセンター長の森郁恵 ( もりいくえ ) 教授 笹倉寛之 ( ささくらひろゆき ) 研

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糖尿病診療における早期からの厳格な血糖コントロールの重要性

2. 看護に必要な栄養と代謝について説明できる 栄養素としての糖質 脂質 蛋白質 核酸 ビタミンなどの性質と役割 およびこれらの栄養素に関連する生命活動について具体例を挙げて説明できる 生体内では常に物質が交代していることを説明できる 代謝とは エネルギーを生み出し 生体成分を作り出す反応であること

2017 年 12 月 15 日 報道機関各位 国立大学法人東北大学大学院医学系研究科国立大学法人九州大学生体防御医学研究所国立研究開発法人日本医療研究開発機構 ヒト胎盤幹細胞の樹立に世界で初めて成功 - 生殖医療 再生医療への貢献が期待 - 研究のポイント 注 胎盤幹細胞 (TS 細胞 ) 1 は

米国で承認された エロツズマブ という新薬について Q&A 形式でご紹介します Q&A の監修は 新潟県立がんセンター新潟病院内科臨床部長張高明先生です Q1: エロツズマブという薬が米国で承認されたと聞きましたが どのような薬ですか? エロツズマブについてエロツズマブは 患者さんで増殖しているがん

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平成 30 年 8 月 17 日 報道機関各位 東京工業大学広報 社会連携本部長 佐藤勲 オイル生産性が飛躍的に向上したスーパー藻類を作出 - バイオ燃料生産における最大の壁を打破 - 要点 藻類のオイル生産性向上を阻害していた課題を解決 オイル生産と細胞増殖を両立しながらオイル生産性を飛躍的に向上

脳組織傷害時におけるミクログリア形態変化および機能 Title変化に関する培養脳組織切片を用いた研究 ( Abstract_ 要旨 ) Author(s) 岡村, 敏行 Citation Kyoto University ( 京都大学 ) Issue Date URL http


報道発表資料 2007 年 4 月 30 日 独立行政法人理化学研究所 炎症反応を制御する新たなメカニズムを解明 - アレルギー 炎症性疾患の病態解明に新たな手掛かり - ポイント 免疫反応を正常に終息させる必須の分子は核内タンパク質 PDLIM2 炎症反応にかかわる転写因子を分解に導く新制御メカニ

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生物時計の安定性の秘密を解明

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図アレルギーぜんそくの初期反応の分子メカニズム

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八村敏志 TCR が発現しない. 抗原の経口投与 DO11.1 TCR トランスジェニックマウスに経口免疫寛容を誘導するために 粗精製 OVA を mg/ml の濃度で溶解した水溶液を作製し 7 日間自由摂取させた また Foxp3 の発現を検討する実験では RAG / OVA3 3 マウスおよび

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2019 年 1 月 21 日 自然科学研究機構基礎生物学研究所東北大学大学院生命科学研究科産業技術総合研究所 サンゴがもつ緑色蛍光タンパク質の働きが明らかに ~ 蛍光による共生パートナーの誘引 ~ サンゴ礁を形作り 南の海の生態系の維持に不可欠な存在であるサンゴは その多くが紫外線や青色光を受ける

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がんを見つけて破壊するナノ粒子を開発 ~ 試薬を混合するだけでナノ粒子の中空化とハイブリッド化を同時に達成 ~ 名古屋大学未来材料 システム研究所 ( 所長 : 興戸正純 ) の林幸壱朗 ( はやしこういちろう ) 助教 丸橋卓磨 ( まるはしたくま ) 大学院生 余語利信 ( よごとしのぶ ) 教

く 細胞傷害活性の無い CD4 + ヘルパー T 細胞が必須と判明した 吉田らは 1988 年 C57BL/6 マウスが腹腔内に移植した BALB/c マウス由来の Meth A 腫瘍細胞 (CTL 耐性細胞株 ) を拒絶すること 1991 年 同種異系移植によって誘導されるマクロファージ (AIM

( 続紙 1 ) 京都大学 博士 ( 薬学 ) 氏名 大西正俊 論文題目 出血性脳障害におけるミクログリアおよびMAPキナーゼ経路の役割に関する研究 ( 論文内容の要旨 ) 脳内出血は 高血圧などの原因により脳血管が破綻し 脳実質へ出血した病態をいう 漏出する血液中の種々の因子の中でも 血液凝固に関

