Pick-up プロダクツ プリズム分光方式ラインセンサカメラ用専用レンズとその応用 当社は プリズムを使用した 3CMOS/3CCD/4CMOS/4CCD ラインセンサカメラ用に最適設計した FA 用レンズを設計 製造する専門メーカである 当社のレンズシリーズはプリズムにて発生する軸上色収差 倍率色収差を抑えた光学設計を行い 焦点距離が異なったレンズを使用しても RGB 個々の焦点位置がレンズ間で同じ位置になるよう設計されている 本稿では プリズム分光方式ラインセンサカメラ用レンズの紹介および本レンズを使用した応用例を紹介する 1. 開発の経緯と技術的特長 になるが 青色画像が 1 回しか反射しないため左右反転画像になる 1.1 プリズム分光による方式と問題点プリズムを使用した分光方式は主に図 1 のような方式がある Philips 方式オランダのフィリップス社によって開発されたプリズム分光方式で第一反射面にエアーギャップを設けることにより 青 赤の反射を行う ギャップレス方式フィリップス方式からエアーギャップをなくした方式である 特長として 製造が容易 プリズムを使用した光学系は色再現性が高いという特長をもっているが 反面 次のような問題がある 1.2 軸上色収差の増大プリズムに入射した光はその色 ( 波長 ) によって屈折する角度が変わり 長波長の赤は大きな角度をもたずに焦点を結ぶ 言い換えれば色によって焦点距離が違った値になる この色によって光軸上の結像位置が変わることを軸上色収差という ( 図 2) 図 1 プリズムによる分光方式 A) ギャップレスプリズム : 青は一回しか反射しないので反転像になる B) フィリップス方式 : オランダ PHILIPS 社の開発で 50 年の歴史がある 図 2 軸上色収差 8 August 2014 eizojoho industrial
図 3 倍率色収差 図 4 収差補正されたレンズと 補正されていないレンズの比較 1.3 倍率色収差光学系に斜めに入射した光が結像するとき その色 ( 波長 ) によって屈折率が違うため 焦点を結ぶ位置が変わり像の大きさが変化する このように 色によって像の大きさが変化することを倍率色収差という ( 図 3) 当社の製品群はこれらの収差が最小限になるように最適光学設計を行っている 図 4は 最適光学設計が行われている当社製品と一般的な F マウントレンズを使用したときの収差の違いを表している 1.4 技術的な特長当社の製品は センサとレンズの間に入るプリズムにて発生する光学収差を最小限に抑え かつレンズを交換しても同等の性能が得られるように次のような標準化設計を行っている 開放 F No.: 開放 F No. をF2.8に統一することにより 光学系で発生するケラレを防止している 軸上の焦点位置 : 各波長の焦点位置を標準化し 焦点距離の異なったレンズを交換しても各波長が光軸上の同じ位置に焦点を結ぶので ボケ像は発生しない 射出瞳長 : 結像面とレンズの射出瞳位置を長くとる設計を行うことにより 結像面の周辺端における波長シフト ( 色の変化 ) を抑えている 表 1 は一般的に標準化されている1/3インチおよび1/2インチエリアセンサ用 3CCD/3CMOSカメラ用のレンズと当社が独自に株式会社ジェイエイアイコーポレーションの協力を得て標準化した 3-ラインセンサ用の光学設計値を標準化した数値を記載している 表 1 レンズ設計条件の標準化 eizojoho industrial August 2014 9
Pick-up プロダクツ 2. 豊富な製品ラインナップと SWIR 帯域への拡大当社では 広範囲な被写体の大きさに対応するため焦点距離 20mmから 105mm までの 6 機種を製品化している ( 図 5) また レンズマウントはF マウントだけでなく M52 マウントも準備している M52マウントはスクリューマウント方式なので レンズとカメラ間にスペーサを使用すること により最短撮影距離を短くすることができる 注意 : ディストーション 色収差が変化するので実際の使用では事前に性能確認が必要 表 2は 各レンズの最短撮影距離における倍率と被写体の大きさを示している また 400nm 700nm の可視域だけでなく 850nm を設計値とした 近赤外領域に分光帯域を拡大している 表 3は分光特性例である Model Name BV-L1020 BV-L1024 