第1章

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物価の動向 輸入物価は 2 年に入り 為替レートの円安方向への動きがあったものの 原油や石炭 等の国際価格が下落したことなどから横ばいとなった後 2 年 1 月期をピークとし て下落している このような輸入物価の動きもあり 緩やかに上昇していた国内企業物価は 2 年 1 月期より下落した 年平均でみ

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日本経済の現状と見通し ( インフレーションを中心に ) 2017 年 2 月 17 日 関根敏隆日本銀行調査統計局

実際 円安に伴う原材料コストなどの上昇を背景に 食品メーカー各社は1 月以降の値上げを表明している ( 前頁図表 1) 即席めんや冷凍食品 アイスクリームなど幅広い品目が値上げ対象となっている模様である 日銀短観の2014 年 12 月調査によると 食料品製造業の想定為替レート (2014 年度 )

第 3 節食料消費の動向と食育の推進 表 食料消費支出の対前年実質増減率の推移 平成 17 (2005) 年 18 (2006) 19 (2007) 20 (2008) 21 (2009) 22 (2010) 23 (2011) 24 (2012) 食料

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4月CPI~物価は横ばいの推移 耐久財の特殊要因を背景に、市場予想を上回る3 ヶ月連続の上昇

Economic Trends    マクロ経済分析レポート

12月CPI

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扉〜目次

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平成28年平均 山形市消費者物価指数

消費増税と原油高でデフレ脱却とインフレ目標はどうなる?

2007年12月10日 初稿

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当面の金融政策運営について(貸出増加支援資金供給の延長等、12時29分公表)

原油高で消費者物価と家計のエネルギー負担額はどうなる?


2 10 大費目指数の動き 平成 29 年の10 大費目指数の動きを寄与度でみると, 光熱 水道 は他の光熱( 灯油 ) や電気代の値上がりなどにより 0.26, 食料 は生鮮魚介, 酒類の値上がりなどにより0.23となり, この2 費目合計で0.49と, 総合指数ののび率 (0.6%) のうち約

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各資産のリスク 相関の検証 分析に使用した期間 現行のポートフォリオ策定時 :1973 年 ~2003 年 (31 年間 ) 今回 :1973 年 ~2006 年 (34 年間 ) 使用データ 短期資産 : コールレート ( 有担保翌日 ) 年次リターン 国内債券 : NOMURA-BPI 総合指数

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経済・物価情勢の展望(2018年1月)

2015年基準 消費者物価指数 全国 平成30年(2018年)9月分

[ 調査の実施要領 ] 調査時点 製 造 業 鉱 業 建 設 業 運送業 ( 除水運 ) 水 運 業 倉 庫 業 情 報 通 信 業 ガ ス 供 給 業 不 動 産 業 宿泊 飲食サービス業 卸 売 業 小 売 業 サ ー ビ ス 業 2015 年 3 月中旬 調査対象当公庫 ( 中小企業事業 )

2015年基準 消費者物価指数 東京都区部 平成30年(2018年)11月分(中旬速報値)

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海外における電力自由化動向

図表 3 に年齢階層別の インターネットを通じて注文した世帯の割合 ( 普及率 ) の直近 5 年間の変化を掲載した インターネットを介した消費自体は 比較的年齢の若い世帯で盛んであるものの 普及率の変化という意味では 幅広い年齢層で上昇が見られている点が特徴的だろう 2

IT 人材需給に関する調査 ( 概要 ) 平成 31 年 4 月経済産業省情報技術利用促進課 1. 調査の目的 実施体制 未来投資戦略 2017 ( 平成 29 年 6 月 9 日閣議決定 ) に基づき 第四次産業革命下で求められる人材の必要性やミスマッチの状況を明確化するため 経済産業省 厚生労働

経済レポート

2015年基準 消費者物価指数 全国 2019年(平成31年)3月分及び2018年度(平成30年度)平均

消費者物価指数における新指数の公表開始及び公表資料の掲載内容の見直しについて

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目次 年度第 3 四半期決算 (1) 概要 (2) セグメント別情報 年度業績予想 (1) 概要 (2) セグメント別情報 3. 参考資料 1

中国:PMI が示唆する生産・輸出の底打ち時期

原油安から消費者物価への波及効果について

本レポートでは はじめに 1 最近における大分市の消費者物価の動きについて説明したあと ~16 年にかけて全国と大分市とで差がみられた要因とその背景について考察する 3 その上で 今後の大分市の消費者物価をみる上での留意点およびポイントを整理する 2

