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論文題目  腸管分化に関わるmiRNAの探索とその発現制御解析

く 細胞傷害活性の無い CD4 + ヘルパー T 細胞が必須と判明した 吉田らは 1988 年 C57BL/6 マウスが腹腔内に移植した BALB/c マウス由来の Meth A 腫瘍細胞 (CTL 耐性細胞株 ) を拒絶すること 1991 年 同種異系移植によって誘導されるマクロファージ (AIM

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結果 この CRE サイトには転写因子 c-jun, ATF2 が結合することが明らかになった また これら の転写因子は炎症性サイトカイン TNFα で刺激したヒト正常肝細胞でも活性化し YTHDC2 の転写 に寄与していることが示唆された ( 参考論文 (A), 1; Tanabe et al.

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化を明らかにすることにより 自閉症発症のリスクに関わるメカニズムを明らかにすることが期待されます 本研究成果は 本年 京都において開催される Neuro2013 において 6 月 22 日に発表されます (P ) お問い合わせ先 東北大学大学院医学系研究科 発生発達神経科学分野教授大隅典

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を行った 2.iPS 細胞の由来の探索 3.MEF および TTF 以外の細胞からの ips 細胞誘導 4.Fbx15 以外の遺伝子発現を指標とした ips 細胞の樹立 ips 細胞はこれまでのところレトロウイルスを用いた場合しか樹立できていない また 4 因子を導入した線維芽細胞の中で ips 細

別紙 < 研究の背景と経緯 > 自閉症は 全人口の約 2% が罹患する非常に頻度の高い神経発達障害です 近年 クロマチンリモデ リング因子 ( 5) である CHD8 が自閉症の原因遺伝子として同定され 大変注目を集めています ( 図 1) 本研究グループは これまでに CHD8 遺伝子変異を持つ

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の感染が阻止されるという いわゆる 二度なし現象 の原理であり 予防接種 ( ワクチン ) を行う根拠でもあります 特定の抗原を認識する記憶 B 細胞は体内を循環していますがその数は非常に少なく その中で抗原に遭遇した僅かな記憶 B 細胞が著しく増殖し 効率良く形質細胞に分化することが 大量の抗体産

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遺伝子の近傍に別の遺伝子の発現制御領域 ( エンハンサーなど ) が移動してくることによって その遺伝子の発現様式を変化させるものです ( 図 2) 融合タンパク質は比較的容易に検出できるので 前者のような二つの遺伝子組み換えの例はこれまで数多く発見されてきたのに対して 後者の場合は 広範囲のゲノム

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ヒト脂肪組織由来幹細胞における外因性脂肪酸結合タンパク (FABP)4 FABP 5 の影響 糖尿病 肥満の病態解明と脂肪幹細胞再生治療への可能性 ポイント 脂肪幹細胞の脂肪分化誘導に伴い FABP4( 脂肪細胞型 ) FABP5( 表皮型 ) が発現亢進し 分泌されることを確認しました トランスク

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2017 年 12 月 15 日 報道機関各位 国立大学法人東北大学大学院医学系研究科国立大学法人九州大学生体防御医学研究所国立研究開発法人日本医療研究開発機構 ヒト胎盤幹細胞の樹立に世界で初めて成功 - 生殖医療 再生医療への貢献が期待 - 研究のポイント 注 胎盤幹細胞 (TS 細胞 ) 1 は

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移植治療による効果と危険性について説明し 書面にて移植の同意を得なければならない 意識のない患者においては代諾者の同意を得るものとする 6 レシピエントが未成年者の場合には 親権者からインフォームド コンセントを得る ただし 可能なかぎり未成年者のレシピエント本人にも分かりやすい説明を行い 可能であ

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報道関係者各位 平成 26 年 1 月 20 日 国立大学法人筑波大学 動脈硬化の進行を促進するたんぱく質を発見 研究成果のポイント 1. 日本人の死因の第 2 位と第 4 位である心疾患 脳血管疾患のほとんどの原因は動脈硬化である 2. 酸化されたコレステロールを取り込んだマクロファージが大量に血

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「ゲノムインプリント消去には能動的脱メチル化が必要である」【石野史敏教授】

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れており 世界的にも重要課題とされています それらの中で 非常に高い完全長 cdna のカバー率を誇るマウスエンサイクロペディア計画は極めて重要です ゲノム科学総合研究センター (GSC) 遺伝子構造 機能研究グループでは これまでマウス完全長 cdna100 万クローン以上の末端塩基配列データを

