データセンタ統合情報基盤

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Transcription:

Platforms for Unifying Data Center Information あらまし データセンタは規模と複雑さが増大し続けている 高品質なサービスにはサービスマネジメントを支える運用支援ツールが欠かせない お客様のビジネス イノベーションのスピードに見合う迅速 高品質なIT 運用の管理基盤として,CMDB ( Configuration Management Database) や運用支援ツール, およびそれらの間のデータ連携が重要である 業界ではCMDB 連携に関する方式標準化の動きもある 富士通は, 標準化仕様を取り入れながら, データセンタに内在する各種情報の統一表現とデータ交換を目指し,ITIL(IT Infrastructure Library)V3で導入されたCMS(Configuration Management System) における情報統合レイヤの構築に取り組んだ 運用管理情報のデータ構造化と統一表現により運用データの活用が容易となった またCMDB 内の情報や運用支援ツール間での相互データ活用により, 提供サービスのスピードアップと品質向上を実現した Abstract The scale and complexity of data centers have recently increased, entailing the need for service management tools to provide a higher quality of service. Tools such as Configuration Management Database (CMDB) are essential for prompt and quality IT operations, and must be coordinated to help support more rapid growth in innovating customer businesses. The IT industry has begun establishing a new standard for data integration among multiple CMDBs. IT Infrastructure Library (ITIL) V3 introduces Configuration Management System (CMS) for constructing a layer of data integration across CMDBs. We developed this layer compliant with the new standard. We also designed the structure and uniform expressions of service management data. This allows the data to be utilized and integrated more easily among such tools as CMDB. We therefore improved the speed and quality of services delivered using these progressive technologies. 谷内康隆 ( たにうちやすたか ) システム基盤開発部所属現在, アウトソーシングやSaaS サービス運用基盤の企画 開発に従事 小林高洋 ( こばやしたかひろ ) システム基盤開発部所属現在,ITILをベースとした運用プロセスの推進に従事 大塚浩 ( おおつかひろし ) システム基盤開発部所属現在,CMDBとデータセンタの運用基盤開発に従事 FUJITSU.59, 1, p.45-49 (01,2008) 45

まえがき IT 機器はダウンサイジングやオープン化の進展により, 専用のマシンルームを出て, オフィスの一角にまで進出した ハードウェアコストの抑制, 使い勝手の向上, 開発期間短縮などのメリットの反面, ハードウェア, ソフトウェアといったIT 資産の無秩序とも言える増加による管理コスト増大が問題とされている 近年, ネットワークやWeb 技術の革新, 情報保護や企業統制に対する管理強化, 消費電力の削減やスペースの有効利用といった社会環境 意識の変化がある これを受け,ITパワーはブレードサーバや仮想化などの新たな技術とともにデータセンタへの回帰的集約を続けている その結果, データセンタには物理 仮想を合わせ数千台規模のサーバが集まる この傾向は今後も広がると予想する