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資料 2 セイヨウオオマルハナバチの代替種の利用方針 について 環境省農林水産省

トマト等の栽培におけるマルハナバチの利用 マルハナバチは 90 年代から導入 トマト等の授粉の省力化に寄与 日本における送粉サービスの経済価値は約 4,700 億円 このうち 53 億円が施設マルハナバチ (( 国研 ) 農研機構農業環境変動研究センターの推計値 ) 写真 : 神戸裕哉 ホルモン剤 ( トマトトーン ) のスプレー作業 セイヨウオオマルハナバチ

セイヨウオオマルハナバチの特定外来生物への指定 1996 年 ( 平成 8 年 ) に北海道において セイヨウオオマルハナバチの女王の野外越冬と自然巣を初確認 その後も急速に生息域を拡大 セイヨウオオマルハナバチによる 餌資源を巡る競合 巣の乗っ取り 生殖撹乱等により 在来種のエゾオオマルハナバチの減少も確認 2006 年 ( 平成 18 年 ) に 特定外来生物 に指定 写真 : 光畑雅弘 北海道の野外で確認されたセイヨウオオマルハナバチと自然巣 写真 : 鷲谷いづみ

セイヨウオオマルハナバチの飼養許可と営農上の義務 特定外来生物に指定されると 原則として飼養が禁止 ただし セイヨウオオマルハナバチは 農業資材として広く産業利用されていたことから 生業の維持 を目的とする場合には3 年ごとに環境大臣の許可を受けた上で利用が認められる ただし 利用する場合は施設開口部へのネット展張や施設の出入口を二重にする等の義務 法律に抵触すると 個人で3 年以下の懲役又は300 万円以下の罰金 法人で1 億円以下の罰金等の罰則が適用される可能性 Ok ハウスと地面の間やビニールの破れなどの開口部 ( 速やかにふさいでください ) 施設の出入口 ( 二重でのネット展張 ) ( 開けっ放しは )

1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 セイヨウオオマルハナバチは減っていない? 特定外来生物に指定後 セイヨウオオマルハナバチの出荷量はやや減少したものの 現在は6 万群前後と 指定以前と同水準で推移 80,000 出荷量 ( コロニー数 ) 70,000 60,000 50,000 40,000 30,000 20,000 10,000 セイヨウオオマルハナバチ クロマルハナバチ 特定外来生物指定 セイヨウオオマルハナバチ ( 欧州原産 ) 0 年 マルハナバチの出荷量の推移 マルハナバチ販売事業者への調査により得られたデータを利用して作成 クロマルハナバチ ( 在来種 ) 代替種への転換をより一層進め セイヨウオオマルハナバチの利用を縮小していく必要

代替種の利用に関する外来生物対策上の位置づけ 2015 年 ( 平成 27 年 )3 月に 外来種対策の中期的な戦略として 国の対策の実施方針 各主体の役割 対策の優先度の考え方等を整理した 外来種被害防止行動計画 ( 環境省 農林水産省 国土交通省 ) を公表 セイヨウオオマルハナバチやその代替種に関して以下の記載 セイヨウオオマルハナバチの代替種の利用については 人工増殖で偏った遺伝的形質を持つ集団の代替利用が進み 無秩序な放出が行われた場合は 自然分布域外への導入や地域集団の遺伝的攪乱のおそれがあることから これらの実態を把握し セイヨウオオマルハナバチやその代替種に関する利用方針を検討していきます ( 環境省 農林水産省 ) セイヨウオオマルハナバチの代替種の利用においても 生物多様性に配慮した取組方向について検討が必要

セイヨウオオマルハナバチの代替種の利用方針 の策定 セイヨウオオマルハナバチや代替種である在来種マルハナバチの利用の課題と対応方向を整理 検討委員会 (H29.2.20) での議論を経て パブリックコメントを実施 (H29.2.28~3.29) 環境省と農林水産省で策定(H29.4.21) < 主な論点 > 代替種への転換とセイヨウオオマルハナバチの利用縮小に向けた対応方向 代替種が開発されていない地域 ( 北海道 奄美大島以南 ) における取扱 代替種の自然分布域外での利用による定着リスクや遺伝的撹乱の可能性等 現時点での科学的知見等を用いて評価

代替種の性能 1 クロマルハナバチ クロマルハナバチの利用が本格化して分かったこと 1 クロマルハナバチは 花粉交配用としてセイヨウオオマルハナバチとそん色なく働くことが確認 ( 既に年間 3 万群が利用 ) 2 他方 クロマルハナバチはセイヨウオオマルハナバチと異なる習性 セイヨウオオマルハナバチよりもおとなしい オス蜂の発生が早いが 巣箱の寿命は同じ UVカットフィルム下での活動が抑制されることがある マルハナバチの訪花がトマトの果実品質に及ぼす影響 ( 浅田 北 2001) マルハナバチ種 段位 果実重量一果の種子数空洞果率花跡の大きさ (g) ( 個 ) (%) (mm) クロマルハナバチ 4 175 (n=35) 99 (n=35) 0 (n=32) 3.3 (n=35) セイヨウオオマルハナバチ 4 190 (n=63) 109 (n=63) 3 (n=63) 2.9 (n=63) マルハナバチの訪花が果実品質に及ぼす影響 ( 浅田,2000) クロマルハナバチ 5 203 (n=50) 105 (n=50) 6 (n=53) 2.6 (n=50) セイヨウオオマルハナバチ 5 189 (n=50) 108 (n=45) 4 (n=51) 2.6 (n=50) クロマルハナバチの性能と適切な使用方法を分かりやすく周知する必要