2017(平成29)年度第1四半期 決算説明資料

経済・物価情勢の展望(2017年7月)

経済・物価情勢の展望(2016年10月)

アジア近隣 5 カ国における牛乳乳製品の輸入動向 資料 5-2 各国とも輸入額全体に占める脱脂粉乳及び全脂粉乳の割合が高い 高付加価値商品の販売が見込めるチーズ 育児用粉乳等についても各国で一定の割合を輸入 中国の輸入市場は規模が大きく 最近伸びているが割合の小さい LL 牛乳 (2.6%) 市場で

波及効果の具体的計算方法 直接効果の推計 1 ( 需要増加額の推計 ) 合計額 ( 単位 : 百万円 ) 開催運営費 10.0 来場者支出額 90.0 飲食費 0.6 交通輸送費 3.0 広報関連経費 1.5 施設 機器レンタル料 1.0 アルバイト人件費 1.6 警備料 2.3 宿泊費

平成 22 年基準 秋田県鉱工業生産指数月報 平成 30 年 12 月分 鉱工業生産指数の推移 季節調整済指数全国 東北 : 平成 27 年 =100 秋田 : 平成 22 年 =

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平成14年1月20日

別紙2

資料2-1 課税段階について

平成24年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度(閣議了解)

原油価格上昇がもたらす全国・中部圏経済への影響について

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平成24年平均CPI.xls

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経済見通し

2018年度第1四半期 決算説明資料

Invesco Premia Plus Fund

目次 Ⅰ エネルギー供給の概要 1. 主要国の一次エネルギー供給構成 1 2. 主要国の石油輸入依存度 2 3. 我が国の一次エネルギー供給状況の推移 3 Ⅱ 石油 1. 世界の石油消費量の推移 4 2. 我が国の石油需給原油輸入状況 ( 国別 ) 5 製油所の能力と立地状況 6 石油製品生産量の推

ロシア 3節 第 第3節 ロシア 1 マクロ経済動向 ロシア経済は 緩やかな回復基調にある 2014 年 7 以下 輸出 個人消費 消費者物価 金融市場の動 月以降のウクライナ危機発生及びクリミア併合に伴う 向を中心に概観する 欧米からの経済制裁に加え 2015 年以降 原油価格 の下落を主因として

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平成18年8月31日

経済・物価情勢の展望(2017年10月)

2019 年 3 月期決算説明会 2019 年 3 月期連結業績概要 2019 年 5 月 13 日 太陽誘電株式会社経営企画本部長増山津二 TAIYO YUDEN 2017

平成22年3月期 決算概要

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MARKALモデルによる2050年の水素エネルギーの導入量の推計

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20兆円超の交易損失とエネルギー

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【東南アジア経済】ASEANの貿易統計(10月号)~輸出はスマホ用電子部品を中心に高水準を維持

関西の景気動向 2013 年 11 月株式会社日本総合研究所調査部関西経済研究センター 1. 景気の現状関西の景気は 持ち直しのペースがひところと比べて鈍化している 輸出 ( 円ベース )

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では 実際に円高はどの程度企業収益に影響を与えるのだろうか 例えば 輸出を中心に営む製造業であれば円高が進むと販売価格 ( 又は産出価格 ) が実質的に下落するため 企業収益を下押しすると考えられる (1ドルの商品を円安時には110 円で販売していたものが 円高時には100 円で販売しないといけなく

産連  産業連関表の利用_

我が国中小企業の課題と対応策

平成 28 年度エネルギー消費統計における製造業 ( 石油等消費動態統計対象事業所を除く ) のエネルギー消費量を部門別にみると 製造部門で消費されるエネルギーは 1,234PJ ( 構成比 90.7%) で 残りの 127PJ( 構成比 9.3%) は管理部門で消費されています 平成 28 年度エ

新電力のシェアの推移 全販売電力量に占める新電力のシェアは 216 年 4 月の全面自由化直後は約 5% だったが 217 年 5 月に 1% を超え 218 年 1 月時点では約 12% となっている 電圧別では 特別高圧 高圧分野 ( 大口需要家向け ) は時期により変動しつつも 全体的には上昇

Ⅱ 外国為替市場と為替レート

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平成18年8月31日

【東南アジア経済】ASEANの貿易統計(5月号)~輸出は好調も、旧正月の影響を均せば増勢鈍化

Ⅰ平成15年平均高知市消費者物価指数の概況

輸送量 (kg) 海上分担率 図 1 に 07~14 年の日本発米国向けトランジスタ輸送の海上 航空輸送量と海上分担 率の推移を示す 800, , , , , , , ,

