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様式 C-19 科学研究費補助金研究成果報告書 平成 22 年 6 月 7 日現在 研究種目 : 基盤研究 (B) 研究期間 :2007~2009 課題番号 :19360068 研究課題名 ( 和文 ) トライボロジー特性向上のための表面テクスチャの創製技術の開発 研究課題名 ( 英文 ) Development of surface creation techniques by texturing for improvement of Tribological properties 研究代表者岩渕明 (IWABUCHI AKIRA) 岩手大学 工学部 教授研究者番号 :00005555 研究成果の概要 ( 和文 ): 本研究では, 材料表面に微細な凹凸 ( テクスチャ ) を付与することによってエネルギーロスとなる摩擦を制御し, 長寿命を達成する表面創製技術の確立を目指した. テクスチャはレーザー加工やものづくりで広く用いられる工作機械 ( 放電加工, 研削加工, フライス加工等 ) を用いて製作した. 実験の結果, 一般的な工作機械で製作された表面でも突起や谷形状の制御によって低コストで低摩擦表面を得ることが可能であり, 金型産業への応用が可能であることを示した. 研究成果の概要 ( 英文 ):This research was aimed at developing surface creation techniques by texturing to improve frictional and wear properties, which may lead to higher efficiency and durability of machinery. Surface textures were fabricated by the laser texturing and general machine tools such as the elector-discharge machining, grinding, milling, etc. Results showed that it is possible to achieve low-friction surfaces by controlling the shapes of asperities and valleys even if surfaces were machined by general machine tools. The possibilities of application for mold and die industries were shown. 交付決定額 ( 金額単位 : 円 ) 直接経費 間接経費 合計 2007 年度 8,100,000 2,430,000 10,530,000 2008 年度 3,500,000 1,050,000 4,550,000 2009 年度 3,600,000 1,080,000 4,680,000 年度年度総計 15,200,000 4,560,000 19,760,000 研究分野 : 工学科研費の分科 細目 : 機械工学設計工学 機械機能要素 トライボロジーキーワード : トライボロジー, テクスチャリング 1. 研究開始当初の背景昨今の技術的流れとして ナノ テクノロジー が大いに注目をあびているし, 総合科学技術会議の第 3 期基本計画においても重点研究分野に入っている. 一方, 摩擦 摩耗 潤滑を取り扱う学問のトライボロジーに関連する機器の 95% 以上はいわゆるそれより大きなスケールの マクロ トライボロジー の機器である. マクロなトライボ要素を制御するためにはミクロ ナノの現象の理解は必

須であるが, マクロ的な現象とミクロ ナノ的な現象とのギャップは大きい. また高校物理の教科書には, 滑らかな表面ほど摩擦は小さい と記述されている. しかし, 表面を滑らかにすることがかならずしも摩擦を低減しないことは多くの研究によって示されている. そこで, 表面の微細凹凸を適切に制御して摩擦 摩耗を損失するテクスチャリング技術が注目を集めている. トライボロジーにおける表面テクスチャリングの身近な例として, 自動車タイヤなどのトレッドパターンは水の排除により固体接触を保証し, 摩擦を高い値に保つ. また, ジャーナル軸受のマイクログルーブ ( 例えば大豊工業 はすべり軸受のテクスチャリングで日本トライボロジー学会技術賞を受賞 ) は潤滑性, 特に流体潤滑から境界潤滑に遷移するときの潤滑油供給により摩擦を低減する. エンジンシリンダー内面にホーニング加工でマクログルーブを作り, 焼付きや摩耗を低減する方法も実用化されている. 境界潤滑では溝や凹部は油溜まりとして作用し, 固体接触をできるだけ減らすとともに微小凹部の流体潤滑作用を期待することが意識されている. 一方流体潤滑的には油膜厚さを保持することで流体潤滑状態を維持するためになされる. 上述の例のような表面テクスチャリングは試行錯誤による経験的なアプローチであり, 最適な表面テクスチャを設計する技術が求められていた. 2. 研究の目的本研究はトライボロジーに関わる表面の機能性を向上させるための表面テクスチャリング ( 表面の微細形状 ) の創製技術を構築することを目的とした. そのために, モデル構築 ( 摩耗機構や摩擦機構 ), 最適なテクスチャリングの形状のシミュレーション, そのテクスチャリングの創製技術, 評価方法に分けて系統的に研究を進めた. 表面テクスチャリングの具体的対象としては, 日本のものづくりの基盤となっている金型をとりあげ, 射出成形金型及びプレス金型におけるテクスチャリングを扱い, その有効性を検討した. 3. 研究の方法 (1) 表面創製のためのテクスチャ評価手法テクスチャ表面の測定は, 信頼性の高い触針式の三次元表面粗さ計を用いて行った. 測定データから以下のようなパラメータを算出した. Sa, Sz,SΔq などの新 ISO 規格に準拠した粗さパラメータ (Sa などは三次元表面に用いられる記号で, 二次元の Ra などに相当する ). アボットの負荷曲線ならびに体積パラメータ ( 図 1). 突起に関するパラメータ 先端半径 R sum, 密度 D sum, 高さの標準偏差 σ sum ( 図 2). (a) EDM surface (b) Material region at α ma = 5 % (c) Areal bearing ratio curve 図 2 テクスチャの突起に関連するパラメータ 図 1 三次元テクスチャに関するアボットの負荷曲線と関連するパラメータ 三次元テクスチャに関するアボットの負荷曲線は図 1(b) のようにそれぞれの切断高さでのテクスチャの材料部分の面積を求めることによって算出される. 評価には, 研究分担者の内舘が開発したソフトウェア ProAna3D を用いて行った. このソフトウェアは, インターネット上にて無償で公開されている (http://www13.plala.or.jp/uchi/progfra me1.html).

