炭素繊維強化ポリプロピレンの界面接着性と力学特性の評価 システム創成学専攻安全評価工学研究室修士課程 2 年 86383 山内美穂指導教員高橋淳教授 研究背景 CFRP の特徴 CFRTS 熱硬化性樹脂 (Thermo-setting resin :TS) 利点 耐熱性 耐薬品性 比強度 疲労特性 課題 高コスト 大規模な成形設備 長い成形時間 リサイクルが難しい CFRP を量産車に適用するには 熱可塑性樹脂 (Thermoplastics resin :TP) の利用 コスト低減 迅速成形 リサイクルの実現 研究背景 CFRP の特徴 CFRTP 熱可塑性樹脂 (Thermoplastics :TP) 利点 加工性 補修性 リサイクル性 課題 強化繊維とマトリックス樹脂の界面接着性が不十分 樹脂 未処理繊維 表面処理繊維 エポキシ 13 37 ポリプロピレン 3 6 CFRTP 材料技術 生産技術開発 確立による用途拡大のための主要課題 炭素繊維 / 熱可塑性樹脂の接着性向上技術の開発 1
本研究の目的 目的 : 界面せん断強度の測定による繊維 / 樹脂改質処理効果の評価繊維強化材の力学特性と界面接着性の関係の評価 実験 a 界面せん断強度の測定 改質処理された繊維 樹脂 実験 Ⅰマイクロドロップレット法 実験 Ⅱフラグメンテーション法 実験 b 複合材料の力学特性の測定 実験 Ⅲ 曲げ試験 実験 Ⅳ 衝撃試験 炭素繊維の生成過程 繊維表面処理 PAN 繊維 耐炎化炉炭素化炉黒鉛化炉 空気雰囲気中で酸化 (25 35 で 3 分 ) 炭素繊維 サイジング EP サイズ PP サイズ 不活性ガス雰囲気中 1 時間程蒸焼き ( ) 表面処理 アンサイズ ( 3 ) 実験に使用した繊維 樹脂の種類 繊維 a アンサイズCF 繊維 b ポリプロピレン (PP) 用のサイジング剤を塗布したCF 繊維 c 汎用 CF( エポキシ樹脂 (EP) 用のサイジング剤を塗布 ) 繊維 d 繊維 cのサイジング剤を改良したサイジング剤を塗布したcf PPは無水マレイン酸添加量を変更 繊維 PPへの無水マレイン酸添加量 %.5% 1.% 1.5% 2.% 2.5% 繊維 a a/% a/.5% a/1.% a/1.5% a/2.% a/2.5% 繊維 b b/% b/.5% b/1.% b/1.5% b/2.% b/2.5% 繊維 c c/% c/.5% c/1.% c/1.5% c/2.% c/2.5% 繊維 d d/% d/.5% d/1.% d/1.5% d/2.% d/2.5% 2
実験 Ⅰ: マイクロドロップレット法による界面せん断強度測定 実験 Ⅱ: フラグメンテーション法による界面せん断強度測定 マイクロドロップレット法の原理 複合材界面特性評価装置 MODEL HM41 樹脂製の引張り試験片に単繊維を埋め込む 負荷することにより繊維が破断して臨界繊維長 Lcの断片になるまで引張り荷重を加える この時の臨界繊維長と繊維直径 Dに対する繊維引張り強度がわかれば界面せん断強度が求められる 実験 Ⅰ: マイクロドロップレット法試験体作製 樹脂付けの様子 アルミニウムの台紙 炭素繊維 接着剤 3
実験 Ⅰ: マイクロドロップレット法引き抜き試験 実験 Ⅰ: マイクロドロップレット法測定結果 例繊維 a( アンサイズ )/2.% 無水マレイン酸添加 PP 1 1 F[mN],τ[MPa] 8 8 1 1 L[μm] F F τ F DL F: 荷重 [mn] L: 埋め込み長さ [μm] D: 繊維の直径 [μm] 速度.12mm/min ロードセル最大荷重 mn 実験 Ⅰ: マイクロドロップレット法測定結果界面せん断強度 実験 Ⅰ: マイクロドロップレット法測定範囲の上限 5 f が MPa 以上 が35~45MPa 以上 f 3 1.5 1 1.5 2 2.5 無水マレイン酸添加量 [%] 樹脂を変形させながらも 樹脂が繊維から抜ける 樹脂をブレードが押しつぶしてしまう 繊維 a( アンサイズ ) 4
実験 Ⅰ: マイクロドロップレット法実験のまとめ 繊維の改質 無水マレイン酸を添加していないPP PP 用サイジング剤を施した繊維が他の繊維と比較して約 2 倍のせん断強度となった 無水マレイン酸を添加したPP EP 用サイジング剤を塗布したCFの方がより高い界面せん断強度を示した 樹脂の改質 無水マレイン酸添加により接着性向上の効果は大きかった 実験 Ⅱ: フラグメンテーション法試験片作製 実験 Ⅱ: フラグメンテーション法引張試験 無水マレイン酸変性なしと 2.%wt 添加の PP 試験片幅約 8mm 厚さ約.1mm ホットプレス機 成形温度 18 PP フィルム CF PP フィルムに 1 本の CF をテープで貼り 上からもう 1 枚 PP フィルムを重ねてプレスする.5μm/sで引張る試験片ロードセルジャパンハイテック顕微鏡用冷却加熱延伸観察ステージ73B 5