けた この間 生産指数は 上昇傾向で推移した (2) リーマン ショックによる大きな落ち込みとその後の回復局面平成 20 年年初から年央にかけては 米国を中心とする金融不安 景気の減速 原油 原材料価格の高騰などから 景気改善の動きに足踏みが見られたが 生産指数は 高水準で推移していた しかし 平成

ヘッジ付き米国債利回りが一時マイナスに-為替変動リスクのヘッジコスト上昇とその理由

環境税導入の都道府県別負担の評価

本稿の分析目的 本稿では 平成 6 4 月に実施された消費増税による産業活動への影響について 前回の消費増税時 ( 平成 9 ) あるいはリーマンショック時にみられた産業活動への影響と比較しながら考察する 特に 前回増税時との比較においては 増税の前平均からの変動を比較することで 6 4 月に実施さ

番号文書項目現行改定案 ( 仮 ) 1 モニタリン 別表 : 各種係 グ 算定規程 ( 排出削 数 ( 単位発熱量 排出係数 年度 排出係数 (kg-co2/kwh) 全電源 限界電源 平成 21 年度 年度 排出係数 (kg-co2/kwh) 全電源 限界電源 平成 21 年度 -

平成 30 年 4 月 10 日公表平成 28 年 農業 食料関連産業の経済計算 ( 概算 ) - 農業 食料関連産業の国内生産額は 兆円で全経済活動の約 1 割 - 統計結果 1 農業 食料関連産業の国内生産額平成 28 年における農業 食料関連産業の国内生産額は 115 兆 9,63

2016 年 3 月期第 2 四半期 (4-9 月 ) 決算補足説明資料 2015 年 11 月 6 日 石油資源開発株式会社

< 豪州債券市場の市況および今後の見通し > 2016 年の豪州債券市場では 金利が低下しました 年初から 2 月にかけては 中国株をはじめ世界の株式市場が下落するなど市場のリスク回避姿勢が強まる中 金利低下が進みました 1 月末に日銀のマイナス金利導入発表を受け 欧州など他国でもさらなる金融緩和期

みずほインサイト 日本経済 2017 年 1 月 17 日 中小企業における賃金上昇の背景労働需給のひっ迫で上昇するも持続性には課題 経済調査部エコノミスト 上里啓 大企業の賃金上昇率が伸び悩む一方 2016 年入

輸入バイオマス燃料の状況 2019 年 10 月 株式会社 FT カーボン 目 次 1. 概要 PKS PKS の輸入動向 年の PKS の輸入動向 PKS の輸入単価 木質ペレット

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Transcription:

エネルギー価格と為替レートが消費者物価指数へ与える影響 化石 電力ユニットガスグループ 上野宏一 1. はじめに 2013 年 4 月の日本銀行による異次元緩和政策の導入以降 一時は 1.5% まで上昇した消費者物価指数上昇率 ( 消費税を除く ) は 2014 年後半からの原油価格急落を要因として急激に低下した コアCPI(CPI 総合 < 生鮮食品除く>) の足元の動きをみると 2016 年初頭から原油価格は徐々に持ち直し エネルギー品目の価格押し下げ圧力が弱まった影響で 2016 年 3 月から 10 カ月連続のマイナスから 2017 年 1 月にはプラスに転じ 2017 年 3 月は同 0.2% となった その一方で エネルギー品目の影響を除いたCPI( 生鮮食品およびエネルギーを除く ) は 2015 年 11 月の同 1.1% をピークに低下基調にあり 直近では 4 月 28 日に総務省より発表された 2017 年 3 月実績では同 -0.1% とマイナスに転じた 図 1. 消費者物価指数の推移 2.0 (% 寄与度 % ポイント ) 1.5 1.0 0.5 0.0 12/01 12/04 12/07 12/10 13/01 13/04 13/07 13/10 14/01 14/04 14/07 14/10 15/01 15/04 15/07 15/10 16/01 16/04 16/07 16/10 17/01-0.5-1.0-1.5 財 ( 食料 ( 酒類を除く ) 及びエネルギーを除く 1681 ) サービス 5032 エネルギー 784 食料 ( 酒類 生鮮食品を除く ) 2090 CPI コア 9586 CPI( 生鮮食品及びエネルギーを除く 8802 ) ( 注 ) 消費税は除くベース 内はウェイトを示す ( 万分比 ) ( 月次 ) 本稿では 原油価格を含むエネルギー ( 原油 LNG 石炭 ) 価格と為替レートの 2 つに 焦点を当て 消費者物価への影響を分析する 2. エネルギー価格 為替レートが消費者物価指数に与える影響 はじめに エネルギー ( 原油 LNG 石炭 ) 価格と為替レートが消費者物価に与える影 響を大まかに確認する 影響度の算出の手順は 最初に産業連関表の部門毎に 円建ての 1