2 モデル実験 テクスチャリングの効果を簡便かつ体系 的に検討するため ピンオンディスク型の往 復動摩擦摩耗試験装置を用いた 図3 潤 図3 ピンオンディスク型往復動摩擦 摩耗試験器 図5 表面テクスチャが摩擦係数に与 える影響 滑剤としては 低粘度のベースオイルと今後 のさらなる普及が期待される水潤滑を想定 して純水を用いた また 金型等における高面圧状態での接触 面剛性に及ぼすテクスチャリングの影響を 検討するため 油圧式プレスを用いた接触剛 性評価装置を開発し 実験に用いた 試験片としては 金型材料の SKD11 並びに 超硬合金 また 被加工材を想定したステン レス鋼 SUS303 などを用いた 3 金型への適用試験 テクスチャリングの金型への有効性を検 (a) Laser texture (b) EDM + Polishing 図4 テクスチャリング表面の例 (a) レーザーテクスチャリング (b)放電 加工と研磨によって作成された試験片 図6 谷部空隙体積と摩擦係数の関係 放電加工 研磨によるテクスチャ 討するため テクスチャリングが施された金 型を用いて離型性とプレス加工性の評価を 行った 4 研究成果 1 モデル実験 ピンオンディスク型の摩擦摩耗試験では 図4 a に示すようなレーザーテクスチャ リング表面と 図4 b のような放電加工 面と研磨によって作成された試験片を用い た 研磨の目的は 突起先端の曲率半径を増 加させ 局部面圧を低下させるためである このような試験片での摩擦係数の変動を 図5に示す ただし P2 と P3 は前述の放電 加工 研磨による表面であり 研磨の度合い が異なる Sa=1.2 μm と 1.6 μm 図より P3 テクスチャ面 放電加工 研磨の Sa=1.6 μm が最も摩擦が低いことがわかる 同じ放 電加工 研磨の表面でも P2 テクスチャ面は 摩擦が非常に大きく 最適なテクスチャが存 在すること示している 図6にアボットの負 荷曲線から算出される谷部空隙体積 Vvv と摩 擦係数との関係を示す Vvv は 谷部の油だ

E/E0 0.9 0.8 0.7 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0 0 100 200 300 400 500 Vmc/Vmp 図 7 山部実体体積 Vmc とコア部実体体積 Vmp の比が接触面剛性に及ぼす影響 まりと摩耗粉の排除の役割を果たす部分の体積と考えられる. 図より, 最適な谷部体積 Vvv が存在することがわかる. これは, 油溜まり及び摩耗粉の排除にはある程度の体積が必要である一方, 大きくなりすぎると真実接触部が局部的となり, 局部面圧の増大を招くためと考えられる. なお, レーザーテクスチャ表面では摩擦が必ずしも低減されなかった. これは摩耗試験中におけるディンプルの摩滅とディンプルエッジ部での局部面圧増加によるものと考えられる. また, 試験片をできるだけ平滑にした鏡面試験片 (Sa=0.05 μm 程度 ) では, ほとんどの条件において摩擦が高く, 激しい摩耗及び両側の試験片の荒れが観察された. これは, 前述の油溜まりと摩耗粉排除のための構造がないためと考えられる. 以上のことから, 放電加工のようなランダムな凹凸でも表面突起先端を適切に除去することによって低摩擦表面が創製できることがわかった. これは, 特別なディンプル加工機械を用いなくとも通常の機械加工でも低摩擦表面が創製できることを示しており, 産業的にはコスト面から非常に有用である. 図 7 には, 接触面剛性に及ぼす表面テクスチャの影響を示した. 接触面剛性がコア部の実体体積 Vmc と山部の実体体積 Vmp の比よって整理できることがわかり, この考え方を用いればテクスチャ付与による接触への影響を簡便に知ることができる. (2) 金型への適用試験上記のような結果を受け, テクスチャ技術の金型への応用を検討した. はじめに, プラスチック製品の製造に多く用いられる射出成形による成形品が抜ける際のテクスチャの影響を図 8 のような装置で検討した. 図 9 には, 一般的に金型加工で用いられる研削加工とブラスト加工によるテクスチャの比較を示す. どちらも粗さの振幅はほぼ同一であるが, ブラスト加工を施すことにより, 離型抵抗が約 1/5 へ低減されている. 成形品の樹脂の表面形状を評価したところ, ブラスト 図 8 離型性評価装置と試験金型 Ra 0.09 μm Ra 0.09 μm 図 9 テクスチャによる離型抵抗低減 図 10 低離型抵抗発現のメカニズム 加工では金型のテクスチャの転写率が低いことがわかった. すなわち, 樹脂が粗さの谷部分へ入り込みすぎないことが離型抵抗低減の機構である ( 図 10). これには, それぞれの加工の谷部の密度が関係していると考えられる. ブラスト加工は, 加工時間が短く, さまざまな形状への加工が可能であることから工業的な応用範囲が広いと言え, 本結果は成形品の加工効率向上に大きな意味を持つ. プレス加工性への影響として, 図 11 にテクスチャを付与したパンチにおけるコイニング加工時の被加工材のひずみを示す. 油潤

