STAP現象の検証の実施について

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STAP現象の検証結果

調査委員会 報告

スライド 1

( 平成 22 年 12 月 17 日ヒト ES 委員会説明資料 ) 幹細胞から臓器を作成する 動物性集合胚作成の必要性について 中内啓光 東京大学医科学研究所幹細胞治療研究センター JST 戦略的創造研究推進事業 ERATO 型研究研究プロジェクト名 : 中内幹細胞制御プロジェクト 1

を行った 2.iPS 細胞の由来の探索 3.MEF および TTF 以外の細胞からの ips 細胞誘導 4.Fbx15 以外の遺伝子発現を指標とした ips 細胞の樹立 ips 細胞はこれまでのところレトロウイルスを用いた場合しか樹立できていない また 4 因子を導入した線維芽細胞の中で ips 細

長期/島本1

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体細胞の分化状態の記憶を消去し初期化する原理を発見

1. 背景生殖細胞は 哺乳類の体を構成する細胞の中で 次世代へと受け継がれ 新たな個体をつくり出すことが可能な唯一の細胞です 生殖細胞系列の分化過程や 生殖細胞に特徴的なDNAのメチル化を含むエピゲノム情報 8 の再構成注メカニズムを解明することは 不妊の原因究明や世代を経たエピゲノム情報の伝達メカ

平成18年3月17日

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かし この技術に必要となる遺伝子改変技術は ヒトの組織細胞ではこれまで実現できず ヒトがん組織の細胞系譜解析は困難でした 正常の大腸上皮の組織には幹細胞が存在し 自分自身と同じ幹細胞を永続的に産み出す ( 自己複製 ) とともに 寿命が短く自己複製できない分化した細胞を次々と産み出すことで組織構造を

資料 3-1 CREST 人工多能性幹細胞 (ips 細胞 ) 作製 制御等の医療基盤技術 平成 20 年度平成 21 年度平成 22 年度 10 件 7 件 6 件 進捗状況報告 9.28,2010 総括須田年生

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資料3-1_本多准教授提出資料

2. 手法まず Cre 組換え酵素 ( ファージ 2 由来の遺伝子組換え酵素 ) を Emx1 という大脳皮質特異的な遺伝子のプロモーター 3 の制御下に発現させることのできる遺伝子操作マウス (Cre マウス ) を作製しました 詳細な解析により このマウスは 大脳皮質の興奮性神経特異的に 2 個

2017 年 12 月 15 日 報道機関各位 国立大学法人東北大学大学院医学系研究科国立大学法人九州大学生体防御医学研究所国立研究開発法人日本医療研究開発機構 ヒト胎盤幹細胞の樹立に世界で初めて成功 - 生殖医療 再生医療への貢献が期待 - 研究のポイント 注 胎盤幹細胞 (TS 細胞 ) 1 は

研究成果報告書

60 秒でわかるプレスリリース 2008 年 7 月 12 日 独立行政法人理化学研究所 生殖細胞の誕生に必須な遺伝子 Prdm14 の発見 - Prdm14 の欠損は 精子 卵子がまったく形成しない成体に - 種の保存 をつかさどる生殖細胞には 幾世代にもわたり遺伝情報を理想な状態で維持し 個体を

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遺伝子の近傍に別の遺伝子の発現制御領域 ( エンハンサーなど ) が移動してくることによって その遺伝子の発現様式を変化させるものです ( 図 2) 融合タンパク質は比較的容易に検出できるので 前者のような二つの遺伝子組み換えの例はこれまで数多く発見されてきたのに対して 後者の場合は 広範囲のゲノム

背景 歯はエナメル質 象牙質 セメント質の3つの硬い組織から構成されます この中でエナメル質は 生体内で最も硬い組織であり 人が食生活を営む上できわめて重要な役割を持ちます これまでエナメル質は 一旦齲蝕 ( むし歯 ) などで破壊されると 再生させることは不可能であり 人工物による修復しかできませ

研究論文に関する調査報告書

の感染が阻止されるという いわゆる 二度なし現象 の原理であり 予防接種 ( ワクチン ) を行う根拠でもあります 特定の抗原を認識する記憶 B 細胞は体内を循環していますがその数は非常に少なく その中で抗原に遭遇した僅かな記憶 B 細胞が著しく増殖し 効率良く形質細胞に分化することが 大量の抗体産

