Agilent EEsof 3D EM Application series 高速差動伝送ライン Advaced PPmL の評価 アジレント テクノロジー第 3 営業統括部 EDA アプリケーション エンジニアリング Page 1
アプリケーション概要 高速差動伝送路の特性評価 伝送レートの高速化に伴い 分布定数の考え方による伝送線路特性の評価が重要となると共に 伝送線路の高密度伝送線路の高密度化により 伝送路の正確な電磁界結合も視野に入れた設計も必要となってきています 実際の製造の前に これらの特性を正確に把握しておくことは 開発コストの低減 製品化までの期間の短縮の為には不可欠となってきています 主な対象となるアプリケーション 各種高速差動伝送路の設計 検証 今回は ルネサスエレクトロニクス様のご協力のもと Advanced PPmL を題材として解析を実施します 最適な解析ソリューション 電磁界シミュレータ : 伝送路の正確なモデル化 Momentum ( 3 次元プレナー電磁界シミュレータ ) 回路シミュレータ : 電磁界モデルを用いた高速アイダイヤグラム解析 Advanced Design System 上の Transient / Convolution シミュレータ チャネル シミュレータ Page 2
ルネサスエレクトロニクス Advanced PPmL 独自技術 Advanced-PPmL により大画面 高画質 ( 高精細 )TV のシステムコスト低減と安定伝送を実現! システムコスト低減 : 配線本数減により PCB/FPC コスト低減タイミングコントローラのポート数減によりピン数削減 安定伝送 : クロックエンベデッド技術 Point to point 接続により 差動信号 1 組で高速データ転送 (2Gbps) と EMI 低減を実現 従来 minilvds (Multi-Drop) Full HD 10bit 倍速 (120Hz) 400Mbps Sift to Point to Point Advanced-PPmL (Point-to-Point) Full HD 10bit 倍速 (120Hz) 信号線 :76 本信号線 :16 本 2000Mbps TCON mini-lvds 信号 : (Data:8pair + CLK:1pair) x 4Link ソースドライバ IC 制御信号 : (POL + STB) x R/L TCON A-PPmL 信号 : 8pair Page 3
設計上の問題点 問題点 今回 取り上げるAdvanced PPmLのようなDisplay 用の信号の場合 伝送路を通過した信号が直接画面に表示されるため 伝送後の信号品質は そのまま製品性能に直結する重要なファクタとなります したがって 伝送路特性の確伝送路特性の確保は不可欠となります 任意パターンにおける伝送路のモデル化には 電磁界シミュレーションによる解析が有効な手段となりますが 活用するソルバの選択や解析の設定により 得られる解析精度や解析スピードが異なってきます 電磁界解析は考慮する項目を過度に取り込むと 不要な解析に莫大な時間を要することになり 最適な選択 設定が重要となります 最終的に問題になるのは 信号を入力した際の出力信号の品質となるため 電磁界モデルを用いた効率的な伝送特性評価 ( アイダイヤグラム解析 ) が必要となります 解決に向けた考察 電磁界解析ソリューションとして 形状データの読み込みから必要となる設定の確認 電磁界解析の設定の効果 考慮するレイアウトの範囲の効果を検証 電磁界解析で求めた伝送路モデルに信号を入力した際のアイパターンを検証 Page 4
形状データの Import ADS レイアウト (3 次元プレナー電磁界シミュレータレ Momentum 解析用 ) に解析する形状のデータ ファイルをインポート 今回はDXFファイルにてADSにファイルをImportします ( 他にも図研 CR 5000, Cadence Allegro などの CADデータの Import も可能です ) Fig. 1 DXF ファイルの Import Page 5
Momentum の設定 解析形状の選択 Fig. 1 の基板全体を電磁界解析を実行するのは 解析メモリや解析時間から 現実的ではありません そこで今回は 高速伝送路の部分の抜き出して解析を行います 抜き出すパターンは 高速伝送路部分のみ (Fig. 2 a)) と 高速伝送路 + 周辺パターン (Fig. 2 b)) の 2パターンで検証を行いました a) 高速伝送路のみ b) 高速伝送路 + 周辺パターン Fig.2 S パラメータ解析結果 Page 6
Momentum の解析精度 Momentum の精度の向上 Momentum は 3Dプレーナ (2.5 次元 ) の電磁界シミュレータですが 金属に厚みを持たせた解析を行うことができます さらに金属壁面 ( 側面 ) を垂直 水平に流れる電流も考慮することができます 水平上面 下面電流 垂直側面電流 水平側面電流 GND 隣接する金属間の側面の結合を解析可能 Via 間の結合 (mutual) も精度よく解析 Page 7