重要であることが示唆され, 検討不十分の場合には逆効果をもたらすことがあるので注意が必要である. (3) テクスチャを考慮した弾性接触解析テクスチャの影響をより詳細に検討するため, 影響係数法による弾性接触解析プログラムを開発した ( 図 13). このような計算手法により, テクスチャ付与による局部面圧への影響を把握することが可能となる. さらなる高機能を発現する表面テクスチャ創製へ向けて, 接触する 2 面を複合的に取り扱える評価手法, 及び, 摩耗等によって時系列的に変化するテクスチャの測定 評価が必要である. 図 11 コイニング加工時の被加工材のひずみに及ぼす表面テクスチャの影響 (a) Model geometry (Semi-sphere + sine wave) (a) With a smooth tool (Rz=0.1 μm, R sum =10 8 μm) (b) Contact pressure (0.93N) (b) With a rough tool (Rz=4 μm, R sum =10 μm) 図 12 金型表面テクスチャのコイニング加工表面性状への影響 図 13 テクスチャの弾性接触解析 (E=200 GPa, ν=0.3 vs. 剛体平面 ) 滑下では, パンチのテクスチャの先端半径がある程度大きいほうが被加工材はひずみやすく, 加工性が良いことがわかる. これは, 先端半径が小さい突起は加工時の高面圧下で油膜破断が発生しやすいためであり, 被加工面には図 12(b) に示すように油膜破断による条跡が観察される. このことから, テクスチャリングの付与時には現象に関連するパラメータを考慮に入れて設計することが 5. 主な発表論文等 ( 研究代表者 研究分担者及び連携研究者には下線 ) 雑誌論文 ( 計 4 件 ) 1 M. Uchidate, K. Yanagi, I. Yoshida, T. Shimizu, A. Iwabuchi, Generation of 3-D random topography datasets with periodic boundaries for surface

metrology algorithms and measurement standards, Wear (in Press). 査読有 2 M. Uchidate, A. Iwabuchi, K. Kikuchi, T. Shimizu, Research on the Validity of using Nayak s Theory for Summit Parameters of Discrete Isotropic Gaussian Surfaces, Journal of Advanced Mechanical Design, Systems, and Manufacturing, 3, 2 (2009)125-135. 査読有 3 M.Uchidate, A. Iwabuchi, T. Kanno and H. Liu, Nano-Indentation Measurement of the Tribo-Layer on Stainless Steel and Brass Surfaces Rubbed against DLC in Water, Tribology Online, 3, 2(2008)48-53. 査読有 4 K. Nemoto, K. Yanagi, M. Aketagawa, D. Kanda, I. Yoshida and M. Uchidate, A study on surface material measures for areal surface texture measuring instruments, Key Engineering Materials, 381-38 2(2008) 241-244. 査読有 6. 研究組織 (1) 研究代表者岩渕明 (IWABUCHI AKIRA) 岩手大学 工学部 教授研究者番号 :00005555 (2) 研究分担者内舘道正 (UCHIDATE MICHIMASA) 岩手大学 工学部 助教研究者番号 :30422067 学会発表 ( 計 5 件 ) 1 M. Uchidate, K. Yanagi, I. Yoshida, T. Shimizu, A. Iwabuchi, Generation of 3-D random topography datasets with periodic boundaries for surface metrology algorithms and measurement standards, 12th International Conference on Metrology and Properties of Engineering Surfaces, Rzeszow, Poland, July 8th 10th, 2009 (pp. 71-75). 2 K. Kim, A. Iwabuchi and M. Uchidate, Tribological Effect of Surface Texturing on Die Materials for Practical Application, WTC Kyoto 2009, Kyoto, 京都国際会館,Japan, September 6th 11th, 2009 (pp.432) 3 内舘道正, 清水友治, 熊野大介, 岩渕明, 表面粗さの自己相関モデルの拡張, 日本トライボロジー学会, 国立オリンピック記念青少年総合センター,2009 年 5 月 18 日. 4 金起賢, 岩渕明, 内舘道正, 金型材における表面テクスチャの影響, 日本トライボロジー学会, 国立オリンピック記念青少年総合センター,2009 年 5 月 18 日. 5 金起賢, 岩渕明, 内舘道正, ファイバーレーザーと放電加工による表面テクスチャリングの摩擦係数への影響, 日本トライボロジー学会, 名古屋 名城大学, 2008 年 9 月 16 日.