161019_発表資料_後日訂正版_HP用

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新規文書1

平成 28 年熊本地震における対応 平成 28 年熊本地震 ( 前震 :4/14 本震 :4/16) において 電力 ガス等の分野で供給支障等の被害が発生 関係事業者が広域的な資機材 人員の融通を実施するなど 迅速な復旧に努めた結果 当初の想定よりも 早期の復旧が実現 また 復旧見通しを早い段階で提

☆配布資料_熊本地震検証

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目 次 第 1 章はじめに 1 第 2 章基本方針 4 ~ 安心 強靭 持続可能 な上下水道の構築 ~ 第 3 章震災からの復旧復興に向けた主要施策 5 第 4 章安定した事業経営の推進 8 ( 参考 ) 主な取り組みとスケジュール 9

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【集約版】国土地理院の最近の取組

累積火災件数 本震震最大震度 6 強の揺れを伴う地震の発生日時前累積火災件数 最大震度 7 の揺れを伴う地震の発生日時 0 4/14 4/15 4/16 4/17 4/18 4/19 4/20 4/21 図 地震の発生日時と火災の出火推定日時の関係

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平成17年7月11日(月)

問 2. 現在 該当区域内に居住していますか 1. 居住している % 2. 居住していない % 無回答 % % 単位 : 人 1.9% 32.7% 65.4% 1. 居住している 2. 居住していない無回答 回答者のうち 居住者が約 65

アンケート調査の概要 目的東南海 南海地震発生時の業務継続について 四国内の各市町村における取り組み状況や課題等を把握し 今後の地域防災力の強化に資することを目的としてアンケート調査を実施 実施時期平成 21 年 11 月 回答数 徳島県 24 市町村 香川県 17 市町 愛媛県 20 市町 高知県

平成 25 年度農林水産省委託業務報告書 平成 25 年度 水資源循環の見える化 調査 検討事業 報告書 平成 26 年 3 月 みずほ情報総研株式会社

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西宮市の工業用水の概要 工業用水とは 工場の地下水くみ上げ規制による代替用水と産業の健全な発展のために供給される水で 主に製造業に対して供給しています 工業用水道では上水道ほど厳しい水質基準を定めておらず 沈殿処理のみを行っているため 上水道に比べて安価な料金で供給しています 現在は供給能力に余裕が

2014年度_三木地区概要

1.1 阪神 淡路大震災環境省は 阪神 淡路大震災 ( 平成 7 年 1 月 17 日発生 ) の際に兵庫県及び神戸市の協力を得て 大気中の石綿濃度のモニタリング調査を実施した 当時の被災地における一般環境大気中 (17 地点 ) の石綿濃度の調査結果を表 R2.1 に 解体工事現場の敷地境界付近に

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「南九州から南西諸島における総合的防災研究の推進と地域防災体制の構築」報告書

西区05-CS5_小

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日本医師会ニュース「平成28 年熊本地震」:情報提供第五報

2 被害量と対策効果 < 死者 負傷者 > 過去の地震を考慮した最大クラス あらゆる可能性を考慮した最大クラス 対策前 対策後 対策前 対策後 死者数約 1,400 人約 100 人約 6,700 人約 1,500 人 重傷者数約 600 人約 400 人約 3,000 人約 1,400 人 軽傷者

断水戸数 ( 万戸 ) 00 総断水戸数断水発生事業体数 東日本大震災 万戸 264 事業体 阪神 淡路大震災 26.6 万戸 7 市町村 事業体 ( 市町村 ) 数 < 東日本大震災 > 4 月 7 日 4 月 日 4

特集大規模自然災害からの復旧 復興 参考 警察が検視により確認している死者数 50 名 災害による負傷の悪化または避難生活等における身体的負担による死者数 106 名 6 月 日に発生した豪雨による被害のうち熊本地震と関連が認められた死者数 5 名建物被害全壊 8,360 棟, 半壊 3

