Microsoft Word - MMR事業事前評価表.doc

Similar documents
は Blue Print for Air Transportation にて民間航空長期計画を作成 アクションプラン DGCA 5-Year Strategic Plan を作成した上 航空安全に係る総合的な対策の強化を図っており 本事業はこれに寄与するもので

事業事前評価表 国際協力機構社会基盤 平和構築部 運輸交通 情報通信グループ第二チーム 1. 案件名国名 : バングラデシュ人民共和国案件名 : 和名国際空港保安能力強化プロジェクト英名 The Project for Security Improvement of International Ai

新JICAにおける事前評価(技協・無償)について

事業事前評価表 国際協力機構農村開発部農業 農村開発第一グループ第二チーム 1. 案件名国名 : インドネシア共和国案件名 : 和名農業保険実施能力向上プロジェクト英名 The Project of Capacity Development for the Implementation of Agr

事業事前評価表 国際協力機構産業開発 公共政策部法 司法チーム 1. 案件名国名 : ブラジル連邦共和国案件名 : ( 和文 ) 地域警察活動普及プロジェクト ( 英文 )Project on Nationwide Dissemination of Community Policing 2. 事業の

Microsoft Word - Œ½ŠßfiŽ‡Ì‹Ä.doc

事業事前評価表 ( 地球規模課題対応国際科学技術協力 SATREPS) 国際協力機構農村開発部農業 農村開発第一グループ第二チーム 1. 案件名国名 : インドネシア共和国案件名 : 和名 ( 科学技術 ) 食料安全保障を目指した気候変動対応策としての農業保険における損害評価手法の構築と社会実装英名

欠であり 運輸交通分野を中心に膨大なインフラ投資が必要になると見込まれる これらのインフラ整備にあたっては 案件ごとにマスタープランから工事まで段階を踏んで検討 建設が進められるが 対象地の地形などを確認 把握するため 検討段階に応じた精度の地図が必要となる 現在 同国では基本的な測地基準点網が整備

事業事前評価表_新様式

ジャカルタ大都市圏空港整備計画調査の必要性については JICA が 2008 年 1 月に実施した 次世代航空保安システム整備に係るフィージビリティー調査 でも提言がなされており 既存空港の拡張及び効率的運用を含めたジャカルタ首都圏周辺の適切な空港整備に係る長期的な計画を策定する必要性は高い インド

事業事前評価表

<4D F736F F F696E74202D2091E F C5F524E415690AE94F58C7689E65F C835B83932E707074>

1. 案件の概要国名 : フィリピン共和国 評価調査結果要約表 案件名 : 航空航法システム安全性 効率性向上プロジェクト援助形態 : 技術協力プロジェクト協力金額 ( 評価時点 ):2 億 1,000 万円 分野 : 運輸交通 ( 航空 空港 ) 所轄部署 : 経済基盤開発部運輸交通 情報通信第三

事業事前評価表 国際協力機構社会基盤 平和構築部運輸交通 情報通信グループ 1. 案件名国名 : バングラデシュ国案件名 : 和名橋梁維持管理プロジェクト 有償勘定技術支援 英名 Bridge Management Capacity Development Project 2. 事業の背景と必要性

ログラムの審査に産業界からも参画を得ることで 大学がエンジニア予備軍である学部学生に対し社会のニーズに即した教育を実践できるよう 促進する役割を果たしている かかる状況の下 エンジニアの量的拡大が質を伴う形で実現されるよう インドネシア政府は我が国に対し LAM-PS としての インドネシアエンジニ

事業事前評価表

事業事前評価表

政府説明資料

Microsoft PowerPoint - 本番説明資料(提出版)差し替え

事業事前評価表 国際協力機構地球環境部環境管理第一チーム 1. 案件名 国名 : パキスタン国案件名 : 和名パンジャブ州上下水道管理能力強化プロジェクト英名 Project for Improving the Capacity of WASAs in Punjab Province 2. 事業の背

JICA 事業評価ガイドライン ( 第 2 版 ) 独立行政法人国際協力機構 評価部 2014 年 5 月 1

事業事前評価表 1. 案件名国名 : ラオス人民民主共和国案件名 : ルアンパバーン世界遺産の持続可能な管理保全能力向上プロジェクト Project for Capacity Enhancement for Sustainable World Heritage Management and Pres

