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難病 です これまでの研究により この病気の原因には免疫を担当する細胞 腸内細菌などに加えて 腸上皮 が密接に関わり 腸上皮 が本来持つ機能や炎症への応答が大事な役割を担っていることが分かっています また 腸上皮 が適切な再生を全うすることが治療を行う上で極めて重要であることも分かっています しかし


図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

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スライド 1

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第6号-2/8)最前線(大矢)

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く 細胞傷害活性の無い CD4 + ヘルパー T 細胞が必須と判明した 吉田らは 1988 年 C57BL/6 マウスが腹腔内に移植した BALB/c マウス由来の Meth A 腫瘍細胞 (CTL 耐性細胞株 ) を拒絶すること 1991 年 同種異系移植によって誘導されるマクロファージ (AIM

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RNA Poly IC D-IPS-1 概要 自然免疫による病原体成分の認識は炎症反応の誘導や 獲得免疫の成立に重要な役割を果たす生体防御機構です 今回 私達はウイルス RNA を模倣する合成二本鎖 RNA アナログの Poly I:C を用いて 自然免疫応答メカニズムの解析を行いました その結果

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計画研究 2005 2009 年度 腸管出血性大腸菌を中心とした腸管感染菌の病原性ゲノム基盤の 解明と臨床応用 林 哲也 1) 小椋 義俊 1) 大岡 唯祐 2) 1) 宮崎大学フロンティア科学実験総合センター 戸邉 亨 3) 2) 宮崎大学医学部 飯田 哲也 4) 桑原 知巳 5) 3) 大阪大学大学院医学系研究科 4) 大阪大学微生物病研究所 平成 17 19 年度 5) 徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス部 平成 20 21 年度 研究の目的と進め方 は マイクロアレイを用いて環境分離株と患者由来株のゲノム比 種々の細菌感染症の中でも 腸管出血性大腸菌 EHEC 感染 較解析を行う 症は 我が国を含む先進諸国で最も問題となっている腸管感染症 である EHEC は O157 EHEC と non-o157 EHEC に大別される 研究期間の成果 が 前者の方が分離頻度も高く ゲノム配列が決定されたことも O157 EHECの解析 あって EHEC 研究は O157 を中心に進んできた しかし non- 1 ゲノム多様性解析 WGPS マイクロアレイ 菌株特異 O157 EHEC の分離頻度も増加しており これらの EHEC 対する 的なゲノム領域の配列決定等により 8 株の臨床分離株の O57 堺 対応も必要になっている 本研究では これまで我々が進めてき 株との詳細なゲノム比較解析を行い サイズの大きな多型領域は た O157 堺株の全ゲノム情報に基づいた O157 の病原性とゲノム プロファージの変化によって生じていること またサイズの小さ と IS の転移等に 多 様 性 の 解 明 を 更 に 推 進 す る と と も に O26 O111 O103 な多型領域 (SSSP) は2種類の IS IS EHEC を新たな解析対象とし EHEC の病原性メカニズム ゲノ よるゲノム変化によって生じていることを明らかにした SSSP ム多様性 病原性発現調節機構の解明に取り組む また 他の病 の網羅的な構造解析から ファージなどの可動遺伝因子の不動 原性大腸菌 腸管病原性大腸菌 EPEC など とのゲノム比較 化 という IS のゲノム進化における新しい役割を提唱するとと を行い EHEC の病原性の特性を浮き彫りにする さらに 腸管 もに 細菌では稀とされていた IS の simple excision が O157 な 常在細菌の解析と EHEC と常在菌の相互作用の解析を行う 特 どの EHEC では高率に生じることを見出した 未発表データで に 本特定領域研究の後半2年間は 腸管常在細菌の解析に重点 あるが この現象 IS excision に関わる新規遺伝子を同定した を置いて研究を進め ヒト腸管常在細菌叢の実体を明らかにする また