30 第 1 部現地における災害応急活動 阿蘇大橋付近の被害状況 ( 熊本県阿蘇郡南阿蘇村 ) 熊本城の被害状況 ( 熊本県熊本市 ) 2

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Microsoft Word - 目次

企業経営動向調査0908

浸水深 自宅の状況による避難基準 河川沿いの家屋平屋建て 2 階建て以上 浸水深 3m 以上 緊急避難場所, 近隣の安全な建物へ水平避難 浸水深 50 cm ~3m 緊急避難場所, 近隣の安全な建物へ水平避難上階に垂直避難 浸水深 50 cm未満 緊急避難場所, 近隣の安全な建物へ水平避難 自宅に待

<ハード対策の実態 > また ハード対策についてみると 防災設備として必要性が高いとされている非常用電源 電話不通時の代替通信機能 燃料備蓄が整備されている 道の駅 は 宮城など3 県内 57 駅のうち それぞれ45.6%(26 駅 ) 22.8%(13 駅 ) 17.5%(10 駅 ) といずれも

九州における 道の駅 に関する調査 - 災害時の避難者への対応を中心としてー ( 計画概要 ) 調査の背景等 道の駅 は 平成 16 年 10 月の新潟県中越地震 23 年 3 月の東日本大震災において 被災者の避難場所 被災情報等の発信や被災地救援のための様々な支援の拠点として活用されたことなどか

資料1 受援計画策定ガイドラインの構成イメージ

Microsoft Word - 09安城中部.docx

Microsoft Word - H29要綱_ docx

1 視察目的 平成 28 年熊本地震は 観測史上初めて 同一地域において震度 7 の地震がわずか 28 時間の間に二度も発生し 大きな被害をもたらした 後に 前震 とされる平成 28 年 4 月 14 日 ( 木 )21 時 26 分に発生した地震は 熊本県熊本地方の深さ 11 km地点を震源とし

H28秋_24地方税財源

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奈良県ライフライン 情報共有発信マニュアル 第 3.3 版 平成 24 年 7 月 奈良県ライフライン防災対策連絡会

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南海トラフ地震発生時の不安 南海トラフ地震が発生した場合 不安や危険に思うことは何ですか?( は 3 つまで ) 66.7% の人が 自宅の倒壊や損壊 49.2% の人が 家族等の安否やその確認手段 と答えています 自宅の

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5 安全 減災措置 建物建物は地震対策はなされていますか? 耐震補強 耐震 制震 免震設備状況 ( リスト ) 耐震 安全性診断 ( 発災前 ) 耐震 安全性診断を受けていますか? 施行証明書 実施状況 ( リスト ) 応急危険度判定 ( 発災後 ) 転倒 転落の防止措置 6 本部への被害状況の報告

4 災害時における他機関 他施設との協定の締結状況災害時に他機関 他施設との協定を結んでいる施設は 97 施設で 1 か所と締結している施設が多くありました 締結先は 地元自治会 町内会 病院 近隣施設 社会福祉施設 物流会社 福祉ネットワーク 市町村等でした 図 2 災害時における他機関 他施設と

~ 二次的な被害を防止する ~ 第 6 節 1 図 御嶽山における降灰後の土石流に関するシミュレーション計算結果 平成 26 年 9 月の御嶽山噴火後 土砂災害防止法に基づく緊急調査が国土交通省により実施され 降灰後の土石流に関するシミュレーション結果が公表された これにより関係市町村は

集計表H28.xlsx

(溶け込み)大阪事務所BCP【実施要領】


日本医師会ニュース「平成28年熊本地震」:情報提供第八報

先行的評価の対象とするユースケース 整理中. 災害対応に関するユースケース. 健康に関するユースケース. 移動に関するユースケース. 教育に関するユースケース. 小売 物流に関するユースケース 6. 製造 ( 提供した製品の保守を含む ) に関するユースケース 7. 農業に関するユースケース 8.