実験 Ⅱ: フラグメンテーション法顕微鏡での観察 実験 Ⅱ: フラグメンテーション法顕微鏡での観察 D f i 2L c σf: 繊維強度 破断繊維長 D: 繊維の直径 [μm] Lc: 臨界繊維長 実験 Ⅱ: フラグメンテーション法測定結果界面せん断強度 実験 Ⅰ と Ⅱ 界面せん断強度測定結果の比較 25 PP の無水マレイン酸変性なし PP の無水マレイン酸 2.% 変性 15 1 5 3 1 5 3 1 5 繊維 a 繊維 b 繊維 c 繊維 d 繊維 a 繊維 b 繊維 c 繊維 d ドロップレット フラグメント ドロップレット フラグメント 繊維 a 繊維 b 繊維 c 繊維 d アンサイズ PP 用 [%] 2[%] EP 用 EP 用 2 つの手法による結果は相対的な関係は極めて良く一致しているが 絶対値には 2 倍以上の差が見られる 6
実験 Ⅰ と Ⅱ ドロップレットとフラグメンテーションによる結果の差 実験 Ⅱ: フラグメンテーション法実験のまとめ フラグメンテーション法の試験片の作成時にCFとPPの熱膨張係数の差に起因して発生する残留熱応力の影響が考えられる 線膨張率 PP 11 1-6 K -1 CF -1.1 1-6 K -1 ~ 温度変化 Tは145K(PPの融点の約 165 から約 に冷却 ) f f PP シートの収縮 D( f t ) i t 2L c 繊維と樹脂の改質による接着性向上の効果はマイクロドロップレット法で得られた結果と同じであり 相対的な関係も極めてよく一致していた 熱収縮による残留応力の影響のため界面せん断強度はマイクロドロップレット法に比べ小さくなった 残留応力は最大で約 3.8GPa( ひずみ換算で約 1.6%) が作用する 実験方法 繊維 b 無水マレイン酸 %PP 一方向材 Vf=5% 繊維 d 繊維 c 無水マレイン酸 2.%PP 試験静的曲げ試験機 繊維方向 繊維と垂直方向 動的 衝撃試験機 7
試験片作製 実験 Ⅲ 静的三点曲げ試験繊維方向応力ひずみ線図 プリプレグシート (1 枚当たり 3 分 ) 9 8 CF シート プレス成形機 12 枚積層してオートクレーブ成形 23.7MPa 応力 [MPa] 7 5 3 接着性が良い接着性が良くない b/% c/% d/% PP フィルム (1 枚当たり 1 分 ) 23.1MPa 完成 2 4 6 8 1 12 ひずみ [%] 実験 Ⅲ 静的三点曲げ試験繊維方向試験片の観察 接着性の良くない試験片 (d/%) 圧縮側引張側接着性の良い試験片 (d/2.%) 実験 Ⅲ 静的三点曲げ試験繊維方向試験結果 弾性率 [G GPa] 8 % 2% 最大荷重時の曲げひひずみ [%] 1.5 1 1..5. [MPa] 曲げ強度 [ 8 % 2% % 2% 圧縮側 引張側 8
] 実験 Ⅲ 静的三点曲げ試験繊維と垂直方向応力ひずみ線図 実験 Ⅲ 静的三点曲げ繊維と垂直方向試験結果 応力 [MPa] 5 接着性が良い 3 接着性が良くない 1 1 2 3 4 5 6 7 8 ひずみ [%] b/% c/% d/% 弾性率 [GP a] 1 8 6 4 2 % 2% 最大荷重時の曲げひずずみ [%] 1.5 1..5. Pa] 曲げ強度 [MP 5 3 1 % 2% % 2% 実験 Ⅳ アイゾッド衝撃試験試験結果 アイゾット衝撃吸収値 [kj/m 2 ] 1 1 8 % 2% 実験 Ⅲ 静的三点曲げ試験界面せん断強度と力学特性の関係 1 b/% 8 b/% 8 c/% c/% d/% d/% 1 3 5 1 3 5 GPa] 曲げ弾性率 [G 曲げ弾性率 [GPa] 6 5 4 3 2 1 1 3 5 繊維方向 a] 曲げ強度 [MPa 繊維と垂直方向 b/% c/% d/% 曲げ強度 [MPa] 5 3 1 1 3 5 b/% c/% d/% 9
実験 Ⅳ アイゾッド衝撃試験界面せん断強度と力学特性の関係 実験 Ⅲ&Ⅳ まとめ 衝撃吸収値 [kj/m 2 ] 1 8 1 3 5 b/% c/% d/% 繊維 b/2.% 繊維 d/2.% 界面せん断強度の向上により力学特性が向上した 繊維方向 界面せん断強度がある程度高くなると性能は変わらなくなる 繊維と垂直方向 接着性が高くなればなるほど性能は良くなる 積層材の場合 繊維方向と 繊維と垂直方向の両方の力学特性が必要となるため 界面せん断強度の測定によって積層材の力学特性を評価できる 衝撃吸収値は接着性が良いほど大きくなるわけではなかった 結論 実験 a 実験 b 界面せん断強度の測定 複合材料の力学特性の測定 EP 用サイズ剤を塗布したCFと無水マレイン酸変性のPPの組み合わせが最も接着性が良かった マイクロドロップレット法 測定できる界面せん断強度に上限がある フラグメンテーション法 残留熱応力の影響を受ける 両者の方法から得られた界面せん断強度の相対関係は非常に良く一致した 界面接着性と力学特性には相関関係があった 積層材の場合 界面せん断強度の測定によって積層材の力学特性を評価できる 衝撃吸収値は接着性がよくなるほど 大きくなるわけではない 1
今後の課題 以下のような検討が期待される 成形性 ( 樹脂含浸性 賦形性 二次加工性等 ) も合わせた総合的性能への最適な無水マレイン酸変性量 アニーリング等による結晶化度の影響 ご清聴ありがとうございました 11