ASC は 8 週齢 ICR メスマウスの皮下脂肪組織をコラゲナーゼ処理後 遠心分離で得たペレットとして単離し BMSC は同じマウスの大腿骨からフラッシュアウトにより獲得した 10%FBS 1% 抗生剤を含む DMEM にて それぞれ培養を行った FACS Passage 2 (P2) の ASC

報道発表資料 2002 年 10 月 10 日 独立行政法人理化学研究所 頭にだけ脳ができるように制御している遺伝子を世界で初めて発見 - 再生医療につながる重要な基礎研究成果として期待 - 理化学研究所 ( 小林俊一理事長 ) は プラナリアを用いて 全能性幹細胞 ( 万能細胞 ) が頭部以外で脳

様式 C-19 科学研究費補助金研究成果報告書 平成 22 年 6 月 16 日現在 研究種目 : 若手研究 (B) 研究期間 :2008~2009 課題番号 : 研究課題名 ( 和文 ) 心臓副交感神経の正常発生と分布に必須の因子に関する研究 研究課題名 ( 英文 )Researc

八村敏志 TCR が発現しない. 抗原の経口投与 DO11.1 TCR トランスジェニックマウスに経口免疫寛容を誘導するために 粗精製 OVA を mg/ml の濃度で溶解した水溶液を作製し 7 日間自由摂取させた また Foxp3 の発現を検討する実験では RAG / OVA3 3 マウスおよび

能性を示した < 方法 > M-CSF RANKL VEGF-C Ds-Red それぞれの全長 cdnaを レトロウイルスを用いてHeLa 細胞に遺伝子導入した これによりM-CSFとDs-Redを発現するHeLa 細胞 (HeLa-M) RANKLと Ds-Redを発現するHeLa 細胞 (HeL

く 細胞傷害活性の無い CD4 + ヘルパー T 細胞が必須と判明した 吉田らは 1988 年 C57BL/6 マウスが腹腔内に移植した BALB/c マウス由来の Meth A 腫瘍細胞 (CTL 耐性細胞株 ) を拒絶すること 1991 年 同種異系移植によって誘導されるマクロファージ (AIM

<1. 新手法のポイント > -2 -

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コラーゲンを用いる細胞培養マニュアル

れていない 遺伝子改変動物の作製が容易になるなどの面からキメラ形成できる多能性幹細胞 へのニーズは高く ヒトを含むげっ歯類以外の動物におけるナイーブ型多能性幹細胞の開発に 関して世界的に激しい競争が行われている 本共同研究チームは 着床後の多能性状態にある EpiSC を着床前胚に移植し 移植細胞が

Microsoft PowerPoint - 資料3-8_(B理研・古関)拠点B理研古関120613

報道発表資料 2005 年 8 月 2 日 独立行政法人理化学研究所 国立大学法人京都大学 ES 細胞からの神経網膜前駆細胞と視細胞の分化誘導に世界で初めて成功 - 網膜疾患治療法開発への応用に大きな期待 - ポイント ES 細胞の細胞塊を浮遊培養し 16% の高効率で神経網膜前駆細胞に分化させる系

周期的に活性化する 色素幹細胞は毛包幹細胞と同様にバルジ サブバルジ領域に局在し 周期的に活性化して分化した色素細胞を毛母に供給し それにより毛が着色する しかし ゲノムストレスが加わるとこのシステムは破たんする 我々の研究室では 加齢に伴い色素幹細胞が枯渇すると白髪を発症すること また 5Gy の

資料 4 生命倫理専門調査会における主な議論 平成 25 年 12 月 20 日 1 海外における規制の状況 内閣府は平成 24 年度 ES 細胞 ips 細胞から作成した生殖細胞によるヒト胚作成に関する法規制の状況を確認するため 米国 英国 ドイツ フランス スペイン オーストラリア及び韓国を対象

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 松尾祐介 論文審査担当者 主査淺原弘嗣 副査関矢一郎 金井正美 論文題目 Local fibroblast proliferation but not influx is responsible for synovial hyperplasia in a mur

Establishment and Characterization of Cynomolgus Monkey ES Cell Lines

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PRESS RELEASE (2012/9/27) 北海道大学総務企画部広報課 札幌市北区北 8 条西 5 丁目 TEL FAX URL:

検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 P EDTA-2Na( 薄紫 ) 血液 7 ml RNA 検体ラベル ( 単項目オーダー時 ) ホンハ ンテスト 注 外 N60 氷 MINテイリョウ. 採取容器について 0

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大学院博士課程共通科目ベーシックプログラム

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報道発表資料 2001 年 12 月 29 日 独立行政法人理化学研究所 生きた細胞を詳細に観察できる新しい蛍光タンパク質を開発 - とらえられなかった細胞内現象を可視化 - 理化学研究所 ( 小林俊一理事長 ) は 生きた細胞内における現象を詳細に観察することができる新しい蛍光タンパク質の開発に成

研究目的 1. 電波ばく露による免疫細胞への影響に関する研究 我々の体には 恒常性を保つために 生体内に侵入した異物を生体外に排除する 免疫と呼ばれる防御システムが存在する 免疫力の低下は感染を引き起こしやすくなり 健康を損ないやすくなる そこで 2 10W/kgのSARで電波ばく露を行い 免疫細胞

細胞老化による発がん抑制作用を個体レベルで解明 ~ 細胞老化の仕組みを利用した新たながん治療法開発に向けて ~ 1. ポイント : 明細胞肉腫 (Clear Cell Sarcoma : CCS 注 1) の細胞株から ips 細胞 (CCS-iPSCs) を作製し がん細胞である CCS と同じ遺

実験を行いました この目印が STAP 細胞に残っていることを示せば STAP 細胞が分化細胞由来であることが証明されます 更に その STAP 細胞の万能性の最も確実な証拠は STAP 細胞とそれから生まれたネズミの体の細胞が同じパターンの組換え遺伝子を持つという証明です ところが この論文の中の

るが AML 細胞における Notch シグナルの正確な役割はまだわかっていない mtor シグナル伝達系も白血病細胞の増殖に関与しており Palomero らのグループが Notch と mtor のクロストークについて報告している その報告によると 活性型 Notch が HES1 の発現を誘導

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九州大学病院の遺伝子治療臨床研究実施計画(慢性重症虚血肢(閉塞

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( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 森脇真一 井上善博 副査副査 教授教授 東 治 人 上 田 晃 一 副査 教授 朝日通雄 主論文題名 Transgene number-dependent, gene expression rate-independe

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結果 この CRE サイトには転写因子 c-jun, ATF2 が結合することが明らかになった また これら の転写因子は炎症性サイトカイン TNFα で刺激したヒト正常肝細胞でも活性化し YTHDC2 の転写 に寄与していることが示唆された ( 参考論文 (A), 1; Tanabe et al.


研究成果報告書

Powered by TCPDF ( Title 造血器腫瘍のリプログラミング治療 Sub Title Reprogramming of hematological malignancies Author 松木, 絵里 (Matsuki, Eri) Publisher P

生物の発生 分化 再生 平成 12 年度採択研究代表者 小林悟 ( 岡崎国立共同研究機構統合バイオサイエンスセンター教授 ) 生殖細胞の形成機構の解明とその哺乳動物への応用 1. 研究実施の概要本研究は ショウジョウバエおよびマウスの生殖細胞に関わる分子の同定および機能解析を行い 無脊椎 脊椎動物に

肝クッパ 細胞を簡便 大量に 回収できる新規培養方法 農研機構動物衛生研究所病態研究領域上席研究員山中典子 2016 National Agriculture and Food Research Organization. 農研機構 は国立研究開発法人農業 食品産業技術総合研究機構のコミュニケーショ

報道関係者各位 平成 26 年 1 月 20 日 国立大学法人筑波大学 動脈硬化の進行を促進するたんぱく質を発見 研究成果のポイント 1. 日本人の死因の第 2 位と第 4 位である心疾患 脳血管疾患のほとんどの原因は動脈硬化である 2. 酸化されたコレステロールを取り込んだマクロファージが大量に血

図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

報道発表資料 2006 年 6 月 21 日 独立行政法人理化学研究所 アレルギー反応を制御する新たなメカニズムを発見 - 謎の免疫細胞 記憶型 T 細胞 がアレルギー反応に必須 - ポイント アレルギー発症の細胞を可視化する緑色蛍光マウスの開発により解明 分化 発生等で重要なノッチ分子への情報伝達