2008年6月XX日

<4D F736F F F696E74202D E93788CA48B8694AD955C89EF5F4E6F30325F D AC48E8B8CA48B865F53438FBC

護ディプロマ課程を 3 年制看護ディプロマ課程に変更したのに加え ディプロマ課程看護師の現任研修により学士が取得できる 2 年制ポスト ベーシック課程とは別に大学教育として看護学士課程制度 (4 年制 ) を導入することを定めた 学術的に高度な 4 年制看護学士課程の卒業生は輩出されたばかりであるが

事業事前評価表

事業事前評価表

事業事前評価表 国際協力機構産業開発 公共政策部資源 エネルギーグループ第二チーム 1. 案件名国名 : ザンビア共和国案件名 : 和名ザンビアにおける鉛汚染のメカニズムの解明と健康 経済リスク評価手法および予防 修復技術の開発英名 The Project for Visualization of

Microsoft Word - 文書 1

(CANACINTRA) 等と連携を図りつつ設置する案を有しており 国家中小企業コンサルタント養成 認定制度を具現化するためにいかにして事業を進めていくかが課題となっている (2) 相手国政府国家政策上の位置づけカルデロン大統領は 近代的かつ競争力のある経済の強化及び雇用の創出 を 治安 貧困撲滅

<4D F736F F D B834E90568B4B C48C8F8E96914F955D89BF955C979D8E9690E096BE8DC58F492E646F63>


事業事前評価表

番号 : 国名 : ミャンマー担当部署 : 社会基盤 平和構築部運輸交通 情報通信グループ第二チーム案件名 : 次世代航空保安システムに係る能力開発プロジェクト ( 飛行方式設定 ) 1. 担当業務 格付等 (1) 担当業務 : 飛行方式設定 (2) 格付 :3 号 (3) 業務の種類

事業事前評価表

事業事前評価表

Microsoft PowerPoint - 06資料06_JIC資料_0419版 [互換モード]

事業事前評価表

3 航空機動態情報の管制機関における活用 (EN-12, OI-27 関連 ) ~ 航空機動態情報の把握による監視能力の向上 ~ 2 気象予測の高度化等 (EN-5,6,13 関連 ) ~ 気象予測の高度化による高精度な時間管理の実現 ~ 4SBAS 性能の検討 (EN-7 関連 ) 5GBAS を

事業事前評価表

<4D F736F F D208E968BC68E96914F955D89BF955C D935393B990AE94F58E968BC B A816A2E646F63>

援 GHGインベントリ策定にかかる技術移転等 気候変動対策を推し進めるための包括的な支援を実施した 同プロジェクトの成果として 国家気候変動緩和行動計画 (RAN-GRK) に基づき州気候変動緩和行動計画 (RAD-GRK) の策定が進められるとともに 国家気候変動適応行動計画 (RAN-API)

事業事前評価表

研究は重要項目とされている 本事業は CERMEL と長崎大学の共同研究を通じて 1 対象地域におけるウイルス感染症の流行状況の解明 2 新規に同定されたウイルスの性状解析 3 公衆衛生対策上優先度の高いウイルスに対する診断法の開発を行い ガボン側研究機関のウイルス感染症研究開発の能力向上に貢献する

<4D F736F F F696E74202D202888F38DFC977095D28F57298FAB978882CC8D718BF38CF092CA8AC7979D82CC8D5C91A22E707074>

(Microsoft Word - \216\226\221O\225]\211\277\225\\ doc)

<4D F736F F D E968BC68E96914F955D89BF955C C90BC8C6F8DCF89F1984C816A8DC58F4994C52E646F63>

政府説明資料

政府説明資料

令 (2006 年 5 号 ) では 2025 年までの国家エネルギー政策の数値目標を設定し エネルギー供給量に対する新 再生可能エネルギーの目標値を 17%( うち地熱エネルギーは 5 %) に定めた また 2010 年の Vision 25/25 において 新 再生可能エネルギーの目標値を 25

評価調査結果要約表 1. 案件概要 国名 : メキシコ合衆国案件名 : メキシコ国電子分野における研究 教育手法の開発分野 : 中小企業振興援助形態 : 技術プロジェクト所轄部署 : 中南米部中米 カリブチーム協力金額 ( 評価時点 ):20,375 千円協力期間 (R/D):2003 年 11 月

ミャンマー国 農民参加

Microsoft Word - 事前評価

<4D F736F F F696E74202D208D718BF38CF092CA8AC7979D D816A82C982C282A282C4>

政府説明資料

架鉄道三路線 ( うち 二路線は軽量 ) の総延長は 50km にとどまっている 首都圏南方については マニラ市ツツバンからカブヤオ市ママティッドまでの区間を頻度の低い通勤線が非電化路線として運行しているのみである 首都圏北方は 居住エリアが拡大しているものの 十分な公共交通手段が確保されていないた