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能性を示した < 方法 > M-CSF RANKL VEGF-C Ds-Red それぞれの全長 cdnaを レトロウイルスを用いてHeLa 細胞に遺伝子導入した これによりM-CSFとDs-Redを発現するHeLa 細胞 (HeLa-M) RANKLと Ds-Redを発現するHeLa 細胞 (HeL

Wnt3 positively and negatively regu Title differentiation of human periodonta Author(s) 吉澤, 佑世 Journal, (): - URL Rig

研究の詳細な説明 1. 背景細菌 ウイルス ワクチンなどの抗原が人の体内に入るとリンパ組織の中で胚中心が形成されます メモリー B 細胞は胚中心に存在する胚中心 B 細胞から誘導されてくること知られています しかし その誘導の仕組みについてはよくわかっておらず その仕組みの解明は重要な課題として残っ

るが AML 細胞における Notch シグナルの正確な役割はまだわかっていない mtor シグナル伝達系も白血病細胞の増殖に関与しており Palomero らのグループが Notch と mtor のクロストークについて報告している その報告によると 活性型 Notch が HES1 の発現を誘導

図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

第 7 回トキ飼育繁殖小委員会資料 2 ファウンダー死亡時の対応について ( 案 ) 1 トキのファウンダー死亡時の細胞 組織の保存について ( 基本方針 ) トキのファウンダーの細胞 組織の保存は ( 独 ) 国立環境研究所 ( 以下 国環研 ) が行う 国環研へは環境省から文書

本成果は 以下の研究助成金によって得られました JSPS 科研費 ( 井上由紀子 ) JSPS 科研費 , 16H06528( 井上高良 ) 精神 神経疾患研究開発費 24-12, 26-9, 27-

費 複写費 現像 焼付費 通信費 ( 切手 電話等 ) 運搬費 研究実施場所借り上げ費 ( 研究機関の施設において補助事業の遂行が困難な場合に限る ) 会議費 ( 会場借料 食事 ( アルコール類を除く ) 費用等 ) リース レンタル費用 ( コンピュータ 自動車 実験機器 器具等 ) 機器修理費

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PRESS RELEASE (2014/2/6) 北海道大学総務企画部広報課 札幌市北区北 8 条西 5 丁目 TEL FAX URL:

血漿エクソソーム由来microRNAを用いたグリオブラストーマ診断バイオマーカーの探索 [全文の要約]

子として同定され 前立腺癌をはじめとした癌細胞や不死化細胞で著しい発現低下が認められ 癌抑制遺伝子として発見された Dkk-3 は前立腺癌以外にも膵臓癌 乳癌 子宮内膜癌 大腸癌 脳腫瘍 子宮頸癌など様々な癌で発現が低下し 癌抑制遺伝子としてアポトーシス促進的に働くと考えられている 先行研究では ヒ

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報道発表資料 2002 年 10 月 10 日 独立行政法人理化学研究所 頭にだけ脳ができるように制御している遺伝子を世界で初めて発見 - 再生医療につながる重要な基礎研究成果として期待 - 理化学研究所 ( 小林俊一理事長 ) は プラナリアを用いて 全能性幹細胞 ( 万能細胞 ) が頭部以外で脳

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報道発表資料 2006 年 4 月 13 日 独立行政法人理化学研究所 抗ウイルス免疫発動機構の解明 - 免疫 アレルギー制御のための新たな標的分子を発見 - ポイント 異物センサー TLR のシグナル伝達機構を解析 インターフェロン産生に必須な分子 IKK アルファ を発見 免疫 アレルギーの有効

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報道発表資料 2006 年 8 月 7 日 独立行政法人理化学研究所 国立大学法人大阪大学 栄養素 亜鉛 は免疫のシグナル - 免疫系の活性化に細胞内亜鉛濃度が関与 - ポイント 亜鉛が免疫応答を制御 亜鉛がシグナル伝達分子として作用する 免疫の新領域を開拓独立行政法人理化学研究所 ( 野依良治理事

1. Caov-3 細胞株 A2780 細胞株においてシスプラチン単剤 シスプラチンとトポテカン併用添加での殺細胞効果を MTS assay を用い検討した 2. Caov-3 細胞株においてシスプラチンによって誘導される Akt の活性化に対し トポテカンが影響するか否かを調べるために シスプラチ