抑制することが知られている 今回はヒト子宮内膜におけるコレステロール硫酸のプロテ アーゼ活性に対する効果を検討することとした コレステロール硫酸の着床期特異的な発現の機序を解明するために 合成酵素であるコ レステロール硫酸基転移酵素 (SULT2B1b) に着目した ヒト子宮内膜は排卵後 脱落膜 化

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論文題目  腸管分化に関わるmiRNAの探索とその発現制御解析

NIHS Since 1874 平成 26 年 3 月 5 日 ヒト多能性幹細胞加工製品に残存する未分化多能性幹細胞の高感度検出法の開発 国立医薬品食品衛生研究所遺伝子細胞医薬部佐藤陽治 本発表で述べられている見解は発表者の私見であって 国立医薬品食品衛生研究所および厚生労働省の現在の公式な見解では

のと期待されます 本研究成果は 2011 年 4 月 5 日 ( 英国時間 ) に英国オンライン科学雑誌 Nature Communications で公開されます また 本研究成果は JST 戦略的創造研究推進事業チーム型研究 (CREST) の研究領域 アレルギー疾患 自己免疫疾患などの発症機構

研究の詳細な説明 1. 背景細菌 ウイルス ワクチンなどの抗原が人の体内に入るとリンパ組織の中で胚中心が形成されます メモリー B 細胞は胚中心に存在する胚中心 B 細胞から誘導されてくること知られています しかし その誘導の仕組みについてはよくわかっておらず その仕組みの解明は重要な課題として残っ

動物性集合胚を用いた研究の 意義と倫理的課題

た さらに クローン胚からクローン ES 細胞 2の樹立にも成功しました 樹立成績は高く 尿細胞が 15 個あれば 1 株できる計算になります これらの成果から 本方法は絶滅危惧種など貴重な動物において 体をいっさい傷つけずにクローン個体を作出する重要な手段になり得ること 野生動物など尿を無菌状態で


研究論文の疑義に関する調査報告書

平成 28 年 12 月 12 日 癌の転移の一種である胃癌腹膜播種 ( ふくまくはしゅ ) に特異的な新しい標的分子 synaptotagmin 8 の発見 ~ 革新的な分子標的治療薬とそのコンパニオン診断薬開発へ ~ 名古屋大学大学院医学系研究科 ( 研究科長 髙橋雅英 ) 消化器外科学の小寺泰

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「ゲノムインプリント消去には能動的脱メチル化が必要である」【石野史敏教授】

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上原記念生命科学財団研究報告集, 31 (2017)

報道発表資料 2006 年 4 月 13 日 独立行政法人理化学研究所 抗ウイルス免疫発動機構の解明 - 免疫 アレルギー制御のための新たな標的分子を発見 - ポイント 異物センサー TLR のシグナル伝達機構を解析 インターフェロン産生に必須な分子 IKK アルファ を発見 免疫 アレルギーの有効

血漿エクソソーム由来microRNAを用いたグリオブラストーマ診断バイオマーカーの探索 [全文の要約]

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上原記念生命科学財団研究報告集, 30 (2016)

化を明らかにすることにより 自閉症発症のリスクに関わるメカニズムを明らかにすることが期待されます 本研究成果は 本年 京都において開催される Neuro2013 において 6 月 22 日に発表されます (P ) お問い合わせ先 東北大学大学院医学系研究科 発生発達神経科学分野教授大隅典

研究成果の概要 今回発表した研究では 独自に開発した B 細胞初代培養法 ( 誘導性胚中心様 B (igb) 細胞培養法 ; 野嶋ら, Nat. Commun. 2011) を用いて 膜型 IgE と他のクラスの抗原受容体を培養した B 細胞に発現させ それらの機能を比較しました その結果 他のクラ

60 秒でわかるプレスリリース 2008 年 2 月 4 日 独立行政法人理化学研究所 筋萎縮性側索硬化症 (ALS) の進行に二つのグリア細胞が関与することを発見 - 神経難病の一つである ALS の治療法の開発につながる新知見 - 原因不明の神経難病 筋萎縮性側索硬化症 (ALS) は 全身の筋

日本細胞生物学会実験プロトコル

年219 番 生体防御のしくみとその破綻 (Immunity in Host Defense and Disease) 責任者: 黒田悦史主任教授 免疫学 黒田悦史主任教授 安田好文講師 2中平雅清講師 松下一史講師 目的 (1) 病原体や異物の侵入から宿主を守る 免疫系を中心とした生体防御機構を理

