平成 27 年 8 月 5 日判決言渡 平成 25 年 ( 行ウ ) 第 239 号固定資産評価審査棄却決定取消請求事件 主 文 1 原告の請求を棄却する 2 訴訟費用は原告の負担とする 事実及び理由 第 1 請求吹田市固定資産評価審査委員会が平成 25 年 5 月 15 日付けで原告に対してした別

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平成  年(オ)第  号

11総法不審第120号

し, これを評点 1 点当たりの価額に乗じて, 各筆の宅地の価額を求めるものとしている 市街地宅地評価法は,1 状況が相当に相違する地域ごとに, その主要な街路に沿接する宅地のうちから標準宅地を選定し,2 標準宅地について, 売買実例価額から評定する適正な時価を求め, これに基づいて上記主要な街路の

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1 天神 5 丁目本件土地及び状況類似地域 天神 5 丁目 本件土地 1 状況類似地域 標準宅地

11総法不審第120号

11総法不審第120号

路線価図

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11総法不審第120号

控訴人は, 控訴人にも上記の退職改定をした上で平成 22 年 3 月分の特別老齢厚生年金を支給すべきであったと主張したが, 被控訴人は, 退職改定の要件として, 被保険者資格を喪失した日から起算して1か月を経過した時点で受給権者であることが必要であるところ, 控訴人は, 同年 月 日に65 歳に達し

目 次 1 固定資産税と固定資産税評価 1 1 固定資産税とは 1 2 固定資産税の課税のしくみ 2 (1) 固定資産税を納める人 ( 納税義務者 ) 2 (2) 税額の計算 2 2 固定資産税評価のあらまし 1 固定資産税評価の意義 2 固定資産税評価によって求める価格とは 3 固定資産の価格を求

丙は 平成 12 年 7 月 27 日に死亡し 同人の相続が開始した ( 以下 この相続を 本件相続 という ) 本件相続に係る共同相続人は 原告ら及び丁の3 名である (3) 相続税の申告原告らは 法定の申告期限内に 武蔵府中税務署長に対し 相続税法 ( 平成 15 年法律第 8 号による改正前の

固定資産評価審査申出とは

11総法不審第120号

事実 ) ⑴ 当事者原告は, 昭和 9 年 4 月から昭和 63 年 6 月までの間, 被告に雇用されていた ⑵ 本件特許 被告は, 次の内容により特定される本件特許の出願人であり, 特許権者であった ( 甲 1ないし4, 弁論の全趣旨 ) 特許番号特許第 号登録日平成 11 年 1

処分済み

処分済み

1. 固定資産税 都市計画税について 固定資産税は 毎年 1 月 1 日 ( 賦課期日 といいます ) 現在に土地 家屋 償却資産 ( こ れらを総称して 固定資産 といいます ) を所有している人が その固定資産の所在する 市町村に納める税金です 都市計画税は 下水道 街路 公園などの都市計画事業

平成  年(オ)第  号

む ), 倉庫その他の建物をいう ( 同条 3 号 ) 固定資産課税台帳 とは, 土地課税台帳, 土地補充課税台帳, 家屋課税台帳, 家屋補充課税台帳及び償却資産課税台帳を総称するものである ( 同条 9 号 ) 家屋課税台帳 とは, 登記簿に登記されている家屋 ( 建物の区分所有等に関する法律 (

川崎都市計画事業登戸土地区画整理事業

上陸不許可処分取消し請求事件 平成21年7月24日 事件番号:平成21(行ウ)123 東京地方裁判所 民事第38部

1 項で, 道府県知事は, 固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されている不動産については, 当該価格により当該不動産に係る不動産取得税の課税標準となるべき価格を決定するものとする旨を定め, 同条 2 項で, 道府県知事は, 固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されていない不動産又は当該固定資産

宅地 雑種地 田に土盛りをして畑とした土地牧草栽培地 農業用施設の内部で用水を利用しないで耕作する土地 家屋建築用地として造成され 道路 上下水道 公共施設等を備えている土地建物に付随する広場 庭園 通路等に過ぎないと認められる土地 工場又は営業場に接続する物干場又はさらし場用地 家屋の敷地内にある

11総法不審第120号

とは適正な時価をいう旨, 6 号で 基準年度 とは昭和 3 1 年度及び昭和 3 3 年度並びに昭和 3 3 年度から起算して 3 年度又は 3 の倍数の年度を経過したごとの年度をいう旨, 7 号で 第二年度 とは基準年度の翌年度をいう旨, 8 号で 第三年度 とは第二年度の翌年度 ( 中略 ) を

高島市職員措置請求に係る監査の結果について 第 1 請求の受付 1 請求書の提出平成 29 年 9 月 28 日 2 請求人 3 請求の要旨 ( 高島市職員措置請求書 の原文のまま記載) 1 請求の要旨高島市長による平成 29 年度の固定資産税の賦課において 別紙の固定資産について 家屋の未評価によ

7 という ) が定める場合に該当しないとして却下処分 ( 以下 本件処分 という ) を受けたため, 被控訴人に対し, 厚年法施行令 3 条の12の7が上記改定請求の期間を第 1 号改定者及び第 2 号改定者の一方が死亡した日から起算して1 月以内に限定しているのは, 厚年法 78 条の12による

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第 4 審理員意見書の結論 本件各審査請求は理由がないから 行政不服審査法 4 5 条 2 項に より いずれも棄却すべきである 第 5 調査審議の経過審査会は 本件諮問について 以下のように審議した 年月日審議経過 平成 30 年 3 月 6 日 諮問 平成 30 年 4 月 26 日審議 ( 第

取得に対しては 分割前の当該共有物に係る持分割合を超える部分の取得を除いて 不動産取得税を課することができないとするだけであって 分割の方法に制約を設けているものではないから 共有する土地が隣接している場合と隣接していない場合を区別し 隣接していない土地を一体として分割する場合に非課税が適用されない

ウ商業地等である 町の土地の平成 28 年度分の固定資産税の課税標準額は 法附則第 18 条第 5 項及び第 25 条第 5 項の規定により 課税標準となるべき価格に0.7を乗じた額となる なお 岐阜市税条例 ( 昭和 25 年岐阜市条例第 14 号 以下 条例 という ) においては これと異なる

土地の概要 - 1 事例 A 8, m2 正面路線価 150 千円 借地権割合 70% 地区区分 ビル街地区 5.0 m m 地形 (: 計算方法 ) 旗状地 同説明 旗地 敷地延長とも言われる 狭小 奥行長大が適用されることが多い 路線価 ( 千円 ) 奥行補正 狭小 奥行

第 6 回令和元年度固定資産評価実務者勉強会 第 3 部 税理士による最近の各種課税評価に関するお話 講師 : 税理士 不動産鑑定士 赤川明彦 ( 株式会社土地評価センター取締役 ) copyright 2019 KOTOBUKI PROPERTY ASSESSMENT all rights res