<4D F736F F D C888DD994C5817A B834E B5A D8E968BC68E96914F955D89BF955C2E646F63>

(2) 当該国における地震防災分野の開発政策と本事業の位置づけネパール政府は 2009 年に災害リスク国家管理戦略を制定し 対象災害の一つとして地震を上げている 地震防災分野は 2009 年に設置された National Platform for Disaster Risk Reduction にお

DDL12Prnt001

<4D F736F F D208E968BC68E96914F955D89BF955C E8ED88ABC F288DC58F4994C5816A2E646F63>

Microsoft Word - H24江戸川区離陸機調査 doc

<4D F736F F D20322E5F8E9197BF315F8FAB978882CC8D718BF38CF092CA C98AD682B782E98CA48B8689EF82C682E882DC82C682DF5F916688C45F>

無償資金協力 案件概要書 2017 年 8 月 29 日 1. 基本情報 (1) 国名 : カンボジア王国 (2) プロジェクトサイト / 対象地域名 : シハヌークビル特別市 プノンペン (3) 案件名 : 港湾近代化のための電子情報処理システム整備計画 (The Project for Port

事業事前評価表 ( 地球規模課題対応国際科学技術協力 (SATREPS)) 国際協力機構地球環境部防災第一チーム 1. 案件名国名 : フィリピン共和国案件名 : 和名 フィリピンにおける極端気象の監視 情報提供システムの開発 英名 The Project for Development of Ex

事業事前評価表 1. 案件名 ( 国名 ) 国際協力機構南アジア部南アジア第四課 国名 : バングラデシュ人民共和国案件名 : 貧困削減戦略支援無償 ( 教育 ) (Poverty reduction efforts) 2. 事業の背景と必要性 (1) 当該国における初等教育セクターの現状と課題バン

政府説明資料

審査の品質管理において取り組むべき事項 ( 平成 27 年度 ) 平成 27 年 4 月 28 日 特許庁 特許 Ⅰ. 質の高い審査を実現するための方針 手続 体制の整備 審査の質を向上させるためには 審査体制の充実が欠かせません そこで 審査の効率性を考慮しつつ 主要国と遜色のない審査実施体制の確

<4D F736F F D208E968BC68E96914F955D89BF955C F8BC F91BA8A4A94AD B D815B83938E968BC6816A2E646F63>

区間を頻度の低い通勤線が非電化路線として運行しているのみであり 十分な公共交通手段が確保されていないため 同エリアと周辺に住む住民はバスや自動車等により通勤しているが 道路の混雑により 通勤に大きな支障が出ている 加えて 南北鉄道事業南線 ( 通勤線 ) ( 以下 本事業 という ) の対象区間には

PowerPoint プレゼンテーション

( 参考様式 1) ( 新 ) 事業計画書 1 事業名 : 2 補助事業者名 : 3 事業実施主体名 : Ⅰ 事業計画 1 事業計画期間 : 年 月 ~ 年 月 記載要領 事業計画期間とは 補助事業の開始から事業計画で掲げる目標を達成するまでに要する期間とし その期限は事業実施年 度の翌年度から 3

スライド 1

目次 1. 導入 - 電波法について - 2. 要望 (1) - 検査基準の国際標準化 ( 個別試験の廃止 ) - 3. 要望 (2) - 定期検査の廃止 - 4. 要望 (3) - 製造番号登録制度の廃止 - 5. まとめ 2

政府説明資料

政府説明資料

<4D F736F F D E96914F955D89BF816A836E836D83438CF68BA48CF092CA89FC D E83672E646F63>

Microsoft Word - 事前評価表最終版0623final.doc

社会的責任に関する円卓会議の役割と協働プロジェクト 1. 役割 本円卓会議の役割は 安全 安心で持続可能な経済社会を実現するために 多様な担い手が様々な課題を 協働の力 で解決するための協働戦略を策定し その実現に向けて行動することにあります この役割を果たすために 現在 以下の担い手の代表等が参加

ISO 9001:2015 改定セミナー (JIS Q 9001:2015 準拠 ) 第 4.2 版 株式会社 TBC ソリューションズ プログラム 年版改定の概要 年版の6 大重点ポイントと対策 年版と2008 年版の相違 年版への移行の実務

