第 2 章 PFI の概要 1 PFIとは PFI(Private Finance Initiative: プライベート ファイナンス イニシアティブ ) とは 従来 国や地方公共団体等が行ってきた公共施設等の設計 建設 維持管理 運営等を一体として 民間の資金 経営能力及び技術的能力を活用することにより 公共サービスを一層効率的かつ効果的に提供しようとする事業手法です 2 PFI 事業の仕組み PFI 事業は 施設の設計 建設 維持管理 運営等を含むため 通常 PFI 事業に参加する企業は 異業種の複数の企業とコンソーシアム ( 企業連合 ) を作り コンソーシアムに参加した企業が出資して 公共 との契約に基づき実際にPFI 事業を遂行するためにSPC(Special Purpose Company: スペシャル パーパス カンパニー ( 特別目的会社 )) を設立するのが一般的です SPCは 必要に応じてコンソーシアムに参加している企業と工事請負契約や管理運営などについて 個別の契約を結びます 公共部門は この特別目的会社とPFI 事業に係る長期の事業契約を締結し サービスの提供を受けることとなります 一般的な PFI 事業の仕組み コンソーシアム 議会金融機関保険会社 企業連合 設計事務所 長期債務負担行為の議決など 直接協定 融資契約 履行保証保険契約 建設会社 公共 PFI 事業契約 PFI 事業者 設計 工事契約 管理運営 (SPC) 維持管理 運営契約 会社 助言 出資 配当 アドバイザー サービス提供 住民 利用者 サービス対価支払 その他の 投資家 - 2 -
3 PFI における事業類型 方式 (1) 事業類型 PFI 事業は 公共の関与の仕方に着目すると主に以下の3つの事業形態に分類されます これらは PFI 事業の基本的な形態であり 実際に事業を実施するにあたっては これらの形態を参考として 事業スキームを構築する必要があります 類型サービス購入型内容民間事業者が公共施設等の設計 建設 運営 維持管理等を行い 公共部門がサービスの購入主体となる 民間事業者は公共からの支払いにより投資資金を回収する 国内事例小中学校 ( 三重県四日市市 ) 給食センター ( 山形県上山市 ) 行政センター ( 大分県大分市 ) 浄化槽( 岩手県紫波町 ) 料金支払サービス提供公共 PFI 事業者利用者 類型ジョイントベンチャー型内容公共と民間双方の資金を用いて 公共施設等の設計 建設 運営及び維持管理等を行い 民間事業者が事業を主導する 投資資金は利用料金収入 公共部門による料金補助や事業費の一部負担などによって回収する 国内事例宿泊施設 ( 兵庫県神戸市 ) 余熱利用施設( 福岡県福岡市 ) 補助金等サービス提供公共 PFI 事業者利用者 料金支払 - 3 -
類型独立採算型内容公共からの事業許可等に基づき 民間事業者が公共施設等の設計 建設 運営及び維持管理等を行い 投資資金は利用者からの利用料金等によって回収する 国内事例駐車場 ( 福井県鯖江市 ) 事業許可サービス提供公共 PFI 事業者利用者 料金支払 (2) 事業方式 PFI 事業を建設 維持管理 運営の過程における施設の所有権移転の時期などによって 主に以下の方式に分類されます これまで国内の先行事例で採用されているのは 大半がBTO 方式かBOT 方式です 事業方式を検討する際は これらの特徴と当該事業の種々の条件 制約などを総合的に勘案する必要があります 1 BTO 方式 (Build Transfer Operate: 建設 - 所有権移転 - 運営 ) 民間事業者が施設を建設 建設終了後 施設の所有権を行政に譲渡する 管理 運営は民間事業者が行う 民間事業者は 固定資産税等の回避 資産圧縮などの点でメリットがある 施設の性能 管理 運営等に関する責任分担を明確にすることが必要である 2 BOT 方式 (Build Operate Transfer: 建設 - 運営 - 所有権移転 ) 民間事業者が施設を建設 建設終了後も施設を所有し 事業期間中 運営 管理し 事業終了後に施設の所有権を行政に譲渡する 民間事業者が施設や 付随する設備を所有するために 施設や設備を柔軟に運用できるメリットがある 事業終了時の資産の譲渡方法等( 有償譲渡 無償譲渡 ) についての検討が必要となる 3 BOO 方式 (Build Own Operate: 建設 - 所有 - 運営 ) 民間事業者が施設を建設 建設終了後も施設を所有し 事業期間中 管理 運営を行う 事業期間終了後 民間事業者は施設を所有し事業を継続するか あるいは施設を撤去し原状回復する - 4 -