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計算式 1 1 建物の価額 ( 固定資産税評価額 ) =2 長期居住権付所有権の価額 +3 長期居住権の価額 2 長期居住権付所有権の価額 ( 注 1) =1 固定資産税評価額 法定耐用年数 ( 経過年数 + 存続年数 ( 注 3)) 法定耐用年数 ( 注 2) 経過年数 ライプニッツ係数 ( 注

次のように補正するほかは, 原判決の事実及び理由中の第 2に記載のとおりであるから, これを引用する 1 原判決 3 頁 20 行目の次に行を改めて次のように加える 原審は, 控訴人の請求をいずれも理由がないとして棄却した これに対し, 控訴人が控訴をした 2 原判決 11 頁 5 行目から6 行目

特例適用住宅 という ) が新築された場合 ( 当該取得をした者が当該土地を当該特例適用住宅の新築の時まで引き続き所有している場合又は当該特例適用住宅の新築が当該取得をした者から当該土地を取得した者により行われる場合に限る ) においては, 当該土地の取得に対して課する不動産取得税は, 当該税額から

7 平成 28 年 10 月 3 日 処分庁は 法第 73 条の2 第 1 項及び条例第 43 条第 1 項の規定により 本件不動産の取得について審査請求人に対し 本件処分を行った 8 平成 28 年 11 月 25 日 審査請求人は 審査庁に対し 本件処分の取消しを求める審査請求を行った 第 4

税理士法人チェスター【紹介】

(イ係)

達したときに消滅する旨を定めている ( 附則 10 条 ) (3) ア法 43 条 1 項は, 老齢厚生年金の額は, 被保険者であった全期間の平均標準報酬額の所定の割合に相当する額に被保険者期間の月数を乗じて算出された額とする旨を定めているところ, 男子であって昭和 16 年 4 月 2 日から同

1 審査会の結論 平成 28 年度市民税 県民税の賦課決定処分 に係る審査請求は棄却する べきであるとの審査庁の判断は妥当である 2 事案概要南区長 ( 以下 処分庁 という ) は 地方税法 ( 昭和 25 年法律第 226 号 以下 法 という ) 第 24 条及び第 294 条並びに横浜市市税

12. 地価公示は 土地鑑定委員会が 毎年 1 回 2 人以上の不動産鑑定士の鑑定評価を求め その結果を審 査し 必要な調整を行って 標準地の正常な価格を判定し これを公示するものである 13. 不動産鑑定士は 土地鑑定委員会の求めに応じて標準地の鑑定評価を行うに当たっては 近傍類地の取 引価格から

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す ) 5 地区 地域内の各筆の評価 ( 一画地の宅地ごとに評価額を算出します < 土地に対する課税 > (1) 評価のしくみ固定資産評価基準によって 地目別に定められた評価方法により評価します 平成 6 年度の評価替えから 宅地の評価は 地価公示価格の 7 割を目途に均衡化 適正化が図られています

算税賦課決定 (5) 平成 20 年 1 月 1 日から同年 3 月 31 日までの課税期間分の消費税及び地方消費税の更正のうち還付消費税額 6736 万 8671 円を下回る部分及び還付地方消費税額 1684 万 2167 円を下回る部分並びに過少申告加算税賦課決定 (6) 平成 20 年 4 月

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税務訴訟資料第 267 号 -70( 順号 13019) 大阪高等裁判所平成 年 ( ) 第 号更正をすべき理由がない旨の通知処分取消請求控訴事件国側当事者 国 ( 富田林税務署長 ) 平成 29 年 5 月 11 日棄却 上告受理申立て ( 第一審 大阪地方裁判所 平成 年 ( ) 第 号 平成

により容易に認められる事実 ) (1) 当事者等ア原告は, 亡 AとBとの間の子である 原告は, 所得税法 16 条 2 項の規定により, その営む事業に係る事業場の所在地である渋谷区を納税地としている イ亡 Aは, 平成 年 月 日に死亡し, 原告は, 渋谷区 α 番地 1ほか所在の区分所有建物及

02 条の3に規定する固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例 ( 以下 本件特例 という ) の適用を受ける住宅用地に該当せず, その余の部分に限り上記の住宅用地に該当するものとして, 平成 26 年 6 月 2 日付けで平成 26 年度分の固定資産税及び都市計画税の各賦課決定 ( 以下, 併せて

第 5 章 N

11総法不審第120号

販売用不動産の時価評価の基準(案)と論点

被上告人に対し, 上記各賦課決定の取消しを求めている事案である 2 原審の適法に確定した事実関係等の概要は, 次のとおりである (1) 上告人は, 東京都渋谷区内に所在する面積が200m2以下である本件土地及びこれを敷地とする第 1 審判決別紙物件目録記載の建物 ( 以下 旧家屋 という ) を所有

である旨の証券取引等監視委員会の指導を受け, 過年度の会計処理の訂正をした 本件は, 本件事業年度の法人税について, 控訴人が, 上記のとおり, その前提とした会計処理を訂正したことにより, 同年度の法人税の確定申告 ( 以下 本件確定申告 という ) に係る確定申告書の提出により納付すべき税額が過

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平成  年 月 日判決言渡し 同日判決原本領収 裁判所書記官

ており 土地の個別的要因に係る補正が全て考慮されたものとなっていることから 土地の形状 道路との位置関係等に基づく個別的要因に係る補正 すなわち評価通達 15(( 奥行価格補正 )) から 20(( 不整形地の評価 )) まで及び 20-3(( 無道路地の評価 )) から 20-6(( 容積率の異な

旨の申告 ( 以下 本件申告 という ) をしたところ, 処分行政庁から, 本件不動産取得税を還付しない旨の処分 ( 以下 本件処分 という ) を受けたため, 処分行政庁が所属する東京都を被告として, 本件処分の取消しを求める事案である 原判決は, 控訴人の請求を棄却したので, これを不服とする控

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審 査 請 求 事 務 取 扱 要 領

平成 30 年 10 月 26 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 30 年 ( ワ ) 第 号発信者情報開示請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 9 月 28 日 判 決 5 原告 X 同訴訟代理人弁護士 上 岡 弘 明 被 告 G M O ペパボ株式会社 同訴訟代理人弁護士

(2) B 社に係る破産事件等東京地方裁判所は, 平成 21 年 2 月 24 日,B 社を再生債務者として, 再生手続開始の決定をした しかし, 東京地方裁判所は, 同年 3 月 24 日,B 社の事業継続を不可能とする事実が明らかになったとして, 再生手続廃止の決定をするとともに, 再生手続廃止