政府説明資料

基本的な考え方 羽田空港の機能強化は 首都圏だけでなく日本全体にとって不可欠であり 機能強化の必要性やその実現方策等について 関係自治体の協力も得ながら できる限り多くの方々に知って頂くように努める 基本的な考え方 1 羽田空港の機能強化の必要性やその実現方策等について できる限り多くの方々に知って

公共工事等における新技術活用システムについて 別添 公共工事等に関する優れた技術は 公共工事等の品質の確保に貢献し 良質な社会資本の整備を通じて 豊かな国民生活の実現及びその安全の確保 環境の保全 良好な環境の創出 自立的で個性豊かな地域社会の形成等に寄与するものであり 優れた技術を持続的に創出して

事業事前評価表 ( 地球規模課題対応国際科学技術協力 (SATREPS)) 農村開発部農業 農村開発部第二グループ 1. 案件名国名 : スーダン共和国案件名 : 和名ストライガ防除による食料安全保障と貧困克服英名 The project for development of counter mea

Microsoft Word - 13 地域イントラ.doc

女性の活躍推進に向けた公共調達及び補助金の活用に関する取組指針について

SGEC 附属文書 理事会 統合 CoC 管理事業体の要件 目次序文 1 適用範囲 2 定義 3 統合 CoC 管理事業体組織の適格基準 4 統合 CoC 管理事業体で実施される SGEC 文書 4 CoC 認証ガイドライン の要求事項に関わる責任の適用範囲 序文

IATF16949への移行審査

おける成果としては まず組織運営 ( 交番活動 ) 面としてシフト制による 24 時間勤務 受け持ち区域 体制がつくられ 住民の要望を聞くとともに防犯上のアドバイスなどをする 巡回連絡 が行われるようになり そうした現場レベルでの市民警察活動の拠点として BKPM( 警察 市民パートナーシップ セン

と衝突して沈没し 147 人が死亡 2014 年 8 月にはパドマ川で約 250 人を乗せたフェリーが荒天のため転覆し 110 人が死亡等の大事故が発生している また 同国は 雨季には大型サイクロンが度々ベンガル湾から来襲し 沿岸部で遭難事故が多発するなど 地理的に自然災害の影響を受けやすい地域であ

<4D F736F F F696E74202D208D718BF38AC790A782C982C282A282C E096BE8E9197BF A2E >

新JICAにおける事前評価(技協・無償)について

Microsoft PowerPoint - 【資料-2】(用地部)H31総合技術説明資料

評価調査結果要約表

用地補償総合技術業務 における入札参加条件等 2. 業務実績に関する要件 緩和 従来 企業予定主任担当者にもとめる業務実績要件の期間 過去 10 ヶ年 の業務実績 企業予定主任担当者にもとめる業務実績要件の期間 過去 15 ヶ年 の業務実績 したがって H29 契約案件は平成 14 年度以降に完了し

0528事業事前評価表(円借款+附帯技プロ)final.doc

地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム (SATREPS) JST 中間評価 1 の実施要領 平成 29 年 6 月改定 JST 国際部 SATREPS グループ 1. 地球規模課題国際科学技術協力 (SATREPS) プロジェクトの中間評価について SATREPS は JST による研究支援お

244650/07 酒井正子

4 研修について考慮する事項 1. 研修の対象者 a. 職種横断的な研修か 限定した職種への研修か b. 部署 部門を横断する研修か 部署及び部門別か c. 職種別の研修か 2. 研修内容とプログラム a. 研修の企画においては 対象者や研修内容に応じて開催時刻を考慮する b. 全員への周知が必要な

4-(1)-ウ①

評価調査結果要約表

Transcription:

事業事前評価表 国際協力機構経済基盤開発部運輸交通 情報通信第三課 1. 案件名国名 : ミャンマー連邦共和国案件名 : 和名次世代航空保安システムに係る能力開発プロジェクト英名 The Project for Capacity Development on CNS/ATM Systems 2. 事業の背景と必要性 (1) 当該国における航空セクターの現状と課題ミャンマー連邦共和国 ( 以下 ミャンマー ) では 現在 32 の空港が運用され それらの内 27 の空港に定期便が就航している しかしながら 超短波全方向式無線標識 / 距離測定装置 (VHF Omnidirectional Range/Distance Measuring Equipment: VOR/DME) をはじめとする航行援助施設 航空監視レーダー 対空通信設備など航空機の安全運航に必要な航空保安施設の整備が大きく遅れていることから 適切な航空機の監視や誘導 および航空交通容量の増大が困難な状況となっている また 国際民間航空機関 (International Civil Aviation Organization: ICAO) は 衛星等の技術を利用することにより 通信 航法 監視の能力を高め 増加する航空交通量に対応することを目的として次世代航空保安システム (Communications, Navigation and Surveillance/Air Traffic Management:CNS/ATM) 1 の導入を全世界的に推進している 今後ミャンマー政府が次世代航空保安システムを導入 運用していくためには 実施機関であるミャンマー運輸省民間航空局 (Department of Civil Aviation: DCA) の CNS/ATM に携わる職員の能力向上が不可欠となっている (2) 当該国における航空セクターの開発政策と本事業の位置づけミャンマー運輸省は ミャンマーの航空法 規則及び手続 ならびに ICAO の標準と勧告方式に準拠して DCA は 国内及び国際航空輸送の安全 円滑で確実な運用のために 安全な運用 規則的な飛行 経済的な運用 効率的な運用 確実な運用に向けてその機能を実施する ことを政策として掲げている 本事業は ICAO が推進する次世代航空保安システムへの移行に係る民間航空局の能力向上を通じて 航空輸送の安全性 効率性の向上に資するものであり 上記の政策に合致 1 人工衛星技術を活用した航空機の運航および航空管制に係る新技術で 航空交通の安全性と効率性を高めるもの 1

するものである (3) 航空セクターに対する我が国及び JICA の援助方針と実績 2012 年 4 月 21 日に制定された対ミャンマー経済協力方針においては 持続的経済成長のために必要なインフラや制度の整備等の支援 を実施するとの方針が示されており 本事業はミャンマーの航空輸送の安全強化と効率化を目的としたインフラ整備の支援に位置付けられるものである 我が国はミャンマーの航空セクターに対して以下の援助を行ってきている 有償資金協力 ヤンゴン国際空港拡張事業 (1984~1986 年度 ) 日本 シンガポール パートナーシップ プログラム航空保安に係る第三国研修 (2000 年 ~) 国別研修 航空保安 (2011~2013 年度 ) 無償資金協力 全国空港保安設備整備計画 (2013~2014 年度予定 ) 協力準備調査 全国運輸交通プログラム形成準備調査 (2012~2013 年度 ) (4) 他の援助機関の対応シンガポールが 1995 年から 中国が 2001 年から 韓国が 2002 年から タイが 2007 年から航空交通管制関連の訓練生を定期的に受け入れており 2010 年 ~ 2012 年の 3 年間で計 16 名である ただし DCA では約 200 名近い航空交通管制関連の職員を訓練する必要があり 本事業はこの DCA の訓練体制を強化するものである また DCAは2013 年 6 月にICAOアジア太平洋州サブ事務所 ( 北京 ) と PBN 推進に係る技術協力に係る合意を行っているが 本プロジェクトの協力内容と重複はない 3. 事業概要 (1) 事業目的 ( 協力プログラムにおける位置づけを含む ) 本事業は DCA において マスタープラン策定 新たな飛行方式の導入 通信不具合解析体制の整備および航空管制 管制技術に係る訓練内容の改善等を行うことにより 次世代航空保安システムへの移行に係る DCA の能力向上を図り もって航空輸送の安全性 効率性の向上に寄与するものである (2) プロジェクトサイト / 対象地域名ヤンゴン市 2

(3) 本事業の受益者 ( ターゲットグループ ) 次世代航空保安システムへの移行に関連する DCA 職員 ( 約 240 名 ) (4) 事業スケジュール ( 協力期間 ) 2014 年 5 月 ~2018 年 4 月を予定 ( 計 48 ヶ月 ) (5) 総事業費 ( 日本側 ) 4.0 億円 ( 概算額 ) (6) 相手国側実施機関ミャンマー運輸省民間航空局 (Department of Civil Aviation: DCA) (7) 投入 ( インプット ) 1) 日本側 長期専門家 ( 各 48M/M) チーフアドバイザー / 航空保安システム計画 航空管制訓練 管制技術訓練 業務調整 / 性能準拠航法 (Performance Based Navigation: PBN) 訓練補助 ) 短期専門家派遣 CNS/ATM 計画専門家 PBN 専門家 自動位置情報伝送 監視機能 / 管制官パイロットデータリンク通信 ( Automatic Dependent Surveillance/Controller-Pilot Data Link Communication: ADS/CPDLC) 専門家 CNS/ATM 訓練専門家 本邦研修 CNS/ATM 計画立案研修 PBN 関連研修 ADS/CPDLC 関連研修 航空保安システム訓練関連研修 CNS/ATM 計画立案研修 ( 第三国研修 ) 機材供与 航空保安システム訓練に係る教材 機材等 ( 試験機器 視聴覚教材等 ) 2) ミャンマー国側 3