こうした状況下で高品質なサービスを提供するには, 運用支援ツールが不可欠となる 富士通でもデータセンタの急速な規模拡大と複雜化に対応するため, 各種ツールを活用しているが, ツールの増加に伴い類似情報の重複管理, 操作方法習得といったオーバヘッドも顕在化してきた 本稿では, これらの問題を解決するため,ITIL (IT Infrastructure Library)V3で提唱されている CMS(Configuration Management System) における情報統合レイヤとCMDB ( Configuration Management Database) の構築の試みについて述べる 運用管理ツールにおける問題富士通のデータセンタで活用しているツールを図 -1に示す ハードウェア, ソフトウェア情報の構造化図中のITシステム情報管理ツール群は, ハードウェア, ソフトウェア情報を管理するツールであり, CMDBはその一部である 迅速で正確な運用管理のため, ハードウェア, ソフトウェアなどのITシステム情報を各ツール間で共有 活用する必要がある しかしITシステム情報は従来, スプレッドシートなどの設計文書に記述された非構造化データとしてドキュメントライブラリで管理されていた データの活用には構造化データとしてCMDBに格納する必要がある その実現には以下の問題が あった (1) システムを表現する標準形式がなく, 設計文書がシステム設計者の流儀で記述されている (2) 標準形式を定め正規化したデータベースを構築しても, 新技術の導入により日々システムが変化するため旧態化してしまう (3) データセンタで稼働するシステムは多種 多量であり, 正確な最新データの維持が困難である ツール間データ連携の実現図 -1に示した各ツールは役割ごとに異なったデータを管理している ツール数の増加に応じて, 類似 関連した情報を異なった表現形式や粒度で重複保持する状況が発生していた 関連データ間の不整合によるサービス品質や運用効率への影響を防ぐため, ツール間のデータ連携が必要となる 各ツールが個別にデータ連携した場合, ツールの数が増加するのに伴い, 連携パスが指数的に増加する 後述する統一的な情報統合レイヤの構築はこのような状況を解決するものである その実現にはデータセンタにあるすべてのシステムや提供サービスで, 記述レベル 表現を標準化したデータモデルの定義が不可欠である データモデルの定義には以下の問題があった (1) データセンタで扱う様々な情報を統一的に表現する書式がない (2) ツール間において同じ名称で異なる意味の項目や同じ意味だがフォーマットが異なる項目がある (3) ビジネスプロセスに合わせツール群も改版されるため, 常にデータモデルをメンテナンスする必要がある 用管理ツール群業務可視化 標準化支援ツール群運IT システム情報管理ツール群 契約 SLA, リスク情報管理ツール群 運用計画 記録管理ツール群 図 -1 運用管理ツールの分類 Fig.1-Management tool classification. 46 FUJITSU.59, 1, (01,2008)

統合実現の方針このような問題に対応するため, データセンタの運用に必要な情報を連携 統合し, 効果的 効率的に利用できる仕組みづくりに取り組んだ 2007 年 5 月 30 日に発表されたITIL V3ではこうした仕組みづくりに有効なCMSとSKMS(Service Knowledge Management System) という概念が導入された (1) CMSはCMDB,DML(Definitive Media Library), ディスカバリツールなどの情報を統合し,CI (Configuration Item) のライフサイクルを通して管理するシステムである 従来のCMDBは,CMS においてはデータソースという位置付けとなる データを一元管理し, 有効なデータとして活用できるようにするため,CMSは図-2のとおり四つのレイヤから構成されている SKMSはCMSと同様のレイヤ構造を持つが, データソースや利用者などを拡張し, 非構造化データやビジネスに関する情報を統合してマネジメントの意思決定までサポートできるシステムである CMDB FederationはCMDBなどのデータソースを統一的に扱うためのインタフェース仕様である BMC,CA,HP,IBM,Fujitsu,Microsoftにより標準化が進められている (2) ITシステム情報の構造化によるCMDBの整備とデータセンタ統合データモデルの確立による情報統合レイヤはこの仕様に準拠したCMDB 製品を利用した これによって, 富士通製品にとどまらず, 他社製品が組み込まれたシステムとも情報連携をとることが期待できる この製品は2008 