最高裁○○第000100号

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情報の開示を求める事案である 1 前提となる事実 ( 当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実 ) 当事者 ア原告は, 国内及び海外向けのモバイルゲームサービスの提供等を業とす る株式会社である ( 甲 1の2) イ被告は, 電気通信事業を営む株式会社である

の補正書 において, 審査請求の趣旨を この開示請求は本人の給与のみずましにかかわる書面である為 としているが, 原処分を取り消し, 本件対象保有個人情報の開示を求めている審査請求として, 以下, 原処分の妥当性について検討する 2 原処分の妥当性について (1) 給与所得の源泉徴収票について給与所

定している (2) 通達等の定めア 生活に困窮する外国人に対する生活保護の措置について ( 昭和 29 年社発第 382 号厚生省社会局長通知 以下 昭和 29 年通知 という 乙 1) は, 一項本文において, 生活保護法第 1 条により, 外国人は法の適用対象とならないのであるが, 当分の間,

固定資産税の課税のしくみ < 評価額と課税標準額と税額の推移 > ( 土地編 ) 課税標準額 評価額 税 額 なぜ, 地価が下落しているのに, 土地の固定資産税が上昇するの!? 2 なぜ, 平成 6 年評価額が急激に上昇したの!? 3 < 公的土地評価相互の均衡と適正化 > < 地価公示価格の一定割

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( 賦課期日 ) 第 4 条都市計画税の賦課期日は 当該年度の初日の属する年の1 月 1 日とする ( 納期 ) 第 5 条都市計画税の納期は 次のとおりとする 第 1 期 4 月 1 日から同月 30 日まで第 2 期 7 月 1 日から同月 31 日まで第 3 期 12 月 1 日から同月 25

されている そして 市町村長 ( 東京都の特別区においては 法七三四条一項の規定により 東京都知事 以下同じ ) は評価基準によって固定資産の価格を決定しなければならないとされ ( 法四〇三条一項 ) 固定資産の価格等を決定し 価格等を登録した場合には その結果の概要調書を作成し 毎年四月中にこれを

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『知っておきたい 不動産所有コストの中身と抑えるコツ』

◆JREI固定インフォ No9◆◆〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

という ) 開始に係る各相続税 ( 以下 本件各相続税 という ) の申告をしたところ, 処分行政庁から本件各相続税の各更正及びこれらに係る重加算税の各賦課決定を受け, 裁決行政庁からこれらに係る原告らの審査請求を却下する旨の各裁決を受けたのに対し, 上記各更正のうち原告らが主張する納付すべき税額を

平成 25 年 3 月 25 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 2 月 25 日 判 決 原 告 株式会社ノバレーゼ 訴訟代理人弁理士 橘 和 之 被 告 常磐興産株式会社 訴訟代理人弁護士 工 藤 舜 達 同 前 川 紀 光

被告に対し, 著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償として損害額の内金 800 万円及びこれに対する不法行為の後の日又は不法行為の日である平成 26 年 1 月 日から支払済みまで年 % の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である 1 判断の基礎となる事実 ( 当事者間に争いのない事実又は後掲の各

自治基本条例素案のたたき台大和市自治基本条例をつくる会

1/12 三豊市若者定住促進 地域経済活性化事業補助金交付要綱 三豊市若者定住促進 地域経済活性化事業補助金交付要綱平成 24 年 7 月 10 日告示第 256 号改正平成 26 年 3 月 20 日告示第 46 号平成 26 年 3 月 31 日告示第 88 号平成 27 年 3 月 31 日告

11総法不審第120号

の上記アの期間に係る標準報酬月額を44 万円に訂正する必要がある旨のあっせんをした ( 甲 1の18ないし21 頁, 丙 4) (2) Aの標準報酬月額の決定等ア厚生年金保険法 ( 平成 24 年法律第 62 号による改正前のもの 以下 厚年法 という )100 条の4 第 1 項 3 号及び4 号

最高裁○○第000100号

指定商品とする書換登録がされたものである ( 甲 15,17) 2 特許庁における手続の経緯原告は, 平成 21 年 4 月 21 日, 本件商標がその指定商品について, 継続して3 年以上日本国内において商標権者, 専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが使用した事実がないことをもって, 不使用に

二予備的請求主文第二項 第三項同旨第二事案の概要一事案の要旨本件は 本件土地一ないし五を所有する原告 AR 及び本件土地六を所有する原告 CCが 同各土地について固定資産課税台帳に登録された平成九年度の固定資産課税台帳登録価格について 適正な時価を上回る違法なものであるとして 被告に対して審査の申し

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~ 都市計画道路予定地の評価 ~ 今回の豆知識では 我々不動産鑑定士が日常の評価業務において良く目にする 都市計画 道路予定地 の評価について取り上げてみたいと思います 1. 都市計画道路とは? 都市計画法では 道路 公園 下水道処理施設等の施設 ( 都市施設 ) のうち必要なものを都市計画に定める

無い (3) 特定市が振興協会会長 Aと市教育委員会とで一体に推進した当該文化事業は事業の実施前と実施後のまちの変化における事業の効果について国への報告義務があり, 公正に適法に事業を行う責務の存在は当該文化事業の目標の1は中心市街地の賑わいの促進にあって中心市街地活性化ソフト事業であって公開されて

第 1 基本的事項 1 業務内容についての順守事項本業務を行う不動産鑑定士又は不動産鑑定士補 ( 以下 不動産鑑定士等 という ) は 本業務が単に個別地点について行う鑑定評価と異なり 同一価格時点で大量に行う鑑定評価であり 特に面的な価格の均衡が求められる固定資産税評価のための基礎資料を作成するも

11総法不審第120号

11総法不審第120号

により容易に認められる事実 ) (1) 当事者等ア原告は,Aの子である イ Aは, 大正 年 月 日生まれの男性であり, 厚生年金保険の被保険者であったが, 平成 年 月 日, 死亡した ( 甲 1) (2) 老齢通算年金の受給 Aは, 昭和 年 月に60 歳に達し, 国民年金の納付済期間である18

相続財産の評価P64~75

不動産鑑定士からみた広大地評価の留意点 (1) 広大地かどうかを判断するには 1 チェック項目 大規模工業用地ではない? または 1,000 m2以上? はい 1,000 m2以上あります 最寄の駅から徒歩 15 分以上? はい 15 分以上かかります周辺は住宅地でマンションが建っていない? はい