カウンターパートの配置 ( 下記各 1 名 ) プロジェクト ディレクター :DCA 次長 プロジェクト マネージャー (CNS/ATM マスタープランおよび PBN 担当 ):DCA 航空保安課長 副プロジェクト マネージャー (ADS/CPDLC 担当 ):DCA CNS 課長 共同プロジェクトマネージャー (CNS/ATM 訓練担当 ): 民間航空訓練校教頭, DCA プロジェクトコーディネーター :( 関連部局より必要に応じ選出 ) タスクフォースの設置 CNS/ATM マスタープラン策定 PBN 導入 ADS/CPDLC 障害分析 ATM 訓練 CNS 訓練 施設 資機材およびデータ等の提供 プロジェクト事務所 世界測地系 1984(World Geodetic System-84:WGS84) 測量データ 飛行方式設計システム 地上検証システム 飛行検査用航空機 受信機自律型完全性モニタ (Receiver Autonomous Integrity Monitoring: RAIM) 情報 航空交通管制 (Air Traffic Control: ATC) 訓練用 PC ソフト 民間航空訓練校施設 (8) 環境社会配慮 貧困削減 社会開発 1) 環境に対する影響 / 用地取得 住民移転 1カテゴリ分類 :C 2カテゴリ分類の根拠 :: 本事業は 国際協力機構環境社会配慮ガイドライン (2010 年公布 ) に掲げる影響を及ぼしやすいセクター 特性及び影響を受けやすい地域に該当せず 環境への望ましくない影響は最小限であると判断されるため 2) ジェンダー平等推進 / 平和構築 貧困削減 4

特になし 3) 気候変動対策との関連特になし (9) 関連する援助活動 1) 我が国の援助活動 有償資金協力 ヤンゴン国際空港拡張事業 (1984~1986 年度 ) でヤンゴン国際空港の拡張 ターミナルビルの新設を行った 日本 シンガポール パートナーシップ プログラムで 2000 年から航空保安に係る第三国研修をシンガポールで行っている 国別研修 航空保安 (2011~2013 年度 ) で航空保安に係る第三国研修を行っている 無償資金協力 全国空港保安設備整備計画 を実施中で その中でヤンゴン マンダレー ヘホー ニャンウー タンダウェ ダウェイを対象に空港保安設備の整備を行うとともに 飛行方式設計システムを供与し 従来型の飛行方式の設計に関する基礎訓練を行う予定である 協力準備調査 全国運輸交通プログラム形成準備調査 を実施中で その中で 2030 年を目標年次とした航空サブセクターの開発ビジョン 開発戦略 段階的実施計画を策定する予定である 2) 他ドナー等の援助活動 タイ :2007 年より航空交通管制関連の訓練生を受け入れ 中国 :2001 年から航空交通管制関連の訓練生を受け入れ マレーシア :1989~2004 年に航空交通管制関連の訓練生受入れ シンガポール :1995 年から航空交通管制関連の訓練生を受け入れ 韓国 :2002 年より航空交通管制関連の訓練生を受け入れ 4. 協力の枠組み (1) 協力概要 1) 上位目標 : 航空輸送の安全性 効率性が向上する 指標 5

性能準拠型航法 (Performance Base Navigation: PBN) 2 ロードマップに従って PBN 飛行方式を利用できる空港 航空路が増加 3 している 2) プロジェクト目標 : 次世代航空保安システムへの移行に係る DCA の能力が向上する 指標 次世代航空保安システムマスタープランが策定される PBN 飛行方式が 17 ヶ所以上の空港において使用される PBN 航法が 10 ヶ所以上の航空路において使用される ADS/CPDLC の不具合報告が DCA 職員によってなされるフライトの比率が 2014 年のベースライン状況に比べて 50% 以上改善される 名以上 4 が航空管制に係る改善された訓練コースの修了試験に合格する 名以上が管制技術に係る改善された訓練コースの終了試験に合格する 3) 成果及び活動成果 1:DCA の航空保安システム整備マスタープラン策定に係る能力が向上する 指標 1-1 航空保安システムの現状が分析され 分析結果報告書が作成される 1-2 CNS/ATM 整備に係る段階的長期計画が策定される 1-3 短期整備計画に係るアクションプランが策定される 活動 1-1 航空保安システムの現状を分析する 1-2 日本 米国 EU 及び近隣諸国における CNS/ATM 計画を調査する 1-3 ICAO のグローバル航空計画および シームレスな世界規模の航空交通管理システム を構築するための構想を確認する 1-4 ミャンマーの CNS/ATM に係る段階的長期整備計画を作成する 1-5 短期整備計画に係るアクションプランを作成する 1-6 短期整備計画に係るアクションプランの進捗を定期的に確認し 必要に応じてアクションプランを更新する 成果 2:DCA の PBN 飛行方式の導入 実施に係る能力が向上する 指標 2 GPS などの通信衛星から自機の精密な位置 高度を連続的に入手しながら指定された飛行経路に航空機を誘導する飛行管理システム (Flight Management System: FMS) 等を搭載した航空機が行うことの出来る新しい航法 3 PBN 飛行方式の利用によって 飛行経路の短縮 着陸時の最低降下高度の引下げ 滑走路に正対した直線進入等が可能になり 安全性 効率性の更なる向上が実現する 4 の数値目標は プロジェクト開始後にベースライン調査を実施した上で設定する 6