年にリリースされる予定である CMS プレゼンテーションレイヤナレッジ処理レイヤ情報統合レイヤデータソースレイヤ (CMDBなど) 図 -2 CMSのレイヤ構造 Fig.2-Layered structure in CMS. ITシステム情報の構造化本章では,XMLによるITシステム情報の構造化について述べる RCXML ITシステム情報のデータモデルの記述言語としてリソース構造管理記述言語 RCXML (3) を採用した RCXMLは, 物理リソース情報, 論理リソース情報, 設計情報, 稼働サービス情報, ユーザ情報を記述でき, また, 定期的な改版により新しい技術や製品に対応している XMLデータベースデータセンタのCMDBは業務アプリケーションのデータベースに比べてデータモデルの変更頻度が高い データモデルが変更された場合,RDB (Relational Database) ではテーブル構造の変更や再構築が必要となる CMDB Federation (2) に準拠した富士通のCMDBはRCXMLを格納することができるため, データモデルに合わせたRDBテーブルの再構築が不要となった データの構造化と維持 ITシステム情報の構造化は設計フェーズと運用フェーズの2 段階で取り組んだ (1) 設計フェーズ富士通では, データセンタで新たに稼働するシステムをCAD 技術をベースとしたツールで設計している 装置に実装されるCPUやメモリ, アダプタを正確に図面に記述することができる 設計情報は従来と同じスプレッドシート形式で出力される CMDBに設計情報を記録するため, 出力をRCXML に変換する機構を追加した (2) 運用フェーズお客様システムのサポートを行うエンジニア向けツールとしてPowerUp-Kit (4) がある その中の HRM ( Hardware Resource Monitor ) とSDB (System Defender Box) により装置に実装された CPUやメモリ, アダプタの情報をXML 形式のデータとして取得することができる 以上述べた設計フェーズでITシステム情報を構造化してCMDBに格納し, 運用フェーズで定期的に自動更新することにより, 多種 多量なシステムの情報を最新状態に維持できるようになった ( 図 -3) FUJITSU.59, 1, (01,2008) 47

スプレッドシート 設計フェーズ運用フェーズ 設計ツール コンバータ RCXML CMDB システム HRM/SDB コンバータ RCXML XML 図 -3 設計, 運用フェーズにおけるデータ構造化 Fig.3-Structured IT system information flow. 情報統合レイヤ 情報統合レイヤは, 複数のデータソースに散在するCI 情報をあたかも一つのデータベースに含まれるかのようにアクセスするためのレイヤである CI(Configuration Item) CIは,ITILに基づき, ハードウェア, ソフトウェア, サービスなどのITサービスを構成する要素であり,CMDBに登録して管理する 今回, 各ツール群で扱う情報を含めCIを定義した リコンシリエーション CMDB Federationは複数に分散したCMDBを統合し仮想的に一つのCMDBとして扱うための仕様であり, この仕様に準拠したソフトウェアは, 統一的なCMDBの一部に組み込むことが可能となる 富士通の運用管理製品であるSystemwalkerの次期バージョンにも組み込まれる予定である リコンシリエーションとは, 分散したCMDBの中から同じ CIを特定するための技術である CIの一意性を決定づける属性であるIdentity Propertyを指定することで, 同 CIの自動判定を実現している データセンタ統合データモデルデータセンタ特有の要件に合わせるため,RCXML に対し独自の拡張を行った 拡張部分と既存部分との整合が取れるよう, 以下の指針を定めた (1) できるだけ一般化し, 標準のRCXMLへ取り込む (2) ツリー構造への追加位置とタグ命名の一貫性を持たせる (3) CI 間の関連定義の妥当性についてユースケースをもとに検証する 上記指針に沿って, 契約情報, 経理情報などを追加した サービスに対する効果情報統合レイヤにより, システム導入や構成変更の期間短縮と確実性が増した また高度なレポートや分析も可能となり, サービス提供のスピードと品質が高まった 以下に具体的な効果を述べる 移行 導入期間の短縮システム導入では機器が計画どおりに構築されていることが重要である 従来は設計文書と実際の設定状況を目視確認しており, 大規模なシステムでは確認作業に多くの時間を必要とした 確認項目は, 搭載メモリやMACアドレスといったハードウェア構成の確認, ホスト名やIPアドレスなどの基盤系情報からミドルウェアのインストール状況, 