エネルギー ( 原油 LNG 石炭) 輸入価格が 10% 上昇した場合の影響度と為替レートが 10% 円高となった場合の影響度を試算した 1 次に産業連関表の部門毎に算出した影響度を消費者物価指数の関連する品目に対応させ 対応させた品目のウェイトで加重平均 消費者物価指数に与える影響を算出した 算出した消費者物価指数は CPI 総合 ( 生鮮食品を除く ) エネルギー( 原油 LNG 石炭) 価格の影響をみるために 電気代 都市ガス 石油製品 ( プロパンガス 灯油 ガソリン ) 為替レートの影響を確認するために 工業製品 ( 石油製品除く ) 財 ( 生鮮食品 工業製品 エネルギー除く ) サービスの計 7 分類について計算した ( 表 1) 表 1. エネルギー価格 為替レートが消費者物価指数に与える影響 ( 単位 %) CPI 分類 エネルギー価格 ( 円建て )10% 上昇 為替レート 原油 LNG 石炭 10% 円高 総合 ( 生鮮食品除く ) 0.3 0.2 0.1 1.1 電気代 0.8 2.2 1.0 4.5 都市ガス 0.3 4.3 0.0 4.9 石油製品 5.6 0.0 0.0 5.7 工業製品 ( 石油製品除く ) 0.1 0.1 0.0 1.1 財 ( その他 2 ) 0.2 0.1 0.0 1.0 サービス 0.1 0.0 0.0 0.5 まずエネルギー価格 ( 原油 LNG 石炭) の上昇が消費者物価指数に与える影響度をみると 原油は石油製品に LNGは電気代 都市ガスに 石炭は電気代に 与えている影響度が大きいことが分かる また 為替レートの影響については 部門毎に 影響度の大小はあるものの サービスを除く財全般に幅広く消費者物価指数に影響を与えることが分かる 3. エネルギー価格 為替レートが消費者物価指数に与える影響のタイムラグエネルギー ( 原油 LNG 石炭) 価格 為替レートは消費者物価に影響を与えるが 通常は輸入価格や生産者価格を通じて 徐々に波及していく ここではエネルギー価格 為替レートと関連の深いと思われる品目の消費者物価指数と タイムラグ (0 カ月 ~12 カ月 ) を取り それぞれの相関係数を確認した ( 次頁表 2) 原油価格 LNG 価格 石炭価格は 財務省貿易統計より原油輸入 CIF 価格 ( 円 /L) LNG 輸入 CIF 価格 ( 円 / トン ) 石炭輸入 CIF 価格 ( 円 / トン ) を算出した 為替レートについては日本銀行が発表してい 1 総務省 平成 23 年 (2011 年 ) 産業連関表 は 石炭 原油 天然ガス で一部門になっており 各エネルギー価格の影響を単独でみるため 日本エネルギー経済研究所にて 105 部門にまとめ直した また 流通マージン ( 商業マージン + 国内貨物運賃 ) を調整して 生産者価格を購入者物価として影響を計算 2 工業製品 エネルギー 生鮮肉 米類 出版 水道料等除く 2