平成 30 年 2 月 5 日 若年性骨髄単球性白血病の新たな発症メカニズムとその治療法を発見! 今後の新規治療法開発への期待 名古屋大学大学院医学系研究科 ( 研究科長 門松健治 ) 小児科学の高橋義行 ( たかはしよしゆき ) 教授 村松秀城 ( むらまつひでき ) 助教 村上典寛 ( むらかみ

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RNA Poly IC D-IPS-1 概要 自然免疫による病原体成分の認識は炎症反応の誘導や 獲得免疫の成立に重要な役割を果たす生体防御機構です 今回 私達はウイルス RNA を模倣する合成二本鎖 RNA アナログの Poly I:C を用いて 自然免疫応答メカニズムの解析を行いました その結果

年219 番 生体防御のしくみとその破綻 (Immunity in Host Defense and Disease) 責任者: 黒田悦史主任教授 免疫学 黒田悦史主任教授 安田好文講師 2中平雅清講師 松下一史講師 目的 (1) 病原体や異物の侵入から宿主を守る 免疫系を中心とした生体防御機構を理

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植物機能改変技術実用化開発 ( 事後評価 ) 分科会資料 植物機能改変技術実用化開発 ( 事後評価 ) 分科会資料 個別テーマ詳細説明資料 ( 公開 ) 植物で機能する有用フ ロモーターの単離と活用 奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科新名惇彦 山川清栄 1/29 背景 目的

2015 年度 SFC 研究所プロジェクト補助 和食に特徴的な植物性 動物性蛋白質の健康予防効果 研究成果報告書 平成 28 年 2 月 29 日 研究代表者 : 渡辺光博 ( 政策 メディア研究科教授 ) 1

られる 糖尿病を合併した高血圧の治療の薬物治療の第一選択薬はアンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬とアンジオテンシン II 受容体拮抗薬 (ARB) である このクラスの薬剤は単なる降圧効果のみならず 様々な臓器保護作用を有しているが ACE 阻害薬や ARB のプラセボ比較試験で糖尿病の新規

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平成16年7月2日

抑制することが知られている 今回はヒト子宮内膜におけるコレステロール硫酸のプロテ アーゼ活性に対する効果を検討することとした コレステロール硫酸の着床期特異的な発現の機序を解明するために 合成酵素であるコ レステロール硫酸基転移酵素 (SULT2B1b) に着目した ヒト子宮内膜は排卵後 脱落膜 化

Agilent 1色法 2条件比較 繰り返し実験なし

報道発表資料 2007 年 11 月 16 日 独立行政法人理化学研究所 過剰にリン酸化したタウタンパク質が脳老化の記憶障害に関与 - モデルマウスと機能的マンガン増強 MRI 法を使って世界に先駆けて実証 - ポイント モデルマウスを使い ヒト老化に伴う学習記憶機能の低下を解明 過剰リン酸化タウタ

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15K14554 研究成果報告書

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報道発表資料 2006 年 6 月 21 日 独立行政法人理化学研究所 アレルギー反応を制御する新たなメカニズムを発見 - 謎の免疫細胞 記憶型 T 細胞 がアレルギー反応に必須 - ポイント アレルギー発症の細胞を可視化する緑色蛍光マウスの開発により解明 分化 発生等で重要なノッチ分子への情報伝達

関係があると報告もされており 卵巣明細胞腺癌において PI3K 経路は非常に重要であると考えられる PI3K 経路が活性化すると mtor ならびに HIF-1αが活性化することが知られている HIF-1αは様々な癌種における薬理学的な標的の一つであるが 卵巣癌においても同様である そこで 本研究で