契約期間終了後の確保等に関する検討が必要となる 4 BLT 方式 (Build Lease Transfer: 建設 -リース- 所有権移転 ) PFI 事業者が自ら資金調達を行い 施設を建設する 施設を行政にリースし契約期間中のリース料と施設の維持管理 運営で資金を回収する 契約期間終了後は 有償または無償により 施設の所有権を行政へ移転する 5 ROT 方式 (Rehabilitate Operate Transfer: 改修 - 運営 - 所有権移転 ) PFI 事業者が自ら資金調達を行い 行政が所有する既存施設を改修 補修する 契約期間中は 施設を一体的に所有して維持管理 運営を行い 行政からの支払いと利用料金収入で資金を回収する 契約期間終了後は 有償または無償により 施設の所有権を行政へ移転する 4 VFMとは VFM(Value For Money: バリュー フォー マネー ) とは PFIにおける最も重要な概念であり 支払いに対して最も価値の高いサービスを提供しようとする考え方です 具体的には 事業期間全体を通して 公共が直接サービスを提供する場合に公共が負担するコスト (PSC) とPFIを実施した場合に公共が負担するコスト (PFI 事業のLCC) を現在価値ベースで比較し リスクを定量化したものやその他定性的評価を加味し PFIを実施した場合の差をVFMといいます 従来手法による予想コストを PSC (Public Sector Comparator: パブリッ ク セクター コンパラター ) といい PFI 手法による負担見込額を PFI 事 業の LCC (Life Cycle Cost: ライフ サイクル コスト ) という リスクとは 事業の実施にあたり 事前に予測できない不確定要素 ( 事故 需要 の変動 金利の変動 調査や設計のミス 天災 経済状況の大幅な変化等 ) により 事業に損失が発生する可能性のことをいう 定性的評価とは コスト削減などの定量的な評価以外に サービスの水準などの定量化が困難なものについても 客観性を確保した上で評価に加えることです 具体的には 一括発注及び性能発注による民間事業者の経営能力 技術力等の活用効果 定期的な監視による安定的なサービス水準の確保効果 財政負担の平準化効果などです - 5 -
VFM の概念 公共負担リスク 公共負担リスク 5 リスク調整額 VFM 1 設計費建設費 税金 配当金等 2 維持管理費運営費 リスク調整額設計費建設費維持管理費 6 3 比較の 範囲 運営費 支払利息 支払利息 4 PSC PFI 事業の LCC 1 PSC>PFI 事業のLCCとなる場合にはVFMがあるとされ PFIの導入が図られる 2 固定資産税等の税金や配当金 利潤 契約に伴う費用など新たなコストが発生する 3 民間のノウハウが有効に活用されること等により コストの縮減が期待される 4 官民の資金調達コストの差により支払い利息が増加する 5 本来 公共が負担するコストであり PFIの場合でも同様に公共が負担するため定量化しない 6 従来公共が負担してきたリスクのうち PFI 契約によって民間に移転できるリスク相当を定量化したもの PFI 事業のLCCには民間事業者が負担すると想定したリスクの対価が含まれているため PSCにおいても これに対応したリスクを公共部門が負うリスクとし費用を算定することで 同条件のもとにVFMを評価するために行うもの - 6 -