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平成 27 年 8 月 5 日判決言渡 平成 25 年 ( 行ウ ) 第 239 号固定資産評価審査棄却決定取消請求事件 主 文 1 原告の請求を棄却する 2 訴訟費用は原告の負担とする 事実及び理由 第 1 請求吹田市固定資産評価審査委員会が平成 25 年 5 月 15 日付けで原告に対してした別紙物件目録記載の土地に係る原告の持分の固定資産課税台帳に登録された平成 24 年度の価格についての審査の申出に対する決定のうち,699 万 5 756 円を超える部分を取り消す 第 2 事案の概要本件は, 別紙物件目録記載の土地 ( 以下 本件土地 という ) の共有者である原告が, 吹田市長が固定資産課税台帳に登録した本件土地に係る原告の持分 ( 以下 本件持分 という ) の平成 24 年度の登録価格 ( 以下 本件登録価格 という ) を不服として, 吹田市固定資産評価審査委員会 ( 以下 審査委員会 という ) に対して審査の申出をしたところ, 審査委員会が, これを棄却する旨の決定 ( 以下 本件決定 という ) をしたことから, 被告に対し, 本件決定のうち原告主張額を超える部分の取消しを求める事案である 1 地方税法の定め (1) 固定資産税の課税客体, 課税標準等ア固定資産税は, 固定資産に対し, 当該固定資産所在の市町村において, 固定資産の所有者に課され, その賦課期日は, 当該年度の初日の属する年の1 月 1 日とする (342 条 1 項,343 条 1 項,359 条 ) イ基準年度 ( 昭和 31 年度及び昭和 33 年度並びに昭和 33 年度から起算して3 年度又は3の倍数の年度を経過したごとの年度をいう 341 条 6 1

号 以下同じ ) に係る賦課期日に所在する土地に対して課する基準年度の固定資産税の課税標準は, 当該土地の基準年度に係る賦課期日における価格 ( 適正な時価をいう 341 条 5 号 以下同じ ) で土地課税台帳等に登録されたものとする (349 条 1 項 ) ウ区分所有に係る家屋の敷地の用に供されている土地 ( 以下 共用土地 という ) で, 当該共用土地に係る区分所有に係る家屋の区分所有者全員によって共有されているものであること等の要件を満たすものに対して課する固定資産税については, 当該共用土地に係る納税義務者で当該共用土地に係る区分所有に係る家屋の各区分所有者である者 ( 以下 共用土地納税義務者 という ) は, 当該共用土地に係る固定資産税額を当該共用土地に係る各共用土地納税義務者の当該共用土地に係る持分の割合によって按分した額を, 当該各共用土地納税義務者の当該共用土地に係る固定資産税として納付する義務を負う (352 条の2 第 1 項 ) (2) 固定資産の評価及び価格の決定総務大臣は, 固定資産の評価の基準並びに評価の実施の方法及び手続を定め, これを告示しなければならず (388 条 1 項前段 ), 市長村長は, 上記の基準等によって固定資産の価格を決定しなければならない (403 条 1 項 ) 2 前提となる事実以下の事実は, 当事者間に争いがないか, 後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認めることができる (1) 評価基準及び評価要領ア総務大臣 ( 平成 13 年 1 月 5 日以前は自治大臣 ) は, 地方税法 388 条 1 項前段の基準等として, 固定資産評価基準 ( 昭和 38 年 12 月 25 日自治省告示第 158 号 以下 評価基準 という ) を定めて告示しており, 評価基準は, 宅地の評価について, 概要, 次のとおり定める ( 甲 8) ( ア ) 宅地の評価 2

宅地の評価は, 各筆の宅地について評点数を付設し, 当該評点数を評点 1 点当たりの価額に乗じて各筆の宅地の価額を求める方法による ( 第 1 章第 3 節一 ) ( イ ) 評点数の付設各筆の宅地の評点数は, 主として市街地的形態を形成する地域における宅地については, 次のとおり, 市街地宅地評価法により, 付設する ( 第 1 章第 3 節二 ( 一 )) a 宅地の利用状況を基準として商業地区, 住宅地区, 工業地区等に区分された地区について, その状況が相当に相違する地域ごとに, その主要な街路に沿接する宅地のうちから標準宅地を選定する b 標準宅地について, 適正な時価を求め, これに基づいて沿接する主要な街路について路線価を付設し, これに比準して主要な街路以外の街路の路線価を付設する c 路線価を基礎として, 後記 ( ウ ) の画地計算法を適用して各筆の宅地の評点数を付設する この場合において, 市町村長は, 宅地の状況に応じ, 必要があるときは, 画地計算法の附表等につき, 所要の補正をして適用する ( ウ ) 画地計算法 a 各筆の宅地の評点数は, 各筆の立地条件に基づき, 路線価を基礎とし,1 画地の宅地ごとに, 画地計算法 (1 奥行価格補正割合法,2 側方路線影響加算法,3 二方路線影響加算法及び4 不整形地, 無道路地, 間口が狭小な宅地等評点算出法 ) を適用して求めた評点数によって付設する ( 別表第 3の1 2) b 宅地の価額は, 道路からの奥行が長くなるに従って, また, 奥行が著しく短くなるに従って漸減するものであるから, その一方においてのみ路線に接する画地については, 路線価に当該画地の奥行距離に応 3

じ 奥行価格補正率表 ( 別表第 3 附表 1) によって求めた奥行価格補正率を乗じて当該画地の単位地積当たり評点数を求める ( 別表第 3 の3) c 不整形地 ( 三角地及び逆三角地を含む ) の価額については, 整形地に比して一般に低くなるものであるので, 奥行価格補正割合法等によって計算した単位当たり評点数に 不整形地補正率表 ( 別表第 3 附表 4) によって求めた不整形地補正率を乗じて当該不整形地の単位地積当たり評点数を求める ( 別表第 3の7(1)1) なお, 奥行価格補正割合法の適用に当たっては, その画地の不整形の程度, 位置及び地積の大小に応じ, 不整形地の地積をその間口距離で除して得た計算上の奥行距離を基礎とする方法等により評点数を求める ( 別表第 3の7 (1)2) 不整形地補正率表を運用するに当たって, 画地の地積が大きい場合等にあっては, 近傍の宅地の価額との均衡を考慮し, 不整形地補正率を修正して適用するものとする ( 別表第 3 附表 4( 注 2)) ( エ ) 経過措置 a 宅地の評価において, 標準宅地の適正な時価を求める場合には, 当分の間, 基準年度の初日の属する年の前年の1 月 1 日の地価公示法による地価公示価格等から求められた価格等を活用し, これらの価格の 7 割を目途として評定する ( 第 1 章第 12 節一 ) b 平成 24 年度の宅地の評価においては, 市町村長は, 平成 23 年 1 月 1 日から同年 7 月 1 日までの間に標準宅地等の価額が下落したと認める場合には, 評価額に所定の方法により修正を加えることができる ( 第 1 章第 12 節二 ) イ吹田市長は, 評価基準を受けて, 土地の評価の細部の取扱いについて, 吹田市固定資産 ( 土地 ) 評価取扱要領 ( 以下 本件要領 という ) を定 4