ゲノム多様性解析の結果に基づいて O157 EHEC の迅速 とともに EHEC の増殖や病原性発現に対する常在菌の作用を明 菌株識別システムを開発し 特許出願を行うとともに TOYOBO らかにする これらの研究成果を基に EHEC の新しい診断 サー 株 と共同でキット化し O157 IS-typing kit として発売を開 ベイランス 治療 予防法の開発を目指する なお 腸管常在細 始した 本キットは 既に全国の地方衛生研究所等で使用がされ 菌解析をより効率的に遂行するため 20 年度より班構成を一部 ている さらに O157 堺株のゲノム上に多数存在するプロファー 変更した 阪大 飯田に代わり 徳島大 桑原が加わった ジの網羅的な構造 機能解析から 一見 defective と思われるプ ロファージの多くが 染色体からの切除 複製 パッケージング 他菌株への transduction などの多彩な活性を有することを見出 研究開始時の研究計画 1 EHEC のゲノム多様性解析 O157 堺株の全ゲノム情報と それに基づく全ゲノム PCR スキャンニング WGPS とマイク し prophage community 内での prophage 間相互作用による欠陥 プロファージの活性化 という新しい概念を提唱した ロアレイを用いたゲノム解析系は確立できているため これらの 2 病原因子の機能解析 O157 ゲノム情報を基に T3SS エフェ 手法と菌株特異的なゲノム領域の配列決定により O157 堺株を クター蛋白質の網羅的な検索を行い 新たに 30 種類のエフェク 基準とした O157 EHEC および non-o157 EHEC の大規模ゲノム ターを同定した このうち 19 種類については 宿主細胞内への 多様性解析を行う また その結果に基づいて O157 EHEC の 移行と局在を確認した また T3SS のコアコンポーネントをコー 迅速菌株識別システムを開発する さらに O26 O111 O103 ドする LEE 領域以外に存在するエフェクター Non-LEE エフェ の全ゲノム解読を行う クター 遺伝子はラムダ様ファージにより持ち込まれたことが明 2 EHEC の病原遺伝子システムの解析 腸管への付着と下 らかになった 偽遺伝子化したエフェクター遺伝子も数多く見い 痢発症に中心的な役割を果たす III 型分泌系 T3SS の解明に重 だされ T3SS の確立に至る過程では 多くの取捨選択が行なわ 点を置き T3SS によって宿主細胞に注入されるエフェクター蛋 れたことが示唆された 一方 新規エフェクターの機能解析では 白質を 情報学的手法とプロテオーム解析等により網羅的に同定 EHEC や EPEC で高度に保存されている NleH, EspL2 などの機 する 能を明らかにした NleH は感染細胞での炎症応答を修飾するエ 3 EHEC の病原性発現調節機構の解析 T3SS の発現調節機 フェクターの 1 つであり EHEC の感染により抑制される応答を 構に重点を置く マイクロアレイと種々の遺伝子破壊株や強制発 ある程度上昇させ 応答レベルを調節する EspL2 は宿主細胞の 現株を用いて 腸管内模擬環境での遺伝子発現解析を行い 腸管 annexin 2 と直接相互作用して その F アクチン凝集活性を亢 内環境シグナルによる病原遺伝子群の発現調節機構の解明を試み 進するとともに細胞膜の形態変化を誘導し 細胞上での密集した る 集落形成に寄与する さらに Intimin-Tir を介した細胞への付着 4 腸管常在細菌の解析 基盤ゲノム 服部研究班らと共同で 腸内細菌叢とその構成菌種のゲノム解析を行う とは独立に EspL2 は細胞表面に仮足条突起の形成を誘導して付 着を促進することも明らかにした また TccP/TccP2 エフェク 5 EPEC と腸炎ビブリオの解析 T3SS の比較解析に重点 を置き エフェクター蛋白質の網羅的な同定 生体内環境シグナ ルによる発現制御機構の解析等を行う 腸炎ビブリオに関して ターの機能及びその分布の解析から アクチン重合を誘導する新 たなパスウェイを見出した 3 病原性発現調節機構の解析 ① 緊縮制御による発現調節 138

non-o157 EHEC のゲノム解析 他の病原性大腸菌の解析 139

腸炎ビブリオの解析 腸内常在菌及び常在菌叢の解析 (1) 健常日本人 13 名のメタゲノム解析 (2) 腸内常在菌の個別ゲノム解析 (3) バクテロイデスの解析 (4) 腸内難培養菌 SFB のゲノム解析 < 国内外での成果の位置づけ> 140

< 達成できなかったこと 予想外の困難 その理由 > < 今後の課題 展望 > < 研究期間の全成果公表リスト> 141

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