医薬品タンパク質は 安全性の面からヒト型が常識です ではなぜ 肌につける化粧品用コラーゲンは ヒト型でなくても良いのでしょうか? アレルギーは皮膚から 最近の学説では 皮膚から侵入したアレルゲンが 食物アレルギー アトピー性皮膚炎 喘息 アレルギー性鼻炎などのアレルギー症状を引き起こすきっかけになる

スライド 1

がん免疫療法モデルの概要 1. TGN1412 第 Ⅰ 相試験事件 2. がん免疫療法での動物モデルの有用性がんワクチン抗 CTLA-4 抗体抗 PD-1 抗体 2

Transcription:

腸内細菌叢がインフルエンザワクチンの効果を高めるメカニズムを解明 ~ 地球温暖化や食糧危機がワクチン効果に与える悪影響とは ~ 1. 発表者 : 一戸 猛志 ( 東京大学医科学研究所感染症国際研究センターウイルス学分野准教授 ) 森山 美優 ( 東京大学医科学研究所感染症国際研究センター / 日本学術振興会特別研究員 ) 2. 発表のポイント : 外気温がウイルス感染後の免疫応答に与える影響を解析し 暑い環境下ではインフルエンザウイルス感染後の免疫応答が低下することを見出した 腸内細菌由来代謝産物およびグルコースが インフルエンザウイルス感染後の免疫応答の誘導に重要であることを明らかにした 地球温暖化や食糧危機 過度なダイエットはワクチンの効果を低下させる可能性がある 3. 発表概要 : 東京大学医科学研究所感染症国際研究センターウイルス学分野の一戸猛志准教授らは 外気温や摂食量 腸内細菌由来代謝産物などがインフルエンザウイルス感染後の免疫応答やワクチン効果に影響を及ぼすことを見出しました 地球温暖化は さまざまな感染症を媒介する生物 ( ジカウイルスを媒介する蚊や重症熱性血小板減少症候群ウイルス (SFTS ウイルス ; 注 1) を媒介するマダニ等 ) の生息域を拡大させますが 外気温がウイルス感染後に誘導される免疫応答に与える影響については不明でした また腸内細菌叢がインフルエンザウイルスに対する免疫応答の誘導に役立つ ( 注 2) 理由も未解明のままでした 今回 地球温暖化を想定した 36 という暑い環境で飼育したマウスは 22 で飼育したマウスと比較して インフルエンザウイルス ジカウイルス SFTS ウイルスの感染後に誘導される免疫応答が低下することを見出しました 暑い環境で飼育したマウスは摂食量が低下しており この摂食量の低下が免疫応答の低下につながる要因のひとつでした そこで 宿主の栄養状態がインフルエンザウイルスに対する免疫応答の誘導に重要な役割を果たしているという仮説を立てて検証したところ 36 で飼育したマウスに腸内細菌由来代謝産物 ( 酪酸 プロピオン酸 酢酸 ; 注 3) やグルコースを投与すると 低下していたウイルス特異的な免疫応答が部分的に回復することを見出しました 以上の成果は 外気温がウイルス特異的な免疫応答の誘導に影響を与えることを示した世界で初めての例であり 腸内細菌叢がインフルエンザウイルス特異的な免疫応答に役立つ理由を解明した極めて重要な知見です また地球温暖化や食糧危機 過度なダイエットが 米国で認可されている弱毒生インフルエンザワクチンや 我が国で臨床試験段階にある経鼻投与型インフルエンザワクチン ( 注 4) の効果を低下させる可能性を示唆するものであり これらのことを正しく理解し 対策を講じるにはさらなる研究が必要です 本研究成果は 2019 年 2 月 5 日午前 5 時 ( 米国東部時間 2 月 4 日午後 3 時 ) の米国科学アカデミー紀要 (Proceedings of the National Academy of Science of the United States of America: PNAS) のオンライン速報版で公開されます なお本研究成果は 日本学術振興会 (JSPS) 科学研究費補助金事業 日本医療研究開発機構 (AMED) 振興 再興感染症に