めており, 本件要領は, 宅地の評価について, 概要, 次のとおり定める ( 甲 10) ( ア ) 宅地の価格は, 奥行の長短により変動するものであるから, 奥行価格補正率表 ( 附表 1) によって求めた補正率を乗じて当該画地の1m2当たり評点数を求める ( 第 9 章第 5 節 4) 不整形地補正を要しない不整形地については, 原則として, 路線からおおむね画地の中線において測定した平均の長さを奥行距離とする ( 第 9 章第 3 節 1) ( イ ) 一筆又は一画地で1000m2以上の土地については, 原則として不整形地補正を要しない ( 第 9 章第 5 節 9) ( ウ ) 画地と街路との間に段差が存する画地の価格は, 一般に低くなるものであるから, 道路面高低差補正率表 ( 附表 12) によって求めた補正率を乗じて当該画地の1m2当たり評点数を求める ( 第 9 章第 5 節 16) (2) 当事者等ア原告は, 本件土地を敷地 ( 共用土地 ) とするマンション建物 (A 以下 本件マンション という ) の区分所有者として本件土地を共有する者 ( 持分割合 32 万 7616 分の8038) であり, 本件持分に係る固定資産税の納税義務者である ( 甲 1,4の1~3) イ本件土地は, 宅地であり, その形状は別紙地積測量図のとおりであって, 台形状の土地 ( 以下 本件主要部分 という ) を主要部分とし, 本件主要部分の南側境界の中央付近から剣状の細長い部分 ( 以下 本件剣先部分 という ) が突き出ている (3) 本件決定の経緯ア吹田市長は, 平成 24 年度の本件持分の価格を786 万 6297 円 ( 本件登録価格 ) と決定し, これを土地課税台帳に登録した ( 甲 2,4 の2) イ原告は, 平成 24 年 5 月 24 日付けで, 審査委員会に対し, 本件登録価 5

格について不服があるとして, 地方税法 432 条 1 項による審査の申出をしたところ, 審査委員会は, 平成 25 年 5 月 15 日付けで, 本件登録価格の決定は是認できるとして, 原告の審査の申出を棄却する旨の本件決定をし, 同月 16 日付けで, 原告に対し, これを通知した ( 甲 5~7) ウ原告は, 同年 11 月 15 日, 本件決定の取消しを求めて, 本件訴訟を提起した ( 顕著な事実 ) 3 被告が主張する本件登録価格の算出根拠被告が主張する本件登録価格の算出根拠は, 次のとおりである (1) 本件土地は, 普通住宅地区に区分されるところ, 同地区のうち, 本件土地の所在する状況類似地区につき選定された標準宅地の平成 23 年 1 月 1 日時点の1m2当たりの鑑定評価価格の7 割の価額は15 万 9000 円であること及び同日から同年 7 月 1 日までの半年間の時点修正率が99.6% であることから, 上記標準宅地に沿接する主要な街路の平成 24 年度の路線価を15 万 8364 点と付設した (2) 本件土地が沿接する街路の路線価については, 同街路に沿接する宅地と上記標準宅地との間における街路の状況等の相違を総合的に考慮して,15 万 4380 点と付設した (3) 本件持分につき, 次のとおり評価額を求めた ア本件土地については, 本件要領の定める測定方法によれば奥行距離が4 8mとなることから奥行価格補正率を90% とし, 道路面との高低差が6. 46mあることから道路面高低差補正率を80% とする一方, 不整形地補正はしないこととした イ上記アで述べたところにより, 次のとおり単位地積当たり評点数を算出した 15 万 4380 点 ( 正面路線価 ) 0.9( 奥行価格補正率 ) 0.8 ( 道路面高低差補正率 )=11 万 1153 点 ( 小数点以下切捨て ) 6

ウ本件持分の総評点数は, 上記イで求めた単位地積当たり評点数に, 本件持分 (32 万 7616 分の8038) に相当する本件土地の地積を乗じて次の通り算出した 11 万 1153 点 70.77m2=786 万 6297 点 ( 小数点以下切捨て ) エ本件持分の評価額は, 上記ウで算出した評点数に評点 1 点当たりの価額 1 円を乗じて, 次のとおり算出した 786 万 6297 円点 1 円 =786 万 6297 円 4 争点及び当事者の主張本件の争点は, 本件決定の適法性, 具体的には, 不整形地補正をせず, 奥行価格補正率を90% として算定された本件登録価格が, 評価基準により算定される本件持分の価格を上回るかであり, 争点に関する当事者の主張は以下のとおりである ( 被告の主張 ) 以下のとおり, 本件登録価格は, 評価基準及びこれに基づき定められた本件要領により適正に決定されたものであり, 評価基準により算定される本件持分の価格を上回るものではないから, 本件登録価格を不服とする原告の審査の申出を棄却した本件決定は適法である (1) 不整形地補正を要しないことア不整形地補正は, 画地の形状が悪いことにより画地の全部が宅地として十分に利用できないという利用上の制約を受けることを理由とする減価補正である そのため, 不整形な画地であっても, ある程度まとまった地積を有すること等から, 建物の建築等が通常の状態において行い得るなど, 画地の利用上の制約が認められない場合には, 不整形地補正をする必要はない 評価基準も, 画地の地積が大きい場合等にあっては, 近隣の宅地の価額との均衡を考慮し, 不整形地補正率を修正して適用する旨定めている 7

し, 固定資産評価基準解説土地篇 ( 以下 評価基準解説土地篇 という ) にも, ある程度不整形な画地であっても家屋の建築等が通常の状態において行い得るものは補正を要しない旨記載されている 本件評価要領の不整形地補正に係る定め ( 地積 1000m2以上の画地につき原則として不整形地補正を要しないとするもの ) は, 不整形地補正の上記趣旨に基づくものであり, 評価基準に合致する イ本件土地は, 地積が2884.72m2と広大な画地であり, その形状も極端に不整形ではなく, さらに, 建ぺい率 容積率の各上限に近い建物が建築され ( 本件土地に係る建ぺい率は40%, 容積率は100% であるところ, 本件マンションの建ぺい率は37.75%, 容積率は98.47% である ), 実際に建物の敷地として最大限有効利用されていること等からすれば, 本件土地については不整形地補正をする必要はない ウ原告は, 審査委員会の裁決例 ( 平成 18 年度第 5 号 ) において不整形地補正をすべきとされた画地 ( 以下 別件土地 という 別件土地は, 台形状の主要部分と, そこから突き出た剣先部分により構成される ) の主要部分の蔭地割合と本件土地の主要部分 ( 本件主要部分 ) の蔭地割合とを比較し, 本件土地につき補正率 92% の不整形地補正をすべきである旨主張するが, 画地全体を比較すれば, 別件土地の蔭地割合は約 60% であるのに対し, 本件土地の蔭地割合は約 44% であるから, 別件土地につき不整形地補正をすべきとされたことをもって, 本件土地についても不整形地補正をすべきであるということはできない また, 原告は, 相続税に係る財産評価基本通達 ( 昭和 39 年 4 月 25 日付け直資 56, 直審 ( 資 )17) の定めを根拠として本件土地につき不整形地補正をすべきである旨主張するが, 固定資産税は, 行政サービスの受益に着目して課税される税であって相続税とは課税の趣旨が異なるものであるし, 地積が大きい画地には不整形地補正率を修正して適用する旨の評 8