2. 防災拠点の代替施設の指定防災拠点施設が被災し使用不能となれば 災害対策本部等が設置できず 活動体制全体に遅れが生じ 迅速な災害対応を指揮することが困難となるとともに 災害対応以外の業務 ( 通常業務 ) を行うことも困難となるため 代替施設での対応が必要となります そのため 防災拠点施設におい

スライド 1

2019年トレンド予測 自動車領域

03-1 地下水利用及び地盤沈下等の状況について(H28更新版).docx

掲載頁

平成 30 年度救急業務のあり方に関する検討会報告書の概要 消防庁救急企画室 はじめに 消防庁救急企画室では 高齢化を背景として救急需要が増大する中 救急車の適正利用の推進や救急業務の円滑な実施と質の向上等 救急業務を安定的かつ持続的に提供し救命率の向上を図ることを目的に 平成 30 年度救急業務の

宮城県総合防災情報システム(MIDORI)

4:10 防災科学技術研究所第 2 回災害対策本部会議を開催 各班による状況報告による情報共有等を実施 9:34 防災科学技術研究所第 3 回災害対策本部会議を開催 各班による状況報告による情報共有等を実施 11:50 防災科学技術研究所職員が熊本県庁 ( 熊本県災害対策本部 ) に到着 16:00

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平成 24 年 11 月 6 日 大熊町住民意向調査調査結果 ( 速報版 ) 復興庁福島県大熊町 調査の概要 1. 調査対象 : 全世帯主 ( 分散避難している場合は それぞれの代表者 ) 5,378 世帯 2. 調査時期 : 平成 24 年 9 月 7 日 ( 金 )~9 月 24 日 ( 月 )

大規模災害時における罹災証明書の交付等に関する実態調査-平成28年熊本地震を中心として-

5. 防災 減災への取組強化 (2) 国土強靱化の理念の実現 既存施設の有効活用 ( 平常時と非常時における施設の効果的な活用 ) 既存の農地や農業用施設が有している防災機能を有効活用した防災 減災対策 ため池 空き容量の活用と低水位管理の推進 空き容量 洪水調整容量等 ため池廃止

して 今後広瀬ダム取水に関わる施設整備に着手する予定です 広瀬ダム水源の取水開始は 平成 25 年度を目標としています 山梨地域の各簡易水道事業は 昭和 27 年度から昭和 39 年度の間で給水を開始しています 水道施設の現状として これらの簡易水道等施設では沢水や湧水を水源としているため 降雨時の

Microsoft Word - 02.H28秋 重点提言本文【合本】1110.doc

章さらに 熊本県では 平成 31(2019 年度末の完了を目指し 大規模な地表面の亀裂やずれによる被害が発生した農地や農業用施設について 創造的復興の取組として 単に 元あった姿に戻すだけでなく 大区画化と併せた農地集積を図る基盤整備事業を行うとしくまもとしましきまちあきつあそしあそだにみなみあてい

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防災 減災への民間情報の活用の必要性 東日本大震災において 明らかになった課題 従来の情報収集の取組 職員による現地調査 報道機関からの情報 通報 検知器 ( センサー ) 課題 対応できる人員の限界 小さな地域に関する情報の不足 紙情報が多い 情報の整理 管理が困難 設備 維持費用が大きい 上記課

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P6-25

第 2 章水道事業のあゆみ 第 2 章水道事業のあゆみ 本市水道事業は 1929 年 ( 昭和 4 年 )4 月に給水を開始し その後 9 次にわたる拡張事業 を行い 人口の増加や都市の発展に伴う水需要の増加に対応してまいりました 現在は 第 9 次拡張事業 ( 第 2 回変更 )( 計画給水人口

送信日 番組開始番組終了 題名発信者備考 12/3 内部統制制度に関する説明会 (11/20) 12/4 平成 30 年度防災啓発中央研修会 (7/5-6) 12/5 ファイアーファイティングスピリッツ -もうひとつの生き方 見つけた - 12/5 15:19 全国市長会創立 120 周年記念市長フ

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利水補給

(2) 消火用屋外給水施設の点検の方法 別添点検基準 ( 案 ) のとおり (3) 経年劣化及び詳細な点検を行う消火用屋外給水施設の把握 設置から 40 年を経過した消火用屋外給水施設の把握は 消火用屋外給水施設とし て完成した日 ( 完成検査の日 ) とする (4) 留意事項本点検の考え方は 消火