対する革新的医薬品等開発推進研究事業 JSPS 特別研究員事業などの一環として得られました 4. 発表内容 : 1 研究の背景 先行研究における問題点地球温暖化は さまざまな感染症を媒介する生物 ( ジカウイルスを媒介する蚊や重症熱性血小板減少症候群ウイルス (SFTS ウイルス ) を媒介するマダニ等 ) の生息域を拡大させます また今世紀末までに世界の人口の半分が地球温暖化による食糧危機に直面するという予測もあります (Battisti et al. Science. 2009) 一方 インフルエンザウイルスの流行がピークとなる 1 月の東京の平均気温は 5 であり 私達の生活は外気温に大きく影響を受けています これまでの研究では マウスを室温 (22 ) で飼育した場合の研究ばかりが行われてきましたが 暑い 寒いなど外気温がウイルスの病原性やウイルス感染後に誘導される防御免疫応答に与える影響については全く解析されてきませんでした 2 研究内容本研究では 外気温がウイルス感染後の免疫応答に与える影響を調べるため 4 22 36 の環境下で一週間飼育したマウスにインフルエンザウイルスを感染させ 感染から 2 週間後のウイルス特異的な免疫応答を解析しました すると 36 で飼育したマウスでは 4 や 22 で飼育したマウスと比較して ウイルス特異的な免疫応答 ( 抗体応答 CD8T 細胞応答 CD4T 細胞応答 ) が低下することを見出しました ウイルスに対する防御免疫が低下したことにより 36 で飼育したマウスの体内ではウイルスの増殖が高くなり 4 や 22 で飼育したマウスと比較して 体内からウイルスを排除するまでにかかる時間が長くなりました またインフルエンザウイルスに対してだけではなく 36 で飼育したマウスでは ジカウイルスや SFTS ウイルスの感染に対する一部の免疫応答 (CD4T 細胞応答 ) も低下していることが明らかになりました 36 で飼育したマウスで ウイルス感染に対する免疫応答が低下する理由を解明するため このマウスをよく観察したところ 36 で飼育したマウスでは 22 で飼育したマウスと比較して摂食量が半分程度に低下しており 肺で誘導されているオートファジー ( 注 5) が亢進し インフルエンザウイルス感染後に誘導される IL-1βの分泌量 ( 注 6) が低下していることに気が付きました そこで 22 で飼育したマウスが 1 日に食べている餌の量を半分に制限したところ 肺組織のオートファジー応答が亢進し 食事制限をしたマウス (22 で飼育 ) でもインフルエンザウイルス感染後の免疫応答が低下することが明らかになりました 以前 一戸准教授らの研究グループは インフルエンザウイルスの感染に対する免疫応答の誘導にはバランスの良い腸内細菌叢が必要であることを明らかにしているため ( 注 2) マウスの腸内細菌叢を解析したところ 22 および 36 で飼育したマウスの腸内細菌叢には大きな違いが認められないことが分かりました 腸内細菌は 私たちの消化酵素では消化できない食物繊維を消化して 短鎖脂肪酸 ( 酪酸 プロピオン酸 酢酸など ; 注 3) の生成を行ってくれています そこで 腸内細菌叢由来の代謝産物などの宿主の栄養状態が インフルエンザウイルスの感染に対する免疫応答の誘導に重要な役割を果たしているという仮説を立てて検証したところ 36 で飼育したマウスに腸内細菌由来代謝産物 ( 酪酸 プロピオン酸 酢酸 ) やグルコースを投与すると 低下していたウイルス特異的な免疫応答が部分的に回復することを見出しました

3 社会的意義 今後の予定以上の成果は 外気温がウイルス感染後に誘導される防御免疫応答の誘導に影響を与えることを示した世界初の成果であり 腸内細菌叢がインフルエンザウイルス特異的な免疫応答に役立つ理由を解明した極めて重要な知見です 本研究成果は 経鼻ワクチンの効果を食品成分により改善する新しいアジュバント ( 注 7) の開発などに役立つと期待されます また 本研究成果は地球温暖化や食糧危機 過度なダイエットが米国で認可されている弱毒生インフルエンザワクチンや 現在 我が国で臨床試験段階にある経鼻投与型インフルエンザワクチンの効果を低下させる可能性を示唆するものであり これらのことを正しく理解し 対策を講じるにはさらなる研究が必要です 5. 発表雑誌 : 雑誌名 :Proceedings of the National Academy of Science of the United States of America(PNAS) ( 米国東部時間 2 月 4 日午後 3 時オンライン掲載予定 ) 論文タイトル :High ambient temperature dampens adaptive immune responses to influenza A virus infection * 著者 : 森山美優 一戸猛志 6. 注意事項 : 日本時間 2 月 5 日 ( 火 ) 午前 5 時 ( 米国東部時間 :2 月 4 日 ( 月 ) 午後 3 時 ) 以前の公表は禁じられています 7. 問い合わせ先 : < 研究に関するお問い合わせ> 東京大学医科学研究所感染症国際研究センターウイルス学分野准教授一戸猛志 ( イチノヘタケシ ) Tel:03-6409-2125 E-mail:ichinohe@ims.u-tokyo.ac.jp < 報道に関するお問い合わせ> 東京大学医科学研究所事務部管理課総務チーム Tel:03-6409-2018