2-1 WGS84 測量が 28 ヶ所以上の空港において完了する 2-2 飛行方式設計者 12 名以上の基礎訓練が完了する 2-3 PBN 飛行方式の設計が 17 ヶ所以上の空港において完了する 2-4 設計された飛行方式の地上検証が 17 ヶ所以上の空港において完了する 2-5 設計された飛行方式の飛行検証が 17 ヶ所以上の空港において完了する 2-6 PBN に対応する管制官の訓練が 17 ヶ所以上の空港において完了する 2-7 RAIM 情報が運航者に提供される 2-8 PBN 運航承認基準が制定 運用される 2-9 PBN 飛行方式が 17 ヶ所以上の空港において公示 運用される 2-10 PBN 航法が 9 ヶ所以上の航法性能要件 (Required Navigation Performance :RNP)4/ 広域航法 (Area Navigation:RNAV)5 国際航空路及び 1 ヶ所以上の RNAV5 国内航空路において公示 運用されている 活動 2-1 ミャンマーの PBN ロードマップをアップデートする 2-2 既存 WGS84 測量データの検証と追加測量を実施する 2-3 空港の滑走路末端点 無線標識 障害物等の座標を WGS84 に基づいて 航空路誌 (Aeronautical Information Publication:AIP) に公示する 2-4 飛行方式設計者の基礎訓練を行う 2-5 飛行方式設計基準及びマニュアルを策定する 2-6 飛行方式の設計を行う 2-7 設計された飛行方式の地上検証を行う 2-8 設計された飛行方式の飛行検証を行う 2-9 PBN 導入空港における航空管制官の訓練を行う 2-10 PBN 運航承認基準を制定する 2-11 運航者の PBN 運航承認の審査を行う 2-12 PBN 飛行方式の安全評価を行う 2-13 RAIM 情報の提供を行う 2-14 飛行方式を公示 運用開始する 成果 3:DCA に ADS/CPDLC の不具合解析体制が整備される 指標 3-1 管制技術官 5 名以上が ADS/CPDLC の不具合解析を行える 3-2 ADS/CPDLC の通信品質 不具合解析がマニュアルに従って実施される 活動 3-1 不具合解析技術に関わる訓練を実施する 3-2 現行運用方法の ICAO のデータリンク評価基準への対応状況を確認する 3-3 通信品質 不具合解析マニュアルを策定する 7

3-4 通信品質 不具合解析マニュアルに基づき中央報告機関に報告を行う 3-5 問題を解決するための適切な行動をとる 成果 4: 民間航空訓練校における航空管制に係る訓練が改善される 指標 4-1 航空管制に係る訓練制度 教程 訓練教材のレビューに係る報告書が作成される 4-2 航空管制に係る訓練改善計画が策定される 4-3 航空管制に係る訓練改善計画の対象となったコースについて教材等の改善が完了する 4-4 上記のコースについて 教官の訓練が完了する 4-5 上記のコースについて 受講者の 80% 以上が修了試験に合格する 活動 4-1 航空管制に係る訓練制度 教程 訓練教材 訓練施設等のレビューを行う 4-2 航空管制に係る訓練向上計画を策定する 4-3 航空管制に係る訓練向上計画に基づいて制度 教程 訓練教材 訓練施設等の改善を実施する 4-4 教官に対する訓練を行う 4-5 改善された航空管制訓練コースを運用する 4-6 改善された訓練コースの評価 フィードバック及びアップデートを行う 成果 5: 民間航空訓練校における管制技術に係る訓練が改善される 指標 5-1 管制技術に係る訓練制度 教程 訓練教材のレビューに係る報告書が作成される 5-2 管制技術に係る訓練改善計画が策定される 5-3 管制技術に係る訓練改善計画の対象となったコースについて教材等の改善が完了する 5-4 上記のコースについて 教官の訓練が完了する 5-5 上記のコースについて 受講者の 80% 以上が修了試験に合格する 5-6 航空交通管制技術職員免許 格付制度に係る検討結果が採決のため DCA に報告される 活動 5-1 管制技術に係る訓練制度 教程 訓練教材 訓練施設等のレビューを行う 5-2 管制技術に係る訓練向上計画を策定する 5-3 管制技術に係る訓練向上計画に基づいて制度 教程 訓練教材 訓練施設等の改善を実施する 8