価基準の定めに対応する定めが財産評価基本通達には存在しないなど, 両者には様々な差異が存在するのであるから, 財産評価基本通達の定めは本件土地に不整形地補正をすべき理由にはならない (2) 奥行価格補正が適正なものであることア評価基準は, 不整形地補正を要しない不整形地につき, 奥行距離の測定方法に係る定めを置いていない そこで, 被告は, 評価基準が, 市町村長において, 宅地の状況に応じ, 必要があるときは画地計算法の附表等につき所定の補正をする旨定めている ( 評価基準第 1 章第 3 節二 ( 一 )4) ことに基づき, 本件要領において, 前記 2(1) イ ( ア ) のとおり, 上記不整形地につき, 原則として路線からおおむね画地の中線において測定した平均の長さをもって奥行とする旨定めている 本件土地については, 上記測定方法により奥行距離を48mと確定し, 補正率を90% として奥行価格補正がされたものであり, 本件土地に係る奥行価格補正は, 評価基準に基づく評価要領により適正にされている イ仮に原告の主張するように, 評価基準の定める不整形地の奥行距離の測定方法が, 不整形地補正の要否にかかわらず, 不整形地一般に妥当するものであったとしても, 評価基準別表第 3の72ウの方法による場合には, 奥行距離は46mとなるのであって, これを59mであるとする原告の主張には理由がない ( 原告の主張 ) 本件登録価格は, 以下のとおり, 評価基準によれば行うべき不整形地補正をせず, また評価基準によれば87% となるべき奥行価格補正率を90% として算定されたものであり, 本件登録価格は評価基準により算定される本件持分の価格を上回るから, 本件登録価格の決定を是認して原告の審査の申出を棄却した本件決定は違法である (1) 評価基準によれば不整形地補正をすべきであること 9

ア評価基準の定める 不整形地補正率表 ( 別表第 3 附表 4) に照らせば, 地積 1000m2以上の画地であっても蔭地割合が10% を超える場合には, 一定の減価補正がされるのであって, 評価基準は, 地積が大きい場合に不整形地補正を要しないものとはしていない 実質的にみても, 不整形地は, 地積が大きい場合であっても, 建築できる建物の形状に制約があるなど, 同一地積の整形地に比して利便性が劣るのであって, 面積の大小にかかわらず, 整形地に比してその利用価値が劣るものである したがって, 本件土地についても不整形地補正をすべきであり, 少なくとも本件主要部分の蔭地割合 22.3% に対応する92% の補正率が適用されるべきである 審査委員会が, 主要部分の蔭地割合が17% である別件土地について9 5% の不整形地補正をすべきであるとしたことや, 財産評価基本通達 ( 路線価を基礎に不整形地補正等の補正をして財産の 適正な時価 を評定するもので, 評価基準と同趣旨の財産評価に係る定めである ) が,100 0m2以上の不整形地であっても, 不整形地補正をすべきとしていることからしても, 本件土地について, 不整形地補正をすべきことは明らかである イ被告は, 評価基準の定める不整形地補正率を修正することが許容されている旨主張するが, 仮にそのようなことが許されるとしても, 全国一律の統一的な評価基準に従って公平な評価を行うという地方税法上の要請に照らせば, 上記修正は独自の補正率を定めなければならない特別な事情がある場合に限り許されるというべきところ, 吹田市において, 地積 1000 m2以上の不整形地が, 整形地と等価値で取引されているといった事情はないから, 地積 1000m2を超える画地であることを理由に不整形地補正をしないことは許されない また, 被告は, 本件マンションの建ぺい率及び容積率を理由に, 本件土地は敷地として最大限有効利用されているから不整形地補正を要しない旨 10

主張するが, 評価基準は, 建ぺい率及び容積率を不整形地補正の要否に係る判断要素とはしていない 実質的にみても, 不整形地において建物を建てるに当たっては, 建物の形状や建設位置等に制約を受けるのであって, 結果的に上限に近い建ぺい率 容積率を確保できたかどうかにより不整形地補正の要否が判断されるべきではない また, 不整形地であっても建ぺい率の上限に近い敷地を確保することは困難ではないから, 建ぺい率を考慮して不整形地補正の要否を判断すると, ほとんどの不整形地について補正を要しないことになってしまい, 不整形地の価額は整形地に比して一般に低くなるという評価基準の前提と相容れない結果となる したがって, 不整形地補正の要否に係る判断において建ぺい率及び容積率を考慮すべきではない (2) 評価基準によれば奥行価格補正率は87% となることア評価基準は, 奥行距離が一様でない不整形地については, 当該画地の地積を間口距離で除する方法等により奥行距離を算出すべきことを定めている 本件土地は, 奥行距離が一様でない不整形地であるから, 地積 (28 84.72m2 ) を間口距離 (49m) で除した平均的な奥行距離である5 9mが奥行距離とされるべきであって, これに対応する補正率 87% の奥行価格補正がされるべきである イ被告は, 評価基準の定める不整形地に係る奥行距離測定方法は, 不整形地補正を要する不整形地についての奥行距離測定方法である旨主張するが, 奥行価格補正は, 画地の奥行が標準奥行よりも長い場合又は短い場合に, 当該画地の宅地としての利用価値が低くなるという宅地の客観的な形状に着目した補正であるから, 評価基準の定める上記方法は, 不整形地補正の要否にかかわらず, 客観的に不整形な画地一般について妥当するものというべきであり, 本件土地の奥行も評価基準の定める上記方法により測定さ れなければならない 11