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長寿医療研究開発費平成 24 年度総括研究報告 老化関連トランスクリプトームデータベース構築 (23-8) 主任研究者 直江吉則国立長寿医療研究センター研究所老化機構研究部免疫研究室 ( 室長 ) 研究要旨老化研究における遺伝子発現マイクロアレイデータベースは世界中未だ存在しないことから 幼若ならびに加齢マウスから臓器 組織ならびに細胞から RNA を抽出し マイクロアレイを用いてそれら臓器 組織ならびに細胞の遺伝子発現プロファイルを得 データベースを作成することを目的として本研究を開始した 今年度は若齢 (8 週齢 ) ならびに老齢 (24か月齢) 雌性マウスの 12 類の臓器 ( 脳 眼 心臓 胃 肝臓 腎臓 卵巣 子宮 骨格筋 骨髄 パイエル板 大腸 ) ならびに B 細胞の遺伝子発現様式をマイクロアレイより解析し遺伝子発現プロファイルを得た 肝臓ならびに腎臓の加齢に伴う遺伝子発現変化を詳細に調べた結果 加齢に伴い遺伝子発現が変化し それら細胞の機能低下に関与する候補遺伝子の絞り込みに成功した 今後 それら候補遺伝子の詳細な機能を調べることにより 加齢に伴う肝臓ならびに腎臓の機能低下の機序が明らかになることが期待される 主任研究者 直江吉則国立長寿医療研究センター研究所老化機構研究部免疫研究室 ( 室長 ) A. 研究目的近年 多くの生物を対象に実施されているゲノムプロジェクトによって大量の情報が得られるようになり ヒトゲノム解読により細胞や遺伝子を一つ一つ解析するというアプローチから 全ゲノム遺伝子およびたんぱく質を網羅的に解析するアプローチへの転換となった まさにゲノム機能の網羅的な解析による統合的な生命システムの理解を目指した研究への移行期と言える このような時代背景の中 マイクロアレイを用いた全ゲノムの網羅的な解析技術は 日々進歩し かつその重要性が高まっている NCBI の Gene Expression 1

Omunibus では学術論文に発表されたマイクロアレイのデータ ( 約 50 万データ ) がインターネット上に公開され 誰でもそのデータの閲覧が可能である また 多くの全世界の研究所においてその研究所の特色にあった遺伝子発現マイクロアレイデータが公開されている (MGI の Gene Expression Database 東大医科研の Body Map 理研 RCAI の RefDic 等 ) しかしながら 老化研究における遺伝子発現マイクロアレイデータベースは世界中未だ存在しない そこで 幼若ならびに加齢マウスから臓器 組織ならびに細胞から RNA を抽出し マイクロアレイを用いてそれら遺伝子発現プロファイルを得る また 研究内から無料 ( 当研究開発費 ) でサンプル ( 脳 神経 骨格筋等 ) を募集し マイクロアレイデータを取得し 発現プロファイルデータならびに解析結果をサンプル提供研究者にフィードバックする 一定期間 研究所内でそれらデータを公開し データを研究所内で共有する 加齢に伴う遺伝子発現変化の研究は多く行われていないことから 老化に関与する遺伝子を見出すことが可能になると考えられる ホームページを通じてデータベースを全世界に公開することを最終目標として研究を進める B. 研究方法若齢マウス (8 週齢 ) ならびに老齢マウス (24か月齢) マウスより各臓器を摘出した B 細胞サブセットは MACS (Milteny) を用いて脾臓より分離した それら臓器ならびに細胞から RNA を Trizol (Life technologies) により単離 Dnase 処理後 RNeasey Micro Kit (Qiagen) を用いて RNA を精製した 得られた RNA は Agilent's low RNA input linear amplification kit PLUS (Agilent) を用いて標識した Agilent Whole Mouse Genome array に 65 17 時間インキュベートし 洗浄後 スキャンしデータを得た データは Agilent's feature extraction ならびに Genespring software (Agilent) を用いて解析した ( 倫理面への配慮 ) 本研究提案ではヒト材料を扱う実験を行わないため 人権の保護の観点からは生命倫理上の問題及び法令上の問題は生じない 動物を用いた実験に関しては国立長寿医療研究センター動物実験倫理委員会の承認のもと 法令を遵守し研究を遂行した C. 研究結果本研究の最終目的は老化関連遺伝子発現プロファイルのデータベース作成であることから 若齢マウス (8 週齢 ) ならびに老齢マウス (24か月齢) マウス ( 雌性 ) から脳 眼 心臓 胃 肝臓 腎臓 卵巣 子宮 骨格筋 骨髄 パイエル板 大腸ならびに B 細胞から RNA を抽出し 遺伝子発現様式をマイクロアレイにより調べた データは研究所内のコンピ 2

ュータ内に保存し 研究所内で自由に閲覧できるようにした さらに 昨年度 得た雄性 マウスの肝臓ならびに腎臓の遺伝子様式のデータと合わせて加齢に伴う肝臓ならびに腎臓 の遺伝子発現の変化を詳細に検討した 加齢に肝臓の遺伝子発現変化の検出幼若マウス (8 週齢 ) ならびに老齢マウス (24か月齢) の肝臓から RNA を抽出し cdna マイクロアレイを用いて網羅的に全遺伝子の発現を調べた 2 倍以上発現量が変化した遺伝子を加齢伴い変化する遺伝子の候補とした その結果 加齢に伴い 527 個の遺伝発現が変化した ( 加齢に伴い発現が増加する遺伝子 206 個 減少する遺伝子 321 個 )(Fig1 2) これら候補遺伝子の機能カテゴリーを Gene Ontology(GO) 解析を用いて分類したところサイトカイン受容体活性 サイトカイン刺激による細胞反応 サイトカインシグナル経路 Rho 活性ならびに Ras 活性に関与した遺伝子が候補遺伝子の機能として挙がった Fig1. 加齢に伴い肝臓において遺伝子発現が増加する遺伝子 Fig2, 加齢に伴い肝臓において遺伝子発現が減少する遺伝子 3