設定ファイルの確認などであり,1 台あたりの所要時間は短い場合で30 分程度である 設計ツールの情報とSDBで自動収集した情報を格納することにより CMDB 上で比較できるようになり, 所要時間を短縮することができた また, 図 -1で示した契約 SLA, リスク情報管理ツール群から商談 契約に関する情報がほかのツールに連携できるようになり,2 重管理が解消された システムの変更 リリース変更は変更管理, リリース管理に基づいて実施される 承認の過程で変更内容と影響範囲を関係者が正確に理解する必要がある CMDBに格納した変更予定情報と関連 CIを参照することにより, 対象機器や影響範囲を正確に識別できる リリース完了後や切り戻し後の確認も実施前の構成情報との比較により, 正確 迅速に実行できるようになった 運用レポート図 -1で示した個々のツールは独自のレポート機能によりデータ分析や可視化を行ってきた 情報統合レイヤによりすべてのデータを統合処理できるようになる 複数の観点からデータを関連付けることによって, より高度な分析や可視化が可能となった 電力キャパシティ管理ブレードサーバなどの高集積化によりデータセンタの電力キャパシティの管理手法に注目が集まって 48 FUJITSU.59, 1, (01,2008)

いる 文書ベースでの機器管理では, データセンタ全体の電力消費を迅速に把握することは難しかった 構造化データをCMDBで管理することにより対象機器全体での算出が可能となった さらに情報統合により各システムの運用管理情報が一元的に参照できる 運用管理製品と連携すればCPU 使用率, メッセージキュー長などのパフォーマンス情報や JOBスケジュールの情報が参照可能となる 一般的にバッチ処理ではCPU 能力を限界まで使う場合が多く, 消費電力も増加する傾向がある またデータセンタではラック単位の消費電力の実測が進んでいる これらの情報を統合 分析することにより, JOB 実行による消費電力の上昇を算出し, データセンタ全体でJOBスケジュールに従って積算することにより, 電力消費変動の推測も可能になる 今後の発展と課題 CMSのアーキテクチャでは, 従来ツールごとに実現していたデータ処理機能をナレッジ処理レイヤとして情報統合レイヤの上位に位置付けており, 複数のデータソースの統合処理を可能としている ( 図 -2) SOA(Service Oriented Architecture) に基づき, 各レイヤの機能をサービスとして実装し, それらを組み合わせることにより業務を組み立てていく サービスの組合せにより, さらに上位のレイヤに向けたサービスを実現することも可能になる 例えば, 先に述べた設計構成情報と実環境から収集した構成情報を比較 レポートする機能は構成監査サービスとしてナレッジ処理レイヤに実装する プレゼンテーションレイヤではその結果を利用者のロールに従って可視化する SOAの活用により, 現状業務プロセスに合わせて段階的に適用範囲の拡大を図っていく そのためには, 継続的にセルフア セスメントおよびフィードバックを行うプロセスを定着させ, 業務プロセスからのニーズに沿ってシステムやデータモデルの改善を続けなければならない 実際にツールを運用していくには, 利用者の理解と協力を得ることが不可欠である 情報統合ではデータを登録する者と活用する者は一致しない場合が多く, 作業負担が増えるような感覚を生みがちである これを低減 回避させるには, ある業務プロセスで生成された情報の貢献度を可視化する仕組みが有効である CMS 内の情報間を関連付ける仕組みは貢献度の可視化に役立つ むすび本稿ではCMS 全体を構築していくための土台となる情報統合レイヤ構築の取組みについて述べた データセンタを取り巻く情報を統一した言語で表現することで情報の一元管理を行い,CMSの上位レイヤによる情報活用の基盤を構築した 参考文献 (1) S. Lacy et al.:service Transition.TSO,2007, p.261. (2) D. Clark et al.:the Federated CMDB Vision. CMDB Federation Workgroup. http://cmdbf.org/ CMDB-Federation-white-paper-vision-v1.0.pdf (3) 勝野昭ほか :TRIOLEオーガニックコンピューティングアーキテクチャ.FUJITSU,Vol.58,No.3, p.228-233(2007). (4) 長谷川満ほか : 運用を起点としたサポートインフラの提供.FUJITSU, Vol.58, No.4, p.347-353 (2007). FUJITSU.59, 1, (01,2008) 49