報道発表資料 2006 年 8 月 7 日 独立行政法人理化学研究所 国立大学法人大阪大学 栄養素 亜鉛 は免疫のシグナル - 免疫系の活性化に細胞内亜鉛濃度が関与 - ポイント 亜鉛が免疫応答を制御 亜鉛がシグナル伝達分子として作用する 免疫の新領域を開拓独立行政法人理化学研究所 ( 野依良治理事

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クローン ES 細胞を利用したクローンマウスの作出方法

( 図 ) IP3 と IRBIT( アービット ) が IP3 受容体に競合して結合する様子

脳組織傷害時におけるミクログリア形態変化および機能 Title変化に関する培養脳組織切片を用いた研究 ( Abstract_ 要旨 ) Author(s) 岡村, 敏行 Citation Kyoto University ( 京都大学 ) Issue Date URL http

今日の話題は昨日の続き、今日の続きはまた明日

DVDを見た後で、次の問いに答えてください

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STAP 現象の検証の実施について 実験総括責任者 : 独立行政法人理化学研究所発生 再生科学総合研究センター特別顧問 ( 相澤研究ユニット研究ユニットリーダー兼務 ) 相澤慎一 研究実施責任者 : 独立行政法人理化学研究所発生 再生科学総合研究センター多能性幹細胞研究プロジェクトプロジェクトリーダー丹羽仁史 2014 年 4 月 7 日 独立行政法人理化学研究所 1

検証実験の目的 STAP 現象が存在するか否かを一から検証する 論文に記載された方法で再現性を検証する ( リンパ球からの多能性細胞誘導の検証 ) 論文に記載された方法とは異なる より厳密な細胞追跡法を用い STAP 現象の有無を検証する (Cre loxp システムを用いた検証 ) 2

STAP 現象 = 分化細胞が刺激によってリプログラミングされ多能性を獲得する現象 ( 論文の主張 ) 分化細胞 STAP 細胞塊 STAP 幹細胞 FI 細胞 ( リンパ球など ) (ES 細胞様 ) キメラ寄与能 胎児 胎盤 自己複製能 3

多能性の厳密な評価 = 胚盤胞注入によるキメラ胚形成能 4 倍体キメラ法では注入した細胞のみにより胚が形成される キメラ胚形成は テラトーマ形成よりも より厳密な多能性の評価法とされる (Obokata et al, Nature, 2014) 4

ES 細胞は分化転換されない限り胎盤には寄与できない LIF ES 細胞 -Oct3/4 +Cdx2 TS 細胞 FGF4 (Niwa, H. et al, Cell, 2005) 5

( 参考 ) 胎児と胎盤に寄与する幹細胞の報告 ES 細胞に含まれる亜集団 ( 全体の約 2%) を 蛍光遺伝子マーカーを導入して識別して回収し これらを胚盤胞に注入すると胎児と胎盤に寄与する (Macfarlan et al, Nature, 2012) 遺伝子マーカーの導入なしには回収できず 分離した亜集団は安定に培養できない 特殊な環境で誘導した ips 細胞を胚盤胞に注入すると胎児と胎盤に寄与する (Abad et al, Nature, 2013) 6

STAP 細胞誘導手順の検討 1 週令マウスから再現性よく一定時間でリンパ球を調製すること ないしは組織から分散した単一細胞を調製すること自体が 熟練を要する トランスジェニックマウスの安定供給 酸処理 HCl 細ガラス管通過 (trituration 法 ) Vacanti protocolでは酸処理と併用 (Obokata et al, Nature, 2014) 7

分化した細胞から STAP 現象により多能性細胞が生じる事の証明方法 分化細胞 ( リンパ球など ) STAP 細胞塊 STAP 幹細胞 (ES 細胞様 ) 分化した細胞を特異的に標識する 分化した細胞由来である事を示す標識の検出 8

T 細胞受容体遺伝子再構成 = ゲノムに残る分化細胞の証拠 1 週令マウス脾臓由来 CD45 陽性血液細胞の10 20% がT 細胞で そのうち 10 20% が T 細胞受容体遺伝子再構成を持つ ( 全 CD45 陽性細胞の1 4% がT 細胞受容体遺伝子再構成を持つ ) これは決して効率のよい指標ではなく 他の指標を用いた検証を併用する事が望ましい (Obokata et al, Nature, 2014) 9