BV-L1028 Image Sensor Length 対応イメージセンサ長 Focal length ( 焦点距離 ) 30mm 30mm 30mm f = 20mm f = 24mm f = 28mm Model Name BV-L1035 BV-L1050 BV-L1105 Image Sensor Length 対応イメージセンサ長 Focal length ( 焦点距離 ) 30mm 30mm 30mm f = 35mm f = 50mm f = 105mm 図 5 製品群 表 2 倍率と被写体の大きさ 10 August 2014 eizojoho industrial
表 3 分光特性 3. SWIR 帯域への対応 SWIR(Short Wave Infra-Red) 帯域とは 1,000nm 2,500nm の帯域を指す 可視域は 400nm 750nm であり NIR( 近赤外 :Near Infra-Red) 域は 750nm 1,000nm である ( 図 6) 当社では SWIR 帯域に対応したプリズム分光方式ラインセンサカメラ用専用レンズをラインナップしている 焦点距離はf28mm f35mm f50mm である 図 7 は SWIR 帯域用に専用反射防止膜を施したレンズの代表的な分光特性である 図 6 可視域と SWIR 帯域 図 7 SWIR 帯域に対応した焦点距離 35mm レンズの分光特性 eizojoho industrial August 2014 11
Pick-up プロダクツ 4. 応用事例当社のレンズは 400nm 700nm の可視域だけでなく 近赤外領域である 850nmまで性能を拡大している ( 表 3) また 図 7のように 900nm 2,000nm のSWIR 領域に対応したレンズもラインナップしている 可視光領域の長波長側にある NIR SWIR の主な特長は次のとおりである 長波長なので表面から少し内面に入ったところで反射する 1,450nm 付近にて被写体がもっている水分を検出できる 印刷物の検査 透かしの検査に応用できる 写真 1 は 被写体の水分を撮像したときの特徴的な画像である 水は可視光においては透過率が高いのでコップの底面を撮像しているが SWIR 光は吸収するのでSWIRカメラで撮像すると暗い画面になる 写真 2は米の撮像例である 米粒個々に含まれる水分量の違いが 近赤外画像では容易に認識できる 写真 3はインスタント茶とインスタント紅茶に意図的に異物を混ぜた例である 近赤外画像では異物の特長抽出が容易であることがわかる 写真 1 3 の撮像に使用したプリズム分光方式ラインセンサカメラ BV-C3500 広帯域ラインスキャンカメラ ( 写真 4) の製品仕様 ( 表 4) を参照い 写真 1 水の入ったコップと空のコップ 写真 2 米の可視画像 ( 左 ) と 近赤外画像 ( 右 ) 写真 3 インスタント茶と紅茶に 異物を混ぜた例 12 August 2014 eizojoho industrial
表 4 BV-C3500 広帯域ラインスキャンカメラ 製品仕様 写真 4 広帯域ラインスキャンカメラ ただきたい 可視光用ラインセンサと SWIR 用ラインセンサを使用することにより 400nm 1,600nmの広帯域分光特性をもっている 特殊用途向けのプリズム分光方式ラインセンサカメラ製品の開発 製造も行っており市場のニーズに応えた商品展開を推進する 5. 今後の展開半導体検査のような微小部品の形状検査 重心抽出のように可視帯域にて行われる検査から穀物検査 食品検査 リサイクル検査のように可視光以外の帯域を使用した部品など 製品の検査用途に要求されるレンズの仕様は多岐にわたる 当社ではプリズムラインセンサカメラ用レンズに特化したレンズの提供企業として 可視領域だけでなく SWIR 帯域まで拡大した製品のラインナップを用意している また 光学技術を核として特殊波長 E-mail:sales@bluevision.jp http://www.bluevision.jp/ 販売 お問い合わせ先ダイトエレクトロン株式会社画像機器グループ TEL.03-3264-0326 FAX.03-3261-3984 E-mail:camera-info@daitron.co.jp http://www.daitron.co.jp/ eizojoho industrial August 2014 13