8. 用語解説注 1) 重症熱性血小板減少症候群ウイルス (SFTS ウイルス ) マダニ媒介性の病原性ウイルス 2018 年 11 月 28 日までの調査では SFTS ウイルスに感染した 60 代以上の死亡率は 10~25% 程度とされている ( 国立感染症研究所 ) 現在までのところ対症療法しかなく 有効な治療薬やワクチンはない 注 2) 腸内細菌とインフルエンザ一戸准教授らの研究グループはこれまでに マウスに抗生物質を飲ませて腸内細菌叢を死滅させると インフルエンザウイルス感染後に誘導される防御免疫が低下することを明らかにしている 参考 2011 年 3 月 15 日プレスリリース 腸内細菌がインフルエンザウイルスに対する粘膜免疫応答をサポートする ~ 腸内細菌の全く新しい役割を解明 ~ http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/ichinohe-lab/press01.pdf 注 3) 腸内細菌由来代謝産物腸内細菌は ヒトの消化酵素では消化できない食物繊維を消化して 短鎖脂肪酸 ( 酪酸 プロピオン酸 酢酸など ) の生成を行っている 注 4) 経鼻投与型インフルエンザワクチン国立感染症研究所の長谷川秀樹部長らが推進している日本初の経鼻投与型ワクチン 鼻にスプレーをするので 注射と比較して痛みもない 鼻粘膜上に防御抗体を誘導できるため インフルエンザウイルスの感染そのものを阻止することができるだけでなく 変異ウイルスに対しても一定の防御効果があることが確認されている 注 5) オートファジー 2016 年にノーベル生理学 医学賞を受賞した東京工業大学の大隅良典栄誉教授が発見した自食作用 細胞が飢餓状態になると細胞内の不要なタンパク質などをアミノ酸まで分解し 新しいタンパク質を作るための材料として用いている 注 6) インフルエンザウイルスの感染による炎症反応これまでに 一戸准教授らの研究グループはインフルエンザウイルス感染によって起こる炎症反応のメカニズムや ウイルス感染後の炎症反応の強さ (IL-1βの分泌) が インフルエンザウイルスに対する防御免疫応答の誘導に必要であることを明らかにしている 参考 2013 年 10 月 14 日プレスリリース インフルエンザウイルス感染によって起こる炎症反応のメカニズムを解明 http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/ichinohe-lab/131016.pdf 注 7) アジュバント抗原 ( ワクチンなど ) と混合して投与することにより その抗原に対する免疫応答を増強させる物質の総称 水酸化アルミニウム (Alum) 死菌を含む完全フロイントアジュバント 合成二本鎖 RNA の poly(i:c) CpG モチーフを持つ CpG DNA などがアジュバントになり得る

9. 添付資料 : 図. 本研究成果のまとめ ( 予測モデル ) 通常 よく食べることと健康な腸内細菌の働きにより 腸内細菌由来代謝産物 ( 短鎖脂肪酸など ) が多く作られる 一方 暑さによる食欲の低下や 抗生物質による腸内細菌叢のバランスの破綻は 腸内細菌叢由来代謝産物の産生を低下させると考えられる 腸内細菌叢由来代謝産物やグルコースなどは 血流に乗り 肺のオートファジー ( 図中の消火器 ) の強さを変化させる インフルエンザウイルスが感染すると炎症反応に関わる IL-1βが産生されるが オートファジー ( 図中の消火器 ) の強さにより この炎症 ( 図中の炎 ) の程度が異なる IL-1βの産生 ( 炎症 ) が強いと 肺の抗原提示細胞 ( 図中の男子学生 ) は リンパ節へと急ぎ 免疫応答の誘導を助ける IL-1βの産生 ( 炎症 ) が低いと 肺の抗原提示細胞 ( 図中の女子学生 ) は マイペースでリンパ節へ向かうため 免疫細胞への連絡が遅れる