評価項目 評価ポイント 所管部局コメント 評価 国際交流に関する情報の収集及び提供事業国際交流活動への住民の参加促進事業国際理解推進事業在住外国人に対する相談事業在住外国人に対する支援事業 安定 確実な施設運営管理 公正公平な施設使用許可や地域に出向いた活動に取り組むなど新たな利用者の増加に努め 利

第 1 章熊本地震の概要 執筆 : 阿部直樹 ( 国立研究開発法人防災科学技術研究所 ) 1-1 熊本地震動の概要 2016 年 4 月 14 日 21 時 26 分頃 熊本県熊本地方の深さ約 11km を震源とする M6.5 の地震が発生し 熊本県上益城郡益城町において震度 7を観測した また約

目次 はじめに P3 1 災害 緊急の範囲 P3 2 時間と場所を考慮した対応の必要性 P3 3 時間ごとの対応 P4 4 場所ごとの対応 P5 5 デジタルサイネージの提供コンテンツ P6 6 緊急時を意識したデジタルサイネージシステム P6 7 情報の切替 復帰の条件 P7 8 緊急運用体制 P

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1 東日本大震災での多くの被害が発生!! 平成 23 年 2011 年 3 月 11 日に発生した東日本大震災は 三陸沖を震源としたマグニ チュード 9.0 仙台市内での最大震度 6 強 宮城野区 という巨大な地震でした 東部沿岸地域では 推定 7.1m 仙台港 もの津波により 家屋の浸水やライフラ

国土技術政策総合研究所 研究資料

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日本医師会ニュース「平成28年熊本地震」:情報提供第六報

○ 訪日外国人旅行者の受け入れ環境整備事業

Report

での停電戸数は3.8 万戸となった 西原村では4 月 18 日 12 時 益城町では同日 22 時に通電が完了したとされているが 家屋倒壊や道路損壊による復旧困難箇所については復旧対象から除外されている 一方 阿蘇地方 ( 阿蘇市 高森町 南阿蘇村 ) では 大規模な土砂崩れにより66KV 送電線の

の復旧状況に関する長期的な見通しを可能な限り明らかにしながら 復旧の段階に 応じた役割の分析を行う 5) 交通事業者ヒアリング調査沿線地域に関係する交通事業者 ( 鉄道事業者 2 社 バス事業者 2 社 タクシー事業者 2 社その他 ) に聞き取り調査を行い 定性的な利用特性や地域の公共交通の問題点

4 被災生活の環境整備主な修正概要 避難所毎に運営マニュアルを作成し 避難所の良好な生活環境を確保するための運営基準等を明確にしておく 避難所運営マニュアルの作成 訓練等を通じて 住民の避難所の運営管理に必要な知識の普及に努める 県 DMAT( 災害時派遣医療チーム ) の活動終了以降の医療提供体制

熊本県地下水保全条例の一部を改正する条例の概要 平成 24 年 3 月環境立県推進課 環境保全課 1 熊本県地下水保全条例の沿革 1 昭和 53 年 12 月 熊本県地下水条例 制定 地下水は 県民の生活に欠くことのできない重要な資源 として 指定地域における一定規模以上の地下水採取の届出制等を規定

東日本大震災 (H ) 地震時の情報収集や提供に関する課題 国 地方公共団体などが連携した被災者や物資輸送者への交通関係情報の提供 大震災直後は 各管理者から別々に通行止め情報等が提供されたため 被災地までの輸送ルートの選定が困難な状況 国が集約して提供を始めたのは10 日以上過ぎた3/

2

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1. はじめに この 高森町復旧 復興計画 は 平成 28 年熊本地震 ( 以下 熊本地震 と言う ) からの早期の復旧 そして 地震前よりも発展した高森町への復興 すなわち創造的復興を目指すための具体的な取組を示し 復旧 復興を着実に進めていくために策定するものである 今後 この計画を元に熊本地震

資料1 第3回災害救助に関する実務検討会における意見に対する回答

1 首都直下地震の概要想定震度分布 (23 区を中心として震度 6 強の想定 ) 首都直下地震 想定震度分布 出典 : 中央防災会議首都直下地震対策検討ワーキンググループ 首都直下地震の被害想定と対策について ( 最終報告 ) ( 平成 25 年 12 月 ) 2