第 3 当裁判所の判断 1 判断の枠組み土地に対する固定資産税の課税標準となる土地の価格 ( 適正な時価 ) とは, 正常な条件の下に成立する当該土地の取引価格, すなわち, 客観的な交換価値をいうと解される ところで, 前記第 2の1(2) のとおり, 地方税法は, 固定資産の評価の基準並びに評価の実施の方法及び手続を, 総務大臣の告示である評価基準に委ね, 市町村長は, 評価基準によって固定資産の価格を決定しなければならないと定めている そして, 評価基準に定める市街地宅地評価法は, 前記認定 ( 前記第 2 の2(1) ア ( イ )) のような具体的内容等に照らすと, 市街地的形態を形成する地域における宅地の客観的な交換価値を算定する方法として一般的な合理性を有するものというべきである そうすると, 評価基準によって算定した宅地の価額は, 同方法によっては価格を適切に算定することができない特別の事情がない限り, その適正な時価 ( 客観的な交換価値 ) を上回らないものと推認するのが相当である ( 最高裁平成 15 年 7 月 18 日第二小法廷判決 裁判集民事 21 0 号 283 頁, 最高裁平成 21 年 6 月 5 日第二小法廷判決 裁判集民事 231 号 57 頁参照 ) 他方, 前示のとおり, 地方税法が, 固定資産の評価の基準等を評価基準に委ね, 市町村長がこれによって固定資産の価格を決定しなければならないと定めているのは, 全国一律の統一的な評価基準によって, 各市町村全体の評価の均衡を図り, 評価に関与する者の個人差に基づく評価の不均衡を解消するため, 固定資産の価格は評価基準によって決定されることを要するものとする趣旨と解され, 上記地方税法の定め及びその趣旨等に鑑みれば, 固定資産税の課税において全国一律の統一的な評価基準に従って公平な評価を受ける利益は, 適正な時価との多寡の問題とは別にそれ自体が地方税法上保護されるべきものというべきであるから, 土地の基準年度に係る賦課期日における登録価格が評価基 12

準によって決定される価格を上回る場合には, その登録価格の決定は違法となるものと解される ( 最高裁平成 25 年 7 月 12 日第二小法廷判決 民集 67 巻 6 号 1255 頁参照 ) 以上によれば, 登録価格が評価基準により算定される価格を超えるものでなければ, 当該価格は適正な時価を上回らないものと推認され, 登録価格が評価基準により算定される価格を超えるものであれば, その登録価格の決定は, 違法となるものというべきである そこで, 以下では, 本件登録価格が, 評価基準により算定される本件持分の価格を超えるものではないかという観点から, その適用の要否, 方法について争われている不整形地補正及び奥行価格補正について, 順に検討し, 本件登録価格の決定を是認した本件決定の適法性を判断することとする ( なお, 本件において評価基準によっては本件持分の価格を適切に算定することができない特別の事情があることを認めるに足りる証拠はない ) 2 不整形地補正について (1) 評価基準上の不整形地とは, 原則として普通地 ( 一辺が路線に接する矩形の画地又はこれに準ずる画地 ), 準普通地 ( 一辺の一部が路線に接する矩形の画地又はこれに準ずる画地 ), 正台形地 ( 平行線の長辺が路線に接する台形の画地又はこれに準ずる画地 ), 正 L 字形地 ( 外側二長辺のいずれか一辺が路線に接するL 字形の画地又はこれに準ずるもの ) 及び路線となす角が大きい平行四辺形地等を除いたもので路線に一辺又は数辺が接する多辺整形の画地をいう ( 評価基準解説土地篇 206 頁 甲 16) ところ, 本件土地は, 前記第 2の2(2) イのとおり, 台形状の土地 ( 本件主要部分 ) を主要な部分とし, その南側境界の中央付近から剣状の細長い部分 ( 本件剣先部分 ) が突き出ており, そのような形状に照らし, 不整形地に該当することは明らかである ところで, 不整形地補正は, 画地の形状が悪いことによって画地の全部が 13

宅地として十分に利用できないという利用上の制約を受けることによる減価補正であるから, 不整形地であっても, 宅地としての利用上の制約が認められない画地については, 減価補正を要しないものと解される ( 評価基準解説土地篇 218 頁 乙 1) 評価基準は, このような観点から, 蔭地割合が1 0% 未満の不整形地については補正率を1.00とし ( 別表第 3 附表 4), 減価補正をしないこととしているものと解される 以上に加え, 評価基準が, 不整形地補正率表の運用について, 画地の地積が大きい場合等にあっては, 近傍の宅地の価額との均衡を考慮し, 不整形地補正率を修正して適用する旨定めている ( 同附表 4( 注 2)) ことからすると, 評価基準は, 蔭地割合が 10% 以上の不整形地であっても, 画地の地積が大きいこと等により家屋の建築等が通常の状態において行い得る画地については, 不整形地補正率を1. 00とし, 減価補正をしないことを予定しているというべきである (2) これを本件土地についてみると, 本件土地は2884.72m2もの地積を有する広大な土地であり, 本件土地の南側には本件剣先部分が突き出ているものの, 同部分の地積は約 50m2であり, 同部分が本件土地全体に占める割合は約 1.7% にとどまること ( 甲 26の1~3, 乙 4, 弁論の全趣旨 ), 本件剣先部分を除いた本件主要部分はほぼ整形であること, 及び本件土地上には本件マンションが建築されており, 本件剣先部分も, その南端において舗装道路に通じ, マンション住民の火災等の緊急時の避難通路として利用されているほか, 本件マンションの生活排水管等が埋設され ( 甲 18,19, 乙 2,3), 本件土地はマンション敷地として本件剣先部分も含め一体的に利用されていること等に照らせば, 本件土地の形状によってマンション等の建物の建築といった土地利用に支障が生じるものとは認め難く, 本件主要部分の蔭地割合が22.3%( 甲 9) であることを考慮しても, 本件土地に宅地としての利用上の制約があるということはできず, 本件土地の評価において不整形地補正をしないことが評価基準に反するものとは考えられない 14

これに対し, 原告は, 別件土地につき審査委員会が不整形地補正をすべきとしたことをもって本件土地についても不整形地補正をすべきである旨主張する しかしながら, 別件土地は, ほぼ整形である台形状の部分と, そこから突き出た剣先部分により構成される ( 甲 13) ところ, その蔭地割合 ( 約 60% 弁論の全趣旨 ) や, 剣先部分が土地全体に占める割合 ( 約 13% 甲 12 ) は, いずれも本件土地の上記各割合 ( 蔭地割合は約 44% 甲 9, 剣先部分が占める割合は約 1.7%) を相当程度上回ることから, 本件土地よりもより不整形な土地であると認められる上, 別件土地 (1714. 58m2 甲 12 ) は本件土地よりも1000m2以上小さく, 宅地としての利用上の制約の有無, 程度, ひいては不整形地補正の要否という観点からは, 別件土地の評価と本件土地の評価とでは事案を異にするものというべきであって, 審査委員会が別件土地につき不整形地補正をすべきとしたことをもって, 本件土地についても不整形地補正をすべきであるということはできない また, 原告は, 適正な時価を評定するという点で評価基準と同趣旨の定めである財産評価基本通達において,1000m2以上の不整形地であっても, 不整形地補正をすべきものとしていることからしても, 本件土地について不整形地補正をすべきである旨主張する しかしながら, 財産評価基本通達は, 評価基準について前示したものと同様の趣旨から不整形地補正を定めていると解され, そのような趣旨からすれば, 財産評価基本通達も, 画地の大きさ等からして家屋の建築が通常の状態において行い得るなど, 宅地としての利用に特に支障がないものについて, 不整形地補正をしないことを否定するものとは解されず, 原告の上記主張は, 採用することができない (3) したがって, 不整形地補正をしなかったことにより, 本件登録価格が, 評価基準により算定される本件持分の価格を超えるということはできない 3 奥行価格補正について 15