5-4 教官に対する訓練を行う 5-5 改善された管制技術訓練コースを運用する 5-6 改善された訓練コースの評価 フィードバック及びアップデートを行う 5-7 航空交通管制技術職員免許 格付制度を確立する 4) 事業実施上の留意点 ベースライン調査では 事前に DCA が必要な情報を整理し 長期専門家とカウンターパートが共同して 本事業の成果指標の基準となる数値を測定する ミャンマー側の投入として計画している 地上検証用ソフトウエア 飛行検査用航空機 及び RAIM 情報 は新たに調達する必要があり これらを含めてミャンマー政府の必要な予算措置をはじめとする対応の確約を取り付ける 現時点で作成した活動計画は主要な活動のみを示しており プロジェクトの実施に当たっては より詳細な年次活動計画を立案することが求められる 詳細活動スケジュールの立案に当たっては 他国に比して手続きに時間がかかる状況であることも考慮し 十分な時間的余裕を見込んだスケジュールを立案することが肝要である カウンターパート職員 タスクフォースメンバー及び訓練生がプロジェクト活動に必要な時間を割り当てるためには 通常業務の負担軽減がなされる必要があり 所属部門全体での協力が必要である また 4 年間のプロジェクト期間中に所属変更が生じ プロジェクト活動への参加や訓練の成果の発揮が難しくなることは望ましくない したがって カウンターパート タスクフォースメンバー及び訓練生の選定に当たっては 当該職員の所属部門のみならず DCA 全体で合意形成を図ることが望まれる CNS/ATM 整備に係る段階的長期計画の策定に当たっては ミャンマーの CNS/ATM システムの現状に基づいて今後必要な整備の内容と道筋を明らかにした上で 維持管理費を含む各整備項目に必要な費用を検討し 各整備項目の優先度と資金調達 予算措置の可能性を考慮して 計画を立案することが求められる (2) その他インパクト航空輸送の安全性 効率性の向上という上位目標が達成されれば ミャンマーが管轄する空域を飛行する ( 上空通過を含む ) 航空会社および航空旅客もこれらの便益を享受することができる 9

5. 前提条件 外部条件 ( リスク コントロール ) (1) 事業実施のための前提 ミャンマー運輸省の次世代航空保安システムへの移行に係る方針を変更しない (2) 成果達成のための外部条件 DCA が主体性を持ってプロジェクトを実施する カウンターパートが継続的にプロジェクトに従事する 航空会社の PBN 運航体制が整備される (3) プロジェクト目標達成のための外部条件 DCA が次世代航法システムへの移行に係る政策を維持する 訓練を受けた職員が DCA に勤務し続ける (4) 上位目標達成のための外部条件 航空機及び空港施設の安全性が適切に維持される 次世代航空保安システムの整備に必要な予算と人員を DCA が確保する 6. 評価結果 本事業は ミャンマー国の開発政策 開発ニーズ 日本の援助政策と十分に合致しており また計画の適切性が認められることから 実施の意義は高い 7. 過去の類似案件の教訓と本事業への活用フィリピン共和国 航空航法システム安全性 効率性向上プロジェクト (2009~ 2014 年終了予定 ) の中間レビューでは 専門的な機材を調達し 多数のカウンターパートが参加するような事業では 事業の初期段階より業務調整員等の人的支援を行うことが望ましいと指摘されている 従って本事業においては業務調整員を事業開始から配置し 事業効果の早期発現を目指す予定である 8. 今後の評価計画 (1) 今後の評価に用いる主な指標 4.(1) のとおり (2) 今後の評価計画事業開始 6 ヶ月以内ベースライン調査 10

事業中間時点事業終了 6 ヶ月前事業終了 3 年後 中間レビュー終了時評価事後評価 以上 11