Transcription:

2016.10.20 2016 年熊本地震を受けて熊本地域の 地下水に関わる対応の現状と今後 古閑仁美 (( 公財 ) くまもと地下水財団 ) 濵田菜穂子 ( 同 )

目次 1. 調査概要 調査の背景アンケート調査概要ヒアリング調査概要 2. 調査結果 アンケート調査結果 地下水の使用状況について 地震後の地下水の変化について 地域住民等への水の提供について 今後の災害時の水の提供について ヒアリング調査結果 : 主な意見紹介 3. まとめ 4. 今後に向けて 1

財団 HP http://kumamotogwf.or.jp/ 2

調査の背景 熊本地域は地下水を水道水源としており 地下水はなくてはならない資 源である そこで 地震後の地下水の変化状況や利用について地下水使用者の生の 声を聞き 災害時の地下水利用について課題等を整理することで 今後に 生かしていく 沈降 出典 国土地理院ウェブサイト 平成28年熊本地震関連資料 地理院地図 隆起 準上下成分の変動量 水前寺成趣味園の様子 5/18撮影 3

調査の背景 第 2 回厚生科学審議会生活環境水道部会水道事業の維持 向上に関する専門委員会資料 1-1 より抜粋 追記 ( 熊本県内 ) 最大断水戸数 : 約 430,000 戸 ( 熊本市内 ) 最大断水戸数 : 約 327,000 戸 4/16 ( 本震 ) 2 週間 4/30 18:00 熊本市内全域で水道水供給 4/14 ( 前震 ) 4

調査概要 1.2 アンケート調査概要 調査対象 調査期間 調査の方法 財団の全賛助会員 (318 会員 個人会員を除く ) 熊本市大口取水企業 (34 社 : 財団の賛助会員を除く ) 2016.8.9~2016.9.30 郵送配付 111 社から回答 うち有効回答は 107 社 ( 有効回答率 :30.3%) 主な質問内容 地下水の使用状況について 地震後の井戸の状況 地下水位 水質の変化について 地震後の地域住民等への水の提供について 今後の対策等について 1.3 ヒアリング調査概要 調査対象 調査期間 調査の方法 主な質問内容 病院 :2 製造業 :2 食品関係 :2 水道事業者 :2 農業関係者 :2 その他 :2 計 :12 社 2016.7.4~2016.8.26 の間の 6 日間 各社を訪問し 担当者と当時の状況等の聞きとりを実施 災害への備えについて 地震後のライフラインの状態 地震後の井戸の状況 地下水位 水質の変化について 最悪条件下の想定について 地震後の地域住民等への水の提供について 今後の対策等について 5

アンケート調査結果 地下水の使用状況について 地震後の地下水の変化について 写真 : 嘉島町の湧水の様子 (4/22 撮影 ) 34.6% は地下水のみ使用 46% で濁りが確認された 6

アンケート調査結果 地域住民等への水の提供について 今後の災害時の水の提供について 51.9% が提供あり 76% が水の提供ができる 写真提供 :( 公財 ) 熊本市上下水道サービス公社 7

ヒアリング調査結果 : 主な意見の紹介 ましきまち 本震後には全ての水源で濁度が上昇し取水停止 熊本市は最終的な復旧までに約 2 週間 益城町は約 3 週間 水源自体の濁りは早期に回復 ( 早いところで1 日程度 ) ただし 末端部では濁り等が続いた 益城町は水質検査は外部委託 1 日程度で結果はでるが 常時検査はできない 8

ヒアリング調査結果 : 主な意見の紹介 他医療機関との連携として 広域災害 救急医療情報システム (EMIS) があり 被害情報の発信や 情報収集が可能 災害時に水の供給は可能 容器の提供などの支援があるとよい 学生が駐車場の整理等も含めてボランティアとして給水に対応 主に飲用以外の生活用水として給水にきていた 近隣に水を提供する施設が複数個所あれば 人が分散されたと感じる ただし 駐車スペースや人員の問題はある 9