(1) 評価基準は, 不整形地に係る奥行価格補正割合法の適用について,1 当該不整形地を区分して整形地を得られるときは, その区分した整形地について評点を求める方法 ( 評価基準別表 3の7(1)2ア 以下 アの方法 という ),2 不整形地の地積をその間口距離で除して得た計算上の奥行距離 ( 想定整形地の奥行距離が上限となる 甲 15 ) を基礎として評点数を求める方法 ( 評価基準別表 3の7(1)2イ 以下 イの方法 という ) 及び3 近似整形地 ( 当該土地に近似する整形地であって, 外側蔭地と内側蔭地の地積がおおむね等しく, かつその合計面積ができるだけ少なくなるよう留意し, 可能な限り画地の形状に順応させた土地 乙 1 ) につき評点数を求める方法 ( 評価基準別表 3の7(1)2ウ 以下 ウの方法 という ) の3つの方法を定める ( 甲 8) なお, この点に関し, 被告は, 上記の各方法は, 不整形地補正を要する不整形地に限って適用されるものである旨主張する しかし, 上記の各方法は, 評価基準別表第 3の7の (1) 不整形地の評点算出法 という表題の下に定められ, 評価基準中, 上記の各方法が不整形地補正の適用がある不整形地についてのみ適用されるべきものであることをうかがわせる文言は見当たらないし, 奥行価格補正が土地の奥行距離の長短という客観的な形状による土地の利用上の制約を根拠とする減価補正であるのに対し, 不整形地補正は画地の形状が悪いことによる土地の利用上の制約を根拠とする減価補正であり, 両者は補正根拠を異にするものであって, 不整形地補正の要否により奥行価格補正に係る上記各方法の適用の有無を区別すべき理由はないから, 上記の各方法は, 不整形地一般に適用されるものであると解すべきである (2) そこで, 本件土地について, 上記 (1) のいずれの方法を採用することが相当であるかについて検討する アアの方法について本件土地は, その形状に照らし, 整形地に区分することは困難であり, 16

アの方法は採用することができない イイの方法について ( ア ) イの方法によった場合の本件土地の計算上の奥行距離は約 58.8 m(2884.72m2 49m 甲 6 ), これに対応する奥行価格補正率は87% となり, これを基礎として算定される本件土地の価格 (3 億 0995 万 8779 円 ) は, 以下のとおり, 同じイの方法を採用して算定される本件主要部分の価格 (3 億 1508 万 9332 円 ) を下回ることになる a イの方法による場合の本件土地の価格 15 万 4380 点 ( 正面路線価 ) 0.87( 奥行価格補正率 ) 0.8( 道路面高低差補正率 ) 2884.72( 地積 ) 1( 評価点 1 点当たりの価格 )=3 億 0995 万 8779 円 (1 円未満切捨て ) b イの方法による場合の本件主要部分の価格 15 万 4380 点 ( 正面路線価 ) 0.90( 奥行価格補正率 ) 0.8( 道路面高低差補正率 ) 2834.72( 地積 ) 1( 評価点 1 点当たりの価格 )=3 億 1508 万 9332 円 (1 円未満切捨て ) なお, 本件主要部分の奥行距離は, 地積を間口距離で除した奥行距離 ( 約 2834.72 49= 約 57.8m) が, 本件主要部分に係る想定整形地 ( 本件主要部分を囲む正面路線に面する矩形の土地 乙 1 ) の奥行距離約 51m( 乙 9 乙 9の図は本件土地の近似整形地を示したものであるが, 同図を基に本件主要部分の想定整形地を作成すると, その奥行距離は長く見積もっても約 51mである ) を上回るため, 上記想定整形地の奥行距離が計算上の奥行距離となり, これに対応する奥行価格補正率は90% となる ( イ ) しかし, 同一形状の土地 ( 本件主要部分 ) に本件剣先部分のような突起部分が加わることにより土地の価格が下落するとは通常考え難い 17

( 特に, 本件剣先部分は, その南端において舗装道路に通じ, 緊急時の避難通路や本件マンションの生活排水管等の埋設場所として利用されていること 前記 2(2) からしても, 一定の価値を有するものというべきであって, 本件土地の価格が, 本件主要部分の価格を下回るとは考え難い ) から, イの方法を採用することにより算定される上記 ( ア )a の本件土地の価格は, 宅地の客観的な交換価値を示すものとしては不合理であるといわざるを得ず, 評価基準が, 本件土地につきイの方法により奥行価格補正割合法を適用することを想定しているとは考え難い ウウの方法について他方, ウの方法による場合, 本件土地の近似整形地の奥行距離は46m ( 乙 9, 弁論の全趣旨 ) であるから, これに対応する奥行価格補正率は9 1% となり ( なお, 乙 9で求められている近似整形地が必ずしも正確なものではなかったとしても, 本件土地の形状, 地積等からして, 近似整形地の奥行距離は44m 未満あるいは48m 以上になるものとは考え難く, 本件土地の近似整形地の奥行距離に対応する奥行価格補正率が91% であることに変わりはない ), これに基づき計算される本件土地の価格は, 以下のとおり, その合理性を疑わせる事情も見当たらない ( ウの方法による場合の本件土地の価格 ) 15 万 4380 点 ( 正面路線価 ) 0.91( 奥行価格補正率 ) 0. 8( 道路面高低差補正率 ) 2884.72( 地積 ) 1( 評価点 1 点当たりの価格 )=3 億 2420 万 9757 円 (1 円未満切捨て ) エ以上によると, 本件土地については, 奥行価格補正割合法の適用に当たっては, ウの方法を採用することが相当であると解される (3) そうすると, 評価基準により本件土地の価格を算定する場合の奥行価格補正率は91% になるというべきであるから, 奥行価格補正率を90% としたことによって, 本件登録価格が, 評価基準により算定される本件持分の価格 18

を超えるということはできない 4 以上によれば, 本件登録価格は, 評価基準により算定される本件持分の価格を超えるものということはできない ( なお, 前記第 2の3の被告が主張する本件登録価格の算定根拠のうち, 不整形地補正及び奥行価格補正に係る部分を除く算定過程, 基礎数値等につき, 評価基準に反する部分や不合理, 不正確な部分は見当たらない ) から, 適正な時価を上回らないものと推認することができる よって, 本件登録価格の決定を是認した本件決定は適法であり, 原告の請求は理由がないから, これを棄却することとし, 主文のとおり判決する 大阪地方裁判所第 2 民事部 裁判長裁判官西田隆裕 裁判官斗谷匡志 裁判官狹間巨勝 19