るドル円レート ( 月中平均 ) を使用した 表 2. 相関係数の推移 エネルギー / CPI 分類 タイムラグの月数 為替レート 0 1 2 3 4 5 6 原油価格 石油製品 0.99 0.96 0.92 0.87 0.81 0.77 0.75 LNG 価格 電気代 0.60 0.76 0.90 0.96 0.98 0.96 0.92 都市ガス 0.69 0.80 0.90 0.97 0.99 0.98 0.92 石炭価格 電気代 0.68 0.79 0.87 0.83 0.80 0.78 0.74 為替レート 工業製品 0.41 0.46 0.51 0.57 0.62 0.62 0.60 ( 石油製品除く ) 財 ( その他 ) 0.92 0.92 0.93 0.93 0.93 0.93 0.93 エネルギー / CPI 分類 タイムラグの月数 為替レート 7 8 9 10 11 12 原油価格 石油製品 0.74 0.75 0.77 0.78 0.75 0.71 LNG 価格 電気代 0.87 0.83 0.80 0.80 0.80 0.79 都市ガス 0.86 0.80 0.77 0.75 0.75 0.76 石炭価格 電気代 0.71 0.69 0.68 0.69 0.70 0.69 為替レート 工業製品 0.60 0.62 0.65 0.67 0.66 0.64 ( 石油製品除く ) 財 ( その他 ) 0.93 0.93 0.94 0.94 0.94 0.94 表からは 原油価格は 0 カ月後に LNG 価格はCPI 電気代 CPI 都市ガスに対して 4 カ月後に 石炭価格はCPI 電気代に対して 2 カ月後に 為替レートはCPI 工業製品 ( 石油製品除く ) に対して 10 カ月後に 財 ( その他 ) は 9~12 カ月後に 相関係数が最も大きくなっていることが分かる この相関係数の最も大きいタイムラグを考慮し 前述の産業連関表の計算結果を用いて CPI 総合 ( 生鮮食品除く ) CPIエネルギー ( 電気代 都市ガス 石油製品 ) の消費者物価指数を計算 消費者物価指数の実績値と比較をした ( 次頁図 2 図 3) なおCPI 電気代 CPI 都市ガスについては燃料 原料費調整制度によりタイムラグを決定した 産業連関表による分析は 供給価格の変化が需要に影響を与えず 価格転嫁が完全にされていることを前提にしている このため 産業連関表による試算値と消費者物価指数の実績値で かい離はあるが CPI 総合 ( 生鮮食品を除く ) とCPIエネルギーの実績値は それぞれ産業連関表による試算値の動きと近い動きをしていることがうかがえる 3

図 2.CPI 総合 ( 生鮮食品除く ) の産業連関表による試算値と実績値 2.0% 1.5% 1.0% 0.5% -0.5% 15/01 15/03 15/05 15/07 15/09 15/11 16/01 16/03 16/05 16/07 16/09 16/11 17/01 17/03-1.0% -1.5% -2.0% CPI 総合 ( 生鮮食品除く ) 産業連関表による試算値 CPI 総合 ( 生鮮食品除く ) 図 3.CPI エネルギーの産業連関表による試算値と実績値 2 15.0% 1 5.0% -5.0% 15/01 15/03 15/05 15/07 15/09 15/11 16/01 16/03 16/05 16/07 16/09 16/11 17/01 17/03-1 -15.0% -2-25.0% CPI エネルギー 産業連関表による試算値 CPI エネルギー 4. 今後の消費者物価への影響前述までの議論を踏まえ 今後のエネルギー価格 為替レートの消費者物価への影響を考えるために 産業連関表による試算を行った ( 次頁図 4 図 5) 試算にあたっては エネルギー ( 原油 LNG 石炭) 価格については平成 29 年 2 月の財務省貿易統計の実績 為替レートは平成 29 年 3 月の日本銀行が発表しているドル円レート ( 月中平均 113.02 円 ) を使用した 当面は 2016 年 2 月を底とする原油価格の持ち直しが CPIエネルギーの上昇を通じて CPI 総合 ( 生鮮食品除く ) にプラス寄与するが 2016 年以降の円高の影響が引き続き残り 2017 年のCPI 総合 ( 生鮮食品除く ) は伸び悩むものと思われる 4

図 4.CPI 総合 ( 生鮮食品除く ) の産業連関表による試算値 ( 推計値 ) と実績値 2.0% 1.5% 推計値 1.0% 0.5% 15/01 15/03 15/05 15/07 15/09 15/11 16/01 16/03 16/05 16/07 16/09 16/11 17/01 17/03 17/05 17/07 17/09 17/11-0.5% -1.0% -1.5% -2.0% CPI 総合 ( 生鮮食品除く ) 産業連関表による試算値 CPI 総合 ( 生鮮食品除く ) 図 5.CPI エネルギーの産業連関表による試算値 ( 推計値 ) と実績値 25.0% 2 推計値 15.0% 1 5.0% 15/01 15/03 15/05 15/07 15/09 15/11 16/01 16/03 16/05 16/07 16/09 16/11 17/01 17/03 17/05 17/07 17/09 17/11-5.0% -1-15.0% -2-25.0% CPI エネルギー 産業連関表による試算値 CPI エネルギー 以上 参考文献 伊藤浩吉 原油価格の高騰は物価に波及するか 内閣府 ESP 2008 年 3 月号加藤秀忠円高 原油高の進行と消費者物価の見通し三井住友信託銀行調査月報 2016 年 10 月号みずほ総合研究所調査本部経済調査部みずほインサイト 円安と原油安の消費者物価への影響 2015 年 1 月 5 お問い合わせ : report@tky.ieej.or