ヒアリング調査結果 : 主な意見の紹介 地域の方に水を提供できなかった 多数への対応ができないと判断 行政等の許可 要請がない状態での水の提供について 水質的な風評被害などを危惧 事前の仕組みづくりができていれば対応可能であった 水の提供について どういった形で提供するか ( 例えば 貯水タンク等でまとめて運んでもらう等 ) は検討が必要 災害等で地下水が使用できなくなった場合は操業ができない ( 上水道に切り替えて対応はできない ) 10

ヒアリング調査結果 主な意見の紹介 地震関連での火災は9件 全焼は前震後の益城町で1件 熊本市は全域で消火栓が整備されている 断水時は消火栓は使えない 消火栓 防火水槽 自然水利等の順番で水を確保 消防水利として民間井戸の使用は考えていない 地域の方は 湧水を汲みに行き生活用水として使用 写真 益城町の湧水の様子11

災害用井戸 ( 手動ポンプを備えた井戸 ) 熊本県内には甲佐町に4 基 熊本市内に民間企業設置の1 基 甲佐町は避難所である小学校に設置 断水しなかったため災害用井戸は使用されなかった 熊本市内にある民間の災害用井戸では近隣住民が給水できた 写真提供 : 全国さく井協会九州支部 12

農業被害による地下水への影響を懸念 上井出は護岸の崩壊がひどい状態 復旧を優先し 来年の4 月 1 日まで水を流さない 今年は飼料用稲 大豆に転換 湛水面積 も通常の 3 割程度に減少 写真提供 : 大菊土地改良区 水田に断層による亀裂や段差が生じ 水 が溜まらないなどの被害 復旧を優先するため 今年度の冬期湛水 は中止する予定 益城町の水田の断層の様子 13

まとめ災害時の地下水利用についての課題 教訓 災害時に水が長期間使用できない想定はされていない 地下水も上水道もどちらも使えない想定で災害対策計画をたてている企業等はない 災害時の地下水の提供に対する不安がある 地下水を提供する場合の判断基準がなく 提供を断念しているケースがある 災害時の水の提供は井戸所有者の協力によるもの 地下水の地域住民への提供については 自身も被災者である企業の自助努力となっている 井戸情報 ( 地下水情報 ) の管理 発信をとりまとめるところがない 情報は避難者の SNS 等で発信される場合が多く 情報提供された場所に人が集中している 14

まとめ災害時の地下水利用についての課題 教訓 災害時に水が長期間使用できない想定はされていない長期間の断水を想定した災害対策計画の策定 地下水も上水道もどちらも使えない想定で災害対策計画をたてている企業等はない今回の災害規模に対応可能な災害対策計画への見直し 災害時の地下水利用についての事前の仕組みづくりが必要災害時の地下水の提供に対する不安がある 地下水を提供する場合の判断基準がなく 提供を断念しているケースがある提供等に関する課題を整理し 提供についての条件を協議していく 災害時の水提供が可能な協力井戸や災害用井戸の設置の検討が必要災害時の水の提供は井戸所有者の協力によるもの 地下水の地域住民への提供については 自身も被災者である企業の自助努力となっている給水に関する人員体制や用地等も含めて検討することが望ましい 地下水を含めた水に関する情報収集 提供等のシステム整備が必要井戸情報 ( 地下水情報 ) の管理 発信をとりまとめるところがない 情報は避難者の防災マップ等と連携した災害情報の一つとして情報発信していくことが望ましい SNS 等で発信される場合が多く 情報提供された場所に人が集中している 15

今後に向けて 大規模災害時の備えとして 災害時の地下水供給に関する協力事業者と の協定等の準備 熊本市が企業等との災害時の井戸使用について検討を開始している 井戸利用を含めたな水に関する情報提供システムの整備 上記検討と同時に災害時に使用可能な井戸マップの整備を検討中 熊本地震が及ぼした農業被害による地下水への影響を注視 大学の先生等が地下水位や水質の変動を分析しており データ提供等に財団も協力 財団も 情報収集を行っていく 16

財団 HP http://kumamotogwf.or.jp/ 17