加齢に伴う大腿骨細胞の遺伝子発現変化の検出幼若マウス (8 週齢 ) ならびに老齢マウス (24か月齢) の腎臓から RNA を抽出し cdna マイクロアレイを用いて網羅的に全遺伝子の発現を調べた 2 倍以上発現量が変化した遺伝子を加齢伴い変化する遺伝子の候補とした その結果 加齢に伴い 362 個の遺伝発現が変化した ( 加齢に伴い発現が増加する遺伝子 206 個 減少する遺伝子 156 個 )(Fig3 4) これら候補遺伝子の機能カテゴリーを Gene Ontology(GO) 解析を用いて分類したところ免疫反応 白血球活性化 分化 細胞活性化反応 T 細胞活性化 分化に関与した遺伝子が含まれていた Fig3. 加齢に伴い腎臓において遺伝子発現が増加する遺伝子 Fig4. 加齢に伴い腎臓において遺伝子発現が減少する遺伝子 4

D. 考察と結論老化研究における遺伝子発現マイクロアレイデータベースは世界中未だ存在しないことから 幼若ならびに加齢マウスから臓器 組織ならびに細胞から RNA を抽出し マイクロアレイを用いてそれら遺伝子発現プロファイルを得ることを目的として本研究は開始した 今年度は雌性マウスの 12 種類の臓器 ( 脳 眼 心臓 胃 肝臓 腎臓 卵巣 子宮 骨格筋 骨髄 パイエル板 大腸 ) の遺伝子発現様式の得ることが出来た 前年度に得た雄性マウスの臓器の遺伝子発現様式のデータと合わせて雄性 雌性の書く臓器の遺伝子発現様式のデータを得ることが出来た 今後 臓器中の様々な細胞の遺伝子発現様式を調べることにより データベースサンプルの多様性を広げることを目標に研究を進めていく 各種加齢モデルマウスの遺伝子発現の変化と加齢マウスのそれと比較することにより 加齢モデルマウスの遺伝子発現パターンが正常マウスの加齢のどの時点の遺伝子発現様式に類似しているかを調べ 加齢モデルマウスが加齢研究に適したマウスであるかどうか検討する 肝臓ならびに腎臓の加齢に伴う遺伝子発現変化を詳細に調べた結果 加齢に伴い遺伝子発現が変化する加齢に伴うそれら細胞の機能低下に関与する候補遺伝子の絞り込みに成功した 今後 それら候補遺伝子の詳細な機能を調べることにより 加齢に伴う肝臓ならびに腎臓の機能低下の機序が明らかになることが期待される E. 健康危険情報 なし F. 研究発表 1. 論文発表 1) Mucida D, Husain MM, Muroi S, van Wijk F, Shinnakasu R, Naoe Y, Reis BS, Huang Y, Lambolez F, Docherty M, Attinger A, Shui JW, Kim G, Lena CJ, Sakaguchi S, Miyamoto C, Wang P, Atarashi K, Park Y, Nakayama T, Honda K, Ellmeier W, Kronenberg M, Taniuchi I, Cheroutre H. Transcriptional reprogramming of mature CD4(+) helper T cells generates distinct MHC class II-restricted cytotoxic T lymphocytes. Nat Immunol,14: 281-9, 2013. 2. 学会発表 1) 直江吉則 内藤拓 久保久美子 土屋由加子 原恵子 古関明彦 谷内一郎 Cxxc5, ThPOK target gene, suppresses CD4+ helper T cell functions during CD8+cytotoxic T differentiation 5

第 41 回日本免疫学会 神戸 平成 24 年 12 月 5 日 2) 天野麻理 直江吉則 谷内一郎 Unique role of Cbfβ2 variant in Langerhans cell development 第 41 回日本免疫学会 神戸 平成 24 年 12 月 6 日 G. 知的財産権の出願 登録状況 1. 特許取得なし 2. 実用新案登録なし 3. その他なし 6