STAP 細胞が出来る過程 ( 論文に基づく仮説 ) CD45 陽性血液細胞生存細胞リプログラムされた細胞 STAP 細胞塊 B cell T cell macrophages others 細胞死 リプログラミング (70%) (50%) 細胞塊形成 細胞数 1000 300 150 STAP 細胞は細胞塊 ( クラスター ) として得られる 細胞塊には T 細胞受容体遺伝子再構成を持たない細胞も多く含まれる 10

キメラ胚で T 細胞受容体遺伝子再構成を検出できる確率は低い small aggregates of STAP cells 胚盤胞注入 キメラ胚 Origin STAP 細胞塊 Mechanical dissection? B cell T cell macrophages others?? Relative cell numbers 150 15 1-2 clones per embryo 11

再構成されたT 細胞受容体遺伝子を持つSTAP 幹細胞が得られる確率は低い small aggregates of STAP cells Culture in ACTH medium STAP 幹細胞 Origin STAP 細胞塊 Mechanical dissection? B cell T cell macrophages others?? Relative cell numbers 150 15 12

血液細胞の中でも STAP 細胞誘導効率に差があるかもしれない T 細胞に限定した評価は真偽を確定するためには不十分 (Obokata et al, Nature, 2014) 13

心筋からの STAP 細胞誘導 (Obokata et al, Nature, 2014) 14

血液細胞以外の酸処理による STAP 細胞誘導 (Obokata et al, Nature, 2014) 15

分化細胞特異的 Cre 組み換え酵素発現による恒常的子孫細胞追跡法 ( アルブミン遺伝子発現を指標とした肝細胞の標識化を例とした ) トランスジェニックマウスの交配 恒常的に GFP を発現する肝細胞を含む肝臓を採取 単一細胞に分散 Albumin promoter Cre recombinase pa Rosa promoter PGKneopA EGFP pa Albumin CreTg Rosa loxp STOP loxp GFP Tg STAP 細胞化 肝細胞でのみ 肝細胞でのみ loxp 配列 Creが発現 の組み換えが起こりGFP が恒常的に発現 小細胞塊の胚盤胞への注入 Rosa loxp GFP Tg Rosa promoter EGFP pa 肝細胞でのみ GFP を発現するマウス キメラ胚における三胚葉への寄与の検証 16

使用を予定する遺伝子改変マウス系統 Nkx2.5 Cre ( 心筋細胞特異的に発現 ) Albumin Cre ( 肝細胞特異的に発現 ) Rosa26 loxp STOP loxp 蛍光遺伝子 ( 変異マウス開発ユニットで作成済み ) Abe et al, Genesis, 2011 その他の組織特異的 Cre 発現マウスについても検討中 17

STAP 幹細胞作成を経た多能性獲得の検証 ES 細胞様の形態増殖能の獲得 2N 胎児キメラ形成能 4N (Obokata et al, Nature, 2014) 18

研究実施スケジュール ( 予定 ) 2014 2015 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 T 細胞胞受容体遺伝子子再構成を指標とした追追跡 CD45 陽性細胞などの分化細胞からの STAP 様細胞の誘導 STAP 様細胞のキメラ寄与能の検証 STAP 様細胞からの STAP 幹細胞作製の検証 STAP 幹細胞のキメラ寄与能の検証 分化細胞特異的にCre を発現するマウスの入手と交配 Cre loxp を用用いた厳密な細胞胞追跡 分化細胞標識の検証分化細胞標識マウスからのSTAP 様細胞の誘導 STAP 様細胞のキメラ寄与能の検証 STAP 様細胞からの STAP 幹細胞作製の検証 STAP 幹細胞のキメラ寄与能の検証 中間報告 最終報告 19

研究実施体制 理事長 研究不正再発防止改革推進本部 実験総括責任者 : 独立行政法人理化学研究所発生 再生科学総合研究センター特別顧問 ( 相澤研究ユニット研究ユニットリーダー兼務 ) 相澤慎一 研究実施責任者 : 独立行政法人理化学研究所発生 再生科学総合研究センター多能性幹細胞研究プロジェクトプロジェクトリーダー丹羽仁史 細胞培養に関わる実験は丹羽以下計 4 名が担当マウスに関わる実験は相澤以下計 2 名が担当 20