代替種の性能 2 エゾオオマルハナバチ 営巣成功率 ( 産卵 ワーカー生産 繁殖虫 ( 新女王 オス ) 生産 ) はセイヨウオオマルハナバチと同等程度 UVカットフィルムの下でもセイヨウオオマルハナバチと同等の訪花活動を行う エゾオオマルハナバチの製品開発 ( 系統選抜 大量増殖技術 ) が必要 エゾオオマルハナバチエゾトラマルハナバチエゾナガマルハナバチセイヨウオオマルハナバチ 4 種のマルハナバチの飼育試験における営巣成功率の比較 ( 高橋, 2015)

自然分布域外での定着リスクの評価 ( 北海道 奄美大島以南 ) クロマルハナバチは 北海道での生息適合度が高い ( 定着リスクが高い ) 奄美大島以南の島しょ部では クロマルハナバチの生息適合度は低い ( 定着リスクが低い ) しかし 野外に逸出し続けた場合に 定着する可能性は否定できない 本州の生息情報から MaxEnt で推定された北海道におけるクロマルハナバチの生息適地 ( 大野 河田, 未発表 ) 本州の生息情報から MaxEnt で推定された奄美大島以南におけるクロマルハナバチの生息適地 ( 大野 河田, 未発表 )

自然分布域での遺伝的撹乱リスクの評価 クロマルハナバチは アジア大陸と日本では異なる遺伝集団である可能性が高い 国内では9タイプが確認されているが 分化の程度は低い エゾオオマルハナバチは 12タイプが確認されたが すべて1 塩基置換のみであり クロマルハナバチよりも分化の程度は低い ( 遺伝的撹乱のリスクは低い ) (a) (b) (b) (a) クロマルハナバチの mtdna-co1 ハプロタイプネットワーク (a) とその分布 (b)(tokoro et al., 2010) エゾオオマルハナバチの mtdna-co1 ハプロタイプネットワーク (a) とその分布 (b)( 高橋, 2015)

地域ごとのリスク評価結果と代替種の利用方針 < 北海道 > クロマルハナバチは生息していないが 他のマルハナバチは生息している クロマルハナバチの定着 遺伝的撹乱リスクは高い クロマルハナバチは利用しない 代替種 ( エゾオオマルハナバチ ) を実証利用 ( 実証後 転換を推進 ) < 本州 四国 九州 > クロマルハナバチは生息している クロマルハナバチを適切な管理の上 利用 < 奄美大島以南 > マルハナバチ類は生息していない クロマルハナバチは本来の生息域ではないが 定着リスクは低い ( 本来の生息域ではないが ) クロマルハナバチを適切な管理の上 利用

代替種の適切な利用の促進 代替種の利用には セイヨウオオマルハナバチのような法的義務はないが 人為的に均一化された遺伝子をもマルハナバチが野外に逸出することは生態系に対してリスクを生じる可能性がある 生態系への悪影響を最小限にしつつ 資材として効果的に利用する観点から 以下の適切な管理を行うよう努める 1 施設の開口部等にネット展張する 2 使用済み巣箱は施設内でビニール袋に入れて蒸し込み 死滅させる 施設へのネット展張は受粉効率の向上にもつながります 害虫や鳥による被害防止のためにも 必ずネット展張を行いましょう

セイヨウオオマルハナバチの半減に向けて 産業に悪影響を与えないよう留意しながら 最終的にはセイヨウオオマルハナバチの利用をなくしていく必要 農業者をはじめ マルハナバチに関わる行政 マルハナバチ販売事業者等の関係者の協力のもと クロマルハナバチへの 計画的な 転換を進める必要 2020 年までにセイヨウオオマルハナバチの総出荷量 ( 代替種が開発されていない北海道を除く ) を半減することを目指す 2015 年総出荷量 ( およそ 6 万群 ) ( 農業者 ) クロマルハナバチでも十分生産できるね! ( 消費者 ) 環境に優しい農業を選びます!

まとめ < 主な論点 > 代替種への転換とセイヨウオオマルハナバチの利用縮小に向けた取組方向 代替種が開発されていない地域 ( 北海道 奄美大島以南 ) における取組方向 代替種の自然分布域外での利用による定着リスクや遺伝的撹乱の可能性 < 方針 > 2020 年までに ( 北海道を除き ) セイヨウオオマルハナバチの利用を半減 ( 本州 四国 九州では代替種としてクロマルハナバチを利用 ) 北海道ではエゾオオマルハナバチの実証利用 奄美大島以南ではクロマルハナバチを適切に管理しながら利用 代替種の利用に当たっては 遺伝的多様性への影響に配慮しつつ マルハナバチの逸出を防止し 資材として効率的に利用する観点から管理 農業者や関係機関の皆様におかれましては 利用方針の趣旨のご理解と今後の取組をお願いします