Momentum の解析 解析範囲の違いによる結果の差異 Fig. 2 のパターンを 導体厚みを持たせた設定で解析した結果をFig. 3に示します 高速伝送路のみでの解析と比較してある程度の帯域までは 高速伝送路のみの解析でも十分精度が得られることが分かります またまた Table 1 に解析時間を示します 周辺パターンも含めると Momentum の Mesh 数がかなり増大するため 解析時間が大幅に増大するため 解析時間が大幅に増大します Table 1 解析時間 グラフ赤 ( 高速伝送路 + 周辺パターン ) グラフ青 ( 高速伝送のみ ) 解析時間 19 h 41 min 17 sec 14 min 11 sec 赤 : 高速伝送路 + 周辺パターン青 : 高速伝送路のみ a) 反射特性 Fig.3 S パラメータ解析結果 b) 通過特性 Page 8
Momentum での解析結果 3D 画面での電流密度分布表示 Momentum では 解析後 パターンの電流密度分布を表示することができます ここでは 2 GHz 差動信号を入力した場合の高速伝送路 + 周辺パターンにおける電流密度分布を Fig. 4 に示します Fig.4 3D 電流密度分布表示 Page 9
Momentum での解析結果比較 3D 画面での電流密度分布表示 Fig. 5 に周辺パターンの有無による電流密度との比較を示します 両者とも 信号線と GND ラインに電流が集中していることがわかります a) 高速伝送路 b) 高速伝送路 + 周辺パターン Fig.5 3D 電流密度分布の比較 Page 10
ADS Channel Sim による Eye パターンの解析 回路シミュレーションと協調解析 ADSでは Momentumで解析した結果を簡単に回路シミュレータで利用できます 今回は 差動伝送線路に 2 Gbps の PRBS 信号を 100000 bit 入力した際の時間軸解析を行いました Fig.6は 高速伝送路のみのパターンに信号が入力した場合の 解析設定を示します 信号受信側 Momentum の解析結果 シミュレーション設定 100000 bit 分の解析 信号入力側 信号源 2 Gbps PRBS23 クロストーク解析用信号源 2 Gbps PRBS23 Fig.6 Schematic ウィンドウ ( 高速伝送路のみ ) Page 11
ADS Channel Sim による Eye パターンの解析 2 回路シミュレーションと協調解析 Fig.7 では 高速伝送路 + 周辺パターンにおける時間軸の Eye パターンの解析例を示します 信号受信側 シミュレーション設定 100000 bit 分の解析 Momentum の解析結果 信号入力側 信号源 2 Gbps PRBS23 クロストーク解析用信号源 2 Gbps PRBS23 Fig.7 Schematic ウィンドウ ( 高速伝送路 + 周辺パターン ) Page 12
ADS Channel Sim による Eye パターンの解析の比較 解析結果 Fig. 8にEyeパターンの解析結果を示します 高速伝送路のみの場合と 高速伝送路 + 周辺パターンの場合の結果と比較しましたが ほぼ同じEyeパターンの結果が得られました これは Sパラメータの結果からも推測できる結果です 従いまして 高速伝送路のみの解析でも十分精度が得られることが分かります 解析時間で比較すると 約 84 倍もの速度向上が実現できました a) 高速伝送路 + 周辺パターン b) 高速伝送路のみ Fig.8 Eye パターンの解析結果 電磁界解析の条件を最適化することにより 効率的で精度良い解析を行うことが可能 Page 13
まとめ 高速伝送路のモデル化には 3 次元プレナー電磁界シミュレータMomentumを使用して 効率的で精度のよい解析を行うことができます ADS 回路シミュレータと ADS Momentum は 簡単に協調解析を行うことができるため 時間軸解析 (Transient / Convolution / Channel Sim.) でのアイ ダイアグラムの伝送特性の検証が行え 設計している要素を組み込んだ際の特性が容易に検証可能です アジレントでは Momentum 以外にも FEM FDTD 法の電磁界シミュレータも準備しており コネクタなど 3 次元プレナー電磁界シミュレータでの対応ができないものに対してもお応えいたします 更に 計測による検証も含めたお手伝いも可能です Page 14
謝辞 最後に今回 基板データ ADS Momentumの解析の検証結果をご提供いただきました ルネサスエレクトロニクス株式会社アナログ & パワー事業本部表示システム事業部 の皆様に感謝申し上げます Page 15